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2007年11月12日
FIAは11月8日、モナコにおいて12月6日の開催が予定されているFIA世界モータースポーツ会議の場に、マクラーレンF1車両に関する機密文書を違法に入手した疑いでルノーF1チームを召集した事を明らかにした。
■今回はルノー?今年のマクラーレンのスパイ容疑に酷似したケース
今年はマクラーレンF1チームがフェラーリのF1車両に関する機密設計書類を違法に入手していたという事実が発覚し、結果的にマクラーレン側が1億ドルの罰金と2007年シーズンのコンストラクターズ・ポイントの剥奪という厳しい処分をFIAの国際控訴法廷で9月に下されてF1界に大きな波紋を呼んだが、今回FIAがルノーに召集をかけた内容は、ルノーF1チームがマクラーレンのF1車両の設計図面や技術データなどを違法に入手していたとの容疑であり、先にマクラーレンが有罪判決を受けたフェラーリへのスパイ騒動と名目的には酷似したケースと言えそうだ。
■ルノーがマクラーレンの設計図面を違法に入手
FIAの発表内容によれば、ルノーF1チームはボーダフォン・マクラーレン・メルセデスの機密文書を無許可に入手しており、その内容は2006年から2007年にかけてのマクラーレンのF1車両の詳細な寸法を記したいくつかの設計図面であり、具体的には同期間にマクラーレンが採用していた燃料システム、ミッション構造、オイル冷却、油圧制御システム、新型サスペンションの機構一式などに関する構造を示す詳細資料だという。
■マクラーレンの元技術者がルノーへの移籍の際にフロッピーを所持
この件に関して英国のBBC放送はFIAのマックス・モズレー代表のコメントを紹介しており、それによればFIAは、マクラーレンの元技術者がルノーに移籍した際、マクラーレン側の技術情報をコピーしたデータディスクを数枚所持してルノー側に持ち込んだ疑いがある事をルノーF1チームには指摘しているようだ。なお、ルノーに対してこの告発が最初に行われたのは、マクラーレンがフェラーリへのスパイ疑惑に関して有罪判決を受けた今年の9月の国際控訴法廷にさかのぼり、マクラーレンに対する疑惑調査の過程でルノーに別件のスパイ容疑が飛び火する形となった。
今回は被害者側の立場となったマクラーレン、および被告側となったルノーF1チームはFIAから召集のあった11月8日はメディアに対してのコメントを一切差し控えていたが、翌日の11月9日にルノーF1チーム側は内部調査の結果を含む以下の声明を公式に発表した。
■ルノーはマクラーレンの機密文書の存在を認める声明
今回の事態に関してルノーは以前からすでに社内調査チームを設けており、その調査の結果として、問題となっているマクラーレンの機密書類がルノーF1チームの所有するコンピューターのファイルシステムのディレクトリ内に存在していた事実をルノーは全面的に認めているが、データの入手はルノー側にとっては不測の事態であり、その内容も以前にチーム内の一部の技術者により確認されてはいるものの、何一つルノーのF1車両にはマクラーレンの技術が流用されていない事を主張している。
■データの入手は不測の事態
ルノー側の今回の発表によれば、元マクラーレンの技術者であるフィル・マッケレス氏が2006年の9月にルノーに移籍した際、マクラーレンの機密情報をコピーした旧式のフロッピーディスクを数枚持ち込み、ルノーF1チームが有するファイルシステム内の彼の個人ディレクトリに、そのフロッピー内のデータをルノーF1チームの誰にも承諾を受ける事なく保存していたのが、今回のデータ入手の経緯だという。
■マクラーレンとFIAには内部調査の結果を定期報告済み
またルノーは、この事態が社内の技術管理部門の調査により発覚してからは、迅速に以下の対処を取ったとしている。
ルノーはマッケレス氏の個人ディレクトリに保存されていたデータをコンピュータ・システムから完全に消去し、その後に社内での正式な調査活動を開始。その後すぐに機密情報のコピーが存在した事実をマクラーレンとFIAには報告しており、現在まで継続して両者には調査の状況と詳細な結果を定期的に報告してきたという。
■問題の技術者は停職処分、データはすでにマクラーレンに返却
なお、マッケレス氏は事実の発覚直後に停職処分となっており、同氏の持ち込んだとされるオリジナルのフロッピー・ディスクは押収され、マクラーレン側に返却するようにルノー側の弁護士に送られており、すでにルノーF1チーム内には存在していない。
■ルノーの技術者の数名が以前に文書の内容を確認
ルノーは同社のF1チーム内の技術者の数名が、マッケレス氏が移籍してきて間もない頃に問題の機密データを見せられた事実と、それがマクラーレンによって描かれたF1車両の基本システムの縮尺図面であった事、ならびにスプレッドシートに保存された技術情報のファイルが存在していた事も詳細に明かしている。
■そもそも流用可能な技術ではなかった事をルノーは強調
これらを実際に見せられたルノーの技術者たちは、問題の縮尺図面には燃料タンクの内部構造、ギア・クラスターの基本レイアウト、チューンド・マス・ダンパー、およびサスペンション・ダンパーの内部構造という4つの基本システムが描かれていたが、これらの情報は何一つルノーのF1車両には使用されておらず、いかなる影響も受けていない事を強調している。
実際に、チューンド・マス・ダンパーはF1ではルール上すでに使用が禁じられており、サスペンション・ダンパーの設計図面に関してもその後にFIAが提示したルールに抵触する内容のものであった事から、マクラーレンからの技術流用が一切存在しないのは明らか、というのが今回のルノー側の全面的な主張だ。
■チーム内の設計履歴を全面開示して調査に協力し、無実を主張
現在INGルノーF1チームは本件に関してマクラーレンやFIAに全面的な協力の姿勢を示しており、マクラーレン側の専門家を招いてチーム内のコンピュータシステムにアクセスさせるなど、問題となっている期間のルノーF1車両の設計履歴を直接的に開示し、マクラーレンの機密文書が何一つルノーの車両設計に技術的な影響を及ぼしていない事を証明しようとしている。
いずれにしても、12月6日のFIA世界モータースポーツ会議の場では、これらの調査結果を元に何らかの結論が導かれる事は間違いないだろう。
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