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2008年10月31日
2008年MotoGPシーズンの最終戦が行われたスペインのリカルド・トルモ・サーキットにて、その翌日の月曜日である10月27日から、新シーズンに向けての最初の冬季テストとなるバレンシア合同テストが、最終戦の終了から24時間を待たずして2009年度新体制となったMotoGPクラスの各チームにより2日間の日程で行われた。
11月3日追記)各シーズン終了毎に全メーカーのMotoGPマシンを豊富な写真と技術解説により紹介するモーターマガジン社のムック「Racingオートバイ」の08年版編集局のご好意により、テスト初日の以下の写真を本記事の各チーム概況内に追加(写真をクリックして記事内に移動)。
左)タイトル獲得記念のヘルメットをかぶり、カーボンむき出しの2009年仕様プロトタイプYZR-M1に乗るバレンティーノ・ロッシ
中央)2008年型YZR-M1ベースのテスト専用マシンに乗るホルヘ・ロレンソ
右)リズラ・スズキのテストをアシストするスズキ開発ライダーの青木宣篤選手
ここでは、ヤマハTECH3を除くMotoGPクラスの新生チームの全てが集結したバレンシア合同テスト2日間の各チームの作業状況と、今回の合同テストに参加した2009年シーズンのMotoGPクラス全レギュラーライダーの概況やテスト中のコメントなどを紹介する。
■全チームが新体制となったバレンシア合同テスト、TECH3を除く10チームが参加
10月27日から2日間の日程で行われたバレンシア合同テストには、2009年シーズンのMotoGPクラスへのフル参戦を表明している全11チームのうち、11月下旬からの活動開始を表明して今回のテストを見送ったヤマハTECH3を除く全10チームが参加し、そのレギュラーライダーである17名にカワサキのテスト・ライダーであるオリビエ・ジャックを加えた全18名が走行している。
また、今回のリズラ・スズキのピットには、10月23日のマレーシアGPにスポット参戦も果たしたスズキの開発ライダーである青木宣篤選手も加わっており、レギュラー・ライダー2名に対し、自らがシェイクダウンを行ったばかりの2009年型GSV-Rと新型パーツの評価テストをアシストした。
■各チームの2009年度体制、中野選手はSBKアプリリア・ワークス入りが決定
MotoGPクラス各チームの2009年度新体制と、2008年シーズンを戦った各ライダーの去就のまとめなどはこちらの記事を参照の事。なお、その後に判明した情報としては、10月30日にSBKアプリリア・ワークスが、2008年シーズン中はサンカルロ・ホンダ・グレッシーニに所属していた中野真矢選手が同チームと契約した事を発表しており、中野選手は2009年からマックス・ビアッジのチームメイトとしてアプリリアからSBKにフル参戦を開始する事が判明している。
■初日は18名のライダー全員が走行、2日目は7名のみがレインタイヤで走行
テスト初日の10月27日(月)は晴天に恵まれ、18名のライダー全員が午前11時頃から夕方のセッション終了までスリック・タイヤでの走行を続けたが、2日目には朝から断続的に降り続いた小雨により路面状況が不安定になった事からほとんどのライダーが走行をキャンセルし、まとまった雨が降った午後3時30過ぎに入りようやく7名のライダーのみがレインタイヤでの走行を行っている。
晴天のドライ・コンディションとなったバレンシア合同テスト1日目の走行結果と、不安定な天候と低温のウェット路面でのリスクを避けてほとんどのライダーが走行をキャンセルした2日目の走行結果はそれぞれ以下に示す通り。
●合同テスト1日目(10月27日)の走行結果
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分32秒464(54周)
2) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分32秒672(60周)
3) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分32秒921(40周)
4) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分33秒142(67周)
5) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分33秒325(75周)
6) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分33秒375(77周)
7) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分33秒550(46周)
8) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分33秒676(57周)
9) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分33秒760(74周)
10) マルコ・メランドリ ITA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分33秒782(75周)
11) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分33秒832(80周)
12) ニッキー・ヘイデン USA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分33秒960(79周)
13) トニ・エリアス SPA サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分34秒129(78周)
14) セテ・ジベルナウ SPA オンデ2000 デスモセディチ GP8 1分34秒451(52周)
15) ミカ・カリオ FIN アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分34秒793(60周)
16) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分34秒925(71周)
17) ニッコロ・カネパ ITA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分34秒995(62周)
18) 高橋裕紀 JPN スコット・ホンダ RC212V 1分35秒203(70周)
●合同テスト2日目(10月28日)の走行結果
1) ニッキー・ヘイデン USA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分48秒287(20周)
2) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分48秒296(18周)
3) マルコ・メランドリ ITA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分48秒786(26周)
4) ニッコロ・カネパ ITA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分49秒917(25周)
