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第3戦ポルトガル、電子制御の進化により難易度が下がるエストリル |
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2008年4月11日
本日4月11日より、2008年MotoGPシーズンの第3戦目となるポルトガルGPが、2週間前にグランプリが開催されたスペインの隣国であるポルトガルのエストリル・サーキットにて行われる。
ここでは、ポルトガルGPのタイムスケジュールをはじめに、エストリル・サーキットの歴史やコースレイアウトの特徴、ならびに各ライダーのポルトガルGPに向けてのコメントなどを紹介する。
■ポルトガルGPのスケジュール
本日4月11日が初日となるポルトガルGP3日間のスケジュールは以下の通り。なお、日曜日の決勝レース開催順は通常とは異なり、最初に250ccクラス、その次にMotoGPクラス、最後に125ccクラスの順となるので注意が必要だ。
●4/11金 時差:-8時間
09:00 125cc FP1
10:00 MotoGP FP1 日本時間:18:00
11:15 250cc FP1
13:10 125cc QP1
13:55 MotoGP FP2 日本時間:21:55
15:10 250cc QP1
●4/12土 時差:-8時間
09:00 125cc FP2
10:00 MotoGP FP3 日本時間:18:00
11:15 250cc FP2
13:10 125cc QP2
13:55 MotoGP QP 日本時間:21:55
15:10 250cc QP2
●4/13日 時差:-8時間
08:55 250cc WUP
09:25 MotoGP WUP 日本時間:17:25
10:00 125cc WUP
11:15 250cc レース(26周)
13:00 MotoGP レース(28周) 日本時間:21:00
14:30 125cc レース(23周)
■サーキット・レコードなどのラップタイム記録
●MotoGPクラス
・サーキットレコード:2007年(800cc)にニッキー・ヘイデンが記録した1分37秒493
・ベストラップレコード:2006年(990cc)にバレンティーノ・ロッシが記録した1分36秒200
●250ccクラス
・サーキットレコードは2007年にアルバロ・バウティスタが記録した1分40秒521
・ベストラップレコードは2007年にアンドレア・ドヴィツィオーゾが記録した1分40秒355
●125cc
・サーキットレコードは2007年にガボール・タルマクシが記録した1分45秒027
・ベストラップレコードは2007年にマティア・パッシーニが記録した1分44秒675
■エストリル・サーキットについて
ポルトガルのオートドロモ・フェルナンダ・ピレス・デ・シルバ・サーキット、俗称エストリル・サーキットは、大西洋岸から約7キロメートルというヨーロッパの西の端に位置するコース全長4182メートルのサーキットだ。
■スペインのMotoGPファンが埋め尽くす観客席
エストリル・サーキットは熱心な2輪ロードレースファンが多い事で知られるスペインの側に位置する事から、毎年多くのMotoGPファンがスペインからポルトガルGPに訪れており、現場は前回のヘレスと同様に熱狂的な雰囲気に包まれる。この事から、ペドロサ、エリアス、ロレンソなどスペイン人ライダーの多くは、ポルトガルGPを母国グランプリと同等の位置づけでとらえている。
■グランプリ誘致の歴史、過去にはヘレスで行われたポルトガルGP
ポルトガルの首都であるリスボンからは約28kmの距離に位置するこのサーキットは1972年に建設され、かつては主にヨーロッパのF2レース用に使用されていた。大改修の後の1984年には、1回のみだがF1グランプリも開催されている。
WGP(現MotoGP)のポルトガル・グランプリが最初に開催されたのは1987と1988年だが、この時にエストリルはグランプリの安全基準を満たす事が出来ずに誘致には失敗しており、この2年間はポルトガルGPの名称でグランプリは開催されたものの、実際のレースの舞台は隣国スペインのハラマ・サーキットとヘレス・サーキットだった。
