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2008年10月9日
晴天に恵まれた10月5日のフィリップ・アイランド・サーキットにて行われた第16戦オーストラリアGP、MotoGP最高峰クラスの決勝レースにおいて勝利を飾ったのは、地元オーストラリア出身の2007年度チャンピオンであるドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。
ここでは、レース当日に5万541名の観客が訪れた2008年度オーストラリアGPにおけるMotoGPクラス決勝レース概況と主要ライダーのコメント、ならびに同日に行われた小排気量クラス(250cc,125cc)のレース結果を紹介する。
■MotoGPクラス、オーストラリアGP決勝レースの結果
以下に、気温17度、路面温度27度、湿度45%のドライ・コンディションに恵まれたオーストラリア・グランプリMotoGPクラス決勝レースの結果を示す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 40分56秒643(27周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 41分03秒147(27周)
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 41分03秒848(27周)
4) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 41分08秒143(27周)
5) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 41分08秒557(27周)
6) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 41分08秒886(27周)
7) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 41分09秒423(27周)
8) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 41分22秒563(27周)
9) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 41分22秒680(27周)
10) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 41分23秒442(27周)
11) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 41分23秒670(27周)
12) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 41分44秒451(27周)
13) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 41分44秒976(27周)
14) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 41分45秒542(27周)
15) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 41分45秒578(27周)
16) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 42分08秒410(27周)
-) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V -分-秒-(0周)
-) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V -分-秒-(0周)
フィリップアイランドのサーキットレコードはこの日にニッキー・ヘイデンが記録した1分30秒059、ベストラップレコードは前日の予選でケーシー・ストーナーが記録した1分28秒665。
■ポイントランキング
オーストラリアGP終了直後のポイントランキングは以下の通り。
1) バレンティーノ・ロッシ [ITA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 332
2) ケーシー・ストーナー [AUS] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 245
3) ダニ・ペドロサ [SPA] [レプソル・ホンダ・チーム] 209