5) ミカ・カリオ FIN アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分50秒275(26周)
6) トニ・エリアス SPA サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分54秒057(22周)
7) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分57秒322(7周)
バレンシアのサーキットレコードは前回の最終戦レース中にケーシー・ストーナーが記録した1分32秒582、ベストラップレコード(予選タイヤ)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分31秒002。
■各チームの新型マシン持ち込み状況、レプソル・ホンダは2008年型ワークスマシン
各チームが今回のテストに持ち込んだ新マシンの状況だが、レプソル・ホンダはバレンシア最終戦の時とほぼ同じ2008年型RC212Vを使用。サテライトホンダ勢ではグレッシーニ・ホンダのみが2008年型サテライトマシンではなく、トニ・エリアスが2008年型ワークスRC212V、そのチームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは2009年型と見られるサテライト用新型マシンで走行している。
■グレッシーニを除くホンダ・サテライト勢は次回のヘレスから新マシン
その他のホンダ・サテライト勢には次回のヘレス合同テストから新型マシンが供給される予定となっており、基本的に今回のバレンシア合同テストでは2008年型サテライトマシンで走行している様子だ。
なお、今回からグレッシーニ・ホンダに復帰したトニ・エリアスのみ、サテライトチームのライダーでありながらレプソル・ホンダと同じくワークス仕様のマシンが2009年シーズンを通して供給される予定となっている。
■フィアット・ヤマハは2009年型プロトタイプをロッシに投入
フィアット・ヤマハはバレンティーノ・ロッシが2009年型YZR-M1の最新プロトタイプでの走行を行い、ホルヘ・ロレンソは2008年型マシンをベースとしたYZR-M1に2009年仕様の新型パーツを装着したテスト専用マシンで走行している。
■ドゥカティー・ワークスの2名は新型デスモセディチのGP9
ドゥカティー・ワークスはフレームにカーボンファイバーを用いたデスモセディチGP9を今回から投入しており、ドゥカティーのサテライト・チームであるアリーチェとオンデ2000は2008年度マシンのGP8で走行。
■スズキ、カワサキもそれぞれ最新仕様のマシンやエンジンを検証
リズラ・スズキは2009年型GSV-Rの最新プロトタイプを投入。カワサキ・レーシング・チームは仕様の異なる2種類のエンジンを投入し、ジョン・ホプキンスが交互にその比較検証を行った。
■シングル・タイヤ・ルール専用タイヤの試作品が今回初めて登場
今回のテストは、各チームの新型マシンやニューパーツもさる事ながら、2009年からのシングル・タイヤ・ルールに沿って開発されたブリヂストンの新型タイヤの評価が主な目的としてあげられる。
■意図的にグリップレベルを下げたスリックタイヤ
F1と並行してMotoGPでもシングル・タイヤ・サプライヤーとしての役割を2009年から担う事になったブリヂストンは、2008年シーズン中に安全面で問題視される事の多かったMotoGPマシンの速すぎるコーナリング速度の抑制と、2009年からタイヤ使用本数の制限がさらに厳しくなる場合の耐久性向上を狙い、ややグリップレベルを2008年シーズン中よりも下げたタイヤを今回持ち込んでいる。
■F1と同じ方向性?今回は本数を制限した2種類のコンパウンドのみ
なお、現在も中身が検討中とされているシングル・タイヤ・ルールの詳細はまだ明らかにはなっていないが、今回のバレンシア合同テストにブリヂストンは、シングル・タイヤ・ルール導入時のタイヤ本数制限を考慮し、1名のライダーに対し2種類のコンパウンドを持つ6セットのスリックタイヤと、1セットのレインタイヤのみ提供しており、この限られたタイヤ使用範囲内で各チームは今回のテストを実施した。
シングル・タイヤ・ルールがすでに施行されている現在のF1では、1回のレースウイーク中に2種類のコンパウンドのみ提供され、各ドライバーは必ず両方のコンパウンドを公式セッション内に決められた最低限の数だけ使用する事が義務付けられているが、今回のテスト状況を見る限りMotoGPにも同様のルールが適用される可能性がありそうだ。
■ブリヂストン生方マネージャー「新シーズンに不可欠となるタイヤの耐久性強化」
この2日間のテストを終えた後、ブリヂストンのモーターサイクルレースタイヤ開発マネージャーを務める生方透氏は、今回のバレンシア合同テストが2009年仕様のタイヤを開発していく上で非常に有意義なテストになったとして、以下の通りコメントしている。
「月曜日がドライ・コンディションになり、ここに持ち込んだ新しい仕様のスリックタイヤを初めて試す事ができて本当に嬉しく思います。タイヤサプライヤーが1社に限定されてから初のテストだった事を思えば、かなりいいスタートが切れたのではないかと考えています」と生方氏。
「今回使用した新型タイヤは2008年モデルをベースにしていますが、タイヤの役割範囲を広げ、さらには全てのチームとライダーにとって扱いやすいものにするするために、重要な変更を新たに加えてあります」
「この目的を達成するために全体的なグリップレベルは下げていますが、今回のライダーたちから得られた反応は、わたしたちにとって非常に励みになるものでした。月曜日の路面状況が非常に良かった事もあり、結果として得られたタイムも大変に素晴らしかったですしね」
「わたしたちにとって最も重要であり、新シーズンのタイヤに不可欠となるのが耐久性の確保ですが、1日目のテストでは何人かのライダーが40周回を1セットのタイヤで走り続け、非常に一貫したタイムを記録していましたので、今回はそれが特に素晴らしい事だったと感じています」
「残念ながら2日目の走行条件はあまり良くありませんでしたが、今回の1日目のセッションを通して収集したデータは、冬季シーズン中にタイヤ開発を進めるわたしたちにとっては大変に有益なものとなりました」
「この新しい環境は、唯一のタイヤメーカーとなったわたしたちにとっての新たな挑戦の場になりますが、仕事の準備はすでに整いつつありますので、今後は各チームやメーカー、ならびにライダーたちの信頼に応えられるだけの力を示せるよう、頑張りたいと思います」
■テスト中の怪我人はゼロ、右手首が痛むド・プニエは当初から1日のみの参加
今回の2日間のテスト中には、初日にホルヘ・ロレンソが軽い転倒を喫したものの本人に怪我は一切なく、他の転倒者も目立たなかったが、ホンダLCRのランディ・ド・プニエはシーズン中に負った右手首の怪我の痛みのために当初から初日のみのテスト参加を宣言していた。
■カリオと高橋選手のルーキー2名は軽い治療を受けながらの参加
なお、2009年シーズンの3名のルーキーのうち、アリーチェ・チームのミカ・カリオとスコット・ホンダの高橋裕紀選手の2名は、今回のテスト中はクリニカ・モバイルでの治療を受けながらのテスト作業となったようだ。
■カリオは最終戦の転倒時に負傷した薬指に痛み