ポルトガルGPの誘致失敗を受け、エストリルは1994年にコースの拡張を行い、この時に現在の4182メートルに13のコーナー(4つの左コーナーと9つの右コーナー)のレイアウトが形成され、後半の低速区間にあるコーナーからのハードブレーキング・ゾーンや波打つ路面で知られる直線区間、ならびに難易度の高いシケインが追加された。
こうしてエストリルはグランプリ・サーキットとしての安全基準を満たすようになった事から、ポルトガルGPは2000年以降はエストリルで行われるようになり、今年はその9回目のグランプリ開催となる。
■今年は4月のグランプリ開催、低温路面に警戒する各チーム
なお、過去に仕上げの粗さが目立った悪名高いアスファルトは、2年前の2006年に部分改修されてはいるが、その後もでこぼこの多さと、グリップが悪く滑りやすい路面に不満をもらすライダーは後を絶たない。
また、近年は9月や10月などのシーズン序盤の秋口に行われていたポルトガルGPだが、今年はトルコGPが無くなった影響から2004年シーズン以来となる4月の開催となっている。この事から各チームやタイヤメーカーは路面温度の低下によるさらなるグリップの悪化を警戒しており、レースウイーク初日のタイヤテストとデータ収集に力を注ぐ構えだ。
■大西洋の強風が影響するエストリルの気象条件、今年も天候は不安定
レースウイーク中の天候は不安定になる事が多く、特に大西洋岸に面する海側からの突風が強い事でも知られており、1年を通してなかなか気象の予測はつきにくいようだ。このサーキットにも吹き荒れる強風はライダーの走行バランスを崩すだけではなく、同時に巻き上げる砂が路面に積もってアスファルトの状態を悪くする事から、タイヤのグリップや耐久性などへの影響を及ぼす。
ちなみに今週末のポルトガルGPも3日間のうちに少なくとも1度は雨に見舞われそうな様子だ。
■レイアウトの特徴、極度にメリハリの激しい低速と高速区間
エストリルの最大の特徴は、990時代にはMotoGPバイクが時速340kmに達した約1キロメートルの高速ロング・ストレートと二つの超高速コーナー、およびMotoGPカレンダーの中でも最も低速コーナーとされるシケイン区間の存在という、メリハリの利いたコースレイアウトにある。最大コース幅は14メートルとそれほど広くはないが、前回スペインGPが行われたヘレスとは異なり追い抜きポイントは多めだ。
■MotoGPカレンダー最低速と言われるシケイン
コース1周の平均速度として見れば非常に低速な部類のサーキットに入り、コース後半のタイトなコーナーが連続する区間では、ライダーたちは1速〜3速のギアのみを使用し、アクセルを開けきる事は滅多にないようだ。特に極度のハードブレーキングを要求する1コーナーや、MotoGPカレンダーの中でも最低速のコーナーとして知られる9コーナーと10コーナーのタイトシケインには、苦手意識を持つMotoGPライダーが多い。
■高速区間ではトップエンドパワーが必要
しかしながら、5コーナーは時速200kmに達する高速コーナーであり、最終コーナーも非常に高速である事から、これらの区間は、容赦なくライダーとマシンに極限の走りを要求すると言われている。最終コーナーからつながる時速300km越えのメインストレートでは、当然の事ながら優れた加速力など余裕のあるエンジンパワーがマシンには要求される。
■ライダーとメカニックの技量を試すテクニカル・サーキット
低速区間と高速区間のメリハリの激しさから、さながら能力テストをされているような感覚にメカニックやライダーは陥るようだが、言い換えればエストリルは、ライダーにとってはライディング技術の見せ場が多いテクニカルなサーキットでもある。
一例をあげれば、2コーナーはバンクのない下りカーブとなっており、上り坂のタイトシケインと同様にライダーの技量を要求する場所として有名だが、各所にあるこれらのポイントを攻略する事ができれば、気分良く楽しんで走る事が可能なコースレイアウトだ。
■990cc時代よりは楽?電子制御の発達により難易度の下がるエストリル
