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カタルーニャ合同テスト、ドゥカティーはGP9、ホンダは新型エンジン |
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2008年6月19日
先週のカタルーニャGP決勝レース翌日となる6月9日から2日間、MotoGPクラスの各チームはそのままバルセロナ近郊のカタルーニャ・サーキットに残り、2日間の合同テストを実施している。ここでは、今週末のイギリスGPからの連戦に向けての準備や新型パーツなどのテストが行われたカタルーニャ合同テスト、6月9日と10日の2日間の模様を紹介する。
■ドゥカティーが開発の手戻り防止策としてGP9を投入
今回の合同テストで特筆すべき点は、ドゥカティーが2009年型マシンであるデスモセディチGP9を他メーカーに先駆けて投入し、開発の手戻り防止のために早々とレギュラー・ライダー2名に試乗させている事だろう。なお、デスモセディチの開発責任者であるフィリッポ・プレジオーシの思惑を語ったコメントは1日目のドゥカティー・チーム概況を参照の事。
■ペドロサが負傷、ニューマチック・バルブ・エンジンのテストはヘイデンのみに
その他には、ホンダがここまでに実戦投入の進んでいないニューマチック・バルブ・エンジンをレプソル・ホンダの2名に改めて提供し、本格的にこの2日間の合同テストを利用して従来型スプリング・バルブ・エンジンとの比較検証を行っている点にも注目だが、不幸にしてダニ・ペドロサがテスト初日に転倒して病院に運ばれた事から、2日間を通してのテストはニッキー・ヘイデンのみが行っている。特に深刻な怪我はなかったペドロサの当日の状況とニューマチック・バルブ・エンジンについての両ライダーの感想はレプソル・ホンダの2日間の各概況を参照の事。
写真上はRC212Vの排気管に取り付けられたラムダ・センサー(燃焼状態をECUにフィードバックするO2センサー)。
■6月9日(月)、カタルーニャ合同テスト1日目
合同テスト初日、月曜日のサーキットは午後からのみの利用可能となったが、ドライ・コンディションとなったこの日はMotoGPクラスの全10チームが参加し、各々に今シーズンのここまでに抱えた課題の解消に取り組む中、一部では新パーツや新マシンの検証作業を行う等の忙しい1日を過ごし、シーズン中盤戦以降の戦いへの調整に時間を費やしている。
■参加レギュラー・ライダーは15名
MotoGPクラスの全チームが参加した初日、この日はほぼ全レギュラーライダーがテストに参加しているが、怪我や他のテストへの参加を理由に計3名のレギュラーは不参加となっている。
■負傷のロレンソとカピロッシは合同テストに不参加
怪我のために今回のテストに参加できなかったのは、カタルーニャGP初日のフリー・プラクティスにおいて頭部を強打し右手を負傷したことから前日のレースを欠場する事になったフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソと、前日のレース中に右の手のひらを骨折して小指の肉にも深い外傷を負ったリズラ・スズキのロリス・カピロッシの2名。
■ロレンソは今週末のイギリスGPから復帰
フリー・プラクティスの転倒時に心配された頭部へのダメージは物理的に特に問題のない事が分かり、記憶がほぼ完全に戻った合同テスト初日の6月9日には右手の薬指と小指に手首の皮膚を移植する手術をバルセロナのデシェウス病院で受けたロレンソは、現在までに回復は順調に進んでおり、今週末のイギリスGPには右手に特別製のサポーターを付ける事で問題なく出場できる事が判明している。
■カピロッシはイギリスGPを欠場、代役はスピーズ
レース中に右の手のひらに深刻なダメージを受けたカピロッシは今週末のイギリスGPへの出場は断念しており、連戦となる来週のオランダGPからの復帰を目指して回復トレーニングに時間を費やしているという。なお、イギリスGPのカピロッシの代役には現役AMAスーパーバイク・チャンピオンのベン・スピーズの出場が決定している(カピロッシの欠場と代役ライダーに関する詳細はこちらの記事を参照の事)。
■今シーズン不調のウエストは日本でカワサキと単独テスト
また、他のテストへの参加を理由に今回の合同テストを見送ったのは、開幕以来セッティング上のトラブル解消が全く進まず、リアのトラクションが得られない事からホイール・スピンに悩まされ続けているカワサキのアンソニー・ウエストの1名だ。ウエストはカタルーニャGPの終了と同時に日本に移動し、カワサキのスタッフと共に時間をかけて現在までに抱えている彼のマシンの出力特性の改善を目的とした単独テストに集中した様子だ。
