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2009年2月5日
先のバレンティーノ・ロッシのインタビューに続き、ここではそのチームメイトとしてMotoGPクラスの２年目に挑むホルヘ・ロレンソの、2009年シーズンに向けてのキックオフ・イベントにおいてフィアット・ヤマハ・チームが2月2日に公開したインタビュー全文を紹介する。
■ロレンソインタビュー、全ての環境を一新して挑む2009年シーズン
昨年のルーキー・イヤーは開幕戦からの３連続ポールポジションを獲得し、最高峰クラス３戦目にしてポール・トゥ・ウインを達成するという歴史的偉業を成し遂げたものの、その後は転倒と怪我が相継ぎ深い挫折感を味わう事になったホルヘ・ロレンソは、今年の2009年シーズンに向けては過去11年間彼のマネージャーを務めた親友でもあるダニ・アマトリアンのもとを離れ、バイクナンバーも慣れ親しんだ48番から99番に一新、過去と完全に決別する形で新たな戦いに挑む決意だという。
●ホルヘ、冬休みはいかがだったでしょう。どのようにして時間を過ごされましたか。
年末にはマジョルカ島（スペイン領にある地中海西部の島）に行ってきました。姉や母などの家族を訪ねて、ほとんど１週間くらいはそこにいましたね。友人たちとも楽しく過ごし、少しですが休息の気分を味わいました。
去年は本当に大変な一年でしたからね。次から次へとレースの連続でしたし、ものすごいストレスでしたから、短時間でもリラックスしながらレースの世界と離れて過ごす事ができてとても良かったと思います。
年明け以降はバルセロナに滞在し、オートバイに乗ったりジムに通ったりしながら、多くのトレーニングに明け暮れました。
●あなたが2008年度中に負った怪我は完治したのでしょうか。身体のどの部分も100％元通りになったと言える状況ですか。
まだですね。特に左の足首の動きが少し悪いので、100％完璧とは言えません。ただ、少しずつですが回復には向かっていますよ。
何回か転倒してからもう多くの月日が経過しましたし、幸運にも巡り会えた専門家たちのおかげで問題のあった前腕部と足首の状況は徐々に良くなってきていますので、仮にシーズン開幕時に回復が100％にまで到達しなくても、95％か97％まではいけると思います。
●かなりの時間が経過した今になって振り返ると、2008年はあなたにとってどんなシーズンだったと言えますか。多くのポールポジション、表彰台、初勝利などを記録しましたが、それと同時に何回かのクラッシュで大きな怪我も経験しましたね・・・。
そうですね、MotoGPクラスでの初年度ですから本当に『特別』なシーズンでした。また、自分に色んな事が起きたという別の意味でも『特別』だったと言えます。良い出来事と悪い出来事の両方に遭遇しましたから、経験値の面では本当に実りの多いシーズンでしたし、きっと将来的に役立つ内容だったと思います。
ただし、浮き沈みがとんでもなく激しい変な１年だったとももちろん思いますよ。以前の自分はあまり転ばないライダーだった筈なのに、去年は転倒の回数が多すぎました。またその反面、複数回のポールポジションや表彰台、それに特にエストリルでの初勝利など、最高の瞬間も数多く経験しましたからね。
●もし仮にもう１回ルーキーイヤーを経験できるとしたら、もう少し違う戦い方をしますか。
いいえ。自分は過去の事をくよくよ考えない人間です。それに、自分の人生の中でも本当に幸運な１年だったと思っていますよ。怪我の事は除きますけどね。確かに挫折は経験しましたが、ここまで本当に運の良い人生を歩んでいるという自覚がありますから、過去の事を後悔したりはしません。
●2009年シーズンに期待する事と目標を教えてください。また、新シーズンの開幕直後から年間タイトルを狙っていく自信はありますか。
それは難しいですよ。いや、本当に難しいと思います。だって第１に、自分にはまだMotoGPクラスのタイトル争いをした経験がありませんし、他のライダーたちにはそういった豊富な経験がある訳ですからね。
