|
|
|
第3戦ポルトガルGP初日、好感触の消えたドゥカティー |
|
|
|
|
2008年4月12日
2008年度MotoGP第3戦目となるポルトガルGPが、4月11日のエストリル・サーキットにてグランプリの初日を迎えている。
ここでは、午前は路面状態がフル・ウェットからハーフ・ウェットに移り変わる難しい走行条件に見舞われ、午後には湿った部分がやや残るドライ・コンディションとなったMotoGPクラス初日の2回のフリー・プラクティスの模様と各チームのセッティング状況、ならびに全ライダーのコメントなどを紹介する。
■滑りやすいアスファルトに難しい気象条件となった初日のエストリル
ポルトガルのエストリル・サーキットは、イギリスのドニントン・パークと同様にドライでもグリップを得るのが比較的に難しく、雨が降った際のグリップの悪さは特に有名だが、不幸にしてこの日は午前のMotoGPクラスのフリー・プラクティスの前に行われた125ccクラスのセッションが雨に見舞われ、ハーフウェットとなったMotoGPクラスのフリー・プラクティス1では多くのライダーが転倒のリスクを避けて激しく攻め込むのを控えており、各チームは主に冬季シーズン中にはあまりテストするチャンスがなかったウェット・セッティングの検証作業に時間を費やしている。
午後には路面がほぼ乾いた事で全ライダーはスリック・タイヤを履き、ドライ・コンディションが予想されている日曜日のレースに向けてのセッティング作業を開始、全体のラップタイムは昨年のサーキット・レコードの1秒落ちのところまで改善されたが、この時も路面温度があまり温まらず、午前中の雨の影響で湿った個所が多かった事から、多くのライダーがこの日は転倒する事になった。
天気予報によれば、決勝レースの行われる日曜日の雨の心配は少なくなったようだが、最終予選の行われる2日目の土曜日も初日に引き続き不安定な天候は続く様子だ。
■1日目の転倒者や怪我人の情報
多くのライダーがグリップを失いコースアウトをしているこの日、MotoGPクラスの初日2回のフリー・プラクティス中に目立った転倒者は以下の通り。
■ロッシは午前中にウェット・タイヤで転倒
フィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは午前のフリー・プラクティス中に激しく転倒し、身体を激しくアスファルトに叩きつけてからグラベルまで勢いよく転がったが、幸いロッシは尻を打撲した以外に深刻な怪我は負わなかった。
■午後に右足首をひねったトーズランド
TECH3ヤマハのジェームス・トーズランドは午前のセッションの1周目に7コーナーを低速走行中に転倒、ヘレスIRTAテスト中に捻挫して痛めた右足首を再びひねっているが、特に骨折などの心配はない様子だ。
■セッティングの決まらないストーナーが無傷の転倒
2回のセッションを通して終始暴れるマシンと格闘し、何度もコースアウトをしかけていたドゥカティーのケーシー・ストーナーは、午後のセッション中にシケイン出口で転倒しているが本人は一切怪我を負っていない。
■インフルエンザに苦しむデ・アンジェリスはセッション終盤に転倒
水曜日からインフルエンザによる発熱に苦しみ、この日も高い熱と扁桃腺の腫れに苦しんでいたサンカルロ・ホンダ・グレッシーニのアレックス・デ・アンジェリスは、午後のセッション終盤に激しく転倒したが、本人に怪我は全くなかった。
■エリアスは走行中にクラッチが破損、部品が右足にぶつかり負傷
転倒以外の怪我人としては、アリーチェ・チームのトニ・エリアスは、この日の午後のセッション序盤の走行中にクラッチが破損、壊れた部品が右足の甲にぶつかった瞬間に激しい痛みを感じた事から、白煙を噴き上げるマシンをコース脇にとめ、そのままクリニカ・モバイルで検査を受けている。
幸いエリアスに骨折はなかったが、右足首近くが腫れあがって激しい痛みがある事から、エリアスはこの痛みを抑えるために物理療法を施してから2日目のセッションに挑むようだ。
■エストリルGP1日目FP総合(結果はFP2と同じ)
午前のタイムを全ライダーが上回った午後のFP2の結果、すなわち1日目の総合順位は以下の通り。ドライ・コンディションには恵まれたものの、午前中の小雨の影響でまだアスファルトが滑りやすかった午後のエストリルの気温は14度、路面温度は22度、湿度は49%だった。
1) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分38秒507
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分38秒547
3) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 1分38秒632
4) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分38秒688
5) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分38秒868
6) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 1分39秒171
7) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分39秒202
8) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分39秒309
9) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分39秒332
10) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分39秒474
11) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒591
12) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒946
13) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 1分40秒055
14) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分41秒033
15) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分41秒112
16) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分41秒572
17) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分41秒875
18) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分43秒262
エストリルのサーキットレコード(レース)は2007年にニッキー・ヘイデンが記録した1分37秒493、ベストラップレコード(予選)は2006年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分36秒200。
●参考)午前FP1の結果
公式記録上はドライ宣言がなされたものの、セッション開始時の路面はウェット状態だった午前FP1開始時の気温は13度、路面温度は15度と低く、湿度は55%。ちなみに実質はウェット・セッションに近かったこの午前中、6番手のニッキー・ヘイデンを除くトップ10以内のライダー全員がブリヂストン・ユーザーだった。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分47秒900
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分48秒599
3) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分48秒754
4) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分48秒873
5) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分49秒530
6) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分49秒787
7) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分49秒903
8) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分50秒123
9) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分50秒278
10) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分50秒422
11) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 1分50秒447
12) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分50秒588
13) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 1分50秒761
14) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分51秒195
15) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 1分51秒392
16) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分52秒045
17) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 1分53秒196
18) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 1分53秒907
■1日目の各チームの状況とコメント
以下に、ポルトガルGP初日のエストリルでの作業を終えた全チームの概況や各ライダーのコメントなどを紹介する。
■初日を制したペドロサ、レプソル勢はヘレス・セッティングのまま好調
初日のタイムシート上の総合トップにつけたのは、前回のスペインGPにおいて今期初優勝を飾ってランキングのトップに浮上し、路面が乾いたこの日の午後に1分38秒507を記録したレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだった。チームメイトのニッキー・ヘイデンも午後に総合4番手となる1分38秒688を記録しており、レプソルの2名は滑りやすい路面コンディションに見舞われたエストリルの初日から好調だ。
■ペドロサ「午前は無理せず早めに切り上げた」
午前中はペドロサの2008年型RC212Vがセッティング上の問題を抱えており、本人も湿った路面での転倒リスクを避けて激しい走り込みを行わなかった事から、ペドロサのFP1の結果は16番手と低迷したが、強風に見舞われたもののドライ・コンディションとなった午後にはフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシとTECH3ヤマハのコーリン・エドワーズとの激しいトップタイム争いを見せ、セッションの終盤にはこの2名を抑えて総合トップに浮上した。
「今日はヘレスで使用したベースセッティングから作業を開始したが、それほど変更を加えなくても大丈夫だった」とペドロサ。
「午前は雨があがった直後だったので難しい走行条件となり、乾きかけの路面はずっと不安定な状態だった。また、その時にはバイクに小さなテクニカル上の問題を抱えていたので、セッション終了時刻を迎える前に走行を切り上げた」
「午後はドライになったのでレースに向けての準備としてタイヤテストに着手する事ができた。ここは天候がレースウイークを通していつも変わりやすいので有り難かったし、数周走り込むうちにエストリルでの走行リズムを思い出す事もできた」
■ヘイデン「バイクの調子は最初から好調」
午前を6番手で終えたニッキー・ヘイデンは、午後も2008年型RC212Vで終始安定した速さで走行し、セッション終盤にはこの日の総合4番手タイムを記録して1日目の走行を終えている。
「全て順調な1日。すごくいいスタートが今週は切れたと思う。もっと改善を進める必要があるのは確実だが、ウェットでもドライでもバイクの調子はすでにいいので、明日はもう少しそれに調整を加えて日曜日に上位が狙えるようにしたい」とヘイデン。
「いずれにしてもバイクに大きな変更を加えなくてもバイクは良好なので、ヘレスの時とほとんど同じセッティングのまま走り続けた。午前の最初はウェットで、その後は乾きかけの中途半端な状態になり、午後にも湿った部分が少し残っていて風が強く難しい走行条件だった。すごく大変だったがチームが頑張っていいセッティングを仕上げてくれたので明日にも期待したい」
■ブリヂストン、ミシュラン共に好調のフィアット・ヤマハ
レプソル・ホンダに次ぐ好調な初日を終えたのはフィアット・ヤマハの2名だった。ブリヂストンタイヤを履くバレンティーノ・ロッシは午前のセッション中盤にはウェットだった路面で転倒を喫したものの、ドライとなった午後にはペドロサに次ぐ総合2番手タイムの1分38秒547を記録。ミシュランタイヤのホルヘ・ロレンソはMotoGPバイクでは経験の少ないレインタイヤを装着した午前中は12番手、スリックタイヤを履いた午後にはこの日の総合5番手となる1分38秒868を記録している。
■ロッシ「お尻は少し痛いが好調!」
ブリヂストンのウェットタイヤを履くのは今回の午前中が実質の2度目となるロッシは、濡れた路面にタイヤを滑らせて身体の側面から地面に叩きつけられるように激しい転倒を午前の中盤に喫しているが、幸い大きな怪我のなかったロッシはすぐにセカンドバイクに乗り換えてハーフ・ウェット用のセッティング作業を継続しており、午前中も2番手だった走行ペースには満足できた様子だ。路面がほぼ乾いた午後には、ロッシとチームのクルーはドライ用のセッティング作業とレースに向けてのタイヤ選びを行う中で、この日の総合2番手タイムを記録した。
「午前のウェットと午後のドライの両方で2番手タイムを記録したのは悪くない結果。今日はすごく難しい走行条件だったが今回のブリヂストンタイヤはウェットでもすごく調子が良く好感触が得られたのでとても満足している。激しく攻め込みすぎて転んでしまったのは、ひょっとしたら接地感が良すぎたせいかもしれないね!」とロッシ