■背中を強打したホプキンスは合同テストには参加したが・・・
ちなみにウエストのチームメイトであり、カタルーニャGP初日午後のフリー・プラクティス2においてハイサイドを喫し背中の左側を強打、2日目以降は左コーナーを曲がる度に息を吸うのさえ辛かったというジョン・ホプキンスだが、レース当日の午後にチームは彼の合同テストへの参加は不明と発表していたが、この日の午後にホプキンスはカタルーニャ・サーキットに無事な姿を見せ、他のライダーと共にテストを実施している。
■後の背骨の骨折が判明したホプキンス、イギリスGPには出場
しかしながら、その後の検査でホプキンスは強打した尾てい骨近くの脊柱(背骨)にひびが入っていた事が判明しており、カワサキ・レーシング・チームは6月17日のリリースの中でその事を正式に公表しているが、ホプキンスはイギリスGPには予定通り出場するとの事だ。
■レギュラー・ライダー以外の合同テスト初日の参加者
MotoGPレギュラー以外では、合同テスト初日はスズキからは青木宣篤選手、カワサキからはオリビエ・ジャック、ホンダ(HRC)からはエルワン・ニゴン、ドゥカティーからはヴィットリアーノ・グアレスキとニッコロ・カネパの5名のテストライダーも参加しており、レギュラー15名と合わせて総勢20名がこの日は周回を重ねている。
■カタルーニャ合同テスト初日の走行結果
カタルーニャ合同テスト初日の走行結果を各ライダーのこの日の自己ベスト順に示す。午後から行われたこの日のテストの走行条件は気温が25度、路面温度が40度、湿度が35%のドライ・コンディションだった。路面コンディションは前日のレースの時よりも改善されている。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分41秒533(52周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分41秒857(61周)
3) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分42秒039(50周)
4) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 1分42秒505(62周)
5) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分42秒699(42周)
6) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分42秒721(73周)
7) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分42秒755(57周)
8) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分42秒775(56周)
9) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分42秒782(93周)
10) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 1分42秒818(64周)
11) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 1分43秒127(38周)
12) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分43秒197(72周)
13) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分43秒552(34周)
14) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分43秒630(23周)
15) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分44秒326(60周)
16) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分44秒927(55周)
17) 青木宣篤 JPN リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分45秒011(73周)
18) エルワン・ニゴン FRA HRC RC212V 1分45秒603(78周)
19) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分46秒122(48周)
この日に予選タイヤを装着して自己ベストタイムを記録した事が判明しているのは、トップのケーシー・ストーナー、2番手のバレンティーノ・ロッシ、3番手の中野真矢選手、5番手のアレックス・デ・アンジェリス、7番手のシルバン・ギントーリの5名。
■初日の各チームの概況
合同テスト1日目の作業内容などを公表している各チーム初日の状況は以下の通り。
■ドゥカティーは2009年型マシンを早くも今回の合同テストに投入
ドゥカティーはこの日、他のメーカーに先駆けて2009年型マシンをテストに投入、デスモセディチGP9を世界に初披露している。当初ドゥカティーは2日目のテスト中にケーシー・ストーナーが初走行を行う予定としていたが、2日目は天候が崩れる可能性が高かった事から1日前倒しでの公開に至った。
■初日はストーナーと開発ライダー2名がGP9を使用
初日はストーナーならびに開発ライダーのヴィットリアーノ・グアレスキとニッコロ・カネパがGP9での走行を行い、レギュラーライダーのマルコ・メランドリは終日GP8での走行に初日は専念した。なお、2日目にGP9での走行を予定しているメランドリの初日のタイムは15番手となる1分44秒326だった。
■この日のトップタイムはGP9と予選タイヤで記録
ストーナーはGP9に予選タイヤを装着し、この日のトップタイムである1分41秒533を記録。ちなみにレースタイヤを装着したGP9でのストーナーのタイムは1分42秒632だった。
■ストーナー「GP9の感触はいいが、まずはGP8の競争力を高める事」
ストーナーは初めてGP9を経験したこの日のテスト内容について「今日の目的は新しいシャシーの設計コンセプトが高い性能を発揮できるかどうか判断する事だったが、今の感じでは良さそうと言える。GP8と同じセッティングを使用したらすぐにいいタイムが出せたし、GP9の特性に合わせてほんの少しそれを調整した途端に好感触が得られた。もう少し時間をかけたらさらに速く走れると思う。ただ、もちろんこれは現時点の自分たちの課題ではないし、冬季テストに入ってからゆっくり取り組めばいい事。明日はGP8に作業を戻して重要なタイヤテストを行うつもり。まだ2008年シーズンは長いし、今後に向けて競争力を高めておきたいからね」とコメント。
■プレジオーシが語るGP9早期テスト投入の理由
また、デスモセディチの父として知られ、ドゥカティー・コルセのゼネラル・マネージャーを務めるフィリッポ・プレジオーシは、今回GP9をテストに投入した経緯について以下の通り説明している。
「この段階のGP9をファクトリー・ライダーに直接テストしてもらう決断をした理由は、マシンの開発は終盤に入るにつれて作業がより難しくなりますが、その結果としていくつかの分野に手戻りが発生するような事態が起こりうるからです」とプレジオーシ。
「エンジンやシャシーの性能についてはデータから分析を進める事ができても、その他の部分の開発にはライダーの意見が不可欠なのです。ですから今回彼らの反応を確認し、意見などを聞いてその内容を理解しておく事は、現在のわたしたちの開発の方向性が正しいかどうかを判断する上で大変に重要と言えます」
「シャシーに今回わたしたちが施した変更は他の部分と比較して非常に革新的なものですが、それでもこのマシンは初期の開発マシンであるGP3の路線を現在も引き継いで設計されています。要するに開発の方向性そのものに大きな変更はありませんが、その流れの中で新たな進歩を遂げた訳です」
「990ccマシンの時はシートの台座とフットペダルはフレームに固定されていましたが、800ccマシンでは完全にそれらを分離しました。さらにGP9におけるフロント部はより支柱に特化しての機能性が高まっており、その所要サイズもより限られた範囲で実現できるようになっています」
「シャシーにカーボンファイバーを用いた事についてですが、これは前述の効果と大きな関係性がある訳ではなく、今までのものとは全く違うシャシー形状を実現するのに役立っています」
「ケーシーの第1印象は良かったようです。明日はマルコが試す事になりますが、彼が現在のバイクよりも新しい方のバイクに好感触を示してくれる事を願っています」
■メランドリ「中国GPの時の好感触はまだ戻らない」