なお、タイトシケインなどの低速区間ではスロットルのオーバーワークがトラブルを招く事から、990cc時代はマシンの膨大なパワーを慎重に扱う事のできるライディング能力が好タイムにつながったとされるが、昨年以降は排気量が800ccに減らされて総合的なマシンのコーナリング性能が上がり、トラクション・コントロールなどの電子制御システムの性能が大幅に向上した事から、以前と比較して各ライダーはタイムを縮めやすくなったと感じている様子だ。
しかしながら、エストリルは大西洋側から吹き付ける突風も有名であり、この強風に逆らってマシンのバランスを崩さずに走れるかどうかは依然としてライダーの腕次第となる。
■エンジニアに要求される高速と低速区間の両立セッティング
この低速区間と高速区間の差が激しいエストリルは、各チームのメカニックとタイヤエンジニアたちにとって、全ての区間で完璧な走りをするマシンを仕上げる事が難しいサーキットの1つとして知られており、シャシーのセッティングの妥協点を探す事がエンジニアの最重要課題とされているようだ。
また、エンジンについても同様であり、トップエンドのパワーと低速域での安定した性能という2つの特性が同時に要求される。
■難易度の高いタイヤとサスペンションの調整
タイヤやサスペンションに関しては、海側からの砂混じりの強風の影響による路面の汚れからタイヤに厳しい走行条件となるため、これらを考慮して滑りやすい事でも有名な路面でのグリップレベルをどれだけ上げられるかがメカニックの腕の見せ所であり、消耗したタイヤがレースの終盤に向けて性能を上げられるようなサスペンション・セッティングをいかに実現するかが、エンジニアの最もこだわる部分のようだ。
■タイヤメーカーに要求される左カーブで転ばないタイヤ
タイヤメーカーの観点としては、13あるコーナーのうち9つのコーナーが右カーブとなっており、タイヤ左側面が温まりにくく転倒を誘発しやすい事から、消耗の激しい右側面の耐久性向上と合わせて、左側面には素早く温度が上がり、且つ柔らか目のコンパウンドの開発が重要となる。
■昨年のエストリルではほぼ互角だったミシュランとブリヂストンの争い
また、激化する一方のタイヤ戦争については、2006年のエストリルではミシュランがブリヂストンを抑えて決勝のトップ5を独占していたが、昨年の2007年には予選タイヤとレースタイヤの両方で両者は互角の戦いを見せている。
2007年の予選でポールポジションを獲得したのはミシュランを履くホンダのニッキー・ヘイデン、2番グリッドはブリヂストンを履くドゥカティーのケーシー・ストーナーが獲得。翌日の決勝レースではホンダのダニ・ペドロサとヤマハのバレンティーノ・ロッシというミシュランユーザー2名がレース全体を通して激しいトップ争いを見せ、レース序盤にクラッチの不調に見舞われ後退しかけたブリヂストンのストーナーはライディング・スタイルをレースの後半までに改造し、最終的には優勝したロッシ、2位のペドロサと僅差の位置で3位表彰台を獲得している。ちなみに4位はミシュランのヘイデン、5位はブリヂストンのマルコ・メランドリだった。
■各ライダーのエストリル戦に向けてのコメントなど
最後に、ポルトガルGPを目前に控えたMotoGPライダーのコメントなどを各チームごとに紹介する。
■合同テスト後に自信を回復してエストリルに挑むドゥカティー勢
前回のスペインGPではケーシー・ストーナーが2回のコースアウトを喫して11位に終わるなど、予想以上に苦しい戦いを強いられたドゥカティー勢だが、スペインGP翌日のヘレス合同テストでは、レースウイーク中の課題だったストーナーのマシンのフロントまわりのセッティングの解決策が見つかり、今回のポルトガルGPに向けてのブリヂストンとのタイヤテストにも良好な結果が得られた様子だ。
また、ヘレス合同テスト中に左手の指を負傷したメランドリの怪我の回復具合も良好だという。
■スッポ監督「ブリヂストンのエストリル用タイヤに好感触」
ドゥカティーのチーム監督を務めるリビオ・スッポは今回のポルトガル戦について「天候が不安定で難しいサーキットだが、条件は他のチームにとっても同じ。ヘレスでのテストはケーシーとマルコの両方にとって有益なものだったし、ブリヂストンがテストに持ち込んだ新しいタイヤをケーシーは気に入っている」と、エストリルに向けての復調の兆しに期待感を示している。
■ストーナー「順調なら優勝が狙える」
