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ヘレス冬季テスト初日、スリックタイヤの復活準備に着手 |
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2007年12月5日
2008年シーズンに向けての準備を急ぐ各F1チームは、スペインのヘレス・サーキットに12月4日から集合し、12月7日までの4日間の日程で行われる年内最後の冬季テストを実施している。ここでは、1990年のマーティン・ドネリーの大事故からスペインGPの舞台から外され、1994年と1997年にはヨーロッパGPの舞台とはなったものの、それ以降はグランプリが開催されていないヘレス・サーキットでの、晴天に恵まれたヘレス冬季テスト初日の模様を紹介する。
■カタルニア冬季テストに引き続き2008年型ECUのテストを再開
11月中旬に行われた前回のカタルニアでの冬季テストと同様に、今回のヘレスでも各チームは2008年のレギュレーションに沿ったマイクロソフトMES製のワンメイクECUを搭載した2007年型マシンで、年明けに2008年型マシンを迎える前の最後の調整テストを行っている。
中には新型ECUを搭載していない2007年型のマシンパッケージをそのまま使用して走行しているドライバーも存在するが、彼らは2008年のレギュレーションに合わせてトラクション・コントロールやエンジン・ブレーキ制御などのドライバー・アシスト機能は全てオフにしており、来期の標準に合わせたドライバー自らのテクニックの改善や、セッティングの方向性を探った様子だ。
■再来年の2009年に向けてスリック・タイヤの復活テストも
また、4日間連続の異例とも言える長丁場となった今回のテストでは、2008年シーズンに向けてのこの標準ECUや各チームの新型パーツのテストに加えて、2009年の新タイヤレギュレーション制定の準備作業の一貫として、再来年からの復活が予想されるスリックタイヤのテストもブリヂストン主導の元で行われており、初日はこのスリックタイヤを装着したドライバーの数名が、現行の溝入タイヤを履いたドライバーと比較して、非常に速いタイムを記録している。
■F1パドックはスリック・タイヤの復活を歓迎
スリックタイヤをまだ試していない一部のチームは「タイムシート上の順位は無意味」としているが、F1の世界に真のレーシングタイヤを復活させようとする動きには、誰もが賛成する雰囲気にパドックはつつまれているようだ。
なお、当初3日間を予定していたテストが1日延長されたのは、この2009年型スリック・タイヤのテストを見越してとの見方が濃厚と言えそうだ。
■フォース・インディアがチーム人事の一部を発表
ヘレスでの初日のテスト内容に入る前に、新着トピックを1件紹介する。フォース・インディア(元スパイカーF1チーム)は、このテスト初日に新チームの組織編成の一部を発表した。
■ジョーダン時代の技術者2名がチームに復帰
12月4日の発表の中でフォース・インディアは、チームの拠点をミッドランドF1チーム時代の英国シルバー・ストーンに戻し、ジョーダン時代の全盛期を支えた技術者の2名をチームに呼び戻した事を報じている。
今回フォース・インディアの新組織に戻ったのは、近年はレッドブルに所属していた車両設計担当のマーク・スミスと、昨年まではトヨタに所属したトランスミッションの専門家であるイアン・ホールの2名だ。両者は揃ってジョーダン時代には、フォース・インディアのチーフ・テクニカル・オフィサーのマイク・ガスコインや、テクニカル・ディレクターのジェームス・キーと一緒に仕事をした経験を持つ。