クリニカ・モバイルの発表によれば、ミカ・カリオは日曜日のバレンシア最終戦の決勝レース中に転倒して負傷した左手の薬指に激しい痛みを訴えた事から、今回の2日間は痛み止めを服用し、指にはテーピングを施していた様子だ。
■高橋選手は肩甲骨の古傷に違和感
一方、高橋選手は右の肩甲骨にある古傷が痛んだ事から、テスト中はマッサージなどの治療を受けての走行だったようだ。ちなみに、2006年のケーシー・ストーナーの例もあるが、MotoGPルーキーが初年度にはMotoGPバイクのパワーの影響により治った筈の古傷に何らかの支障を訴えるケースは毎年少なくない。
■年内残りの合同テスト予定
今回のバレンシア合同テストの終了後、年内に行われるテストは11月26日と27日の2日間の日程で行われるヘレス合同テストと、同じく11月中に行われるフィリップ・アイランド合同テストの2回のみが予定されており、来年からのシングル・タイヤ・ルールの施行が決定し、タイヤサプライヤーがブリヂストンの1社になった関係から、冬季シーズン中のテスト回数は例年に比べて少なくなっている。
ちなみに、11月のヘレス合同テストへの参加を表明しているのはホンダとヤマハとドゥカティー、フィリップ・アイランド合同テストへの参加を表明しているのはスズキとカワサキであり、今回のバレンシア合同テストと同様にほぼ全チームが再び1つのテストに集結するのは年明けの2月初旬に行われるセパン合同テストからとなる。
■バレンシア合同テスト2日間の各チームの概況とライダーの詳細コメント
以下に各チームの2日間のテスト概況と、ライダーのコメントなどを紹介する。
■新シーズンに向けて初のトップタイムはGP9に乗ったドゥカティーのストーナー
2009年シーズンに向けての最初のテスト初日にトップタイムの1分32秒464を記録したのは、ドゥカティー3年目のシーズンとタイトル奪還に備えるケーシー・ストーナーだった。
また、この日からドゥカティーのピットに加わり注目を集め、デスモセディチでの初走行を披露したニッキー・ヘイデンは、12番手タイムとなる1分33秒960を記録して新チームでの初の作業を終えている。
■ドゥカティー新メンバーとなったヘイデンは星条旗のスペシャルマシンで登場
初日のドゥカティーのガレージのシャッターは11時にオープンし、ニッキー・ヘイデンがチームの大歓迎の象徴である星条旗のスペシャルマシンに乗って登場。それからストーナーとヘイデンの2名はセッション序盤にはGP8に乗って走行したが、その後は揃ってGP9に乗り換え、その新マシンとブリヂストンの新しいスリックタイヤの感触を確かめながらストーナーが54周回、ヘイデンが79周回走行した。
■2日目はヘイデンのみが走行
続く2日目は小雨が断続的に続くあいにくの天候と路面コンディションになった事から、シーズン中のミサノで古傷のあった左手首が突然悪化し、現在までに手術を受けていないストーナーはリスクを避けてその日の走行をキャンセル、ヘイデンのみがレイン・タイヤを装着して午後3時30から20周回走行し、この日の全7人のみの走行者のうちのトップタイムである1分48秒287を記録している。
■ストーナー「挙動特性がGP8とは異なるがGP9は初日から感触が良かった」
ドライ・コンディションとなった1日目、シーズン中のカタルーニャ合同テストにおいて初期のプロトタイプにしか乗った事のなかったGP9に乗り、前日のレース中に自身がGP8に乗って記録したバレンシアのサーキット・レコードをいきなりこの日に0.118秒上回ったストーナーは、GP9と新しい仕様のブリヂストンタイヤについて以下の通り感想をのべた。
「今回のバレンシア合同テストの1日目からGP9の感触は本当に良かったですよ」とストーナー。
「今日は多くの事を試す中で、うまくいった部分もあれば、そうでない部分もありますが、今回のバイクはGP8と比較して挙動特性が大きく変わっているので、まずはそうなるのが普通でしょう。まだ他にも色々試す事は残っていますが、すでにマシンの感触は素晴らしいです。実際に今日は安定して速いタイムを記録する事ができましたからね」
「エンジンの反応には本当に満足しました。さらに進化していますし、以前よりも挙動が予想しやすくなっています。また、バイクそのものに関してもブレーキング時の安定度が増しています。ブレーキング性能はGP8の時からすでに非常に高かったので、本当にすごい事だと言えると思いますよ。リアのセッティングをもう少し続ける必要はありますが、性能はかなりいいので、あとはどうやって正しいセッティング方法を見つけていくかだけです」
「タイヤの仕様の全てについても満足できました。おかげでとてもいいリズムで午前中に30周回を走り込む事ができていますし、これらの点から考えても、今回は最初からいいスタートが切る事ができました」
「ニッキーは今日がドゥカティーに来て初の走行でしたが、1日を通してタイムは良くなり続けていましたから、もう数日間このバイクを経験すれば彼が調子を見つけてくる事は間違いないと思います」
■ヘイデン「自分に対して『おまえ遅いな!』とつぶやいた」
1日目のドライ・コンディションにおいて、星条旗カラーのデスモセディチに乗ってついにドゥカティー・デビューを果たしたニッキー・ヘイデンは、初日の作業内容についての感想を以下の通りコメントしている。
「今日は多くの事を理解しようと色々な事を集中して試しましたが、内容は自分の予想通りのものになりました」とヘイデン。
「GP8では1回のみ走行して、その後はGP9に乗り換えて最後までそのマシンのまま走りました。まだまだやるべき事だらけのなのは間違いありませんが、とても満足できていますし、このバイクの性能の高さを理解できたのでいい1日になったと思っています。何よりも自分自身が本当に楽しんでいましたからね」
「初日はバイクとチームについてよく知る事ができましたが、自分にとって最も一番印象的だったのはマシンの加速力ですね。バイク自体はとても快適でしたしし、ハンドルバーの高ささえそれほど調整は要りませんでした」
「セッティングに関しても多くの変更は加えていません。このバイクで快適に走る上での必要な方向性を確かめるために、タイヤを数本試しながら、エンジン・マッピングのセッティングなど数ヶ所に小さな変更を施した程度です」
また、2日目はウェット・コンディションでの走行を行い、今回のバレンシア合同テストではブリヂストンのスリック・タイヤとレインタイヤの両方も初めて経験する事になったヘイデンは、テスト最終日の走行を終えて以下のコメントと新シーズンに向けての決意を語った。
「まだバイクに色々試したい事があったので、本当はもう1日ドライの日が欲しかったですね。ただ、少なくとも今日はウェットでの感触を初めて試すことはできました。2008年シーズン中はずっと行き先を雨雲に追いかけられるような状況でしたから、こういう走行条件を経験しておくのも非常に大切な事だとよく分かりましたからね」とヘイデン。
「今日の最初の周回を終えて自分に言った言葉は『うわー、おまえ遅いな!』でした。でも、その後に少し調整を加えてからは、マシンの感触はだいぶ良くなりましたよ」
「今の段階で重要なのは、バイクとタイヤ、それとチームの仕事の進め方やコミュニケーションの方法などに慣れていく事なので、今日はあまりセッティングには大きな変更を加えていません。ここではあまり早口で喋ったり、スラングを使ったりしないよう気をつけなきゃいけませんしね!。冗談はさておき、まだやるべき事はたくさん残っていますが、今後に向けての自分の意欲は十分な状態ですし、それはチームも同様です」