スペインGPのレース後は大きく落ち込んでいたものの、翌日のヘレス合同テストではすぐに元気を取り戻したというストーナーは「去年はテクニカル・トラブルを抱えながらも表彰台に乗れた。追い抜き個所が多いサーキットだし、初日から仕事が順調に進んで変な問題さえ起きなければ優勝が狙えると思う」と自信のコメント。
■合同テスト中に怪我を負ったメランドリ「包帯はもういらない」
先週月曜日のヘレス合同テストでは最終コーナーで転倒、左手をマシンの下敷きにしてグローブをぼろぼろに破損、中指の爪が割れてしまったマルコ・メランドリは「今回のエストリルも自分たちにとって相性が良いとは言えないサーキットだが、変な予想を立てても仕方がないので現場で実際のところを確認したい。ヘレスで痛めた指はかなり回復したので、もう包帯をしなくても大丈夫だと思う」と、激しい痛みを抱えていた指が回復の方向にある事をコメントしている。
スッポ監督もメランドリの怪我の具合については「マルコの指の怪我はそれほど走りに大きな影響はないと思うので、ここでも彼はバイクの感触をさらに高める事ができる筈」と説明した。
■異なるタイヤで共に自信を示すフィアット・ヤマハの2名
前回のスペインGPではバレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソの2名が揃って2位と3位の表彰台を獲得したフィアット・ヤマハのタイヤが異なる2名のライダーは、昨年はロッシが優勝して好感触を持つエストリルでの戦いを楽しみにしている様子だ。
■昨年はミシュランを履いてエストリルを制覇したロッシ
ヤマハ勢の中で唯一となるブリヂストン・タイヤを今年は選択し、前回のヘレスではブリヂストンを履いての初となる表彰台を獲得したバレンティーノ・ロッシは、過去8回のエストリルでのレースにおいて昨年の優勝を含む5回の勝利を記録している。
■ロッシ「今回は勝利が狙えると信じたい!」
エストリルに好感触を示すロッシは「カタールでの辛い状況の後の2戦目にして2位を獲得できたのは、チームの全員がパッケージの調子が上がってきた事に自信を深める事ができたので、前回のヘレスは自分たちにとってとても重要だった。レース翌日のヘレス合同テストでもブリヂストンと共に作業を進める中で大きな進展が得られているし、今回は勝利が狙えると信じたい!」と、得意のポルトガルでの今期初優勝を願うコメントを残した。
■小排気量時代はエストリルをやや苦手としたロレンソ
また、開幕戦から2戦連続のポールポジションと2戦連続の表彰台を獲得しているミシュランを履く現在ランキング2位のMotoGPルーキー、スペイン人ライダーのホルヘ・ロレンソは、今年のMotoGPカレンダーにエントリーされた全サーキットのうち小排気量時代に優勝を経験していないサーキットは僅か4つのみ、ポールポジションを経験していないのは僅かに2つのみだが、エストリルはその両方の悪い方に該当するサーキットだ。
■ロレンソ「ヤマハはエストリルと相性がいいので勢いは衰えない」
MotoGPマシンでも250cc時代と同様の勢いで好成績を重ねるロレンソは、小排気量時代はやや苦手としたエストリルを前に「ヘレス合同テストでM1に施した調整は全ていい方向に向かったので、すごくいいテストができたと思う。去年のエストリルは3位だったが、2度目の年間タイトル獲得が間近だったのですごく興奮していた。ポルトガルはスペインのすぐ隣だし、スペイン人ライダーがたくさん応援に来てくれるのでスペイン人ライダーにとっては重要な場所。ここは自分の得意なサーキットじゃないし、3位より上の成績を残した事はないが、ヤマハはここと相性がいいので今の調子を持続できると信じている。MotoGPマシンでこのサーキットを走るのは始めてだが目標は今までと変わらない。学習を進めながら楽しみ、全力をつくす事」とコメント。
■サテライト勢はニューマチック・バルブ・エンジンを今回から投入
なお、ヤマハのサテライト勢であるTECH3ヤマハのコーリン・エドワーズとジェームス・トーズランドは、開幕戦が行われたカタールの時から新エンジンの投入を心待ちにするコメントを残し続けてきたが、予定通り今回のエストリルからはフィアット・ヤマハのワークス勢と同じくニューマチック・バルブを採用した新エンジンが投入される。
■エストリルに向けての調整は万全のレプソル・ホンダ