「すごく激しい転び方だったけど幸い身体は大丈夫だったし、お尻が少し痛むくらい。その後セカンドバイクに乗り換えてからはさらに速く走れたので本当に嬉しい。午後も調子良く走れたが、路面はトリッキーで完璧とは言えない状態だった。ただ、エストリルは常に天候が不安定だし分単位で気象条件が変化するので、こういう条件にも慣れておかなければいけない」
「明日がどんな天気になろうと改善を続ける必要があるし、どんな走行条件でも戦えるよう準備を整えたい。大変な思いをしてバイクを修理してくれたチームのスタッフには本当に感謝!」
■ブリビオ監督「転倒はウェットの学習過程のうちの出来事」
ロッシ側のフィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダビデ・ブリビオは「午前はブリヂストンのウェットを試すいいチャンスになったし、多くのデータを収集できた。また、ヘレス合同テストの時と比較するいいデータを集める事もできている。バレンティーノは転倒してしまったが、これもブリヂストンのウェットタイヤを学習する過程のうちの1つの出来事。彼に怪我がなかったのは本当に幸運だった」とコメント。
■ロレンソ「エストリルへの苦手意識を忘れて前向きに取り組む」
1月の冬季テスト中のヘレス以来となるウェット・タイヤを履いたYZR-M1での走行ペースに午前中は満足できたとするロレンソは、午後に行ったドライ用のマシン・セッティングも順調に進んだとするものの、まだタイヤについては、路面が滑りやすく小排気量時代には苦手意識を持っていたエストリルに合うよう調整が必要だと語る。
「結果は5番手なのでまだ改善を進める必要はあるが、エストリルをMotoGPバイクで走るのは今日が初めてなので、焦らずゆっくりと作業を進めていかなければいけない」とロレンソ。
「今の一番の問題は変わりやすい不安定な天候。1分前に雨が降っていたと思ったらすぐに太陽が出るし、風もすごく強いので準備を進めるのがすごく大変。このコースを自分があまり好きじゃないのは誰もが知っている事だが、過去の事は忘れて今は目の前の事に取り組みたい」
「最良のセッティングが見つけられるように今後も集中して作業を続けていく必要がある。また、ここの路面条件に合わせたタイヤの調整も必要。まだこの点については完璧とは言えない状態」
「1月のヘレスのテストの時に比べて今日の午前はウェットにも自信が持てたので、それについては嬉しかったが、今後も作業は必要。一番良かったのは前回のヘレス合同テストで初めて試した新しい電子制御システムが好調だった事。今週は誰もが速く競争の激しいレースウイークになりそうなので、明日もさらに頑張りたい」
■ロマノーリ監督「課題は今回もブレーキング時の安定性」
ロレンソ側のフィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダニエーレ・ロマノーリは「もっと走行ペースを上げられるように明日もいくつか試す事がある。今はブレーキング時の安定性が不足しているし、スロットルオープン時にバイクが少し不安定な状態だが、今晩中にこの問題を分析して明日のセッティングに備える予定」とコメント。
■午前は最後尾を争い午後はトップタイムを争ったTECH3ヤマハ
今回のエストリルから、待ちに待ったヤマハ・ワークスと同じニューマチック・バルブ・エンジンを手にしたTECH3ヤマハ・チームのコーリン・エドワーズは、路面が乾いた午後には新エンジンのパワー性能を十分に発揮してこの日の総合3番手となる1分38秒632を記録している。また、エストリルを走行するのは今回が初めてであり、この日は新エンジンの性能検証よりも先にコースレイアウトの学習に1日を費やしたMotoGPルーキー、昨年度のSBKチャンピオンであるジェームス・トーズランドは、午後の序盤には7コーナーで転倒したが、その後はスペアマシンに乗り換えてこの日の総合13番手となる1分40秒055を記録した。
■エドワーズ「新エンジンに大満足、もうストレートでも豆粒にされない」
午前中は新エンジンのシェイクダウンとウェット路面の悪条件が重なり、チームメイトのトーズランドと共にタイムシート上の最後尾を争う事になったエドワーズだが、午後にはニューマチック・バルブ・エンジンの加速性能を最大限に発揮する事に成功、FP2の開始から12分が経過したところでタイムシート上のトップに立ち、午後のセッションを通してトップ3以内のポジションを維持した。
「午前中はホイールスピンが激しくちょっとした悪夢だったが、理由は良く分からない。ただ、午後のセッティングにはすぐに好感触が得られてカタールやヘレスの時と同じ感覚で走れるようになった」とエドワーズ。
「新エンジンは最高。すごくいいので本当に嬉しい。前のエンジンの時は3速から6速の範囲を使っても全然前に進まなかったが、今回のエンジンはギアをシフトするたびにさらにパワーが溢れる感じになる。バレンティーノの背後につけて、彼の後ろにぴったりくっついたままストレートを走り切れた時の感動は今でも忘れられない。今までだったらすぐに遠くの豆粒にされていたからね。こういう長いストレートのあるサーキットだと今まではコンマ3秒は欠落していたが、やっとそれを今回からは手に入れたし最高の気分。とにかく本当に嬉しくて仕方がない。大きな改良を施してくれたヤマハに大感謝」