「バイクにはそれほど多くの変更依頼を出してはいません。なぜなら、すでにこのバイクの実力はケーシーが十分に示していますから、同じ走りができるかどうかは今後の自分次第ですからね」
■レプソル・ホンダ、初テストの2番手タイムは2008年型RC212Vのペドロサ
バレンシア合同テスト初日のレプソル・ホンダ・チームは、シーズン中のインディアナポリスGPを前に突然ミシュランからブリヂストンにスイッチし、すでにブリヂストンタイヤでのレース経験を持つダニ・ペドロサが、ストーナーに次ぐ2番手タイムの1分32秒672をこの日の60周回の中で記録。
■ワークスデビューのドヴィツィオーゾは8番手タイム
また、この日から念願だったホンダ・ワークス・デビューを最高峰クラス2年目にして果たす事になったアンドレア・ドヴィツィオーゾは、初めてレプソル・ホンダ・カラーのスーツに身を包んだ初日は57周回を走行し、8番手タイムの1分33秒676を記録している。
■ペドロサはエンジン・セッティング、ドヴィツィオーゾはワークスマシンを学習
1日目のレプソル・ホンダ勢は、午前の11時30分にドヴィツィオーゾがガレージ前に登場してピットを出発、その数分後にはダニ・ペドロサも姿を見せてコースに入った。ドライ・コンディションとなったこの日、レプソル・ホンダの2名は共に2008年型RC212Vに乗り、ブリヂストンの新しいスリックタイヤのコンパウンドに合うようマシンを終日調整している。
この中でペドロサは、最終戦のバレンシアGPなど過去数戦で使用したものと同じ最新型ニューマチック・バルブ・エンジンにシーズン中とは異なる様々なセッティングを試し、一方ドヴィツィオーゾは、午前中にハンドルバーやフットペダルなどのポジションを体形に合うよう調整した後、初めて経験するワークス・マシンとブリヂストン・タイヤの感触を探った。
■2日目のウェットはドヴィツィオーゾのみが走行
また、ウェットとなった2日目にはドヴィツィオーゾがブリヂストンのレインタイヤ・デビューを果たし、ガレージの中で朝から待機した後の午後3時30から18周回走行、こに日に走行した7名中の2番手タイムとなる1分48秒296を記録したが、天候の不安定だったシーズン中にレインタイヤを何度も経験済みのペドロサは2日目の走行をキャンセルしている。
■ペドロサ「ニューマチック・バルブ・エンジンの調整が進んだ」
ドライとなった1日目のみの走行となったダニ・ペドロサは、この日はニューマチック・バルブ・エンジンのセッティングに大きな改善を進める事ができたとして、以下の通りコメントしている。
「今日はテストには最適なコンディションでした。陽射しに恵まれ、路面のグリップが昨日のレースの時よりも良くなっています」とペドロサ。
「今日はエンジン特性の改善を狙って新しい仕様のエンジンパーツを試し、その後は新しいタイヤのテストに集中しました。テスト開始直後の感触はあまり良くありませんでしたが、メカニックと作業を進めながら調整を加えた後は、かなり大きく改善を進める事ができたと思っています。来年はライダーとバイクの両方がこの新しいタイヤに適応していく必要があるのは間違いありませんね」
「今日の路面コンディションは理想的でしたから、限られた本数しかタイヤが使えなくても何の問題も生じませんでしたが、今後は他の路面コンディションの場合に新しいタイヤがどういう特性を見せてくるかを確認していく必要があると思います」
■ドヴィツィオーゾ「ワークスバイクは期待通りに進化したマシンだった」
ホンダの2008年型ワークスRC212Vとブリヂストンのスリック・タイヤを初めて経験した1日目、アンドレア・ドヴィツィオーゾはワークスマシンのエンジンの良さに感銘を受けたとして、その感想を以下の通りコメントした。
「今日は本当に興奮しましたね。マシンの感触はとても良くて、昨日まで乗っていた2008年型サテライト用マシンの進化系のように感じました。自分が期待していた通りに改善が進んでいたので本当に満足しています」とドヴィツィオーゾ。
「2008年型サテライトマシンと比べてファクトリー・バイクはいい点がたくさんありますね。特にエンジン特性がスムーズでパワフルですし、乗り始めた最初からフロントの安定性がものすごく高かったです」
「電子制御に関しては、特にトラクション・コントロールにとても多くのセッティング種類があるので、それらの理解を進めていく上で、もう少し時間をかけて学ぶ必要がありそうです」
「それと今日はブリヂストンタイヤを初めて試しました。感触は悪くありませんが、完全に性能を引き出すには自分のライディング・スタイルを少しタイヤに合わせていく必要があります」
「全体的に見ていい初日だったと思いますが、まだまだ学ぶ事は多いですね。新しいチームとは段階的な手順を踏んで着実に作業を進め始めましたが、この仕事の進め方はとても気に入りました」
また、2日目にはレインタイヤで走行したドヴィツィオーゾは、ミシュランの時とはセッティングの方向性が異なるとの感想を最終日の走行を終えてコメントしている。
「2日目のテストにもすごく満足できています。今日は路面コンディションが悪く、ドライでもウェットでもない滑りやすい走行条件だったので、レインタイヤをテストするには激しく雨が降り出すのを待たなければいけませんでした」とドヴィツィオーゾ。
「今回供給されたレインタイヤは1セットのみでした。走り始めた時のグリップは良くありませんでしたが、チームが少しセッティングに変更を加えてくれてからは、安定して改善が進みました」
「連続しての走行を4回か5回くらい行いましたが、コースに出る度にタイムは良くなりましたし、自己ベストは最後の周回で記録しています。それに今日は多くの重要なデータを収集する事ができたので、ウェットだけでなくドライでも役に立つと思いますよ。ブリヂストンタイヤの装着時に要求されるセッティングの方向性はミシュランタイヤの装着時とは全く異なりました」
「チームの作業手順に関してもすごく満足しています。今回から新しいバイクと新しいタイヤの両方を学んでいますが、この新たな挑戦にはわくわくしますね」
■フィアット・ヤマハ、ロッシが2009年型プロトタイプで3番手タイムを記録
今年と同じライダー体制で2009年シーズンに挑むフィアット・ヤマハ・チームの2名、シーズン中はチームメイトでありながらタイヤメーカーの異なったバレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソは、今回の合同テストから初めて同じブリヂストンのタイヤでの走行を開始している。
■フィアット・ヤマハ勢は揃って2日目の走行をキャンセル
ウェットとなった2日目にはチームとして走行をキャンセルした事から、今回はドライ・コンディションのみでのテストとなったフィアット・ヤマハ勢の初日の順位とタイムは、40周回を走行したロッシが前日のレース中の自己ベストを上回るこの日の3番手タイムの1分32秒921、46周回を走行したロレンソが7番手タイムの1分33秒550を記録した。
■ロッシは今回初めて2009年仕様プロトタイプのYZR-M1を使用
2シーズンぶりに年間タイトルを奪還し、今年はチャンピオンに返り咲いたバレンティーノ・ロッシは、この日は新型ブリヂストンタイヤを装着した2008年型M1で2回の連続走行となる12周回を行いシーズン中とのセッティングの違いを確認、その後は2009年型プロトタイプのYZR-M1に乗り換えて5回の連続走行となる28周回を走行し、この中で初日の自己ベストタイムを記録している。
