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2008年4月1日
MotoGP第2戦スペインGPの決勝レース当日となった3月30日、時折雲は通過するものの明るい陽射しと良好なドライ・コンディションに恵まれた日曜日のヘレス・サーキットには、昨年の観客動員記録をさらに上回る13万1千563名の観客が押し寄せた。
ここでは、熱狂の大観衆に包まれたスペインGPにおけるMotoGP最高峰クラスのレース内容と結果、ならびに小排気量250ccクラスと125ccクラスのレース結果を紹介する。
■MotoGPクラスのスペインGP決勝レース内容
モータースポーツの熱心なファンとしても知られるスペイン国王も観戦に訪れた3月30日のヘレス・サーキットは、温度条件が3日間のレースウイーク中では最も低く、MotoGP最高峰クラスの決勝開始時点の気温は19度、路面温度は前日までのフリー・プラクティスよりも5度ほど低い23度、湿度は26%のドライ・コンディションとなった。
■スターティング・グリッド、地元の熱狂的な声援を浴びる1列目の2名
ウォームアップ周回を終え、レース開始直前のスターティング・グリッド1列目には、地元期待の若手スペイン人ライダー2名が並ぶ。
前日の予選で最高峰クラスのルーキーとしては史上初となる開幕からの2戦連続ポールを獲得したのは、昨年は250ccクラスを圧倒的な強さで2年連続制覇したスペイン人ルーキーであるフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソ。その隣となる1列目2番グリッドを獲得したのは同じく地元スペインの英雄、昨年度は最高峰クラス2年目にして年間ランキング2位を獲得し、今年は初の年間タイトルを狙うレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだ。
■2戦連続して1列目を確保したエドワーズ
1列目最後の3番グリッドには、開幕戦に引き続き1列目を確保したTECH3ヤマハのアメリカ人ライダー、元SBKチャンピオンのコーリン・エドワーズ。
■予選中はマシントラブルを抱えたもののレースに自信を示すロッシは2列目
2006年度年間チャンピオンであるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは2列目4番グリッド、2001年から2005年までの最高峰クラス5連続チャンピオンであり、今年はブリヂストン・タイヤに履き替えるという挑戦に出たフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、予選中にマシンの電気系トラブルを抱えたもののブリヂストン勢の中では最上位となる2列目5番グリッド。2列目最後の6番グリッドには、今年から乗り換えたホンダのマシンとミシュランタイヤに好感触を示すホンダLCRのランディ・ド・プニエがつけた。
■ヘレスでは今年もマシンのセッティングが決まらないストーナー
昨年度の2007年度はブリヂストン・タイヤとデスモセディチGP7で他を寄せ付けない破壊的とも言える強さを示し、最高峰クラス2年目にして年間チャンピオンに輝いたドゥカティーのケーシー・ストーナーは、ドゥカティーとブリヂストンが苦手とする今年のヘレスでも昨年同様に苦しいレースウイークを過ごし、フロントのセッティング決まらないまま迎えた予選では最終的に3列目7番グリッドを確保している。
■中野選手は4列目からのスタート
ホンダへの移籍2年目、今年はカワサキ時代と同じブリヂストン・タイヤで戦うサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、4列目真ん中のグリッドとなる11番グリッドにてスタート・シグナルの点灯を待った。
■レース開始、ホールショットを奪ったのはペドロサ、並びかけるヘイデン
シグナルが消えると同時に好スタートを見せたのはレプソル・ホンダの2名、2番グリッドのダニ・ペドロサと4番グリッドのニッキー・ヘイデンだった。ホールショットはペドロサが奪い、それと並ぶようにヘイデンが1コーナーに飛び込む。
■レプソル勢を追うロレンソとストーナー、新型エンジンが欲しいエドワーズ
その背後にはポールポジションからスタートしたフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソ、7番グリッドからの好スタートを見せたストーナーが続き、「今のエンジンはパワーが不足。次戦から投入される新エンジンに期待」というエドワーズは3番グリッドからの加速が伸びず1コーナーまでに5番手に後退した。
■コーナーでドヴィツィオーゾが最後尾付近に「理由が分からない」