「今日はユーズド・タイヤでもすごく安定したラップタイムを記録できたが、常に自分はこのサーキットでは速い。バイクとエンジンの感触は素晴らしいの一言だし、本当に快適」
■トーズランド「エストリルはコツのいる難しいコース」
午前中は初めて走るエストリルのコースレイアウト学習に集中し、FP1をタイムシート上の最後尾で終えたジェームス・トーズランドは、午後のセッション開始直後にはやや湿った部分の残る7コーナーを低速走行時に軽く転倒したが、その後はスペアマシンに乗り換え、冬季シーズン中からアピールし続ける学習能力の高さを今回も発揮し最終的には総合13番手で1日目の走行を終えている。
「ここはコーナーがタイトだし基本的に本当に難しいコースレイアウトのサーキット。特に高速ストレートの後の最初の低速カーブに向けてのブレーキングポイントはすごく厳密なタイミングが必要。シケインも難しくて、あそこをうまくすり抜けるにはコツをつかむ必要がある」とトーズランド。
「午後はタイヤが冷えていたせいで最初の周回に転んでしまった。午前の雨のせいで路面も汚かった。コーナーに進入した時には安定していたし、とても転ぶとは考えられないペースだったのに転んでしまい、そこで体重をかけたせいでヘレスの冬季テスト中に痛めた右首をまたひねってしまった」
「ただ、今日の進歩には満足。午前は天気のせいで時間をロスしたが、結果的にそれほどタイムは引き離されていない」
「新しいエンジンは確実に良くなっている。加速が良くなり、スロットルを思い切り開けた時のパワーがすごいので走行ラインは変わってしまうが、パワーがあるのでコーナーからの脱出が以前よりもうまく抜けられる。ものすごい進化だと思うしヤマハには感謝している。彼らはエストリルから最新エンジンを提供すると言い続けていたが、ちゃんと約束を守ってくれた」
■マシン・バランスに初日から自信を示すJiRチーム・スコット
チームとライダーが共にMotoGPバイクの学習を続けるJiRチームスコットは、午前中は不安定な濡れた路面を利用してフルウェット用のセッティングデータを収集し、ほぼドライとなった午後にはマシンのバランスを大きく改善する事に成功、翌日以降の予選とレースに向けての作業の方向性をつかむ事ができたとしている。この日のドヴィツィオーゾのタイムは初日の総合6番手となる1分39秒171だった。
■ドヴィツィオーゾ「低速コーナーに向けて電子制御の調整を進めたい」
午前はバイクの挙動理解を目的にフル・ウェットタイヤで走行し、午後には過去2戦で使用したドライ用のセッティングに瞬時に好感触を得る事ができたというドヴィツィオーゾは、その後はレースの半分の周回数を安定した速いペースで連続走行し、レースと予選に向けてのマシンのバランス状態には深く満足できているという。小排気量時代に得意だったエストリルはMotoGPバイクに乗り換えた今年もドヴィツィオーゾのライディング・スタイルとの相性は悪くない様子だ。
「このサーキットでMotoGPバイクと250ccバイクに大きな違いを感じるのは1速や2速のギアを使わなければいけない超低速コーナーの部分。MotoGPバイクは馬力がすごいので、特にコーナー脱出時にはスロットル操作を慎重に行う必要がある。だから明日はエンジンの電子制御マッピングのセッティングをもっと改善できるように作業を進めたい」とドヴィツィオーゾ。
「午後はいいペースで走れたし、タイムを順調に縮める事もできたので、明日はさらにいいポジションが狙えるようになると思う。レースでは最大限の速さが出せるようにしておきたい」
■ムラローニ監督「アンドレアは小排気量時代と同じくエストリルに自信」
JiRチーム・スコットのチーム監督を務めるチラーノ・ムラローニは「午前はすごく変な気象条件となり、雨のせいもあって有効なセッションとは言えなかったが、残りの2日間に活用できるいいデータを収集する事はできた。午前にアンドレアはレインタイヤ装着時にバイクがどういう挙動を見せるのか確認しながら真剣に学習を進めていたし、午後にはテクニカル面で多くの成果が得られたので彼はすごく満足している。小排気量時代と同じようにこのコースからは好感触が得られているようなので明日が楽しみ」とコメント。
■ヘレスの苦しみから脱出できていないドゥカティー勢
開幕戦のナイトレースでのケーシー・ストーナーの優勝を除き、全体的に今期のデスモセディチGP8に乗る4名のライダーが揃ってセッティングが出せずに苦しむという、昨年の凄まじい勢いをシーズン序盤の現在はまだつかみ切れていないドゥカティー勢だが、この日もドゥカティー・ワークスの2名はヘレスに引き続きマシンのセッティングが進まなかった様子だ。午後に転倒したストーナーのこの日のタイムと総合順位は1分39秒202の7番手、マルコ・メランドリは総合15番手となる1分41秒112だった。