設計室の責任者を務める事になるマーク・スミスは、技術責任者のガスコインと2009年に向けてのプロジェクトの責任者であるキーの配下に所属し、2009年型車両開発のリーダーとなるイアン・ホールは、キーと密接に動いてプロジェクトを推進する予定だという。
■マーク・スミス「これからの挑戦が楽しみ」
マーク・スミスは今回の発表の際、「過去に多くのいい思い出があるこのチームに再び参加できる事を、大変に嬉しく思っています。チームはフォース・インディアとなり、あれから多くの事が変わっていますが、この挑戦には色々なチャンスが待ち受けるので、今から本当に楽しみです」とコメント。
■ガスコイン「2名はジョーダンの繁栄期を支えたメンバー」
また、フォース・インディアのチーフ・テクニカル・オフィサーであるマイク・ガスコインは、今回の2名のチームへの復帰を喜び、以下の通りコメントした。
「マーク(スミス)とイアン(ホール)を再びチームに迎え入れる事ができたのは大変に素晴らしい事です。特に彼らは1999年のジョーダンの繁栄期を支えた2名ですからね」とガスコイン。
「私は過去にも彼らと一緒に仕事をした事があります。マークとはルノーで、そしてイアンとはトヨタでしたが、彼らがこの新しい組織にも溶け込んで活躍してくれる事は間違いありませんし、ジェームスとマークがいれば、非常に強力な管理組織が出来上がりますから、今後のチームでの挑戦が本当に楽しみでなりません」
「今回の新組織の誕生と同時にブラックレーの風洞実験施設も稼働を開始し、今後は24時間運用に切りかわります。これらの利点を活かして私たちはチーム運営をさらに拡大していきますので、来年はさらに高いポジションを狙える事になるでしょう」
■ジェームス・キー「サーキットで早く成果を見せたい」
フォース・インディアのテクニカル・ディレクターを務めるジェームス・キーも、マーク・スミスとイアン・ホールのチーム復帰を歓迎する以下のコメントを発表している。
「マークとイアンが私たちに元に戻ってくれたのは大変に素晴らしい事です。ジョーダン時代に彼らとはいい思い出をたくさん作りましたからね」とキー。
「彼らと一緒に働く事で、素速くマシンの性能改善を進める事ができる筈ですから、早くサーキットでのその成果を見たくてたまりません。また、2009年型車両の開発に着手するのも大変に楽しみです」
■1日目の参加ドライバー、正ドライバーは8名のみ
1日目は2008年シーズンのレギュラー・ドライバー8名と、12名のテスト・ドライバーの合計20名が走行している。
■フェラーリの2007年度チャンピオンがサーキットに復帰
フェラーリは2007年度タイトルが11月16日のFIA国際控訴法廷で正式に決定したレギュラー・ドライバーのキミ・ライコネンと、2007年のテスト・ドライバーであるマルク・ジェネの2名。
なお、2日目はカタルニアのテストにも参加していたレギュラー・ドライバーのフェリペ・マッサがライコネンとの作業に加わり、ジェネは参加しない予定だ。
■マクラーレンのハミルトンも2日目から参加
マクラーレンは2007年のテスト・ドライバー2名、ペドロ・デ・ラ・ロサとゲイリー・パフェットが初日のテストを担当しているが、2日目はレギュラー・ドライバーのルイス・ハミルトンが参加し、パフェットと共にテストを行う。
3日目はハミルトンとデ・ラ・ロサの2名、最終日の4日目はパフェットの1名のみがテストを継続する予定だという。
■ルノーのテスト担当はピケJr
ルノーは前回のカタルニアでの発表通り、2007年のテスト・ドライバーであるネルソン・ピケJr.の1名のみが初日のテストに参加。
■ウィリアムズの中嶋選手は初日と3日目以降を担当
ウィリアムズは、レギュラー・ドライバーの中嶋一貴選手と、今回のテストがF1車両での初走行となる2007年のユーロF3シリーズでランキング3位につけたニコ・ヒュルケンベルグの2名が初日のテストに参加している。