13番グリッドからのスタートに失敗したJiRチーム・スコットのドヴィツィオーゾはこの時にほぼ最後尾まで後退。「1コーナーでのポジションは自分でもわけが分からなかったが、そこからはリスクを冒してプッシュしていく事にした」とドヴィツィオーゾ。
■ヘイデンが3番手に後退
2コーナーに向かう中、先頭のペドロサに並びかけたヘイデンはコース・イン側に入り込む事ができず、2コーナーから3コーナーにかけて大回りを喫し3番手にポジションダウン。
■ロッシはエドワーズの背後、それを追う好調のカピロッシ
ロレンソが2番手に浮上したこの時の上位グループの順位は先頭がペドロサ、2番手がロレンソ、3番手がヘイデン、4番手がストーナー、5番手がエドワーズ、6番手がフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ。
■中野選手も好スタート
7番手には、今回のヘレス2日目からレースタイヤでのペースを大幅に上げる事に成功、スタートにも成功して1コーナー進入までにポジションを2つ上げたリズラ・スズキのロリス・カピロッシ。そして8番手には11番グリッドからの好調なスタート・ダッシュを見せたサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手が続く。
■ストーナーがヘイデンを交わし3番手に浮上
走行ラインを失ったヘイデンのポジションを奪ったストーナーは大観衆に囲まれるスタジアム・セクションに3番手で進入。ヘイデンは4番手に後退し、その後ろには前にストーナーとヘイデンにブロックされる形となり前へ出られない6番手のエドワーズ。
■2ラップ目突入時の順位とライダーの状況、ホプキンスはギャンブル成功
追い抜きが難しい事から、毎年レース序盤は全ライダーが等間隔な1列を形成するヘレス・サーキットでの決勝レース2ラップ目突入時点の順位は、先頭がペドロサ、2番手がロレンソ、3番手はストーナー、4番手はヘイデン、5番手はエドワーズ、6番手はロッシ、7番手はカピロッシ、8番手は中野選手、9番手は「今回のタイヤ・ギャンブルは当たった」と述べるカワサキのジョン・ホプキンス。
■呼吸のできるトーズランド
10番手には、レースウイーク中はウイルス性の気管支炎に苦しみ続け、「レース中に呼吸困難にならないか不安だったが大丈夫だった」と述べるTECH3ヤマハのジェームス・トーズランド、11番手はホンダLCRのランディ・ド・プニエ。
■2007年パーツの流用で息を吹き返すリズラ・スズキの2名
12番手には、チームメイトのカピロッシと同じくレースタイヤでのマシンの仕上がりに高い満足度を示すリズラ・スズキのクリス・バーミューレン。今回のヘレスからフェアリングを2007年型に戻したスズキ勢は、2008年型GSV-Rリリース後の長いトンネルからようやく抜け出しそうな雰囲気だ。
■カワサキのバルトレミー「ウエストとジャックは似ている」
13番手には、カワサキ2年目に入り昨年までの勢いが全く見られずスランプ状態に近いアンソニー・ウエスト。ウエストの冬季テストからの不調についてカワサキのコンペティション・マネージャーを努めるミハエル・バルトレミーは「ウエストと開発ライダーのオリビエ・ジャックにはライディング・スタイルに共通性が見られるので、(翌日のテストでは)彼らが一緒に作業を進める事でいいベースセッティングを見つけて欲しい」とコメントしている。
■乗り換えに苦しみ続けるドゥカティー勢、弱音を吐くエリアスのメカニック
14番手は予選中に転倒して最後尾からのレーススタートとなったドゥカティーのマルコ・メランドリ。ストーナー以外のドゥカティー・ライダー全員がデスモセディチへの乗り換えに苦戦する中、ワークスのメランドリはレース中に限ってはペースを改善する方向にある。
15番手には冬季シーズンと開幕戦に引き続き地元でもデスモセディチへの順応に苦しむアリーチェ・チームのトニ・エリアス。レース開始前にアリーチェ・チームのメカニックは「エリアスのライディング・スタイルは独特なので、過去のライダー・データが何一つ使えず問題の解消は難しい」と悲痛なコメントを2戦目にして残している。
■ホンダ・グレッシーニのデ・アンジェリス「トラクション・コントロールが合わない」
16番手はスタートの失敗が災難だったというドヴィツィオーゾ、17番手には「トラクション・コントロールが走りに合わない」と嘆くサンカルロ・ホンダ・グレッシーニのアレックス・デ・アンジェリス。
■ギントーリの悲痛な叫び「どうしたらいいのか分からない」
最後尾の18番手には「ライディングも変更し、マシンの調整も行ったが効果が得られない。もう何をどう改善したらいいのか分からない」と、ここまでの前向きな発言が続かなくなった様子のアリーチェ・チームのシルバン・ギントーリ。ドゥカティー勢は苦手なヘレスでは全員が精神的にも追い込まれた苦しい状態にある様子だ。
■徐々にポジションを落とすストーナー、ロッシは4番手に