初日は現行マシンのGP8のみで走行し、開幕からの不調の打開策をこの日も探ったマルコ・メランドリは、「今日は電子制御、セッティング、タイヤなど、多くのテストに取り組んだ。好感触の得られるリアタイヤを1本見つけたが、理想にはまだほど遠い状態。中国の時につかんだ感触が取り戻せるように、まだ何かを探し出す必要がある」とコメントしており、今シーズン最高位の5位を獲得した中国GPの時のマシンの感触はこの日も見つける事ができなかった様子だ。
■フィアット・ヤマハ、ロッシはレースウイーク中の課題を解消
今回のカタルーニャ合同テストには初日のみ参加したフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、レースウイーク中に抱えていたコーナー進入時に十分な速度が得られないセッティング上の問題点の原因究明と改善に取り組んだ様子だ。
■レースウイーク中は苦戦した予選タイヤで好タイム
この中でロッシは多くのブリヂストンタイヤのテストも行い、レースウイーク中の土曜日にはセッティング上の問題からあまりタイムを縮められなかった予選中のタイムを0.57秒上回る1分41秒533を今回予選タイヤで記録している。
■ブリビオ監督「レース序盤のペース改善に向けて取り組む事もできた」
ブリヂストン側フィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダビデ・ブリビオは、今回のテストの内容について「次の2レースに役立つ良いデータを確保する事ができた。土曜日の予選タイヤでのタイヤを上回る事ができたのも良い収穫だったと言える。今回はレース序盤の走りを改善する方法に取り組んだが、今日の結果にはとても満足できたので次戦以降が楽しみ」とコメント。
■ホンダ・グレッシーニの中野選手は予選タイヤで3番手タイム
ストーナーとロッシに次ぐ初日のテストの3番手タイムを記録したのは、ブリヂストンの予選タイヤを装着して1分42秒039を記録したサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手だった。
■中野選手は予選当日のタイムをコンマ5秒改善
この日の中野選手とチームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは、ブリヂストンのエンジニアとの共同作業を進めながらタイヤとブレーキの性能改善に取り組み、レースタイヤと予選タイヤの両方に関しての作業を行う中、中野選手は予選タイヤ装着時にレースウイーク中のタイムを0.5秒縮める事に成功している。
また、2名はニッシンが持ち込んだ新型のブレーキ・パーツも試しており、特にデ・アンジェリスがそれらのパーツに好感触を示しているという。
■中野選手「マシンをライディング・スタイルにより合わせる作業にも集中」
競り合いなどの場面でよりアグレッシブな走りができるよう、自分のライディング・スタイルにマシンをより近づける作業もこの日は行ったという中野選手は、「今日は半日のテストは主にブリヂストンとの作業に集中した。夜に雨が降らなかったので昨日のレースの時よりも路面コンディションは良く、タイムをコンマ何秒か大きく縮める事ができたし、特に予選タイヤではコンマ5秒も改善された。バイクをもっと自分のライディング・スタイルに合わせるための作業も行い、同時にタイヤの寿命を持たせられるよう、よりスムーズな走りも心がけた。結果にはかなり満足できているので次のレースには自信が持てる」とコメントし、次戦以降に向けての期待感を示している。
■デ・アンジェリス「走り切れていたらいいペースだった事を証明」
前日のカタルーニャGP決勝ではリズラ・スズキのロリス・カピロッシと接触して転倒リタイア、レースを最後まで走りきる事ができなかったデ・アンジェリスは「今日はニッシンが持ち込んだ新しいフロントブレーキを試したが結果には満足。よりパワフルなフロントブレーキのおかげでラップタイムが縮めやすくなったので、次のイギリスGPではこれを使用したい。今日はムジェロの時の好調さを再確認するためにブリヂストンと一緒にレースタイヤと予選タイヤのテストも行った。昨日のレースは本当ならいいペースで走れた事が検証できたので満足。ただ、ドニントンはここよりも路面温度が低くなるので、現地でも改めて確認する必要はあるが。今日は自分の苦手分野であるスタートの練習も何回か行った」とコメントしており、MotoGPクラスでの自己最高位である4位を獲得したムジェロでの調子を次戦のドニントン・パークでも再現する事に意欲を燃やしている様子だ。
■レプソル・ホンダはニューマチック・バルブ・エンジンの本格テストに着手