2日目はレギュラー・ドライバーのニコ・ロズベルグとヒュルケンベルグの2名、3日目はロズベルグと中嶋選手のレギュラー・ドライバー2名がテストを担当する。
■レッドブル、初日はマーク・ウェバーのみ
レッドブルは、前回のカタルニア冬季テストにはチャリティー・スポーツ活動の運営と参加のために参加できなかったレギュラー・ドライバーのマーク・ウェバーの1名が初日のテストを担当しているが、2日目以降はデビッド・クルサードがこれに合流し、レギュラー・ドライバー2名が揃ってテストを継続する模様だ。
■BMWザウバーはハイドフェルドと2名のテストドライバー
BMWザウバーはレギュラー・ドライバーのニック・ハイドフェルドと、スペイン人のGP2ドライバーであり2005年はスペインF3のランキング3位だったハビエル・ビラ(写真上の右側)、ならびに2007年のイギリスF3チャンピオンであるエストニア人のマルコ・アスマー(写真上の左側)の3名が初日のテストを担当している。
なお、2日目以降はレギュラー・ドライバーのロバート・クビサもテストに参加し、ハイドフェルドとクビサの2名がテストを継続する予定。
■トロ・ロッソは今回も初日からレギュラー2名
トロ・ロッソは、前回のカタルニアに引き続き2008年のレギュラー・ドライバーであるセバスチャン・ベッテルとセバスチャン・ボーテの2名がテストを初日から担当している。
■ホンダの初日はバトンとコンウェイ、バリチェロは2日目から参加
ホンダはレギュラー・ドライバーのジェンソン・バトンと、前回のカタルニア冬季テストにも参加していた2006年のイギリスF3チャンピオンであり、現在はGP2ドライバーのマイク・コンウェイ(写真右)が、ヘレスでの1日目のテストを行っている。
なお2日目はバトンに代わりルーベンス・バリチェロと、コンウェイと同じく前回のカタルニアに参加していたGP2ドライバーのアンドレアス・ツバーの2名がテストを引き継ぐ予定だ。また、3日目はGP2ドライバーのルカ・フィリッピが新たに参加し、ツバーからテスト車両を引き継ぐ。
■トヨタは2008年の新レギュラーと新テストドライバーを起用
トヨタは、2007年のGP2シリーズ・チャンピオンであり、2008年の正ドライバーに決定したドイツ人ドライバーのティモ・グロックと、2008年の第3ドライバーに決定した小林可夢偉選手の2名が初日のテストを担当しており、2日目もメンバーチェンジはなくこの2名がテストを担当する。
■スーパーアグリはテストドライバーのロシター1名
スーパーアグリは、初日のテストは2007年のテスト・ドライバーであるジェームズ・ロシターの1名が担当しており、今回のヘレスからテスト参加予定と公表されている佐藤琢磨選手の姿はなかった。
■フォース・インディアの初日はフィジケラとモンタニー
フォース・インディアの1日目のテストは、ルノーの2007年のレギュラー・ドライバーだったジャンカルロ・フィジケラと、2007年シーズン中はトヨタのテスト・ドライバーだったフランク・モンタニーの2名が担当している。
2日目はモンタニーに代わりホンダの2007年のテストドライバーだったクリスチャン・クリエンが作業を引き継ぎ、フィジケラとクリエンの2名がテストを担当する予定だ。
なお、チームのピット内には初日から2007年を限りにトヨタを離れたラルフ・シューマッハが姿を現しており、3日目以降はラルフもテスト走行に参加する可能性が高い。
■ヘレス冬季テスト初日のタイムと順位
以下に、11月4日に行われたヘレス冬季テスト初日のタイムを、各ドライバーの自己ベスト順に示す。この日は朝から晴天に恵まれ、冬の肌寒い中ではあるもの気温は7度から19度、路面温度は8度から24度にまで上昇している。路面状況はやや荒く、タイヤの消耗は激しかった様子だ。