2ラップ目の1コーナーを抜けた先頭のペドロサを2番手のロレンソが追う中、ロッシはエドワーズから1コーナーの進入を奪って5番手に浮上。その前方ではヘイデンがストーナーから3番手のポジションを奪い返し、これにひるんだストーナーは背後から迫るロッシにもポジションを奪われ5番手に後退。ロッシは4番手に。
■トップのペドロサは早々とサーキット・レコードを樹立
ここで先頭を走るペドロサは1分40秒116のサーキット・レコードを記録。後続のロレンソ以下を一気に引き離しにかかる。
■ストーナーがグラベルに突入「特に何も無理はしてなかたのに」
ロッシがヘイデンのインをついて3番手に浮上した3ラップ目、前の周回で続け様にポジションを奪われ5番手を走行していたストーナーは、ここでブレーキング中に大きなミスを犯してしまう。6コーナーを曲がりきれなかったストーナーはそのままグラベルに突入、転倒は免れてコースに復帰はしたものの最後尾までポジションを落とした。
「別に攻め込んでいる気はなかったのに止まりきれなくて驚いた。特に変わった事は何もしていなかったのに」とストーナー。
■ド・プニエが転倒しリタイア「突然フロントを失った」
ストーナーがグラベルを走行中、12番手を走行していたド・プニエは5コーナーでフロントを失い転倒。ド・プニエはコースに復帰する事なくそのまま走行を断念、レースをリタイアした。
「スタートには失敗したがリズムをつかみ追い上げている最中だった。走行ラインは正しかったのに突然フロントを失ってしまった。チームと一緒にデータを調査しているが、原因はまだ分からない」とド・プニエ。
■カピロッシに前を奪われ怒り狂うエドワーズ、ロッシはロレンソを交わし2番手
1コーナーへの進入でカピロッシに前を奪われ6番手に後退したエドワーズが「彼の後ろで足止めを喰らいたくはなかったからひどく頭にきた!」と怒り狂う4ラップ目、3番手を走行していたロッシは前を走っていたロレンソの右イン側に鋭く飛び込み2番手に浮上し、先頭で逃げるペドロサの追撃態勢に入る。
3番手に後退したロレンソも必死の走りでタイヤの異なるチームメイトと、さらに遠くに逃げるペドロサを追いかける。
■テキサス・トルネード、荒れ狂うも撃沈
5ラップ目に入るとペドロサ、ロッシ、ロレンソ、ヘイデンの4台が先頭集団を形成して後続の長い1列から抜け出しホームストレートを走り抜ける。トップ4台からやや遅れて5番手のカピロッシと、カピロッシとの攻防の中でミスを犯し、さらに遅れたエドワーズが6番手から1コーナーに飛び込む。
その後も必死でカピロッシを追い続けたエドワーズだが、彼は5コーナーのブレーキングでフロントを滑らせて転倒。グラベルに埋まったバイクを起こしてコースには復帰するが、ポジションを最後尾に落としてしまう。
■エドワーズ「転ぶような状態じゃなかったのに転んだ」
エドワーズは「フロントが滑って転倒してしまった。タイヤの感触がプラクティスの時とは異なり、転ぶような状態じゃなかったのに転んでしまった」と述べ、ミシュランのフロントタイヤが温度の低くなったレース当日には期待通りの性能を発揮しなかったとの印象を漏らしている。
■長い1列から1人抜け出すペドロサ
常に他のライダーよりも柔らかめのミシュランタイヤを選択するペドロサはレース序盤から1分40秒台のペースを落とす事なく快調に飛ばし、6ラップ目には2番手集団のロッシ、ロレンソ、ヘイデンの3名を1.6秒引き離した。4番手を行くヘイデンの1.2秒後方には5番手のカピロッシ、その背後には中野選手を交わした6番手のトーズランドが迫る。
■ドヴィツィオーゾが怒濤の挽回、7番手を走行する中野選手の背後に出現
トーズランドに交わされ7番手となった中野選手の後方には、1ラップ目に最後尾付近まで後退した筈のドヴィツィオーゾが8番手に浮上しており、さらにその背後にはバーミューレンとホプキンスの2台がつける。
■中野選手がポジションを3つダウン
2番手集団のロッシ、ロレンソ、ヘイデンが0.5秒間隔に並び、少し遅れて5番手のカピロッシ、さらに遅れて6番手のトーズランドがそれを追う7ラップ目、ここでトーズランドの後ろを走行していた中野選手はドヴィツィオーゾとバーミューレンに交わされ、さらに8ラップ目突入までにホプキンスにも交わされて10番手に後退。
■ドヴィツィオーゾは6番手に急浮上
勢いの止まらないドヴィツィオーゾは前方を行くトーズランドの真後ろから鋭くインに飛び込み一気に6番手に浮上。7番手に後退したトーズランドの隙をバーミューレンがうかがう。
■ストーナーが5周回で12番手にまでポジションを挽回
中野選手の後方では、3ラップ目のコースアウトから復帰したストーナーが最後尾からの激しい追い上げを見せ、ここでチームメイトのメランドリを交わしてポジションを12番手にまで挽回している。