■ストーナー「バイクから以前の好感触が消えた」
タイヤの接地感が終日得られなかったというストーナーは、この日はウェットの午前とドライになった午後のセッションを通し、激しく暴れるマシンと格闘しながらフロントの感触改善に取り組んだが、午後にはシケイン出口で転倒を喫し、幸い本人に怪我はなかったものの、最後まで納得のいくセッティングを得る事ができなかったという。
「今回抱えている課題はヘレスの時とは全く別の問題。今のところフロントから一切接地感が得られないし、低速走行中のアウトラップで転んだ理由も説明ができない状態。クルージングしている程度の走りだったのに、コーナーの外側に向けてバイクを持ち上げようとしたところでフロントが滑ってしまった」とストーナー。
「過去にはフロントにはいい感触が得られていたのに、ここのところその感じが消えてしまっている。あの頃に近い感覚すらないし、グリップもほどほどという感じ」
「今日は終日ずっとその問題を抱えていた。何度もフロントが浮いたりそれを押さえ込まなきゃいけない場面があったし、間違いなく正しい状態じゃない。何かの理由でバイクが以前の感触とは違っているので原因を突き止める必要があるが、少しのセッティング変更で調子を取り戻せる事は確かだと思う」
「今日はあまりいい1日じゃなかったが、まだそれほど大きく引き離されているいる訳じゃない」
■メランドリ「初日を無駄にした」
決勝当日のレース中は終盤にペースを上げる事ができるものの、フリー・プラクティスや予選ではタイムシート後半のポジションが定着しつつあるマルコ・メランドリは、今回のエストリルからはここまでの2戦とは全く異なるセッティングを試しているが、期待通りの効果はこの日も得られていない様子だ。
「今日の1日の作業には何の効果も得られなかったし、時間を無駄にしただけ。走行条件は不安定で湿った時も乾いた時もあったが、感覚的にはまるでウェットを走っているような感触だった。楽なコンディションとは言えないが、条件はみんな同じだから仕方がない」とメランドリ。
「調子がつかめていないし思い通りに走れない。明日は少しセッティングを元に戻すので、状況が改善される事を祈っている」
■ホンダ・グレッシーニ、好調の中野選手と高熱に苦しむデ・アンジェリス
ヘレスでの合同テスト後、エストリルでは初日からアグレッシブに攻めたいとコメントしていたサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、午前のセッションでは滑りやすいハーフ・ウェット路面の中を安定したライディングで3番手タイムを記録し、午後のドライ路面でも安定したペースで走行しこの日の総合8番手となる1分39秒309を記録した。また、この日は朝からこのインフルエンザの高熱にに苦しむチームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは、激しい転倒を喫した午後のセッション中に総合14番手となる1分41秒033を記録して1日目の走行を終えている。
■中野選手「明日に向けて予選用のいいセッティングもある」
午後のタイヤ選びは難しかったものの、初日は終日安定した速いペースで走る事ができたとする中野選手は、翌日の予選に向けても高い期待感を示した。
「今回の初日の2回のフリー・プラクティスの結果にはとても満足。朝は路面が湿っていたのでソフトのレイン・タイヤを履いてウェット・セッティングのマシンで走ったが、すぐにいいペースをつかむ事ができた」と中野選手。
「路面が乾き始めてからはタイヤを変更したが、その後もペースは上がり最終的には3番手タイムだった」
「午後のドライでも最初からいいペースで走れたが、路面温度が低かったのでいいタイヤを見つけるのは難しい状態だった。リアにはいくつか問題を抱えており、この影響でマシンが不安定だったが、エンジニアたちが予選用のいいセッティングを最近見つけてくれているので明日は自信が持てる」
■デ・アンジェリス「今日は走れて良かった」
アレックス・デ・アンジェリスは、この初日はインフルエンザの高熱と扁桃腺の腫れに苦しみウェットの午前は5周回のみ走行、体調を崩したまま多くの周回に挑んだ午後のセッションでは激しい転倒を喫したが幸い無傷だった。
「今日はあまりうまくいかなかい1日だった。不運にもここまでの2日間は高熱に苦しんだので、体力が弱ってしまい少し頭もぼんやりした感じ。ただ、クリニカ・モバイルのおかげで朝のセッションから参加できたので、医療スタッフの方たちに深く感謝している」とデ・アンジェリス。
「今日はそれでも何とか仕事を進められたのが重要だった。体調が悪く朝は5周しかできていないが、それでも今日の作業を終わらせる事はできた。身体はずっとだるかったけど幸い午後のセッションは1時間を通して走りきる事もできている。転倒はしたが、特に大きな怪我は負わなかった」