イタリアGPにおいてHRCの開発ライダーを務める岡田忠之選手がレースを実際に走って見せたホンダの新型ニューマチック・バルブ・エンジンを、今後の実戦使用に向けて本格的にこの2日間を使って徹底的にテストする予定だったレプソル・ホンダのレギュラー2名だが、残念ながら2日間を通して新型エンジンをテストするのはニッキー・ヘイデンの1名のみとなってしまった。
■ペドロサがハイサイドを喫して背中を強打、2日目のテストをキャンセル
レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンとダニ・ペドロサは、新型のニューマチック・バルブ・エンジンと従来型のスプリング・バルブ・エンジンをそれぞれに搭載したマシンを交互に使用し、新型エンジンの実戦投入の可否判断を行うべくデータ収集とセッティングの調整を初日から開始したが、ダニ・ペドロサはこの日の作業半ばにして1コーナー通過時にハイサイドを喫し転倒、背中から落下して腰の付近を強打した事から、レースウイーク初日にホルヘ・ロレンソが運ばれたのと同じ病院であるバルセロナのデシェウス病院に搬送され精密検査を受ける事になった。
■従来エンジンのマシンに乗り換えた直後の転倒、2日間病院で経過観察
ペドロサは午後のセッション開始直後にはスプリング・バルブ・エンジン搭載マシンに乗り、この日の自己ベストタイムである1分43秒552を記録してからニューマチック・バルブ・エンジンに乗り換えて1分43秒81を記録したが、ここでマシンに電機系トラブルが発生した事から再びスプリング・バルブ・エンジン搭載マシンに乗り換えて作業を再開したところで転倒し、病院に運ばれている。
■ペドロサ「新エンジンでは10周しか走ってないのでなんとも言えない」
病院でのレントゲン検査の結果、幸いペドロサには骨折などの致命傷は一切見つからなかったものの、背中には打撲のあとと激しい痛みがある事から、念のためペドロサは炎症を抑える薬を投与され、その後48時間は病院内で経過観察を受ける事になったため、翌日の2日目のテストはキャンセルしている。
その後は無事に退院し、今週末のイギリスGPにも問題なく出場するダニ・ペドロサは、転倒後に精密検査を受けた後の病院でのコメントとして「最初のシケインで方向を変えようとした途端に転んだが、かなり激しいハイサイドだった。走行を再開して2周目の出来事だったが、多分まだタイヤが十分に温まっていなかったんだと思う。転んだ時は標準エンジンの方でタイヤテストをしている最中だった。ニューマチック・バルブ・エンジンでは10周しか走っていないので、それについてはまだコメントできる段階にはない」と語った。
■ヘイデン「新エンジンに好感触、さらに走り込んでの検証は必要」
一方ヘイデンはペドロサが病院に運ばれた後も両方のエンジンのテストを継続しており、ニューマチック・バルブ・エンジンの方に満足する結果が得られたとコメントしている。トップスピードとエンジンの信頼性の高さに好感触が得られたとするヘイデンは、この日新エンジン搭載マシンのセッティングに大半の時間を費やし、初日6番手の1分42秒721を記録している。2日目はフルレース周回を新エンジンの方で試す予定だ。
「今日は順調な1日だった。新しいバイクを試したが自分の感触は良かったし、いい点がいくつかある。ただ、もう少し長距離を走り込んでチェックを続ける必要はあると思う。今日は新しい方のマシンに一般的なセッティング作業を施したが、レースウイーク中は予想以上のタイヤの消耗に苦しんだので、今回はタイヤの持久力を確認するためにレースタイヤでしか走らなかった。明日はもっと走り込むつもりだし、多分新しいシャシーも同時に試すつもり」とヘイデン。
■パッケージ全体のセッティング改善策に自信を示すド・プニエ
イタリアGPでの転倒により痛めた左手の小指を、カタルーニャGP初日のフリー・プラクティスでも再び痛めてしまったホンダLCRのランディ・ド・プニエは、この日はミシュランのレースタイヤのテストを行いながらシャシーのセッティング改善を試みる中で8番手タイムの1分42秒775を記録している。
■ド・プニエ「セッティングの改善がかなりうまくいった!」
この日にバイクに施した作業の内容については全面的に満足できた様子のド・プニエは、「今日のテストでセッティングに施した調整にはすごく満足できた。リアのサスペンション関連など多くの問題点を解消する事ができたし、さらにフロントのセッティングを調整した事でホイールスピンを低減する事にも成功した。ここのレースタイヤでの自己ベストを更新する事もできている。バイクのパッケージ全体に関していい解決策が今回は見つかったと思っているので、明日もこのままセッティング作業を続けて次戦に備えたい」とコメント。