4) ホルヘ・ロレンソ [SPA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 182
5) アンドレア・ドヴィツィオーゾ [ITA] [JiRチーム・スコット] 145
6) ニッキー・ヘイデン [USA] [レプソル・ホンダ・チーム] 131
7) コーリン・エドワーズ [USA] [ヤマハTech3] 126
8) クリス・バーミューレン [AUS] [リズラ・スズキMotoGP] 118
9) 中野真矢 [JPN] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 106
10) ロリス・カピロッシ [ITA] [リズラ・スズキMotoGP] 102
11) ジェームス・トーズランド [GBR] [ヤマハTech3] 100
12) トニ・エリアス [SPA] [アリーチェ・チーム] 91
13) シルバン・ギントーリ [FRA] [アリーチェ・チーム] 60
14) アレックス・デ・アンジェリス [RSM] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 55
15) ランディ・ド・プニエ [FRA] [ホンダLCR] 54
16) マルコ・メランドリ [ITA] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 51
17) ジョン・ホプキンス [USA] [カワサキ・レーシング・チーム] 50
18) アンソニー・ウエスト [AUS] [カワサキ・レーシング・チーム] 46
19) ベン・スピーズ [USA] [リズラ・スズキMotoGP] 20
20) ジェイミー・ハッキング [GBR] [カワサキ・レーシング・チーム] 5
21) 岡田忠之 [JPN] [レプソル・ホンダ・チーム] 2
■MotoGPクラスのレース概況、前日にギントーリが肩甲骨を骨折、ロッシは首を捻挫
今回のオーストラリアGPでは、決勝レースを前にMotoGPクラスから2名の負傷者が出ている。レースの前日となるグランプリ2日目の午前中に行われたフリー・プラクティス3ではアリーチェ・チームのシルバン・ギントーリが転倒して左の肩甲骨を骨折、同日午後の予選ではフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが2コーナーを曲がりきれずにグラベル内に頭から倒れ込んで首を捻挫した。
ギントーリは肩に激しい痛みを訴えながらも翌日となるこの日の決勝レースには出場。ロッシも午前のウォームアップ・セッション中には激しい頭痛を訴えたが、クリニカ・モバイルにて首のマッサージを受けてからは体調を取り戻し、無事にレースに出場している。
■ホールショットのストーナーに続くヘイデン、ペドロサは2列目からの猛ダッシュ
レース開始と同時にホールショットを奪ったのはポールポジションからスタートしたストーナー。3番グリッドからスタートしたヘイデンがその背後の2番手につけ、ヘイデンの後方には2列目6番グリッドからの猛ダッシュを見せたペドロサが迫る。
■好スタートを見せたドヴィツィオーゾは1コーナーでコースアウトし順位を後退
1コーナーでは3番グリッドからスタートしたロレンソと3列目8番グリッドからの好スタートを見せたドヴィツィオーゾがほぼ横並びとなるが、膨らんだロレンソから押し出される形でドヴィツィオーゾが草の上にはみ出し大きく後退。この間に5番グリッドからスタートしたトーズランドがロレンソの前を奪いペドロサと並んで3番手につけた。ロレンソの背後には7番グリッド・スタートのエドワーズ、9番グリッド・スタートの中野選手、4番グリッド・スタートのド・プニエがつける。
■4列目スタートのロッシは10番手に
8番手を行くド・プニエの後方には4列目10番グリッド・スタートのデ・アンジェリスと、予選中の転倒により4列目11番グリッドからのスタートとなったロッシが続いた。
■ペドロサが2コーナーでいきなりの転倒、左ひざを痛めて無念のリタイア
続く2コーナー、ここで3番手のポジションから左カーブに飛び込んだペドロサが曲がり切れすに草の上にはみ出し転倒。ペドロサは骨折などの深刻な怪我は免れたものの、左ひざを痛めてそのまま無念のリタイアとなった。また、この事故の影響からバーミューレンとギントーリもミスをして2コーナーを通過直後にコースからはみ出してグラベルを直行しており、2名は揃ってポジションを最後尾付近に落としている。
■ペドロサ「ひざがすごく腫れている、ランキング2位は難しくなった」