8ラップ目開始時点の順位はトップがペドロサ、2番手にロッシ、3番手にロレンソ、4番手にヘイデン、5番手にカピロッシ、6番手にドヴィツィオーゾ、7番手にバーミューレン、8番手にトーズランド、9番手にホプキンス、10番手に中野選手、11番手にウエスト、12番手にストーナー、13番手にメランドリ、14番手にデ・アンジェリス、15番手にエリアス、最後尾の16番手にはギントーリが続いた。
■ロッシを必死に追いバランスを崩すロレンソ、背後で安定した走行のヘイデン
ここでロッシを必死に追う3番手のロレンソは、加速時に突如フロントを浮かしてマシンのバランスを崩し小刻みに振動、あわや転倒という挙動を見せるが、幸いロッシとの距離が大きく広がる事はなかった。リタイアしたエドワーズと同様に「プラクティスの時と同じような感触がフロントに得られない」とロレンソ。
トップのペドロサが1分40秒台後半のペースで2.5秒近く後続を引き離し、ストーナーがウエストを交わして11番手にポジションを上げた9ラップ目、3番手のロレンソは2番手のロッシの0.3秒後方を走行。4番手のヘイデンはロッシと全く同じ1分41秒フラットのペースでロレンソを0.8秒後方から追う。
■後続を3秒引き離すペドロサ
12ラップ目に先頭のペドロサと2番手のロッシの差は3秒まで拡大。3番手のロレンソはロッシの0.8秒後方、やや先頭の3台についていくのが苦しくなった4番手のヘイデンはロレンソの1秒後方に。
先頭のペドロサと2番手のロッシの差が4.2秒まで開いた16ラップ目、3番手のロレンソは再びロッシとの距離を0.3秒差に縮め、ヘイデンはロレンソとの差を1秒にキープ。
■中野選手の背後に現れるストーナー、メランドリはウエストと12番手争い
17ラップ目、中盤にペースをやや落とした10番手の中野選手の背後には、激しい追い上げを見せるストーナーがゆっくりと近づく。ストーナーから大きく離されたその後方には、14番手のデ・アンジェリスとの攻防戦を抑え、続いてウエストと12番手を争うマルメランドリ。激しくコーナーを攻めるウエストのリアタイヤからはスモークが立ち上る。
■ロッシ、ロレンソ、ヘイデンは等間隔、その背後では5番手争いが激化
後半もハイペースを維持するペドロサが後続を4.5秒引き離し、2番手集団のロッシ、ロレンソ、ヘイデンが0.5秒の等間隔にならんだ19ラップ目、ヘイデンの16秒後方を走行する5番手のカピロッシの真後ろには6番手のドヴィツィオーゾ、7番手のバーミューレン、8番手につけるトーズランドの3台が追いつき、さらに少し遅れてホプキンスもその第3集団に迫っている。
■トーズランドとの接近戦でレザースーツが裂けたバーミューレン
ここで粘り強く前をうかがっていたトーズランドがバーミューレンの右イン側に鋭く飛び込む。この時にバーミューレンの上腕部分のレザースーツが裂けてしまい、これにひるんで膨らんだバーミューレンのイン側にすかさず後続のホプキンスも飛び込む。この結果、バーミューレンはポジションを一気に2つ落としてしまう。
■ドヴィツィオーゾがカピロッシを交わし5番手に「リスクを冒してプッシュした」
21ラップ目、一度はトーズランドに近づかれたドヴィツィオーゾだが、ここでカピロッシを交わしてついに5番手に浮上。「オープニングラップで最後尾にポジションを落とした後、リスクが大きい事は分かっていたがカピロッシを交わすまでは全力でプッシュし続けた」とドヴィツィオーゾ。
■起き上がれないヘイデンがひじ擦り走行
22ラップ目、ここまで2番手のロッシと3番手のロレンソを順調に追い続けてきたヘイデンが、1コーナーへの進入でバイクを寝かしたまま起き上がれなくなり、ひじを擦ったまま何メートルも走行するが、タイヤが路面とのグリップを保った事から、ひざでなんとかバイクを立ち上げ直す事に成功。ロレンソとの距離は1.7秒まで広がったが最悪の事態は免れ、4位のポジションはキープした。
■ヘイデン「もうだめかと思った」
「1コーナー目がけてブレーキを長く握りすぎてしまった。ひじがついた時にはもうだめかと思ったが、フロントの調子がすごく良かったのでひざで持ちこたえる事ができた。バイクの状態はレースウイーク3日間の中で一番良かったし、表彰台を狙えると思っていた」とヘイデン。
■中野選手の追い抜きに失敗し、再びグラベルに突入するストーナー
リズラ・スズキのポールデニング監督が「リアタイヤのギャンブルに失敗した」と嘆く通り、レース残り3周を前にリアが完全に終わったバーミューレンが9番手に後退し、10番手の中野選手がそのポジションを背後から狙う24ラップ目、この2名の争いにブレーキングで割って入ろうとした11番手のストーナーは、中野選手がブレーキをリリースしたタイミングで追い抜きをかけた事から中野選手のマシンにタイヤを接触。バランスを失ったストーナーはこの日2回目となるグラベルへの突入となった。
■ストーナー「今日は5位狙いだったのに災難・・・」