また、レッドフラッグは多くの回数提示されており、各チームは何度も作業を中断させられているが、特に大きな事故や怪我人は発生しなかった。
1) ニック・ハイドフェルド GER BMWザウバー 1分19秒042(78周)
2) ジェンソン・バトン GBR ホンダ 1分19秒155(69周)
3) ペドロ・デ・ラ・ロサ ESP マクラーレン・メルセデス 1分19秒712(48周)
4) キミ・ライコネン FIN フェラーリ 1分20分063(78周)
5) ネルソン・ピケJr BRA ルノー 1分20秒366(67周)
6) セバスチャン・ボーデ FRA トロ・ロッソ 1分20秒615(101周)
7) ゲイリー・パフェット GBR マクラーレン・メルセデス 1分20秒638(50周)
8) マーク・ウェバー AUS レッドブル 1分20秒682(69周)
9) マルク・ジェネ ESP フェラーリ 1分20分832(67周)
10) マイク・コンウェイ GBR ホンダ 1分20秒927(88周)
11) セバスチャン・ベッテル GER トロ・ロッソ 1分21秒060(46周)
12) ジェームズ・ロシター GBR スーパーアグリF1 1分21秒246(75周)
13) ティモ・グロック GER トヨタ 1分21秒336(69周)
14) ジャンカルロ・フィジケラ ITA フォース・インディア 1分21秒424(53周)
15) ニコ・ヒュルケンベルグ GER ウィリアムズ 1分21秒551(28周)
16) フランク・モンタニー FRA フォース・インディア 1分21秒559(65周)
17) 中嶋一貴 JPN ウィリアムズ 1分21秒566(33周)
18) マルコ・アスマー EST BMWザウバー 1分21秒962(53周)
19) 小林可夢偉 JPN トヨタ 1分22秒196(114周)
20) ハビエル・ビラ ESP BMWザウバー 1分22秒503(57周)
冒頭にて述べた通り、ヘレスではスリック・タイヤの使用が最後に許された年である1997年以降はグランプリが開催されていないため、最新のタイムと比較すべきサーキット・レコードは存在しない。
ちなみに、1分19秒フラットに近いトップタイムを記録したBMWザウバーのニック・ハイドフェルドと、トヨタのジェンソン・バトンは自己ベスト記録時には2009年仕様のスリック・タイヤを装着していた。また、フォース・インディアのジャンカルロ・フィジケラを含む他の何人かもスリック・タイヤを1日目に装着している。
■各チームの概況
以下に、ヘレス初日のテスト内容を公表している各チームの1日目の概況やコメントなどを紹介する。
■1日目のトップタイムはBMWザウバー
この初日から3日間のテストを予定しているBMWザウバーは、レギュラー・ドライバーのニック・ハイドフェルドが2009年型スリック・タイヤで1分19秒フラットに近いトップタイムを叩き出し、幸先の良いテスト1日目を終えている。
■ハイドフェルドが2009年型スリックタイヤでベストタイム
ハイドフェルドは2008年シーズンに向けての準備作業として、トラクション・コントロールのないマシンで終日走り込み、最後には再来年となる2009年のタイヤ・レギュレーションに向けてブリヂストンが用意したスリック・タイヤを装着した様子だ。
■この日は2名のテストドライバーの評価も
また、チームは1日目に2名のテストドライバーを評価する事にも使用しており、午前中はGP2シリーズのスペイン人ドライバーであるハビエル・ビラ、午後には2007年のイギリスF3チャンピオンのマルコ・アスマーの2名が、同じ車両を使用してテストに参加した。
20歳のビラは今回のテストがF1初体験であり、ヘレス・サーキットはF3時代にレースで経験している。アスマーは以前にもF1テストに参加した経験はあるが、ヘレスを走るのは今回が初めてだった。2名は大きなトラブルを抱える事なく順調にテストを終えており、ビラは20番手、アスマーは18番手タイムを記録している。