今回のノーポイントにより年間ランキング2位を争うストーナーとのポイント差が、残り2戦を前にして11から36に広がってしまったペドロサは、レース終了後に以下の通りコメントしている。
「スタートがうまく決まり、2コーナーに3番手のポジションで飛び込んだ時にリアタイヤが滑り出した。バイクを立て直そうと頑張ったがそのままコースを外れてしまい、草の上に乗ってからも再びバイクを立て直そうとしたが、結局そこで転んでしまった」とペドロサ。
「転倒時に左のひざを痛めてしまったが、幸い骨や靱帯には一切ダメージはなかった。ただ、今は痛みが激しいし、ひざがすごく腫れている」
「今日はいいペースで走れる筈だったし、前回のもてぎに引き続き表彰台に乗る自信もあったので、この結果はとても残念。ひどいレースになってしまい、週末を通して頑張ってくれたチームに申し訳なく思う。これから飛行機でスペインに帰国し、マレーシアGPまでに怪我を治しておきたい」
「もうシーズン残りのレースは2回しかないので、これで年間ランキング2位を狙うのは難しくなってしまった」
■デ・アンジェリスもオープニング・ラップ中に転倒「ド・プニエがブレーキをミス」
ペドロサ転倒後、オープニング・ラップ中に今度は8番手を走行していたデ・アンジェリスがコーナー進入時に転倒してリタイア。その真後ろを走行していたロッシは危うく追突を免れている。
「今日はやっといいスタートができたと思ったのにがっかり。最初のいくつかのコーナーはド・プニエの背後につけて通過したが、彼が目の前でブレーキングをミスしたので、それを避けようとして転んでしまった。今日は実力を見せる事ができると信じていたので本当に残念」とデ・アンジェリス。
■集団から抜け出すストーナーとヘイデン、ロッシは後方からの快進撃
続く2ラップ目の突入までに先頭のストーナーと2番手のヘイデンが集団から抜け出し、その後方では3番手のトーズランド、4番手のロレンソ、5番手のエドワーズ、6番手の中野選手の4台が第2集団を形成。さらに後方ではロッシがド・プニエを交わして7番手に浮上。
■好位置につける中野選手を交わして第2集団のトップに迫るロッシ
3ラップ目に入るとロッシは中野選手の背後につけて第2集団に加わると、4ラップ目には中野選手とエドワーズの2台を同時に交わし、3番手を激しく争うトーズランドとロレンソの背後となる5番手に順位を一気に上げた。
■1コーナーへの激しい飛び込みでロッシを抜き返すトーズランド
先頭のストーナーをコンマ2秒差で2番手のヘイデンが追い続ける8ラップ目、第2集団の中をすり抜けて前に進むロッシはロレンソとトーズランドを交わしてヘイデンの5秒後方の3番手に浮上するが、続く9ラップ目の1コーナーではトーズランドが激しい勢いでロッシを抜き返した。意表をつかれたロッシはトーズランドの背後に密着して抜き返しのタイミングをうかがう。
■第2集団に加わるドヴィツィオーゾ
10ラップ目、ストーナーとヘイデンの7秒後方では、トーズランド、ロッシ、ロレンソ、中野選手が形成する3位争いの第2集団に、ペースが続かず後退していったエドワーズに代わってドヴィツィオーゾが加わり、11ラップ目には中野選手を交わして6番手に浮上。
■激しい走りのトーズランドを3回交わし、やっと第2集団から抜け出したロッシ
12ラップ目にはトーズランドとロッシの3位争いがさらに激化、1コーナーではロッシがトーズランドを交わして前に出るが、続く2コーナーではトーズランドが再びロッシを抜き返して3番手のポジションを奪い返す。しかしながら、トーズランドの抵抗はここまでとなり、13ラップ目にロッシは再びトーズランドを交わすと、トーズランドの背後で渋滞する第2集団を引き離して6秒先を行く2番手のヘイデンの背後を追った。
■ストーナーと同じペースを維持できなくなったヘイデン、その後方にロッシ
14ラップ目に入るとヘイデンのペースは先頭のストーナーのコンマ5秒落ちとなり、17ラップ目にヘイデンは単独トップとなったストーナーから4秒引き離される。その2番手のヘイデンの4.5秒後方には単独3番手のロッシが迫り、24ラップ目にヘイデンとロッシの差は2秒以下に縮まった。
■ロレンソ、トーズランド、ドヴィツィオーゾによる熾烈なバトルを静観する中野選手
3番手のロッシがヘイデンのコンマ5秒背後に迫った25ラップ目の1コーナー、その後続の集団内ではドヴィツィオーゾが前を奪い合っていたロレンソとトーズランドを同時に交わして4番手に浮上。続く26ラップ目にはロレンソがドヴィツィオーゾを交わして4番手に再浮上し、その背後ではドヴィツィオーゾとトーズランドが激しく5番手のポジションを奪い合う。この間、7番手を行く中野選手は目前に展開される3台のバトルを近距離から静観するように走行。
■最終ラップ突入と同時にロッシが2番手に浮上、ヘイデンは3番手に後退