ここでも転倒は免れ、バーミューレンと中野選手からは大きく離されたものの11番手のポジションのままコースに復帰したストーナーは「中野を追い抜こうとしたら中野がちょうどブレーキをリリースしたのでタイヤが接触し、逃げ場がなくなりグラベルに入る以外方法がなかった。今日は5位で完走できれば良いと思っていたが、ひどい事になった」とコメント。
■残り2周回の時点の順位、中野選手はバーミューレンを交わして9番手に
中野選手がバーミューレンを交わして9番手にポジションを上げた残り2周の26ラップ目の順位は、先頭がペドロサ、その3.3秒後方には2番手のロッシ、さらに1.4秒後方には3番手のロレンソが続く。
■周回数を間違えて手をふるロッシ「ロレンソに抜かれなくて良かった」
ここでロッシは残り周回数を間違え、最終ラップを終えたと勘違いしてコントロールライン通過直後に観客に早々と手を振りながら一瞬スローダウンするが、すぐに誤りに気がついたロッシはそのまま2番手のまま1コーナーに進入。「すぐに分かったから大丈夫だった。ロレンソとの距離に余裕があって良かった・・・」とロッシ。
転倒を危うく免れた4番手のヘイデンはロレンソから5.3秒遅れ、さらにその18秒後方では5番手のトーズランド、6番手のドヴィツィオーゾ、7番手のカピロッシ、8番手のホプキンスの4名が激しく5位のポジションを争っている。
5番手争いの集団にはついていけない中野選手は9番手、その背後の10番手にはバーミューレン。さらに距離を開いて11番手のストーナー、12番手にメランドリ、13番手にウエスト、14番手にデ・アンジェリス、ポイント圏内最後の15番手にエリアス、最後尾の16番手にはギントーリが続いた。
■最終ラップの最終コーナー、ルーキー2名の度肝を抜いた青い彗星カピロッシ
上位4名の順位がほぼ固また最終ラップ、先頭のペドロサ、2番手のロッシ、3番手のロレンソ、4番手のヘイデンがチェッカーに向かう中、団子状態となって激しく5位を争っていた後続集団が最終ヘアピン進入時に大きな動きを見せる。7番手を走行していたカピロッシはスピードを殺さずに隙間をぬって前方のトーズランドとドヴィツィオーゾに並びかけ、一気に5番手に浮上。
■一瞬にしてドヴィツィオーゾが大きくポジションを後退
「カピロッシにイン側に入られて外側に少し押し出される形になった」というトーズランドは、すぐさまドヴィツィオーゾとの加速競争に入る。ここでドヴィツィオーゾはグリップを失って加速が伸びなくなり、ホプキンスがゆっくりとドヴィツィオーゾの前に出た。4台は5番手にカピロッシ、6番手にトーズランド、7番手にホプキンス、8番手にドヴィツィオーゾの順でコントロールラインに向けての猛加速を見せる。
■優勝は最後まで逃げ切ったダニ・ペドロサ
こうして激しいバトルとなったスペインGPを制したのは、他を寄せ付けないハイペースでオープニング・ラップから最後までリードを奪いきったレプソル・ホンダのダニ・ペドロサだった。ペドロサが最高峰クラスにおいて地元ヘレスでの優勝を飾ったのは今回が初めての事だ。
■ペドロサ「嬉しい!ミスだけしないように頑張った」
冬季シーズン中は1月の合同テストでの右手のひら骨折により痛みとの戦いを強いられ、マシンのベース・セッティングが開幕まで思うように進まなかったペドロサは、「骨折の影響で冬季テスト中は苦しかったが、こんなに早くからいい走りができるようになって本当に嬉しい。カタールの時ほど凄まじいスタート・ダッシュではなかったが、それでもレースをリードする事はできたので、とにかくミスをせずに走りきる事だけを心がけていた。スペインのファンの前で優勝できて良かったし、国王からトロフィーを受け取るなんて大変に名誉な事」と、その喜びを語った。
ウイニングランを走行中のペドロサはスペインGP恒例の花火師につかまり、バイクから降ろされて爆竹の点火場所にひきずられていく。
■2位のロッシは最高峰クラス100回目の表彰台
2位はブリヂストン・タイヤにスイッチしてから初の表彰台を獲得したフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ。今回の表彰台はロッシにとってグランプリ最高峰クラスでの100回目という記念すべき表彰台だ。
■ロッシ「タイヤが好調さが今後の励み」
「200回目があるかどうかは分からないけどね!」と語るロッシは、「スタートの時は不安だったのでタイヤを温存しながらいこうと思っていたが、実際はレース序盤から終盤までを通してタイヤの調子はとても良かったし、これは今後の励みになった。午前のウォームアップの後のセッティング変更が今回はとても重要だった」とレースを振り返った。
■3位のロレンソは開幕から2連続の表彰台を獲得
レースウイーク初日からトップタイムを記録し、2戦連続のポールポジションからスタートした好調のフィアット・ヤマハのルーキー、地元での初優勝も噂されたミシュランを履くホルヘ・ロレンソは、決勝を2戦連続の表彰台となる3位でチェッカーを受けた。
■ロレンソ「残念だが、今日はダニの勝利が順当」