■ホンダは2番手タイム
4日間のテスト参加を予定しているホンダは、長丁場となるテスト1日目を、2009年型スリックタイヤを履いたジェンソン・バトンの2番手タイムで好調に終えている。1日目のテストに参加したGP2ドライバーのマイク・コンウェイは10番手タイムだった。
■バトンも2009年型スリックタイヤでベストタイム
バトンは2008年標準のECUを搭載したトラクション・コントロールのない2007年型マシンで走り込み、2008年シーズンに向けてのセッティング調整に集中。一方コンウェイは今回も前回のカタルニアに引き続きF1マシンのセッティングに関する理解を深める事を目的とした作業を行い、午後はロングランを実施した後に2009年型スリックタイヤを装着しての走行も行っている。
なお、バトンとコンウェイは初日のみでテストを終え、2日目はレギュラー・ドライバーのルーベンス・バリチェロと、GP2ドライバーのアンドレアス・ツバーの2名がテストを引き継ぐ。
■2008年型タイヤでのトップタイムはマクラーレン
マクラーレンは、前回のカタルニアで3日間のテストを担当したテスト・ドライバーのペドロ・デ・ラ・ロサとゲイリー・パフェットの2名がテストを担当し、デ・ラ・ロサが2008年仕様のタイヤではトップとなる3番手タイム、パフェットが7番手タイムを記録している。
この日のテストで2名は異なるシャシーのマシンで走行しており、1台は空力改善に向けてのテスト、もう1台は新型シャシーの開発用に使用されているという。なお、2名はセッションの途中で車両を交換しながら作業を行っている。
■ルイス・ハミルトンは2日目から参加
2日目はパフェットに代わりレギュラー・ドライバーのルイス・ハミルトンがテストに参加する予定だ。
■フェラーリのピットにライコネンが復帰
フェラーリは今年の年間タイトルが決まって初のテスト参加となるレギュラー・ドライバーのキミ・ライコネンと、2007年のテスト・ドライバーのマルク・ジェネが、2008年型標準ECUを中心としたテスト作業を行っている。ライコネンは2008年仕様のブリヂストンタイヤでこの日の4番手タイム、ジェネは9番手タイムを記録した。
■ジェネ「来期に向けて今回の準備作業は重要」
マルク・ジェネは、今回のテストについて以下の通りコメントしている。
「来期は非常に競争の激しいシーズンになるでしょうから、今回のテストはチームにとって非常に重要なものになります。今年は非常にうまくいきましたから、来年も今の勢いをそのまま維持する必要がありますからね」とジェネ。
■ルノーはピケJrの1名が走行
ルノーは今回のテストに、カタルニアでのコバライネンに続いて、2007年のテスト・ドライバーであるネルソン・ピケJrを起用している。
ルノーのテストを1名でこなすピケJrは、1日目はトラクション・コントロールのないマシンに順応する事を目的に2008年の標準ECUを搭載したR27で走り込み、残り数日間の作業のベースとなる基本セッティングを行ったという。ピケJrのこの日の順位は5番手だった。
■ピケJr「3日間を担当できて嬉しい」
順調に初日の作業をこなす事ができたというピケJrは、3日間を通してテストを担当できる事が嬉しいと以下の通りコメントしている。
「今日からまた作業に復帰できて嬉しいです。特に今回は3日間を通してテストを終日担当できますからね」とピケJr。
「車は乗りやすいですよ。ドライバー支援機能がなくても走っていて感触はすごくいいです。今日はいいセッティングも見つけましたから、明日はさらに進展が得られると思います」
■シルク「励みになる1日目だった」