先頭のストーナーが2番手のヘイデンを約8秒引き離した27周目の最終ラップ、ついにロッシが1コーナーでヘイデンを交わし2番手に浮上、ヘイデンはこれについていく事ができず、表彰台に乗るトップ3の順位はこの時点で確定した。
■やや強引なトーズランドを避けるドヴィツィオーゾ、中野選手が2台を交わし前へ
ここで激しさを増す4位集団内の順位に異変が生じる。4位を走るロレンソの後方で強引にドヴィツィオーゾから5番手を奪いにかかったトーズランドがタイヤを滑らせて大回りとなり、それを避けてトーズランドの背後にドヴィツィオーゾが逃げた瞬間、そこまで静かに7番手を走行していた中野選手がトーズランドとドヴィツィオーゾの2台を同時に抜き去った。
慌てたトーズランドはすぐに中野選手を抜き返すが、そこでもタイヤを滑らせて大回りとなり、再び中野選手は最終コーナーを前にトーズランドのイン側を悠々とすり抜けて5番手を確保。ここで熾烈を極めた4位集団の順位はロレンソ、中野選手、トーズランド、ドヴィツィオーゾの順に確定する。
■ロレンソ「トーズランドが前にいたので今日は難しかった」
4位集団の中での争いを制したフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、「表彰台が狙えると思っていたので、この結果にはあまり満足できない。今日は自分の思い通りに走る事ができなかった。トーズランドが何度も自分の前に出てきたし、彼を追い抜く事ができなかったのでバレンティーノについていく事ができなかった。バレンティーノと一緒に走るペースは確保できていたつもりだが、今日は全体的にうまくいかなかった」とコメント、この日はトーズランドとの激しいバトルの中でリズムを崩し、本調子が出せなかったとの感想をもらした。
また、ドヴィツィオーゾとのポイント差を37に広げて、今シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤー獲得が濃厚になりつつある現時点のランキング4位につけるロレンソは、「計算上はまだランキング2位と3位を狙える事になっているが、現実的にはもう難しい。今の自分にとって最も重要なのは、残りの3レースでいい結果を残し、今シーズンをいい形で締めくくる事」と述べており、初年度のランキングトップ3入りについてはすでに諦めた様子だ。
■最後に2台を交わして5番手に浮上した中野選手「終盤までタイヤを温存した」
今回のレースの最終ラップ終盤にポジションを2つ上げて、今期自己最高位となるブルノでの4位に次ぐ好成績の5位を確保する事になるサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、「今週はいくつか問題を抱えていたが、今日のレースはとても調子が良かった。スタートがうまくいき、その後の走行ペースもプラクティスの時より良かったので、すごく満足している。午前のウォームアップの後にミディアム・コンパウンドを選んだが、このタイヤ選択は正しかった。おかげでバイクのバランスがとても良くなり、レース序盤から速い集団についていく事ができるようになった」と、この日の午前に行ったタイヤ選択の成功がレースでの序盤からの好調さにつながった事を明かしている。
また中野選手は、最終ラップでの劇的な追い抜きについて、「コンパウンドが柔らかめだった事から、レース終盤に向けてタイヤをセーブするために序盤はあまりリスクを冒したくなかった。残り5周に入ってからは本当に激しく攻めて、最後にはコントロールラインを抜ける前に2台を交わして5位を獲得する事ができた。今日みたいにレースを楽しめたのは本当に久しぶり。自分たちの実力を今回は示す事ができたので嬉しく思っている。チームに深く感謝したい」と説明した。
■28歳の誕生日を迎えたトーズランド「ロッシとバトルができて光栄だった」
最終ラップでのミスから、中野選手の背後となる6番手でチェッカーを受ける事になるTECH3ヤマハのジェームス・トーズランドは、MotoGPデビュー・イヤーの中でも最も際立った活躍をする事になった今回のレース中に見せたロッシとのバトルについて「今日はトラブルを避けて走るつもりだったが、実際にはすごいバトルを何回かする事になり、その中でも特にバレンティーノとの戦いが特別だった。彼を一度前に出したら限界近くまで攻めないと戦えないし、それではタイヤがすぐに終わってしまうと思ったので、すでにリアタイヤはスピンしていたが、全力で攻め続けて彼を背後に抑えようと頑張った。その後、結局彼には引き離されてしまい、あそこで少しばかり激しく攻めすぎた事がレースの終盤に影響したが、バレンティーノとバトルができて、その中で彼を抜き返す事もできたのは自分にとって光栄な出来事だった」と語っている。