■ロレンソは2008年型M1をベースとしたテスト専用マシン
前日の最終戦において2008年度ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したホルヘ・ロレンソは、この日は10周回のみシーズン中に使用した2008年型マシンで走行し、その後は2008年型YZR-M1に2009年型パーツを装着したテスト専用マシンに乗り換えて36周回を走行する中、初めて経験するブリヂストンのスリックタイヤの感触を確認した。なお、ロレンソはこの日の3回目のコースイン時に転倒しているが、アウトラップの低速走行中だったために全く怪我はなく、その後も問題なくテストを継続している。
■ロッシ「まだ初期のプロトタイプだが好印象」
この冬季シーズン中は、日本GPでの優勝時に抱えていたお気に入りのタイトル獲得記念ヘルメットと同じデザインのヘルメットを着用するというロッシは、この日に初めて試した2009年型マシンと新しい仕様となったブリヂストンタイヤの感触について、以下の通りコメントしている。
「今日から2009年シーズンに向けての作業に着手し、初めて新しいバイクに乗る事ができました。まだ初期のプロトタイプですが、第1印象はとても良かったですね。ここまでにうまく仕上げてくれてあると思いました」とロッシ。
「コーナー脱出時の加速性能をもっと高めるために、今日はエンジンまわりの作業にも取り組みましたが、それほど大きくはないにしても少しだけ違いが見られますから、正しい方向に進んでいるとは思っていますし、今はそれが重要な事です」
「セッティングと重量配分の調整を行ったら新しいバイクでも速く走れたので、今回はそれが嬉しいですね!バイクへの理解を深めていく上でもう少し時間と走り込みは必要ですが、まだ今日は1日目ですし、この段階にしてはとても良好ですよ」
「その他の点で今日の大きな出来事だったと言えるのは、当然ですが新しいタイヤについてです。これは嬉しい驚きでしたよ。このサーキットでのタイヤに関するデータをあまり多くは持っていないので、自分たちがタイヤを試す上でここはあまり最適なコースではありませんが、それでも感触は素晴らしかったんです」
「今日はグリップレベルが低い事を予想していましたが、自分も他のライダーたちも、今日はとても速く走れていましたね。レースウイーク中に比べて今日の路面コンディションはとても良かったので走行条件は大きく異なりましたが、いずれにしても新しいタイヤの状態がすでにいい事は確認できました」
「シーズンを通して使用してきたタイヤと比べても今回のタイヤにはとても好印象が持てますから、本当にブリヂストンはいい仕事をしてきてくれたと思います。ただ、まだ他のサーキットで走った時にどうなるかは分かりませんから、それについては今後の状況を確認していきたいです」
「今回使用した年間タイトル獲得記念のスペシャル・ヘルメットがとても気に入っています。冬季テスト中はずっとこのヘルメットで走る予定ですよ。#1をバイクにつけるかどうかは・・・やはり自分は#46を使い続けるつもりです。ただ、以前にもやっていた通り、背中に#1の文字は入れますけどね」
■ロレンソ「みんなと同じタイヤで走れて嬉しい!」
今回のテストで初めてブリヂストンタイヤを試したロレンソは開口一番、全員が同じタイヤになった事についての喜びのコメントを残している。
「今日は本当に嬉しいです。これでやっと全員が同じタイヤになりましたからね」とロレンソ。
「今回から新型パーツをいくつか装着したテスト用バイクを試していますが、今日はデータ収集と新しい部分への理解を深める作業にのみ集中しました。何回かいいラップ周回を走れましたし、いい1日だったと思います」
「午後にはミスをして1回転んでいます。タイヤがまだ温まっていない時に12コーナーでストットルを開けすぎました。でも怪我はありませんでしたし、そのまま作業を続ける事もできています」
「明日も新しいタイヤのテストを続けて、多くのデータを集めていく予定です。タイヤへの理解を深めて、正しく評価が行えるようになるにはまだ時間が必要ですが、今日はまだ1日目ですし、これから段階的に作業を進めていければと思います。まだ新シーズの開幕はかなり先の事ですが、それに向けてすでに作業を開始できた事が今はとても嬉しいですね」
■リズラ・スズキも最新プロトタイプのGSV-Rを投入、青木選手がテストを支援
スズキの開発ライダーである青木宣篤選手(写真上)がシェイクダウンを済ませたばかりの2009年型GSV-R最新プロトタイプを提供され、ピット内に加わった青木選手から直接の説明を受けて今回のバレンシア合同テストを開始したリズラ・スズキ勢の初日のドライ・コンディションにおけるタイムと順位は、67周回を走行したクリス・バーミューレンが前日のレース中のタイムをコンマ5秒上回る4番手タイムの1分33秒142、75周回を走行したロリス・カピロッシが前日のレース中のタイムをコンマ3秒上回る5番手タイムの1分33秒325だった。
■2日目はレイン・タイヤの感触のみ確認
なお、ウェットとなった2日目にも2名はレイン・タイヤを装着して走行しているが、クリス・バーミューレンはタイムを残さず、7周回を走行したロリス・カピロッシのみが2日目に走行した7人中の7番手となる1分57秒322のタイムを公表している。
■バーミューレン「新しいブリヂストンタイヤと新型マシンの相性は良さそう」
最新型GSV-Rと新型パーツの評価をチームメイトと共に今回のテストで行ったバーミューレンは、1日目の走行を終えての感触を以下の通りコメントしている。
「今日はこのサーキットでいいテストができたと思います。タイムを昨日のレース時と比較する事ができたおかげで、どのくらいの進歩があったかを確認する事ができましたからね」とバーミューレン。
「今日はスズキからエンジン関係やシャシー、それと電子制御まわりの新型パーツをいくつか受け取りました。いくつか良い点と悪い点の両方を確認しましたが、これが今回のテストの目的ですし、今の状態を起点としての良い方向性が得られたのは間違いありませんよ」
「今回ここで自分たちが得た情報を元に、来月にフィリップ・アイランドで行うテストまでにスズキが作業をうまく進めてくれると嬉しいですね。今日はタップタイムが着実に改善されていきましたし、新しいブリヂストンタイヤと自分たちのバイクとの相性はいいみたいです。すでにパッケージ全体を新しいタイヤの変化に対応させる事ができたように感じました」
■カピロッシ「今回のタイヤはシーズン中のものと大差ない」
2日目の雨を予期し、ほとんどの作業メニューを慌ただしく初日のうちに済ませたというカピロッシは、今回使用した新マシンについての感想を以下の通り述べている。ブリヂストンの新型タイヤについては2008年シーズン中に使用したものと大差ないとの感想をカピロッシは抱いた様子だ。
「全体的に見ていいテスト初日だったと思います。明日が雨になりそうなので今日中に多くの作業を済ませておく必要があり、多くの周回を走り込みました。今日は作業の手を休める暇は終日一度もありませんでしたからね」とカピロッシ。
「スズキはエンジンの改善をうまく進めてくれたとは思いますが、さらにそれを良くしていくには、今の方向性を保ちながらまだ多くの作業をこなす必要があります。タイヤはいい感じですよ。感触自体は今までに使ってきたものとあまり大差ありませんが、昨日とほぼ同じ条件で終日それらの比較検証ができたのは有り難かったです」