何よりも自分のピットの隣には偉大なチャンピオン、絶好調のバレンティーノ・ロッシがいるんですよ。普通に考えて、彼がまたチャンピオン候補です。また、何も理由はそれだけではありません。今は３名ものライダーが自分よりも年間タイトルに近い立場にあるんです。
ですから、今の自分にとって最も重要な事は、毎年のシーズンを通して少しずつ自分の目標に近づけるよう、もっと速く走れるように頑張り、多くを学んでいく事です。いずれにしても、自分が今年のタイトル候補だとは思っていません。
●今年はさらにプレッシャーを大きく感じたり、まわりの期待が大きすぎて不安になる事などはありませんか。
多くの人たちはペドロサやストーナー、それにバレンティーノに対しては高い期待を抱いていると思いますよ。ただ・・・そうですね、去年は開幕直後の自分の成績がとても高かった事は認めます。初年度の３レース目で初優勝を飾りましたしね。
去年の開幕直後は本当にいいスタートが切れていましたが、だからと言って毎年同じ事が繰り返されるとは限りませんし、シーズン開幕時の状況が毎年自分にとって同じだという事もあり得ません。毎年状況は異なりますし、変わっていくものです。
一例をあげれば、今年は新しいルールがいくつか導入されますよね。その事からも、状況は変わってくる筈です。
今は真剣に、いつか世界チャンピオンになるための努力をするだけです。それが自分の目標ですからね。それがいつになるのか、来年なのか、２年後なのか、または５年かかるのかは分かりませんが、この目標が変わる事はありません。
●あなたはまだ完全な形の2009年型プロトタイプで走る機会には恵まれていないと思いますが、次回のセパンでは乗る事になりますか。その場合、新しいバイクには何を期待していますか。
前回のヘレスでは2009年型プロトタイプを少し試しましたよ。完全な形じゃなかったのは新型エンジンが搭載されていなかった部分だけですが、今回のセパンではそれも試す事になります。
ハンドリング面とシャシー性能に関して言えば、以前のバイクよりも安定性が高いように感じました。他の言い方をすれば、フロントの挙動が少し落ち着いた感じですね。コーナー脱出時にウイリーするような傾向も抑えられています。
ただ、いずれにしても、まだ自分が新型エンジンを試していないのは事実です。まわりによれば、そこが今年のマシンの最大の変更点になるようですが。
●ピットガレージ内のパーティションは今もあるようですが、これはあなたが希望した事ですか。どうしてそのままにしようと思ったのでしょう。
うーん、それはヤマハが決定した事ですし、それについて自分が申し上げるような事はあまりありませんが、今現在において何も障害が生じていない以上、パーティションが残っても特に問題はないと思います。ですから、今後もチーム内は引き続き２つに仕切られますよ！
●あなたとバレンティーノを除外して考えた場合、2009年度における最も有力なタイトル候補は誰だとお考えですか。
さあ・・・スポーツの世界では、その中でも特にバイクレースの世界は何が起こるか全く先の予測ができません。毎年想定外のライダーが必死に勝利を狙ってきて、みんなを驚かせますからね。
ですから、自分としてはあまりそういったチャンピオン予想の議論には加わりたくないと思っています。ただ、どうしても３名の『候補』を選べと言うなら、自分が選ぶのはバレンティーノ、ストーナー、それにペドロサという昨年のトップ３ライダーです。
●カワサキの離脱など、MotoGP業界の危機についてはどう感じていますか。グリッド上に並ぶバイクの台数が懸念されますが、今後その台数を増やしていくには何を変えていくべきだと思いますか。
そうですね、今の世界が国際的な経済危機に陥っている事は明白ですし、それがバイクレース業界にも悪影響を及ぼしているのは間違いありません。同様に、規模的には目立たないにしても、他のスポーツ業界にも似たような状況が生まれています。