また、レース終盤のミスによりドヴィツィオーゾを巻き込んで中野選手にポジションを譲る事になった件についてトーズランドは「最後の3周はグリップが悪く、多分それが原因でポジションを2つ落とす事になったんだと思う。4位はまだ狙えると思ったので最終ラップのホンダ・ヘアピンでアンドレアを交わそうとしたが、そこで少し大回りになってしまった。アンドレアは怒っているような様子だったが、彼を交わした時に接触は一切していない。彼が怒っているのだとしたら残念に思うが、でも、それなら彼は理由もなく怒っているにすぎない。自分はMotoGPのレース経歴の中で最高の結果を残すために戦っている訳だし、そのためならやれる事は何でもやる。あそこで真矢に交わされてしまったので一度は抜き返したが、その時に再び大回りになってしまい、結果的にはわざわざ前を譲るような形になってしまった」と説明。
最後にトーズランドは、自身の28歳の誕生日に戦ったこの日のレースの感想として「今回の自分の走りには満足している。誕生日にいいレースができたと思うし、楽しむ事もできた。全力を出し切ってこんなにいいバトルができた上に、バレンティーノを交わす事もできたので、今後に向けてのさらなる大きな励みになる」と述べ、ロッシとのバトルが今後の大きな自信につながったとしている。
■終盤に順位を2つ下げたドヴィツィオーゾ「トーズランドが少し危険だった」
4位集団の中での激しいバトルの末に7位でチェッカーを受ける事になるJiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、今回のレース序盤のポジション後退について、「レースの開始時にコースから押し出されていなければ、今日は表彰台に乗れたと思う。1コーナーには左側から進入したが、並んでいたロレンソが外側に膨らんだので自分は草の上に押し出さた」と説明。また、その後の順位挽回については「この影響でオープニングラップ中は100%の走りができなくなったが、そこからはポジションを次々と上げていたバレンティーノ・ロッシの後ろにつけたので、うまく自分も順位を挽回できた」と、ロッシの背後についてポジションを着実に上げてきた事を明かした。
また、最終ラップでの出来事についてドヴィツィオーゾは「本当ならロレンソと自分は3位を狙えたと思うが、集団の中で争っていた時のトーズランドは少し危険だったし、彼があまりにも攻撃的すぎたので、残り10周を前にタイヤが終わってしまった。最後には追い抜きをかけてきたトーズランドを避けるために大回りにならざるを得ず、その瞬間に中野に2台まとめて交わされてしまった」とレース後にコメントしている。
■優勝はホームGPをポール・トゥ・ウインで飾ったケーシー・ストーナー
こうして後方の4位争いがやや遺恨も残る激しいバトルを演じて順位を決定する中、トップのまま全27周回を走りきり、後続を最終的に6秒以上引き離すポール・トゥ・ウインを地元オーストラリアで飾ったのは、ペドロサの転倒により今年度ランキング2位の座がほぼ確実となった2007年度チャンピオン、ドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。
■怒濤の追い上げを見せたロッシは2位、ヘイデンは今期2度目の表彰台を獲得
また、前回の日本GPにおいて最高峰クラス年間タイトルを2年ぶりに奪還、2008年度チャンピオンの座に輝いたばかりのフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、予選での転倒により4列目からのスタートという不利な状況を打破して見事に2位表彰台を獲得。ロッシからコンマ7秒遅れての3位は、不振に苦しんだ今年はシーズン終盤に入ってから調子を取り戻し、インディアナポリスGPでの2位に続く今期2度目の表彰台を獲得した2006年度チャンピオン、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが獲得している。
■MotoGPクラス表彰台を獲得したトップ3の詳細コメント
以下にレース概況の最後として、今回のオーストラリアGPにおいてMotoGPクラスの表彰台を獲得したトップ3の詳細コメントを紹介する。
■優勝)ケーシー・ストーナー「来年はチャンピオンの座を争えれば嬉しい」
「今週末はシーズン全体を象徴するような流れでした。浮き沈みがとても激しかったですからね!幸い最終的にはうまくいき、地元の素晴らしいファンの方々、ならびに自分の家族の見の前でホームGPを優勝できたのでとにかく嬉しいです」とストーナー。