また、ルノーのチーフ・テスト・エンジニアを務めるクリスチャン・シルクは、1日目は予定通りにセッティングが進み、極めて順調だったとコメントしている。
「今日の目標はネルソンがマシンを快適に操れるようにする事でしたが、作業は非常に順調でした」とシルク。
「今週のテスト中に使用するベース・セッティングを見つける上で、今日の彼は非常にいい仕事をこなしてくれたと思いますし、目標通りセッティングは進みました」
「もっと多くの周回数を走り込みたいところでしたが、それでも今日はとにかく励みになる1日でしたね。残りの2日間を使ってさらに走行距離を伸ばす事に集中し、全てのテストメニューを無事に終えたいと思っています」
■トロ・ロッソは初日に1台がテクニカル・トラブル
トロ・ロッソは前回のカタルニアと同様に、今回のヘレス冬季テストにも2008年のレギュラー・ドライバーであるセバスチャン・ベッテルとセバスチャン・ボーデの2名を初日から起用している。ボーデの順位は6番手、ベッテルの順位は11番手だった。
■ベッテルがメカニカル・トラブルにより作業を中断
この日にベッテルは2008年型の標準ECUを搭載した2007年型マシンで走行し、ギアボックスとエンジン制御システムまわりの開発作業に集中したが、途中でテクニカル・トラブルに見舞われており、あまり多くの周回数を走り込む事はできていない。辛うじて、新しいエンジン・ブレーキ・システムの評価を終える事はできた様子だ。
一方、ボーデは2007年型パッケージをそのまま使用し、ドライバー支援機能のほとんどをオフにして走行している。この日のボーデはトラブルのない順調な1日を過ごしており、周回数はトヨタの小林可夢偉選手の114周に次ぐ2番目の101周だった。ボーデは精力的に周回数を増やす中で、フロント・ウイングの比較検証と新型フロント・サスペンションの評価をカタルニアに引き続き行っている。
■レッドブル、タスマニアから戻ったウェバー
この日、レッドブルはレギュラー・ドライバーのマーク・ウェバーの1名のみがテスト走行を行っている。デビッド・クルサードのみが参加していた前回のカタルニアでのテスト期間中、ウェバーは自身が主催する慈善スポーツ・イベントの「マーク・ウェバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」の準備でタスマニアの峠を自転車で駆け上がったり、川をカヌーで下ったりと大忙しだったため、彼にとっては今回のヘレスが2008年に向けての初の走行テストとなった。
初日のウェバーは新型ECUの評価と理解に努め、トラクション・コントロールがないマシンで75周回を走行し、この日の12番手タイムを記録している。また、同時にウェバーは2009年型のスリックタイヤも午後には試しており、スリックタイヤの特性に合う機械部品とエアロパーツのセッティング調整も行った様子だ。
■クルサードは2日目からテストに参加
2日目以降はデビッド・クルサードもこのテストに加わり、レギュラー・ドライバーの2名が引き続き残り3日間の作業を続ける予定だ。
■新人2名を迎えたトヨタ
初日のトヨタのテストは、2008年のレギュラー・ドライバーに正式決定したドイツ人の2007年GP2シリーズ・チャンピオンであるティモ・グロックと、同じく2008年の第3ドライバーに正式決定した小林可夢偉選手の2名が担当している。グロックのこの日の順位は13番手、小林選手は19番手だった。なお、グロックはBMWザウバーのテスト・ドライバー契約が年内は残っているが、今回のテストはトヨタがBMWザウバーからの承諾を得ての起用だ。
2名の車両はどちらも2007年型車両であるTF107だが、小林選手の車両にはリアまわりの新型パーツを含む2008年シーズンを見越した改良型のパーツがいくつか搭載されている。また、グロックの車両には電子制御部品に2008年仕様の新型ECUが搭載されており、2名はどちらもトラクション・コントロールないマシンでF1ドライバーとしての初日の走行を終えた。