「まだ今よりもはるかに進歩できる事は間違いありませんから、今後の計画をチームが100%信じて取り組んでいく必要があります」
■サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ、チームに復帰して歓喜のエリアス
昨年までの中野真矢選手に代わり、1シーズンぶりにチームに復帰したトニ・エリアスを今回のテストから迎えたサンカルロ・ホンダ・グレッシーニは、トニ・エリアスがレプソル・ホンダと同じく2008年型ワークス仕様のRC212V、アレックス・デ・アンジェリスは今回からホンダが投入した最新のサテライト用RC212Vに乗ってテスト作業を開始している。
■エリアスのクルー・チーフは2007年と同じくチェッキーニに
なお、ライダーとメカニックの組み合わせは、2008年シーズン中にデ・アンジェリスのクルー・チーフを担当していたファブリチオ・チェッキーニが2006年と2007年のシーズン中と同じくトニ・エリアスの担当に戻り、中野選手のチーフクルーを担当していたアントニオ・ヘメネスが今回からデ・アンジェリスの担当に変わっている。
■ウェットの2日目はエリアスのみ走行
2日間の走行結果は、初日のドライ・コンディションのみでの走行となったアレックス・デアンジェリスは77周回を走行する中で1日目の6番手タイムとなる1分33秒375を記録、1年ぶりに乗るホンダのマシンで2日間の両方を走行したトニ・エリアスは、78周回を走行した1日目はドライでの13番手タイムとなる1分34秒129、22周回を走行した2日目はウェットでの7人中6番手となる1分54秒057を記録した。
■デ・アンジェリス「新しいバイクはすごい!自信をもって新シーズンに挑める」
今回のバレンシア合同テスト初日に初めて試した新型マシンの性能に感動するアレックス・デ・アンジェリスは、2009年シーズンに向けて期待感が高まったとして、1日目の走行を終えて以下の通りコメントしている。
「今日は自分にとって素晴らしい1日になったので本当に嬉しいです。新しいバイクのエンジンは本当にパワーがすごいので、これで今後に向けて自信が持てました」
「新しいタイヤの性能もすごく高いです。ただ、今回ブリヂストンが持ち込んだ全ての種類のタイヤを試した訳ではないので、これからも多くの作業が必要なのは確かです。まだ自分たちにはタイヤの特性をより深く学んでいく必要がありますからね」
「いずれにしても、昨日のレース中よりもタイムが1秒速くなりましたし、一貫したいい走りができましたから、今日はとても自信がつきました。新シーズンに向けての第一歩の状況としては本当に満足できます」
「自分の新しいチーム体制にも本当に満足です。ものすごい歓迎ぶりを見せてくれた彼らにはとても感謝しています」
また、ウェットの低温路面での転倒リスクを避け、2日目はチームと共にテストのキャンセルを決断した事について、デ・アンジェリスは以下の通りコメントした。
「タイヤとバイクだけではなく、自分のチーム体制も今回から新しくなった関係上、もっと多くの作業を2日間のうちにに消化しておきたかったので、今日の天候には本当にがっかりです。実際、まだまだ多くの分野について解決の必要な課題が残っています」
「次回のヘレス合同テスト中には正しい解決策が見つけられるように頑張りたいと思いますが、いずれにしても、昨日のいい結果のおかげで今回は明るい気分で自宅に戻る事ができますよ。今後に向けても自信を持つ事もできましたからね」
■エリアス「ホンダのマシンの乗り方に戻るのにやや苦戦」
2006年からの2年間に慣れ親しんだチームに戻った事を喜ぶトニ・エリアスは、今回のテストでは久しぶりのホンダRC212Vの感触に最初はやや苦戦した様子だ。ドゥカティーとホンダのマシンはまったくその特性が異なるとエリアスは以下の通りコメントしている。
「ホンダとファウスト・グレッシーニのチームに戻って来られた事がとにかく嬉しいです。過去に2年間一緒に戦い、その中で深い信頼関係を築いてきたチームですから、まるで家族のところに戻ってきたような気分ですよ。性格や仕事の進め方の面でお互いによく理解しあっていますし、常にうまくいっていましたからね」
「ホンダのバイクで久しぶりに走るのは、2008年シーズン中に自分が乗っていたバイクとは特性が全く異なるので簡単な事ではありませんでした。ただ、今日のテストで走り始めて1時間くらいしてからは感触がだいぶ良くなってきています」
「今日は落ち着いて作業に取り組む事にしました。ゆっくりと新しいバイクに身体を慣らしていく必要があるのは分かっていましたし、タイヤも新しいタイヤルールに沿ったものが装着されていますからね」
また、2日目にはウェットでの走行を行った他の6名のライダーと同様に15時30分からコースに出て、引き続きホンダのマシンに慣れる事に集中したというエリアスは、1年ぶりとなるグレッシーニ・ホンダでの2日間の作業を終えて、以下のコメントを追加している。
「残念ながら2日目は22周回しか走り込みができませんでした。ただ、今日はウェットであったにしても、チームにとって重要なデータを収集する事ができたと思います」
「2日間のうちにドライとウェットの両方の感触を確かめる事ができたので、今回のテスト内容には満足できています。2日目は1時間しか作業ができず、正しいセッティングに到達するのは難しかったので、まだまだ改善を進める上で多くの作業が残っているのは当然ですけどね」
「いずれにしても、まだ始まったばかりですし、このチームとバイクには満足できていますから、次回のヘレス合同テストでバイクの開発と改善作業に引き続き取り組めるのが今から楽しみです」
■カワサキ、ホプキンスは新エンジンを評価、メランドリはNinja ZX-RRに好感触
アンソニー・ウエストに代わり、ドゥカティーとの2年間の契約を1年で破棄する事になったマルコ・メランドリを新メンバーに加えたカワサキ・レーシング・チームは、2009年シーズンに向けての初の合同テストとなった今回のバレンシアでは、ジョン・ホプキンスとメランドリのレギュラー・ライダー2名に加えて開発ライダーのオリビエ・ジャックも参加し、この計3名が走行して新マシンや型パーツの評価を実施している。
■ファナリが引退し、技術監督の金子氏が直々にホプキンスのクルーチーフに就任
なお、2008年シーズン中にホプキンスのチーフ・クルーを担当していたベテラン・メカニックのフィオレンツォ・ファナリが2008年シーズンの終了をもって現役引退を表明した事から、2009年に向けてのライダーとメカニックの体制は、ホプキンスのチーフ・クルーにはチーム全体の技術監督を2008年度中に務めていた金子直也氏が就任、アンソニー・ウエストのチーフ・クルーを担当していたファン・マルティネスは今回からメランドリを担当する。
■オンデ2000への移籍も噂されたファン・マルティネスはメランドリを担当
ちなみにファン・マルティネスは2009年シーズンからMotoGPに復帰する事になったセテ・ジベルナウのグレッシーニ・ホンダ時代とドゥカティー時代の活躍を支えた名メカニックであり、今回のジベルナウの復帰と同時にオンデ2000チームへの移籍も噂されたが、実際にはそのような動きはなく、マルティネスは2008年シーズンに引き続きカワサキでの2年目の活動をこの日から開始している。
■昨年とは異なり新マシンへの適応能力を示したメランドリは10番手タイム