「この結果は必死に頑張ってくれたチームの努力によるところが大きいです。ここではバイクに問題を抱えていましたが、チームのおかげで今日は感触がとても良くなり、レース開始直後から激しく攻め込んで走る事ができました」
「このサーキットではだいたい速いペースで走れますが、同時に激しい戦いに巻き込まれる事が多いんです。ところが今回は集団から最初に抜け出す事ができましたし、ニッキーには終盤に彼がペースを崩すまでずっと背後から激しく追い上げられていたにしても、最後まで安心できる距離を保つ事ができていました」
「来年も再びチャンピオンの座を狙って戦う事ができれば最高でしょうね。いずれにしても、今日は自分のホームGPでの勝利を素直に喜びたいと思います」
■2位)バレンティーノ・ロッシ「ストーナーは予想通り速かった」
「自分にとっては最初から最後までかなりエキサイティングなレースでした。残念ながら昨日の予選で小さなミスを犯してしまった事が、グリッドの位置と体調の両方に大きく影響してしまいましたけどね!」とロッシ。
「午前中は首の具合は大丈夫でしたが頭痛の方はかなりひどかったんです。でも、コスタ先生やクリニカ・モバイルの方々が、たくさんマッサージをしてくれたり薬をくれたおかげで、レースには万全な体調で挑む事ができましたから、彼らには本当に感謝しなければいけません」
「スタートはうまくいって、幸いデ・アンジェリスの転倒にもあとほんの数センチのところで巻き込まれずに済み、その後はロレンソとトーズランドの背後に追いつきました」
「最初にジェームスを交わした時にはそのまま逃げ切れると思っていましたが、抜き返された時には彼のペースも悪くない事に気が付きました。それからはすごいバトルでしたね!彼がすごくいい走りを見せてきたので追い抜きは簡単ではありませんでしたが、完全に交わしてからはジェームスを引き離す事ができたんです。そのまま激しく攻め続けていくうちに、今度は徐々に前を行くニッキーの姿がどんどん大きくなってきました」
「最終ラップまでバトルを続けられて本当に楽しかったですね。それにここで表彰台に立つ時はいつも感動するので、今回の2位という結果にはすごく満足しています。ケーシーは自分が思っていた通りとても強かったので、今日はこの成績が可能な範囲内での最高の結果だったと思いますので、チームとブリジストンに感謝します」
■3位)ニッキー・ヘイデン「テレビの画面にロッシが映った時にやばいと思った」
「本当にスタートがうまくいったので、その時にはレースをリードできるんじゃないかと思いました。序盤は感触がものすごく良くて、レース中の方がレースウイークを通してのどのタイムよりも速かったんです」とヘイデン。
「バイクや他の全てが良好でしたから、しばらくはケーシーと一緒に走り続ける事ができました。ものすごく気分良く走れていましたね。ただ、彼が逃げ出してからはいくつか問題を抱えてしまい、レース序盤の時のようなスピードでのコーナリングはできなくなったんです」
「レースは楽しかったし、すごく面白かったです。このサーキットでの27周回はずっと神経を集中しっぱなしですから、どれだけの速さで自分が走っているかなんて、あまり意識しないくらいですよ」
「終盤にもいいバトルが今回はできましたね。バレンティーノがどんどん近づいてきた時には少し激しく攻め込んだんですが、最終的にはペースを維持する事ができなくなりました。なんとかできる限りの力で彼を抑えきろうと頑張りましたが、最終ラップに突入する直前の最終コーナーをうまく脱出できなかったんです」
「コントロールラインを目がけてメインストレートを走っている時に、最終コーナーから加速してくるバレンティーノの姿がテレビの画面に映し出されているのを見た時には、これは厳しい戦いになるなと思いました。もうあれ以上の走りはできない状態でしたし、タイヤもほとんど残っていませんでしたからね」
「いずれにしても、表彰台に乗れて最高ですし、レースは楽しかったです。ミシュランの担当者はもっと硬いタイヤを自分に履かせたかったようですが、そのタイヤでサイティング・ラップを走った後、自分が元もと選んでいたレースタイヤに履き直したんです。その後のウォームアップ・ラップではタイヤにうまく熱が入りとても調子良く走れました。レース終盤には少しへたりましたが、それでも楽しかったですよ」
「チームと、ここまで自分をずっと応援し続けてくれているファンの方々に、深い感謝の気持ちを贈りたいと思います」
■250クラス、オーストラリアGP決勝レースの結果
以下に、気温18度、路面温度33度、湿度37%のドライ・コンディションに恵まれたオーストラリア・グランプリMotoGPクラス決勝レースの結果を示す。
1) マルコ・シモンチェリ ITA メティス・ジレラ ジレラ 39分02秒553(25周)
2) アルバロ・バウティスタ SPA マプフレ・アスパル・チーム アプリリア 39分02秒776(25周)