グロックと小林選手は、この日は午前のセッション開始と同時にコースに飛び出した後、優れた適応能力を見せながらマシンの特性を素速く理解し、すぐに基本セッティングに変更を加えている。
■小林選手「気分は今日から着任」
初日のトヨタは一切トラブルに見舞われる事なく順調にテストを進めており、小林選手はこの日の最多周回となる114ラップをこなして、1日目から多くのデータをチームに提供する事ができたようだ。
「またF1の車両に乗れて本当に嬉しいです」と小林選手。
「正式には1月になるまでは第3ドライバーではありませんが、すでに自分の任務は今日から始まったって気分です。車についても多くを学ぶ事ができました。午後にはさらにセッティング作業に集中できてパーツ開発についての理解も深まりましたし、進展もいくつか得られています」
「チームとは楽しく作業を進められています。来年から正式な第3ドライバーを務める上で、今回のテストは自分にとって素晴らしい経験になりますね。また明日も車に乗れるのが待ち遠しいです」
■バセロン「グロックは期待通りのドライバー」
トヨタのシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーを務めるパスカル・バセロンは、2008年からレギュラー・ドライバーとなるグロックが期待通りの走りを1日目から見せた事に満足して以下の通り語った。
「今日は2名の新しいドライバーを同時に迎える事になりましたので、非常に興味深い1日でしたね」とバセロン。
「ティモ(グロック)がトヨタの車を経験できて大変に嬉しく思いますし、最初から強烈な印象を私たちに残しました。彼は高い集中力を発揮して理解を深めながら、セッティングにいくつか改善を進めています。また予想通り、彼の仕事の進め方は大変に素晴らしく、非常に役立つ正確な情報を私たちに提供してくれています」
「今日、ティモはドライバー支援機能のない車で走りましたが、特に何も問題は発生していません。彼が経験してきたGP2の世界にトラクション・コントロールはありませんから、彼にとっては当然の事かもしれませんね」
「可夢偉の事は昨年の冬季テストの時から知っています。まだF1の経験は少ない若いドライバーですから、再びF1の車両に順応しながら慣れていく必要はありますが、今日はミスの全くない素晴らしい仕事ぶりでした。今日は新しい電子制御とリアまわりの新型パーツに関してデータを提供してくれています」
■フォース・インディア、マシントラブルの多い初日
この日に組織編成を発表し、2008年シーズンに向けての高い期待と意気込みを示したフォース・インディアは、1日目のテストに2007年はルノーのレギュラー・ドライバーだったジャンカルロ・フィジケラと、2007年のトヨタのテスト・ドライバーだったフランク・モンタニーを起用している。ちなみにモンタニーは前回のヘレス冬季テストではトヨタの車両で最終日の3番手タイムを記録していた。
初日の2名は揃って2008年型シャシーの開発を中心とした作業を行い、そのセッティングを調整する中で、前回のカタルニアに引き続き2008年型標準ECUのテストも実施しながら、トラクション・コントロールのないマシンで周回を重ねている。また、午後にフィジケラは2009年型のスリックタイヤのテストもブリヂストンのために実施したようだ。
この日は2名が揃ってスピンを経験し、他にもメカニカル・トラブルが数回発生するなど、若干テストの時間をロスしているが、全体的には今後に期待が持てる内容だったとして、チームは1日目の内容に満足している様子だ。
■ラルフ・シューマッハも3日目以降に走行?