「もっと上が狙えると思っていたので今日は少し残念だが、まだ2回目のレースなので文句は言えない。2回のレースで2回の表彰台と2回のポールポジションはすごい成績だからね。それにものすごい観衆だけではなくスペイン国王の訪問もあり、本当に楽しく走れた。今日はダニが勝利が順当と言えるレースだったし、ついていく事は不可能だったが、ここまでに学習も進んでいるので次のレースではさらに強くなれると思う。長いシーズンではそれが重要な事」と、地元でのパフォーマンスもなく誰よりも先に早々とパルクフェルメに戻ったロレンソ。
■ヘイデンは4位、最終コーナーで2台を交わしたカピロッシは5位
続く4位はレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、5位はリズラ・スズキのロリス・カピロッシ、6位はTECH3ヤマハのジェームス・トーズランドが獲得。ちなみにイギリス人ライダーがシーズン中の決勝レースで2回のトップ6入りを果たすのは、1990年以来の事となる。7位はカワサキのジョン・ホプキンス、8位は最終コーナーでポジションを大きく落とす事になったJiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾだった。
■中野選手は9位を獲得
サンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は、26ラップ目にバーミューレンを交わした後はポジションをそのままキープ、9位でチェッカーを受けている。今年は大手スポンサーを獲得しているグレッシーニ・チームのオーナーを努めるファウスト・グレッシーニは「まだこの成績では満足できない」と述べ、レース翌日のテストではブリヂストンとの調整をさらに進めて、次戦以降の好成績獲得に向けての準備を進める意向を示している。
■ピットに戻ってうつむき、固まるチャンピオン
2回のコースアウトを喫して11番手に終わった2007年度チャンピオン、ドゥカティーのケーシー・ストーナーは、レース終了後はピットボックス内に戻り、誰とも言葉を交わさず、シールドの下がったヘルメットを被ったままうつむき微動だにしない。
■ストーナー「別に世界が終わった訳じゃない」
ドゥカティーのクルーたちに心配そうに見守られていたストーナーは後の会見において「嬉しくない結果に終わったが、別に世界が終わりを迎えた訳じゃない。まだ他のサーキットでのレースがこれからたくさん待ち受けている。次のポルトガルは、去年はいくつか問題を抱えながらでも表彰台を確保できたので、今年は優勝を狙って戦いたい」とコメントしており、気持ちを次戦のエストリル以降の戦いに切り替えた様子だ。
■MotoGPクラスのスペインGPレース結果
以下に、気温19度、路面温度23度、湿度26%のドライ・コンディションにて行われたMotoGP最高峰クラスの決勝レース結果一覧を示す。
1) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 45分35秒121(27周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 45分38秒004(27周)
3) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 45分39秒460(27周)
4) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 45分45秒263(27周)
5) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 46分02秒645(27周)
6) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 46分02秒929(27周)
7) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 46分03秒417(27周)
8) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 46分03秒570(27周)
9) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 46分07秒690(27周)
10) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 46分10秒212(27周)
11) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 46分17秒344(27周)
12) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 46分19秒619(27周)
13) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 46分20秒928(27周)
14) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 46分20秒992(27周)
15) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 46分44秒679(27周)
16) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 46分49秒563(27周)
-) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 9分10秒348(5周)
-) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 3分31秒127(2周)
■250ccクラスのスペインGPレース結果
気温18度、路面温度21度、湿度48%のドライ・コンディションの中で行われたスペインGP250ccクラスの決勝レースの結果は以下の通り。
1) ミカ・カリオ FIN レッドブルKTM 250 KTM 45分27秒908(26周)
2) マティア・パッシーニ ITA ポラリス・ワールド アプリリア 45分32秒185(26周)
3) 高橋裕紀 JPN JiRチーム・スコット250 ホンダ 45分32秒195(26周)
4) 青山博一 JPN レッドブルKTM 250 KTM 45分32秒784(26周)
5) エクトル・バルベラ SPA チーム・トース・アプリリア アプリリア 45分33秒876(26周)
6) アレックス・デボン SPA ロータス・アプリリア アプリリア 45分41秒541(26周)
7) フリアン・シモン SPA レプソルKTM 250cc KTM 45分44秒280(26周)
8) ロベルト・ロカテリ ITA メティス・ジレラ ジレラ 45分50秒479(26周)
9) アレイックス・エスパルガロ SPA ロータス・アプリリア アプリリア 45分56秒514(26周)
10) ルーカス・ペセック CZE オート・ケリー-CP アプリリア 46分00秒634(26周)
11) アレックス・バルドリーニ ITA マテオーニ・レーシング アプリリア 46分06秒510(26周)
12) ラタパー・ウィライロー THA タイ・ホンダPTT SAG ホンダ 46分11秒279(26周)
13) カレル・アブラハム CZE カルディオンABモーターレーシング アプリリア 46分22秒067(26周)
14) マヌエル・エルナンデス SPA ブルセンス・アプリリア アプリリア 46分49秒846(26周)
15) イムレ・トース HUN チーム・トース・アプリリア アプリリア 45分38秒968(25周)
16) ドニ・タタ・プラディタ INA ヤマハ・プルタミナ・インドネシア ヤマハ 45分52秒650(25周)
-) アルバロ・バウティスタ SPA マプフレ・アスパル・チーム アプリリア 43分33秒058(25周)
-) マルコ・シモンチェリ ITA メティス・ジレラ ジレラ 43分33秒189(25周)
-) トーマス・ルティ SWI エミー・カフェラテ アプリリア 38分27秒215(22周)
-) マヌエル・ポッジャーリ RSM カンペテーラ・レーシング ジレラ 35分30秒193(20周)
-) ファブリツィオ・ライ ITA カンペテーラ・レーシング ジレラ 30分14秒746(17周)
-) ユージェーヌ・ラバティ IRL ブルセンス・アプリリア アプリリア 14分29秒422(8周)
-) エクトル・ファウベル SPA マプフレ・アスパル・チーム アプリリア 3分40秒393(2周)
なお、レース序盤から後続集団を大きく引き離してレース終盤までトップ争いを演じたマプフレ・アスパルのアルバロ・バウティスタとジレラのマルコ・シモンチェリだが、最終ラップの左コーナー手前でエンジンがストールし速度が落ちた先頭のバウティスタのリア左側に、終始タイヤ接触ぎりぎりのポジションからプレッシャーを与え続けていた2番手のシモンチェリが追突したことで、この2台は揃ってリタイアしている。
バウティスタは「あれはシモンチェリのミスではない。自分のエンジンがとまってしまったのが原因」と、地元優勝目前だった残念な転倒劇について説明し、シモンチェリは「非難されると思っていたらバウティスタが謝りに来たのでびっくりした」と語った。
この結果、それまで3番手を走行していたKTMのミカ・カリオが優勝、最終ラップ終盤にJiRチームスコットの高橋裕紀選手を交わしたポラリス・ワールドのマティア・パッシーニが2位、高橋選手は惜しくも2位は逃したものの今期初の表彰台となる3位を獲得。KTMの青山博一選手は4位となった。