バレンシア合同テスト中のカワサキの動きだが、新メンバーのメランドリはカーボン・ファイバーむき出しの黒いフェアリングのマシンに乗り、初めてのNinja ZX-RRのポジション・セッティングを1日目の午前に済ませてからはマシンの感触を確認しながらの走行を開始。昨年は冬季シーズン序盤からドゥカティーのマシンに馴染めず苦しんだメランドリだが、今回カワサキのマシンには初日から好感触を示し、75周回を走行したドライ・コンディションの1日目には10番手タイムの1分33秒782を記録、ウェットとなった2日目にはその日に走行した7人中3番手タイムの1分48秒786を記録した。
■ホプキンスは1日目のドライ・コンディションでのみ走行
初日のドライ・コンディションでのみ走行し、天候の崩れた2日目にはテストをキャンセルしたホプキンスは、新チームメイトのメランドリとは異なり2008年シーズン中と同じグリーンのマシンで今回のテスト作業を行い、初日の午前中にブリヂストンの新型タイヤにバイクのセッティングを合わせた後は、それぞれ異なる仕様の新エンジンを積んだ2台のマシンを交互に乗り換えての比較検証を実施している。ホプキンスの今回のタイムは1日目の9番手となる1分33秒760だった。
■ホプキンス「新型タイヤはカワサキが以前に使った事のないタイプ」
カワサキは2008年シーズン中には他のチームと比べてやや仕様の古いブリヂストン・タイヤを選択していたため、今回のバレンシア合同テストで提供された新型タイヤはNinja ZX-RRには初めて試すタイプのものだったとホプキンスはコメントしている。
「朝方にブリヂストンから提供された全てのフロントタイヤは2008年シーズンを通してバレンティーノやケーシーが使っていたタイヤの何種類かと似ているようですが、その種類のタイヤを自分たちのバイクで試した事は以前に一度もないんです」とホプキンス。
「今日はバイク全体のセッティングを見直すいい機会でしたね。おかげでいくつかの点についてはかなり改善が進んだように感じています。また、2台のバイクを交互に使って2種類のエンジンの比較も行いましたが、かなり直接的な比較検証ができたので、今後の開発の方向性が明確になりました」
「それに自分の新しいクルー・チーフになった金子直也氏との初仕事も面白かったですよ。彼は以前からライダーから提供される情報を非常に構造的に分析する人物ですから、今後はその手腕がレースウイーク中にタイムを追求していく上で違いを生むと思います」
「全体的に見て今日は効率良く仕事が進みましたし、バイクに施した改善の状況にも満足できています。シーズン中とは全く違うようになり、今日はすごく快適に走れました。明日もドライなら引き続き改善作業を進めていきたいと思っています」
■マルティネス「メランドリのライディング・スタイルとNinja ZX-RRとの相性は良い」
カワサキ・レーシング・チームは今回のテスト終了後にメランドリのコメントは公表していないが、代わりに彼のチーフ・クルーとなったファン・マルティネスのコメントを紹介している。1日目の作業の終了後、マルティネスはメランドリとの初仕事についての感想と、メランドリが抱いたNinja ZX-RRに対する第1印象などを以下の通り語った。
「新しいライダーとの初仕事は常に興味深いものですが、今回はマルコとメカニックたちの双方がいい初日を過ごす事ができたと思っています」とマルティネス。
「昨日まで彼がレースをしていたものとは全く異なるバイクであるにもかかわらず、今日のマルコのラップタイムは終日安定していました。また、ピットに戻る度に彼がくれるコメントのおかげで、バイクを速くする上での必要な作業の進め方がとても分かりやすくなりました」
「まだいくつかの改善点は当然ながら残っていますが、マルコの今日の第1印象は全体的に良かったそうです。彼のライディング・スタイルとNinja ZX-RRの相性はとてもいいみたいですから、彼のコメントは日本のエンジニアに来年のマシン開発の方向性を正しく示してくれる事でしょう」
「マルコは以前にレースでの優勝を何度も争ってきたライダーですから、速く走る上で必要な事は熟知していますし、Ninja ZX-RRの開発を次のレベルに引き上げる上で、わたしたちに何が必要かも正確に彼は把握しています」
■ホンダLCR、右手首の痛むランディ・ドプニエは当初から1日のみの参加
ライダー1名体制のホンダLCRでの2年目の戦いに挑むランディ・ド・プニエは、新シーズンに向けての今回のバレンシア合同テスト初日に初めてブリヂストンのスリックタイヤを経験し、この日の80周回の中で11番手タイムの1分33秒832を記録している。
なお、ドプニエはミサノでのオープニングラップの転倒時に右手首の骨に小さなひびが入り、その後のシーズン後半の度重なる転倒の影響などから現在も痛みが癒えていない事から、今回のテストは当初から1日目のみの参加を宣言していた。
■ド・プニエ「ブリヂストンタイヤでの初走行が面白かった」
初のブリヂストンタイヤでの走行が興味深かったと語るド・プニエは、バレンシアでのテスト作業を終えてから、その感触を以下の通りコメントしている。
「今回のテストはブリヂストンタイヤでの初走行が面白かったですね。今日は80周回を走りましたが、まだ手首が痛むので自分にとってはかなり厳しいセッションでした。でも、フロントにいい感触が得られたのでとても満足です」とド・プニエ。
「リアタイヤは2種類しかテストしていませんが、自分のライディング・スタイルにはもう少し硬めのコンパウンドが必要に感じました。ただ、いずれにしても初日としては好感触が得られる内容だったと思います」
「明日はテストを行いません。次回のテストでは新しいバイクを試す事になりますから、それまでに手首を休めておく必要がありますからね」
■この日からMotoGPクラスでの活動を開始したオンデ2000、ジベルナウがついに復帰
2006年に引退を宣言してから2シーズンの沈黙を経て、2009年からのMotoGPクラス初参戦を表明した母国スペインのチームであるオンデ2000と共に姿を現し、今回のバレンシア合同テストからMotoGPシーンにレギュラーとしてのカムバックを果たしたセテ・ジベルナウは、初日はデスモセディチGP8に乗ってのバレンシア・サーキットに慣れる事から作業を開始している。ジベルナウは2006年のバレンシア最終戦は怪我のために欠場しているため、今回は3年ぶりのバレンシアでの走行となった。
■ジベルナウは初日のみ走行
なお、ジベルナウはウェットとなった2日目のテストはキャンセルしており初日のドライ・コンディションでのみ走行、その52周回の走行の中で14番手タイムの1分34秒451を記録している。
■未経験のタイヤ本数制限ルールを考慮し、スリックタイヤは2セットのみ使用
午前中にGP8のポジション設定など、基本的なセッティングのみ行ったジベルナウは、2006年以前には経験する事のなかったレースウイーク中のタイヤ本数制限を考慮し、タイヤの交換は一度しか行わなかったという。
■ジベルナウ「初日の内容としては完璧」
今回はあまりセッティングには変更を加えず、復帰第一歩のトレーニングを兼ねた走行を行う中で、30周回以上を走り込んだタイヤでこの日の自己ベストを記録したジベルナウは、初日のテストを楽しむ事ができたと以下の通りコメントしている。
「バレンシアで走るのは3年ぶりですから慣れるまでに十分な時間は必要でしたが、とても楽しかったですよ。今日は基本的なセッティングは行いましたが、まだあまりバイクに大きな変更は加えていません」とジベルナウ。