3) ミカ・カリオ FIN レッドブルKTM 250 KTM 39分17秒003(25周)
4) フリアン・シモン SPA レプソルKTM 250cc KTM 39分17秒031(25周)
5) アレックス・デボン SPA ロータス・アプリリア アプリリア 39分28秒779(25周)
6) ロベルト・ロカテリ ITA メティス・ジレラ ジレラ 39分28秒945(25周)
7) 高橋裕紀 JPN JiRチーム・スコット250 ホンダ 39分28秒987(25周)
8) アレイックス・エスパルガロ SPA ロータス・アプリリア アプリリア 39分43秒099(25周)
9) ラタパー・ウィライロー THA タイ・ホンダPTT SAG ホンダ 40分02秒772(25周)
10) ファブリツィオ・ライ ITA カンペテーラ・レーシング ジレラ 40分23秒378(25周)
11) カレル・アブラハム CZE カルディオンABモーターレーシング アプリリア 40分25秒355(25周)
12) アレックス・バルドリーニ ITA マテオーニ・レーシング アプリリア 40分25秒417(25周)
13) イムレ・トース HUN チーム・トース・アプリリア アプリリア 40分26秒548(25周)
14) ルーカス・ペセック CZE オート・ケリー-CP アプリリア 40分42秒293(25周)
15) シモーネ・グロティスキ ITA カンペテーラ・レーシング ジレラ 39分21秒775(24周)
16) ダニエル・アルカス SPA ブルセンス・アプリリア アプリリア 39分31秒738(24周)
17) ドニ・タタ・プラディタ INA ヤマハ・プルタミナ・インドネシア ヤマハ 39分31秒909(24周)
-) 青山博一 JPN レッドブルKTM 250 KTM 23分42秒787(15周)
-) マティア・パッシーニ ITA ポラリス・ワールド アプリリア 23分44秒288(15周)
-) エクトル・ファウベル SPA マプフレ・アスパル・チーム アプリリア 6分24秒370(4周)
-) フェデリコ・サンディ ITA Zongshen Team of China アプリリア 1分43秒561(1周)
-) マヌエル・エルナンデス SPA ブルセンス・アプリリア アプリリア 1分50秒629(1周)
■次戦のマレーシアで初の年間タイトルを獲得しそうなシモンチェリ
250ccクラスを制したのは現在のポイントリーダーであるメティス・ジレラのマルコ・シモンチェリ。今回シモンチェリは0.223秒の僅差でマプフレ・アスパルのアルバロ・バウティスタを抑えて今期5勝目を獲得しており、この結果、ランキング2位につけるバウティスタとのポイント差を37に広げた事から、シモンチェリ初の年間優勝は次戦のマレーシアGPで決定する可能性が高くなった。
■高橋選手は7位、青山選手はキャブレタートラブル
日本勢ではJiRチームスコットの高橋裕紀選手が7位。KTMの青山博一選手はレース序盤にキャブレターの不調に見舞われ、その後は5番手のポジションで15周回を走行したものの、16ラップ目にはリタイアしている。
■フリアン・シモンは来期から125ccにステップダウン
なお、今期までの2年間を通して250ccクラスにフル参戦をしてきた現レプソルKTMのフリアン・シモンは、来期の2009年シーズンからはバンカハ・アスパル・チームに移籍して125ccクラスに復帰参戦する事が決定しており、まずは125ccクラスでの年間タイトル獲得を狙う構えだ。ちなみに来期のフリアン・シモンのチームメイトは、現ポラリス・ワールドのライダーであるブラッドリー・スミスになる。
■125クラス、オーストラリアGP決勝レースの結果
以下に、気温20度、路面温度33度、湿度36%のドライ・コンディションに恵まれたオーストラリア・グランプリMotoGPクラス決勝レースの結果を示す(写真の手前は8番手でチェッカーを受けたものの、背後のシモーネ・コルシとの接触を避けるためにひじを上げた事が危険行為とみなされて1秒加算のペナルティーを受けた結果、公式的には9位となったマルク・マルケス)。
1) マイク・ディ・メッリオ FRA アジョ・モータースポーツ デルビ 37分55秒589(23周)
2) ステファン・ブラドル GER グリズリー・ガス・キーファー・レーシング アプリリア 38分05秒844(23周)
3) ガボール・タルマクシ HUN バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 38分08秒695(23周)