■トッティから電話をもらい上機嫌のドヴィツィオーゾ
カタルーニャGP決勝では開幕戦と同じMotoGPクラスにおける自己最高位の4位を獲得したJiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、レース当日の晩に母国イタリアのサッカー選手であるセリエA所属のフランチェスコ・トッティから祝福の電話を受けて上機嫌だ。
■徹底的にカタルーニャGP4位獲得マシンを分析するJiRチーム・スコット
このテスト初日、チームは4位を獲得する事に成功したセッティングを施したままのマシンで作業を開始し、そのセッティングを徹底的に分析して、今後のレースでも同様の効果が得られるマシンに迅速に仕上げるためのヒントを終日かけて探った様子だ。
ミシュランのレース用新型リアタイヤをテストする中、ドヴィツィオーゾとチームはレース当日のセッティングと過去に使用した他のセッティングを何度も比較し、今後に役立つ多くのデータを収集する事ができたとしている。この目的のために初日はレースタイヤしか装着しなかったドヴィツィオーゾのタイムは10番手となる1分42秒818だった。
■ドヴィツィオーゾ「レース中の自己ベストの速さで簡単に走れた」
この日はシャシーやエンジン制御システムの数値調整も行い、マシン全体の安定性が増した事に満足したというドヴィツィオーゾは、「今日の作業についてコメントする前に、昨日の夜に祝福の言葉をくれたフランチェスコ・トッティに感謝の気持ちを示したい。とにかくものすごく嬉しかった!今日はレースペースも改善できたし、自分の走りにも満足できている。シャシーの調整作業も進んだので、より安定性も増した。今日の自己ベストラップは昨日よりも良くなっているが、何回も同じような速いラップタイムで繰り返し走れたのが今日は面白かった。この結果はピットにいるメンバーと新しいタイヤのおかげだと思う。今日は午後の半日しか時間がなかったので、予選タイヤは明日に試す予定。予選タイヤでもタイムの改善が進む事を願っている」とコメント。
■6月10日(月)、カタルーニャ合同テスト2日目
続いて、合同テスト2日目の結果と概況を紹介する。フィアット・ヤマハとサンカルロ・ホンダ・グレッシーニ、およびTEC3ヤマハの3チームが初日のみでテストを終えた事から、この日は合計7チームが引き続きテストを実施した。
なお、背骨を痛めているジョン・ホプキンスも1日目のみの作業でテストを終えている事から、2日目のカワサキはテスト・ライダーのオリビエ・ジャックのみが走行。レプソル・ホンダはテスト初日の転倒によりペドロサが検査入院した事から、ニッキー・ヘイデンの1名のみが2日目もニューマチック・バルブ・エンジンの検証を行っている。
■午前は小雨、夕方には雷雨となった合同テスト2日目の走行結果、
以下にカタルーニャ合同テスト2日目の走行結果を各ライダーのこの日の自己ベスト順に示す。なお、当初この日は終日のテストが予定されていたが、午前中は小雨が断続的に降った事からテストは路面が乾き始めた午後から行われており、さらに午後5時頃には雷雨となった事から、周回数は初日に比べて全体的に少なめだ。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分42秒180(38周)
2) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 1分42秒224(32周)
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分42秒555(43周)
4) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分42秒590(39周)
5) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分43秒039(38周)
6) ニッコロ・カネパ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分43秒683(27周)
7) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分44秒074(34周)
8) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分44秒538(37周)
9) 青木宣篤 JPN リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分44秒665(50周)
10) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分44秒938(35周)
11) エルワン・ニゴン FRA HRC RC212V 1分45秒181(52周)
12) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分46秒163(-周)
13) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分47秒022(31周)
この日に予選タイヤを装着した事が判明しているのは2日目の2番手タイムを記録したアンドレア・ドヴィツィオーゾのみ。ドヴィツィオーゾのタイムは初日からの2日間総合ではストーナー(1分41秒533)、ロッシ(1分41秒857)、中野選手(1分42秒039)に次ぐ4番手タイムとなる。
■2日目の各チームの概況
合同テスト2日目の作業内容などを公表している各チームの状況は以下の通り。
■ドゥカティー、GP8に乗り換えてもストーナーはトップタイム
初日に初めて試した来期型マシンのGP9でトップタイムを記録したドゥカティーのケーシー・ストーナーは、2日目には現行マシンのGP8に乗り換えてこの日も再びトップタイムを記録している。2日目のストーナーのタイムは1分42秒180だった。
■GP9に乗って落胆するメランドリ
一方、マルコ・メランドリは2日目に入り初めてGP9を試乗し、その4回のショートランの中で12番手タイムの1分46秒163を記録しているが、メランドリは現在も苦手とするGP8とあまりにも酷似したGP9の乗り味に落胆しているという。メランドリのこの日のタイムはHRCの開発ライダーであるエルワン・ニゴンのタイムにも及んでおらず、あまり積極的に走行を行ってはいない様子だ。
■開発ライダーのカネパはGP9に乗り2日目の6番手タイムを記録
なお、今シーズンからはブリヂストンのタイヤ開発ライダーとして合同テストに参加する事の多いニッコロ・カネパは、この日はGP9でメランドリと同じ4回のショートランを行う中、レギュラー・ライダーに食い込む6番手タイムの1分43秒683を記録している。カネパは2007年にはSTK1000カテゴリにドゥカティー・ゼロックス・ジュニア・チームから参戦していた。
■引き続きグアレスキはセテ・ジベルナウと共にムジェロでGP9をテスト
また、ドゥカティー・コルセ専任の開発ライダーであるヴィアトリアーノ・グアレスキは、久しぶりにMotoGP関係の開発作業に関わる事になったセテ・ジベルナウと共に、今週はムジェロでGP9の開発テストを実施している。
■ストーナー「とても満足、今後の自信につながるテストだった」
GP8とGP9の両方に関する作業を行った2日間のテストを終えたストーナーは、「昨日ほど走行条件が良くなかったにもかかわらず、予定していたGP8での作業を全て終える事ができて嬉しい。今回は新しい電子制御系の調整を行い、レースウイーク中に問題を抱えていたコーナリング中の感触が驚くほど良くなった。雨のせいで路面コンディションが良くなかったが、それでもいいラップタイムを記録できたから安心してバルセロナを離れる事ができる。とても満足のいく作業ができたし、今後に向けての自信にもつながった」とコメントしており、カタルーニャでのレースウイーク中に抱えていたGP8の問題点を解消できた事に深く満足している様子だ。
■メランドリ「GP8に似ている以上、自分にとっては難しい」
この日に初めてGP9を経験したマルコ・メランドリは、あまり本気の走り込みを行う様子もなく走行を終えている。「今日はGP9で少しだけ走ったが、いくつかの点で良好な部分は確実にあった。ただ、他の部分はGP8に類似しているので、自分がいい感触を得る事は難しい」とメランドリ。
■2日目の作業は消化不良に終わったJiRチーム・スコット
合同テスト初日はカタルーニャGPで使用したレース用セッティングが好調だった理由を分析するのに時間を費やし、予選タイヤのテストを2日目にまわしたJiRチーム・スコットだが、運悪くこの日は断続的な小雨に見舞われる不安定な路面条件となり、朝早くからサーキットに到着していたチームが本格的な作業を開始できたのは路面が乾き始めた午後になってからだった。
■レースタイヤ装着時のマシン・バランスは解決できず
その後に予選タイヤを装着したRC212Vで走行を開始したドヴィツィオーゾは、マシンのセッティングを不安定な路面コンディションに合わせる事を目的にエンジン制御システムの調整を行いながらの走行を行い、その中で2日目の2番手タイムとなる1分42秒224を記録したが、この日にテストした新型レースタイヤ装着時のマシンバランスについては課題を抱えたまま時間切れとなってしまった様子だ。