なお、2日目はモンタニーに代わり2007年のホンダのテスト・ドライバーだったクリスチャン・クリエンがフィジケラと共にテストを担当する予定だが、3日目以降は今年までトヨタのレギュラー・ドライバーを務めたラルフ・シューマッハもフォース・インディアのマシンでテスト走行を行いそうな雰囲気だ。
■フィジケラ「2ヶ月ぶりに仕事に戻れた」
ルノーで今年の最終戦を終えてから2ヶ月ぶりにF1マシンに乗れて嬉しいと述べるジャンカルロ・フィジケラは、久しぶりのサーキット走行である事を思えばこの日の内容にはほぼ満足できるとコメントした。
「ブラジルでの最後のレースから数えて仕事に戻ったのはほぼ2ヶ月ぶりになります。しかも初めて経験する車両とエンジン、おまけに当然電子制御システムも今回からありませんが、それらを考慮すれば今日の内容にはすごく満足できますね」とフィジケラ。
「今日はマシンにいくつか問題を抱えていたので、あまり多くは走り込めませんでした。新しいタイヤは油圧システムの稼働時に問題があったのに、スリック・タイヤを試した時にはデフに問題が発生しなかったので、タイヤが正常に機能した場合のイメージがうまくつかめていません」
「ただ、それでもいい1日だったとは思いますし、明日の作業に向けていい基本セッティングを見つける事ができました」
■モンタニー「トラブルには邪魔されたが有意義な1日」
初日のみのテスト参加となったフランク・モンタニーは、この日は路面状況に若干苦労したものの、チームとは順調に作業を進める事ができたと述べている。
「良好な1日でした」とモンタニー。
「今回は新しいタイヤを試した時に少しだけ不運に見舞われました。新しいタイヤは2セット用意していたんですが、最初のを試した時にマシンがとまってしまい、もう一方を試している時にはレッド・フラッグが提示されたんです」
「でも、今日は楽しく働けましたし、チームともうまく作業ができたと思います。みんながどういう風に働くのか非常に興味がありましたし、その中で一緒にうまく仕事を進める事ができました」
「残念だったのは路面が非常にタイヤに辛い状況だった事です。タイヤの消耗が激しく、そのせいで思い通りのセッティング作業を進める事ができませんでした。ただ、その中でも非常に楽しむ事はできましたし、チームもいい情報が得られたと思っています」
「この機会を与えてくださったチームの方々に感謝しています」
■ガスコイン「経験豊かな2名のドライバーとの価値あるテスト」
フォース・インディアのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるマイク・ガスコインは、この日はメカニカル・トラブルが発生するなど少し大変な1日だったが、経験豊かな2名のドライバーとの作業は非常に価値のあるものだったと語る。
「今日は少し残念なテスト内容でした。レッドフラッグが何度も提示されたりマシンに小さなメカニカル・トラブルが数回発生したせいで、予定していた全ての作業を終える事ができていません。ただ、2名のドライバーのおかげで今後に使える有益な情報を収集する事はできています」とガスコイン。
「ジャンカルロは基本的なセッティング作業を行い、その後は電子制御システムまわりの開発にも着手し、最後は2009年型タイヤで簡単に走り込んで私たちに良い情報を提供してくれています。フランクも電子制御まわりの開発作業を行い、セッティングの調整ならびにダンパーまわりの作業を行う中で、ジャンカルロと同様に非常に有益な情報を提供してくれました」
「他の車両を多く経験してきた2名のプロフェッショナルなドライバーが提供してくれる情報は、繰り返しになりますが私たちにとっては大変に価値のあるものです」
■ウィリアムズ、初日は中嶋選手が走行
初日のウィリアムズのテストには、2008年シーズンには同チームのレギュラー・ドライバーとして参戦する中嶋一貴選手と、2007年のユーロF3シリーズで年間ランキング3位を獲得したニコ・ヒュルケンベルグの2名が参加している。中嶋選手は初日の17番手、ヒュルケンベルグはF1初体験のこの日に15番手タイムを記録した。
なお、2008年もウィリアムズのレギュラー・ドライバーを務めるニコ・ロズベルグは、2日目からテストに参加する予定だ。
■スタンフォード「3日目以降はレギュラー2名が揃って参加」
ウィリアムズのテスト・チーム・マネージャーを務めるディッキー・スタンフォードは、1日目のテストを終えて以下の通りコメントしている。
「4日間のテスト初日を中嶋一貴とニコ・ギュルケンベルグの2名のドライバーと共に迎えました。一貴は2007年のテストメニューの最後の仕上げを行い、ニコ(ヒュルケンベルグ)は彼にとって初めてのF1車両でのテストを私たちのチームに加わり実施しています」とスタンフォード。
「ニコは彼のF1デビューにおいて着実に良いデータを提供してくれていますので、明日もこのまま作業をニコ・ロズベルグと一緒に継続する予定です。明後日以降は一貴とニコ・ロズベルグの2名が揃い、残り2日間のテストメニューを担当する事になります」
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