■ホンダLCRはリアのグリップを改善
エストリルでの初日は前回のヘレス合同テストに引き続きRC212Vのベースセッティング改善に取り組んだというホンダLCRのランディ・ドプニエのこの日のタイムは、総合9番手となる1分39秒332だった。
■ド・プニエ「若干フロントに問題はあるがそれほど悪くない状態」
初日はフロントに若干問題を抱えたが、リアのグリップを改善して悪くない状態にあると、ド・プニエは1日目の作業内容について以下の通りコメントしている。
「今日もチームにとっては大変な1日だったが、最終的には明日の開発作業に必要な多くのデータを収集する事ができた」とド・プニエ。
「午前中はバイクの感触を確かめるのに時間を使い、その後はベース・セッティングの改良に取り組んだ。フロントの感触には若干苦しんでいるが、それほど悪い状態ではなかったと思う。それにミシュランのスタッフとはタイヤ選びの中でうまく作業を進める事ができたので、リアのグリップが良くなり速く安定して走れるようになった」
「午後のセッション中盤にはブレーキン時の安定性とハンドリングに関していくつか小さなセッティング上の問題を抱えてしまったが、調整をやり直した後はレースタイヤでの走行ペースを上げる事ができている」
■カワサキは新型シャシーを投入
今回のエストリルからNinja ZX-RRに新型シャシーを投入したカワサキ・レーシング・チームの2名のライダーは、午前中は湿ったの路面を利用してウェット・セッティングのテストを行う中、小排気量時代からレインでの速さに定評のあるアンソニー・ウエストが午前の4番手タイム、ジョン・ホプキンスはそれに次ぐ5番手タイムを記録している。ちなみにホプキンスは他のライダーの多くが滑りやすい路面での転倒のリスクを避けてトップスピードを300km/h未満に控える中、FP1の最高トップスピードである307.601km/hを記録。
午後のセッションを終えたこの日のカワサキ勢の最終的なタイムと順位は、ホプキンスが10番手タイムの1分39秒474、ウエストが16番手タイムの1分41秒572だった。
■ホプキンス「予選の目標はトップ5」
今回から使用した新型シャシーに好感触を示すジョン・ホプキンスは、路面がドライになった午後以降は、先週のヘレス合同テストで仕上げたセッティングの改善作業に取り組んだとしている。予選ではトップ5入りが目標だとホプキンスは以下の通りコメントした。
「午前は走行条件が悪くて風も強かったので、ウェット用のセッティング検証に時間を使った。先週のヘレス合同テスト中にいいセッティングが見つかりマシンの安定性とリアのグリップが向上したので、ドライになった午後はさらにそれを改善できるよう作業に取り組んだ」とホプキンス。
「今回は新型シャシーも試しているが、おかげでバイクが乗りやすくなったように感じるし、その結果としてタイムもすごく安定していた。今晩は今日集めたデータを分析して新型シャシーの調整を進めておく予定」
「このサーキットは激しいブレーキングが必要なサーキットだし気に入っている。ただ、追い抜きがとても難しく予選では2列目に入る事が不可欠なので、今回はトップ5以上のグリッド獲得を狙っていきたいし、いける筈」
■ウエスト「ドライかウェットかはっきりして欲しい」
午前中はウェット・コンディションの中での4番手タイムを記録したアンソニー・ウエストだが、午後は風が強く不安定な条件の影響から新型シャシーの調整を思い通りには進める事ができなかった様子だ。
「路面コンディションがあまり良くなかったのですごく難しい状態だったが、午前中はウェット・セッティングを試し、すごく快適に走る事ができた」とウエスト。
「午後のセッションはいくつか滑りやすい場所が残っていて、その他の部分は乾いた状態になり、おまけに風がマシンの安定性にどの程度影響しているのかも分かりにくく、新型シャシーの調整を進める事は難しい状況だった」
「エストリルは自分があまりうあまく走れないサーキットなので、ここでの作業は多い。明日はウェットかドライのどちらかはっきりしたコンディションになって欲しいし、そうなればセッティングをもっと進められると思う」
■金子テクニカル・マネージャー「強風のため正確な効果の測定は不可」
カワサキのテクニカル・マネージャーを務める金子直也氏は、1日目の作業を終えて「今日は両方のライダーが新しい仕様のシャシーを試し、多くの種類のセッティングをテストしたが、ジョンとアンソニーの両方が良好な感触を示している。ただ、風が強くてライダーたちは同じ走行ラインをトレースする事すら難しかったようなので、今日は特に結論らしい内容は得られていない」
■2日目からの改善に揃って期待するリズラ・スズキの2名
午後からレースに向けてのセッティングを本格的に開始したエストリル初日のリズラ・スズキ勢の順位とタイムは、ロリス・カピロッシが総合11番手タイムの1分39秒591、クリス・バーミューレンはそれに次ぐ総合12番手の1分39秒946だった。
■カピロッシ「午後の終盤には若干の進歩が見られた」