「レースウイーク中の使用タイヤ本数は制限される事になると思いますから、今日はその状況を知るためにタイヤは2セットのみ使用しました。今回はそのうちの1セットで35周目を走った際に自己ベストを記録しています」
「チームの全員がバイクを良く理解できるように、今日は一般的なセッティング作業に集中しましたが、マシンのバランスはすでにとても良かったです。初日の内容としては完璧だったと思いますね」
■MotoGPルーキー2名の体制となった新生アリーチェ・チーム
ミカ・カリオとニッコロ・カネパのMotoGPルーキー2名を迎え、全くの新しいライダー体制となったドゥカティーのサテライト・チームであるアリーチェ・チームは、今回のバレンシア合同テストからその新体制の下で新シーズンに向けての作業に着手している。
■カリオとカネパはMotoGPバイクの特性を学びながらデータ収集を実施
前日のバレンシア最終戦ではKTMから250ccクラスのレースに出場していたカリオは、ドライ・コンディションに恵まれた合同テスト初日には初めて経験するMotoGPバイクのドゥカティー・デスモセディチGP8に乗って60周回を走行し15番手タイムの1分34秒793を記録、参加者が限られたウェットの2日目には26周回を走行して7人中5番手の1分50秒275を記録した。
また、2008年シーズン中にはドゥカティー・ブリヂストンのテスト・ライダーを主に務めていたカネパは、初日は62周回を走行し17番手タイムの1分34秒995を記録、ウェットの2日目には25周回を走行して7人中4番手の1分49秒917を記録している。
アリーチェ・チームの技術監督は、2名の新ライダーは2日間を通してMotoGPバイクの特性とチームの作業手順を学びながら、今後のチームにとって大変に有益となるデータを収集したとしており、新シーズンに向けての順調なスタートを切る事ができたとコメントした。
■カリオ「ドゥカティーのマシンは予想以上に扱いやすい」
合同テスト初日にデスモセディチGP8を初めて経験したミカ・カリオは、その日の感想を以下の通りコメントしている。
「ドゥカティーのマシンでの1日目の作業を終える事ができてとても嬉しいです。本当にパワフルなバイクですね。マシンの特性を最大限に活かさなければうまく走れないので、ライディングがとても面白いです」とカリオ。
「250ccマシンと比べると、どんなに些細な調整内容でも走った時にその影響がより大きく分かりますから、この最初の数日間はすごく重要になりそうですね」
「今日は新しいチームに馴染む事ができましたから、このまま新シーズンに向けてうまく作業を進めていく事ができると思います」
ウェットとなった2日目にも、引き続きMotoGPマシンとブリヂストンタイヤに慣れる事を目的に走行を続けたカリオは、予想外にドゥカティーのマシンは乗りやすかったと述べ、早く2009年型マシンに乗りたいとのコメントをつけ加えている。
「正直言うと、テレビを見ての印象やこれまでに聞いた噂から、このバイクの挙動はもっと荒々しいものかと思っていましたが、今回実際に走ってみたらとても扱いやすく感じましたし、コーナリングがとても楽に感じました」とカリオ。
「ただ、自分の個人的な印象ですが、125ccや250ccクラスのマシンと比べると特性は大きく異なりますね。デスモセディチは本当に特別なバイクだと思いますし、今から2009年型の最新マシンに乗るのが楽しみで仕方ありません」
■カネパ「テスト・ライダーの時はマシン・セッティングを行う機会が少なかった」
2008年シーズン中は主にタイヤ関係のテストライダーとして活動していた経験から、ドゥカティーのマシンとブリヂストン・タイヤでの走行には慣れている筈のニッコロ・カネパだが、レースウイーク中のレギュラー・ライダーとは異なり、過去のテスト・セッションではあまりMotoGPマシンのセッティングを集中的に学ぶ事はなかったと、今回の1日目の走行を終えてから以下の通りコメントしている。
「ドゥカティーのデスモセディチGP8には乗り慣れていましたが、バイクのセッティングに集中したのは今回が初めてです。昨シーズン中はタイヤのテストが主な作業でしたから、バイクに調整を加える時間はあまりなかったんです」
「ですから今はセッティングの変更がバイクの挙動にどんな影響を与えるかを理解する事に集中しながら、多くの事を学んでいる最中です。今日はバイクに色々な変更を何度も加えましたが、明日も同様に多くの作業を行う予定です」
また、2008年シーズン中のタイヤテストではウェット・コンディションを一度も経験しなかったというカネパは、レインタイヤで走行した今回の2日目のセッションが貴重な経験になったと語る。
「2008年シーズン中のテストでは一度も雨に降られなかったので、今回は自分にとってとても貴重な1日でした。ウェットでも調子よく走る事ができたので、自分に自信を持つ事ができましたからね」とカネパ。
「限界まで攻め込むようあ走りはしていませんが、着実にタイムを縮めていく事ができたので、今回はそれがとても重要だったと思います。今日は天候の影響によりあまり多くの走り込みはできていませんが、少なくともこの2日間のうちにドライとウェットの両方の感触を確かめる事はできました」
■スコットホンダ、高橋選手がMotoGPクラス唯一の日本人ライダーとして始動
前日の2008年シーズン最終戦では250ccクラスにおける最後のレースを2位表彰台で飾った高橋裕紀選手は、レプソル・ホンダに移籍したかつてのチームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾに代わり、翌日にはスコット・ホンダのMotoGPクラスのピットに加わって、最高峰クラスにおける日本人唯一のライダーとしての初日を迎えている。
■ウェットでの走行は見合わせた高橋選手
MotoGPルーキーとしての初日、乗り慣れたホンダRS250RWに別れを告げて初のRC212Vでの70周回のテスト走行を披露した高橋選手のこの日のタイムは、全体の18番手となる1分35秒203だった。なお、高橋選手は1日目のドライ・コンディションでのみ走行し、低温路面のウェット・セッションとなった2日目には走行を見合わせている。
■高橋選手「RC212Vのエンジン・パワーに好感触」
今回の合同テストではRC212Vの全ての機能は使用せず、MotoGPマシンを理解する事に集中した様子の高橋選手は、この日からRC212Vのエンジンパワーとブリヂストンタイヤには好感触を抱いたという。
「MotoGPライダーとしての初日を迎える事ができてすごく嬉しいです。RC212Vもとても気に入りました」と高橋選手。
「今日は初歩的な事から開始し、かなり多くの周回を走り込みましたが、一歩ずつ学んでいる感じですね。まだトラクション・コントロールなどの電子制御システムを完全には作動させていない状態ですが、エンジンパワーには早いうちから好感触が得られました」
「ブリヂストンタイヤの感触は良かったし、セッティングにも好感触です。250ccクラスで戦ってきた自分には多くの作業や学ぶべき事がまだたくさんありますが、このチームにはすでに豊富な経験がありますから、それが自分のMotoGPクラスへの適応にも役立つ筈です」
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