■ドヴィツィオーゾ「朝早くから来たのに・・・」
2日目のテストがやや消化不良に終わった様子のドヴィツィオーゾは、「まだテストしたい事がたくさんあったので、今日は1日をできる限り有効に使いたかった。だから午前10時にはサーキットに到着したが、雨が降り出したのでそこで作業を中断しなければいけなかった。小雨はその後も断続的に終日降り続いたので、今日は結局思い通りに走り込む事はできていない。午後の序盤に路面が乾いてから1時間半くらいはミシュランと一緒に予選タイヤのテストを行い、常に予選で抱えている問題を解決しようと頑張ったので、いくつか進展を得る事はできた。レースタイヤに関してはそれほど自信が持てるような感触は得られなかったので、マシンのリアとフロントのバランスを改善する作業は今後も続けなければいけない。ただ、グリップが悪い路面状況の上に作業時間が少なかった事を思えば、今回のテストの結果は良好だったと言えるし、チームは正しい後方に進んでいると思う」とコメントしている。
■レプソル・ホンダ、新型エンジンをすっかり気に入ったヘイデン
レプソル・ホンダ・チームは、ダニ・ペドロサが初日に転倒し、病院で経過観察を受けて安静にしていた事から、2日目のこの日はニッキー・ヘイデンの1名のみがテストを実施している。
ヘイデンは1日目に引き続き新エンジンのニューマチック・バルブ・エンジンと従来型スプリング・バルブ・エンジンを交互に乗り換えて試す中、新エンジンの方がすっかり気に入った様子だ。
■カタルーニャGP決勝日のレースペースを新型エンジンで1秒上回ったヘイデン
初日から予定していた通り、この日の午後に新エンジン搭載マシンの方でレース・シミュレーションを実施したヘイデンは、1分42秒台後半から1分43秒台前半のラップタイムでフルレース周回を走りきっており、カタルーニャGP決勝レース中のヘイデンのレースペースをラップ平均的に見て1秒上回っている(写真下はRC212Vのチタン・エキゾースト)。
■ヘイデン「使っていいならすぐ使う」
路面コンディションが良くないにもかかわらず、従来エンジン搭載マシンでレース中に記録したペースを今回の新型エンジンで上回ったヘイデンは、「今日はあんまり有り難い天気ではなかった。1時間毎の通り雨が数回あったせいで路面が濡れてしまい、予定していた全ての作業を終える事はできなかったが、天気ばかりはどうしようもない。いずれにしても、今日は新しいエンジンでたくさん走り込めたし調整作業を行う事もできた。少しだけまだ問題を抱えたままなのでそこは悔しいけど。他にはロングランに適したエンジン調整も進めてみたが、20周回以上を走る中で非常に安定した走行ペースを保つ事ができたので嬉しい。完全に仕上げるにはもっと時間が必要だが、自分の気に入るような点は十分に見つかっている。ニューマチック・バルブ・エンジンの感触はとても良くなっているので、スタッフが準備OKと言ってくれればすぐにレースに使いたいし、今から楽しみ」とコメントしており、特にニューマチック・バルブ・エンジンの使用を今後避ける理由は見つからないといった様子だ。
■路面が濡れていた正午前に作業を開始したホンダLCR
初日と同じくレースタイヤ装着時のサスペンションまわりのセッティング改善に取り組み、合同テストの2日間を通して最後まで予選タイヤを一度も装着しなかったというホンダLCRのランディ・ド・プニエは、2日目のこの日は5番手タイムとなる1分43秒039を記録して全ての作業を終えている。
■ド・プニエ「予選タイヤは一度も履かなかったが有益なテスト」
初日のマシンのセッティング改善状況に深く満足していたド・プニエは、2日目の作業を終えて「今日は天候が不安定だったので38周しか走行できなかった。まだ路面が濡れていた午前のセッション終盤に作業を開始して午後の4時30分まで走ったが、それからすぐに激しい雨が再び降り始めた。ただ、それでもフロントのジオメトリを少し調整する事はできたし、ミシュランの協力のおかげでリアのグリップ改善を目的にレースタイヤを何本か試す事もできている。今回のテストはレースタイヤとサスペンションの性能改善が目的だったので、この2日間は1本も予選タイヤは装着しなかったが、今後のレースに役立つ多くのデータを収集する事はできた」と述べ、今回のカタルーニャ合同テストが今後の戦いに向けて有益な内容だった事を説明している。
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