4) アンドレア・イアンノーネ ITA I.C.チーム アプリリア 38分08秒738(23周)
5) ポル・エスパルガロ SPA ベルソン・デルビ デルビ 38分22秒385(23周)
6) サンドロ・コルテセ GER エミー・カフェラテ アプリリア 38分22秒712(23周)
7) エステベ・ラバト SPA レプソルKTM 125cc KTM 38分22秒770(23周)
8) シモーネ・コルシ ITA ジャック&ジョーンズWRB アプリリア 38分23秒460(23周)
9) マルク・マルケス SPA レプソルKTM 125cc KTM 38分23秒876(23周)
10) スコット・レディング GBR ブルセンス・アプリリア・ジュニア アプリリア 38分30秒676(23周)
11) エフレン・ヴァスケス SPA ブルセンス・アプリリア・ジュニア アプリリア 38分52秒981(23周)
12) ロレンソ・サネティ ITA ISPA KTMアラン KTM 38分53秒002(23周)
13) パブロ・ニエト SPA オンデ2000KTM KTM 38分53秒040(23周)
14) ジョアン・オリベ SPA ベルソン・デルビ デルビ 38分53秒128(23周)
15) ロビン・ラッサー GER グリズリー・ガス・キーファー・レーシング アプリリア 39分01秒907(23周)
16) Marco Ravaioli ITA マテオーニ・レーシング アプリリア 39分01秒909(23周)
17) Adrian Martin SPA バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 39分38秒030(23周)
18) Cyril Carrillo FRA FFMホンダGP125 ホンダ 39分38秒044(23周)
19) エンリケ・ヘレス SPA ISPA KTMアラン KTM 39分39秒381(23周)
20) Jed Metcher JPN Angelo's Aluminium Racing ホンダ 38分10秒914(22周)
21) ランディ・クルメンナッハ SWI レッドブルKTM 125 KTM 39分19秒340(21周)
-) ブラッドリー・スミス GBR ポラリス・ワールド アプリリア 36分02秒235(21周)
-) Bastien Chesaux SWI WTRサンマリノ・チーム アプリリア 24分40秒836(14周)
-) セルジオ・ガデア SPA バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 21分37秒051(13周)
-) スティーヴィー・ボンセー USA デグラーフ・グランプリ アプリリア 20分01秒748(12周)
-) Rhys Moller AUS Rhys Moller Racing ホンダ 17分36秒404(10周)
-) ジュール・クルーセル FRA ロンシン・レーシング ロンシン 13分37秒917(8周)
-) ブラッド・グロス AUS グロス・レーシング ヤマハ 14分13秒562(8周)
-) ヒューゴ・バン・デン・ベルグ NED デグラーフ・グランプリ アプリリア 11分55秒740(7周)
-) ロベルト・ミュアサン ROU グリズリー・ガス・キーファー・レーシング アプリリア 3分35秒770(2周)
-) ラファエレ・デ・ロサ ITA オンデ2000KTM KTM 3分40秒834(2周)
-) アレックス・マスボー FRA ロンシン・レーシング ロンシン 2分08秒715(1周)
-) ニコラス・テロール SPA ジャック&ジョーンズWRB アプリリア 2分14秒678(1周)
-) 中上貴晶 JPN I.C.チーム アプリリア -分-秒-(0周)
-) ドミニク・エジャーター SWI アジョ・モータースポーツ デルビ -分-秒-(0周)
■マイク・ディ・メッリオの年間タイトルが決定
今回のオーストラリアGPでは125ccクラスの年間タイトルが決定しており、この日の決勝レースを制したアジョ・モータースポーツのマイク・ディ・メッリオが自身初となるチャンピオンの座に輝いている。
■中上選手は1ラップ目にリタイア、小山選手は次戦のマレーシアからレースに復帰
日本勢では、I.C.チームの中上貴晶選手がオープニング・ラップ中に他のライダーに押し出されて転倒しリタイア。なお、ISPA KTMアランから日本GP後に解雇通達を受けた小山知良選手は、次戦のマレーシアGPからレッドブルKTMのライダーとしてグランプリに復帰する。
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