■125ccクラスのスペインGPレース結果
気温18度、路面温度20度、湿度55%のドライ・コンディションの中で行われたスペインGP125ccクラスの決勝レースの結果は以下の通り。日本勢ではISPA KTMアランの小山知良選手が13位、I.C.チームの125ccルーキーである中上貴晶は15位のポイント圏内でレースを終えている。
1) シモーネ・コルシ ITA ジャック&ジョーンズWRB アプリリア 41分46秒100(23周)
2) ニコラス・テロール SPA ジャック&ジョーンズWRB アプリリア 41分49秒306(23周)
3) ブラッドリー・スミス GBR ポラリス・ワールド アプリリア 41分51秒086(23周)
4) ステファン・ブラドル GER グリズリー・ガス・キーファー・レーシング アプリリア 41分51秒122(23周)
5) パブロ・ニエト SPA オンデ2000KTM KTM 41分52秒354(23周)
6) スティーヴィー・ボンセー USA デグラーフ・グランプリ アプリリア 42分06秒663(23周)
7) スコット・レディング GBR ブルセンス・アプリリア・ジュニア アプリリア 42分08秒617(23周)
8) ドミニク・エジャーター SWI アジョ・モータースポーツ デルビ 42分09秒102(23周)
9) マイク・ディ・メッリオ FRA アジョ・モータースポーツ デルビ 42分10秒028(23周)
10) サンドロ・コルテセ GER エミー・カフェラテ アプリリア 42分19秒641(23周)
11) ラファエレ・デ・ロサ ITA オンデ2000KTM KTM 42分19秒764(23周)
12) エステベ・ラバト SPA レプソルKTM 125cc KTM 42分20秒087(23周)
13) 小山知良 JPN ISPA KTMアラン KTM 42分20秒526(23周)
14) ポル・エスパルガロ SPA ベルソン・デルビ デルビ 42分26秒138(23周)
15) 中上貴晶 JPN I.C.チーム アプリリア 42分30秒615(23周)
16) ミヒャエル・ランセデール AUT I.C.チーム アプリリア 42分31秒598(23周)
17) ジュール・クルーセル FRA ロンシン・レーシング ロンシン 42分35秒785(23周)
18) アンドレア・イアンノーネ ITA I.C.チーム アプリリア 42分39秒286(23周)
19) ペレ・トゥトゥサウス SPA バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 42分44秒137(23周)
20) ロベルト・ラカレンドーラ ITA マテオーニ・レーシング アプリリア 42分49秒710(23周)
21) アレックス・マスボー FRA ロンシン・レーシング ロンシン 42分50秒832(23周)
22) イヴァン・マエストロ SPA Alpo Atletico de Madrid ホンダ 43分05秒699(23周)
23) ダニエル・サエズ SPA Gaviota Prosolia Racing アプリリア 43分11秒090(23周)
24) ルイ・ロッシ FRA FFMホンダGP125 ホンダ 43分25秒835(23周)
25) アルベルト・モンカーヨ SPA アンダルシア・デルビ デルビ 43分34秒292(23周)
26) ロベルト・ミュアサン ROU グリズリー・ガス・キーファー・レーシング アプリリア 43分02秒935(20周)
-) アクセル・ポンス SPA ジャック&ジョーンズWRB アプリリア 40分48秒003(22周)
-) ロレンソ・サネティ ITA ISPA KTMアラン KTM 26分09秒850(14周)
-) ヒューゴ・バン・デン・ベルグ NED デグラーフ・グランプリ アプリリア 22分14秒386(12周)
-) ジョアン・オリベ SPA ベルソン・デルビ デルビ 17分06秒550(9周)
-) ダニー・ウェッブ GBR デグラーフ・グランプリ アプリリア 14分40秒787(8周)
-) ステファノ・ビアンコ ITA S3+WTRサンマリノ・チーム アプリリア 12分52秒920(7周)
-) セルジオ・ガデア SPA バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 11分06秒537(6周)
-) エフレン・ヴァスケス SPA ブルセンス・アプリリア・ジュニア アプリリア 11分06秒967(6周)
-) ガボール・タルマクシ HUN バンカハ・アスパル・チーム アプリリア 5分33秒253(3周)
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