いずれにしても、今の自分たちは難しい時期に直面している事を認識しています。ただ、幸いながら個人的にはとてもいい時間を過ごしていますよ。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得しましたし、おかげでスポンサーにも恵まれ、自分としては悪くない状況ですからね。
ただ、自分が不安に思っている唯一の点をあげると、ドルナはここまで大変にうまくやってきたと思ってはいますが、それでも、バイクレースは最高に面白いスポーツな訳ですから、この世界がより幅広い層に受け入れられるよう、あともう少し広報活動にも力を入れていく必要性はあると思っています。
●ここまでの２回のテストを経験しての、あなたのブリヂストンタイヤに対する見解を聞かせて下さい。実際に使用してみて気に入りましたか。また、それに適応していくのは簡単に思えたでしょうか。
ものすごく気に入りましたよ。特にフロントタイヤですが、ブリヂストンのここ何年間もの努力の成果はすごいと思いました。ファクトリーとしての執念により、彼らは業界の巨人だったミシュランを最終的には撤退させるに至った訳ですからね。ただ、ミシュランが仮に残っていた場合、その後どういう状況になっていたのかは自分には分かりませんが。
ブリヂストンに関して間違いないのは、すばらしい会社である事と、今の世界選手権の主導権を握っているのは彼らであるという事です。他のライダーたちのタイヤへの感触を聞く限り、また、自分も同じ事を言いましたが、ブレーキング時の挙動が特に素晴らしいです。どこまでもブレーキを遅らせる事ができる感じですね。
●新しいシングルタイヤ・ルールについてのあなたの意見を聞かせてください。レースの醍醐味は増すと思いますか、それとも逆でしょうか。
そうですね・・・これが理想的な解決策だったとは到底思えません。なぜなら、世界選手権にはより多くの企業が争いに参加できる方が良いに決まっているからです。ですが現実的に言えば、あのままではシーズンを通して安定的に戦いの条件を同レベルに保つ事は不可能でした。レースの度に多くの異なる意見が飛び交いましたよね。時にはミシュランが強く、時にはブリヂストンの方が強かったり・・・そして結果的にブリヂストンが優位に立つ傾向が強くなりました。
そのため、自分の意見も同じでしたが、ドルナは解決策のうち、無駄な費用を削減する事にも合わせて、タイヤメーカーを１社に絞るという１つの選択肢しか見えなくなったんです。
●バイクナンバーを新しくしましたね。どうして48番をやめて99番を選んだのか、その理由を教えて頂けませんか。
昨年の9月末に、過去の自分と決別して新しい自分に生まれ変わったつもりなんです。そんな時にはナンバーを新しくした方がいいとは思いませんか。
48番には多くの思い入れがあるので、少し残念な気分はしますよ。このナンバーをバイクの正面につけて大きな実績をこれまでに築きながら、共に素晴らしい瞬間を何度も経験してきましたからね。
ですが、先にも述べた通り、今が新しいページを開始する時なんです。ここからの実績は新しい99番と共に築いていきます。
●あなたは今回マネージメント組織も一新しましたね。彼らとの仕事にはどんな印象をお持ちでしょう。満足していますか。また、その新組織のおかげでレースに集中しやすくなるとお考えですか。
今の時点では自分のまわりの人たちにとても満足しています。人が入れ替わったりした場合、新しく来た人たちは必ず前任者の時代よりも状況を改善する努力をするものですからね。もちろん、常にそれが正しい結果につながるとは限りませんが、自分のいる状況がより良くなって満足のいくレースができるように、今回は根本からまわりの環境を変更しました。
いずれにしても、今はレースからも彼らからも離れて、自分の時間を本当に楽しく過ごしています。サッカーをしたり、格闘技のレッスンを受けにいったり・・・以前にはできなかった多くの事に挑戦していますから、それで余分に楽しく感じているのかもしれませんね。これらはサーキットでも良い結果に反映される筈です。
ただ、最初のレースをしてみない事には、まだ確証は持てませんよ。
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