前回のセパンではダニ・ペドロサが今期初の優勝を果たしてランキングのトップにつけ、チームメイトのニッキー・ヘイデンは表彰台を逃したものの4位と健闘し、全体的に上向き調子のレプソル・ホンダ勢は、昨年はヘイデンがポールポジションを獲得し、ペドロサは決勝で2位を獲得した今週末のエストリルでの戦いに前回のヘレスでの勢いを持ち込みたいとしている
ヘレス合同テスト2日目には終日をかけてミシュランの新型タイヤを大量に試したレプソル・ホンダ勢は、エストリルに向けての調整状況は万全な様子だ。
■ペドロサ「ワイド・フロントタイヤのテストを続けたい」
他の多くのチームとは異なりレギュラー・ライダー2名が2日間を通して参加したスペインGP翌日のヘレス合同テストでは、年始の骨折の影響から冬季テスト中には十分にできていなかったセッティングの試行錯誤を重ね、新型RC212Vへの理解を深める事ができたとするペドロサは「ヘレス合同テストではバイクへの理解がさらに深まった。あそこで試した内容を今回は活用したいし、ミシュランとワイド・フロントタイヤの作業をもう少し続けたい。エストリルはアスファルトの状態があまり良くないし路面のがたつきもひどく滑りやすいが現場の雰囲気は大好き。あそこは完全にスペインと同じ」と述べ、前回のヘレスと同様に地元のファンの前で高い結果を残す構えだ。
■ヘイデン「ヘレスのレース結果は決して悪くない」
また、前回のヘレス合同テストではマシンの一般的なセッティング作業を繰り返し行い、標準のレースタイヤでも楽に好タイムを記録できるようになったとするヘイデンは「ヘレスの結果は決して悪くはなかったので、エストリルではさらに調子が上がる事を祈っている」とコメントした。
■ヘレス合同テストの成果を今週のレース結果に反映したいスズキ
前回のスペインGPではロリス・カピロッシが最終コーナーにおいて3台のバイクを交わして5位を獲得し、冬季テストから苦戦した新型マシンのセッティング改善が進みつつあるスズキ勢は、レース後のヘレス合同テストでは多くのチームが1日のみでテストを終える中、レプソル・ホンダ・チームと同様にレギュラー・ライダーの2名が2日間を通して多くの周回を重ねており、エストリル以降の戦いに向けて役立つ有益な情報を収集する事ができたとしている。
■カピロッシ「ポルトガルも厳しい戦いになる」
エストリルでは2003年に3位表彰台を獲得しているロリス・カピロッシは「前回いいレースができた翌日のヘレス合同テストでは数点の解決策を見つけたが、まだ希望のレベルには到達できていないので、ポルトガルも厳しい戦いになると思う。ただ、チームのスタッフは必死に頑張っているし、今後何をするべきかは分かっている。バイクに乗る度に学習も進んでいる」とコメント。
■バーミューレン「今年は上位に食い込みたい」
過去2年間を通してのエストリルでの最高位は9位のクリス・バーミューレンは「ヘレスのテストでは確実にいくつか進歩が得られた。タイヤ関係の作業に必死に取り組み、今後に向けて多くの事を学ぶ事ができた。去年はエストリルで苦戦したので、今年は最初から調子がつかめるように頑張り上位に食い込みたい」と、ヘレス合同テストでの成果を今週のレースから結果に反映する構えを見せている。
■セッティングを全面的に見直しエストリルに挑むカワサキ
冬季テスト中の2月のオーストラリア合同テスト中にジョン・ホプキンスが怪我を負って以来、マシンの調整作業がやや遅れ気味に見えたカワサキ勢は、前回のヘレス合同テストを利用してジョン・ホプキンスはNinja ZX-RRのセッティングを自分のアグレッシブなライディング・スタイルに合わせるよう徹底的に調整を行い、アンソニー・ウエストはオリビエ・ジャックとも相談しながらマシンの感触を上げるための作業に取り組んだという。
■ホプキンス「ここでは他の誰もテストをしていない」
ヘレス合同テストでは今回のエストリルを前提としたギア比とサスペンションの調整を行う傍ら、スクリーマー・エンジンを搭載したマシンの試乗も行ったジョン・ホプキンスは「エストリルは好みのサーキット。ここでは誰もそれほどテストをしていないので同じ条件で戦えるし、いつもここの雰囲気は楽しい。前回のヘレスではカタールの時よりも体調がだいぶ良くなっていたし、バイクの改善も進んだのでレースが楽しみ」と述べ、冬季テスト中に他のライダーは多くの走り込みを行ったロサイルとヘレスとは異なり、同じ条件で戦える今回のエストリルを楽しみにしている様子だ。