エストリルも厳しい戦いになるとポルトガルGPの前に述べていたロリス・カピロッシは、滑りやすい悪条件でのこの日の作業内容には納得がいかなかったものの、明日の改善に向けて期待の持てる兆候は得られたとコメントした。
「今日はきつい1日だった。午前は天気のせいで路面状態が悪く、何一つ学ぶ事ができなかったからね。午後にはスリック・タイヤを装着したが、その時の路面もまだあまりいい状態とは言えず、温度もすごく低かったので、いいセッティングを見つける事はできなかった」とカピロッシ。
「セッティングに多くの時間を費やした事で、今日の終盤には若干の進歩が見られたので、明日は状況を改善するいいチャンスだと思う」
■バーミューレン「明日からはいい方向に進める筈」
この日は路面温度の低さからタイヤが温まらずに苦しんだと述べるバーミューレンは、カピロッシと同様に午後のセッション終盤には大きな進歩が得られたとしており、2日目は正しい方向に進める事を祈っている。
「午前中はハーフ・ウェットの滑りやすい路面だったが、レースがもしウェットになり、路面が途中で乾くような状況になったらバイクがどういう挙動を見せるかを確認する事はできたし、走っていて面白かった」とバーミューレン。
「午後に路面がほとんど乾いてからも温度がすごく低かったのでなかなかタイヤが温まらなかった。ただ、最終的にはバイクの調子をすごく上げる事ができたし、大きな進歩が得られている」
「明日もまだいくつかの事を試すが、このままいい方向に向かっていける事を願いたい!」
■デニング監督「低温でも自信が持てるようにリアを仕上げたい」
ウェットになった午前中はあまり有効な時間じゃなかったとするリズラ・スズキのチーム監督を務めるポール・デニングは、「他のチームとの差はそれほど大きい訳ではないが、明日に行わなければならない作業はまだ山ほどある。ライダーたちが低温路面でもリアの感触に自信が持てるような調整をレースまでに施さなければならない。それさえできれば、日曜日は上位集団に挑めるいいベースが仕上がる筈」とコメント。
■アリーチェ・チーム、クラッチが走行中に破損しエリアスが負傷
この日のアリーチェ・チームは、午前の最初のセッションではシルバン・ギントーリがハーフ・ウェットの路面で9番手タイムを記録するという好調な滑り出しを見せたが、午後にはトニ・エリアスの乗るドゥカティー・デスモセディチGP8のクラッチが走行中に破損し、壊れた部品がエリアスの右足にあたり負傷、マシンはオイルの白煙を吹き上げ、エリアスは痛みにより走行できなくなるという深刻な事態に見舞われている。初日のアリーチェ・チームの2名のライダーの最終的な順位とタイムは、ギントーリが総合17番手となる1分41秒875、エリアスは最後尾の総合18番手となる1分43秒262だった。
■新品のクラッチが突然破損、原因は調査中だと説明するチーム
幸いエリアスはその後の検査で骨折はしていない事が判明しているが、今回のエリアスのマシンの走行中の破損についてアリーチェ・チームのテクニカル・ディレクターを務めるファビアーノ・ステルラッキーニは、「午後にエリアスが今までとは異なる新しいセッティングを試し、タイムが上がりかけたところでクラッチが突然破損、エリアスの右足に部品が激しくぶつかった。エリアスは痛みのためにセッションを中断してすぐに検査と治療を受けたが、全て新品のパーツで構成されたクラッチ・コンポーネントがなぜ壊れたのか原因が分からないので調査が必要。壊れる直前までデータ上は何も問題がなかったので不可解」と説明した。
■ギントーリ「ライディング・スタイルを変えなきゃいけない・・・」
午前中のウェットではバイクとタイヤに好感触を示したギントーリだが、午後は新しく試したドライ用のセッティングではうまく走る事ができておらず、今後はライディング・スタイルを変更していく以外に方法がないとギントーリは落胆している。
「午前中はバイクとブリヂストン・タイヤの感触が本当に良かった。午後はドライ用の新しいセッティングをマシンに試したが、やはり自分のライディング・スタイルも変えていく必要がある。自分にとって自然に思えるスタイルで乗っているので、別の乗り方を試していくのは簡単な事じゃない」とギントーリ。
「これから慣れていく以外に方法はないが、一度このバイクの乗り方をつかむ事ができれば結果は自然についてくると思う」
■エリアス「今日はついてない・・・」
走行中に壊れたクラッチの部品が右足にあたり、白煙を噴き上げるマシンから降りて午後の走行を途中で断念したエリアスは、骨折は免れたものの足の激しい痛みを訴えている。
「今日はあまり運が良くなかったみたい。最初のフリー・プラクティスは雨だったので合同テストで試したセッティングを試す事ができなかったし、午後はドライになったのにクラッチが壊れて右足にぶつかってきた」とエリアス。
「怪我はなかったが本当に痛い。足の甲が今は腫れ上がっている。少しでも痛みを抑えられるように、これから物理療法を行っていくつもり」
|
|
|
|
|
|
|
|
|