■ウエスト「合同テスト中にマシンのセッティング改善が進んだ」
また、前回のスペインGPではポイント圏内の13位でレースを終え、自信を回復する事ができたとするウエストは「以前より調子は上がっている。ヘレスではバイクの感触も成績もカタールの時より良かったので、今回のレースにはもっと自信を持って挑める。体力調整もさらに進んだので、フルレース周回を楽に走りきれると思う。ヘレス合同テストではZX-RRのセッティングを全体的に見直し進歩が見られたので、今週末がどうなるか楽しみ」と、ここまでの2戦とは異なり昨年にもMotoGPバイクで走行した経験のあるエストリルに期待感を示した。
■ホンダ・サテライト
ホンダのサテライト勢も、前回のヘレス合同テストでは各々のウイークポイントを洗い出し、今週のエストリルに向けての準備を整えた様子だ。
■気持ちを引き締め直すJiRチーム・スコット
最高峰クラスのデビュー戦となった開幕レースではバレンティーノ・ロッシを抑えて4位を獲得して絶好調を宣言したものの、前回のスペインGPでは最終コーナーでポジションを3つ落として8位に終わった事から、新たに気持ちをひきしめ直してヘレス合同テストに挑んだJiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、冬季テスト中と同様に終日のテストを利用して徹底的にライディング・スタイルの改良を行っている。
■ドヴィツィオーゾ「得意のエストリルに期待感」
小排気量時代からのライバルのロレンソとは異なり、エストリルを得意とするドヴィツィオーゾは、「125ccと250ccの小排気量時代からエストリルではすごくいい成績を残しているので、MotoGPバイクでは走った事がなくても同じような期待感がある。少なくともヘレスよりはいい成績を残したいし、ここまでの2回のレースで学んだ事を今回の結果に反映したいと思っている。ヘレスの後はロンドンの自宅に戻り、しばらくはバイクの事を考えずにリラックスした。その後は友人と過ごしたり体力トレーニングをして過ごしたが、残念ながら普段トレーニングに使うモトクロスをする時間はなかった。その後は家族とイタリアでの数日間を過ごしたので、3戦目に向けての準備は万全」と、ヘレスのテスト後は家族や友人とリラックスして過ごし、再び鋭気を養った事を述べている。
■エストリルからは上位に進出したいグレッシーニ・ホンダ勢
開幕からの2戦はやや期待に届かない結果に終わっているグレッシーニ・ホンダの2名のライダーも、前回のヘレス合同テストではレースウイーク中に試せなかった様々なセッティング調整を行い、エストリルからのさらなる成績向上を狙っている。
■中野選手「さらにアグレッシブに走れるようになる」」
ヘレス合同テストではチーフ・メカニックと共にマシンの感触改善に取り組み、ブリヂストンタイヤとホンダRC212Vの両方から好感触が得られたとする中野真矢選手は、「レース後の月曜日にヘレスで行ったテストが好調だったので大きく自信がついた。最初のフリー・プラクティスに向けてマシンのセッティングに少し調整を加えるので、されにアグレッシブに走れるようになると思う。今回の目標はヘレスの結果よりも高い位置で完走する事」と述べ、前回のスペインGPで獲得した9位よりも高い成績を今回のエストリルでの目標に掲げた。
■デ・アンジェリス「リアのトラクション改善に今後も取り組む」
また、中野選手のチームメイトのMotoGPルーキーであり、冬季テスト中は好調な走りを見せていたものの開幕戦のカタールではリタイア、スペインGPは14位という結果に終わっているアレックス・デ・アンジェリスは「ロサイルやヘレスと違い、エストリルはMotoGPバイクで走った事が一度もないので予想は難しいが、以前の調子を取り戻す自信はある。冬季テストでは好調だったのに開幕後はいい結果を残せていないがエストリルは大丈夫だと思う。前回のヘレス合同テストはレースウイーク中にできなかった事を色々試せたのですごく重要だった。ブリヂストンがテストに持ち込んだ新しいコンストラクションのおかげでバイクの安定性は上がっているので、ここまでに苦しんでいるリアのトラクション改善にこのまま取り組んでいきたい」とコメントし、冬季テストで見せた走りを今週のエストリルから取り戻す姿勢を示している。
■予選の結果をレースに反映できていないホンダLCR
年末の冬季テストではトップタイムを連発し、ミシュランタイヤとホンダのマシンとの相性の良さをアピールしていたランディ・ド・プニエは、開幕戦のカタールGPは9位、前回のスペインGPでは転倒リタイアという結果に終わり、好調な予選での走りをレース当日の成績にそのまま反映できずに苦しんでいたが、スペインGP翌日のヘレス合同テスト初日はホンダ勢のトップタイムを記録している。
■ド・プニエ「どんな気象条件でも気にしない」
ヘレスでの終日のテストを通してセッティングの改善が進んだとするランディ・ド・プニエは、今週のエストリルに向けて「ブレーキング時の安定性をもっと向上させる必要はあるが、去年のエストリルでは安定して速いタイムを記録できたので自信がある。気象条件の事はそれほど気にはならないが、もし雨ならあそこの路面はすごく滑りやすいのでミシュランとタイヤ選択を慎重に行う必要がある」と、週末の戦いに向けての自信を示した。
■若いチームとライダーの成長に期待するアリーチェ・チーム
トニ・エリアスとシルバン・ギントーリの2名のライダーが、揃ってドゥカティーのマシンへの乗り換えに苦しみ続けているアリーチェ・チームだが、チーム監督を務めるルイス・ダンティーンは、エストリルはトニ・エリアスが2006年にバレンティーノ・ロッシを抑えて劇的な最高峰クラス初優勝を飾ったサーキットである事から、まだライダー2名が完全にマシンに馴染むのには時間がかかると予想はしながらも、特別な期待感はある様子だ。
■ダンティーン監督「若さゆえ時間はもう少し必要」
ダンティーン監督は「シーズンの序盤はあまり好調とは言えない状況。正直、もっと高い結果を期待していたのは事実だが、チームとライダー2名はまだ若いし、ドゥカティー・デスモセディチGP8に乗るのは彼らにとって初めての経験なので、バイクの性能を最大限に発揮できるようになるにはもう少し学習と時間を要するのは分かっている。パッケージの高い本来性能については誰にも疑う余地はない。ドゥカティーは世界チャンピオンであり、自分たちがこれ以上に望むものなどあり得ない。また、同様にブリヂストンも世界チャンピオンであり、今や素晴らしく高いレベルに到達し、常にわたしたちに最大限の支援を提供してくれている。ここでトニ(エリアス)は2006年にすべてのモーターサイクル・ファンを感動させる勝利を収めているので、今回もわたしたちに同じような感動を与えてくれるかもしれない」と、チームのパッケージに対する絶対の自信と、トニ・エリアスの今週末の走りへの期待感を示した。
■エリアス「一生忘れないけど忘れなきゃいけない」
最高の思い出のあるエストリルに戻ったトニ・エリアスは「自分にとってMotoGPクラスでの最初の勝利だったし、あの日の事はもう一生忘れられないと思う。ただ、不幸にしてこのスポーツは過去の事を一刻も早く忘れて次の戦いの事を考えなければいけない世界だし、今の自分に重要なのは今後のレース。チームとこのまま頑張ってできる限り短い時間内に正しい方向性を見つけたい。このサーキットは激しいブレーキングポイントがいくつもあり、自分のライディング・スタイルに合っているので大好き。ヘレス合同テストで集めたデータを活用してバイクをうまく仕上げていきたい」とコメント。
■ギントーリ「次女の出産に立ち会えて嬉しい!」
また、オフウイーク中だった先週の金曜日にタイミング良く次女が誕生し、2人の娘のパパとなったばかりのシルバン・ギントーリは、「なんとか出産の場にいられる事を祈っていたので、次女の誕生に立ち会えて本当に嬉しかったが、今は日曜日のレースに気持ちを集中しなければいけない。エストリルは素晴らしいけど難しいサーキット。金曜日と土曜日に頑張りバイクを最高な状態に仕上げておきたい。去年はあまりいい結果が残せていないので、今回はもっといい走りをして自分とアリーチェ・チームのために可能な限り多くのポイントを獲得できるようにしたい」と、次女誕生の喜びと日曜日のレースに向けての意気込みを語った。
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