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日本GP250cc決勝 ドヴィツィオーゾ「勝利は自力で勝ち取るもの」 |
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2006年9月27日
9月24日(日)、栃木県のツインリンクもてぎにて、MotoGP250ccクラスの決勝レースが行われている。
前日までは雨も心配されたこの日、空には雲が多く浮かぶものの青空がのぞき、終日コース・コンディションはドライに保たれた。
■250cc年間タイトルの行方がほぼ確定しそうな日本GP
この日の日本グランプリ250ccのレースで最も注目されたのは、年間タイトルを争う2名のライダー、ポイントリーダーであるフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソと、それを24ポイント差のランキング2位の立場で追うヒューマンゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾとの戦いだ。
ドヴィツィオーゾがポイント差を今回のレースで大きく縮められない場合、日本GP直後のポルトガルGPで、ロレンソの優勝が決める可能性が極めて高くなる。
■ランキング順位通りのスターティング・グリッド1列目
予選の結果は、ホルヘ・ロレンソがポールポジションを獲得、ドヴィツィオーゾはその隣の1列目2番グリッド、さらにその隣の3番グリッドには、フォルツナ・アプリリアと同じくホンダの優勝を阻止したいアプリリア・ワークスのマシンを駆るマステルMVAアスパル・チームのアレックス・デ・アンジェリス。
■地元にかける好調の日本勢
また、日本グランプリの焦点は年間タイトルをかけた争いだけではない。昨年に引き続き日本での勝利を狙うKTMの青山博一選手は1列目4番グリッドを獲得しており、強豪のアプリリア勢を抑えての勝利に期待がかかっている。
今年からMotoGPにフル参戦を果たした博一選手の弟の青山周平選手は2列目5番グリッド、来期もヒューマンゲスト・ホンダで走る事が決定した高橋裕紀選手はその隣の6番グリッドにつけており、今年は強さを世界にアピールし続ける日本勢のホームでの活躍にも、ツインリンクもてぎに集まった6万3千人の熱い視線が注がれる事になった。
開幕戦のヘレスで大怪我を負い、250cc第11戦のチェコまでレースに参加ができなかった関口太郎選手は28番グリッドからのスタートとなり、慣れ親しんだ地元日本のサーキットでのレース中の順位回復に挑む。
■日本人のワイルドカード出場者は5名
今回のもてぎには多くの日本人ライダーも250ccクラスにワイルドカード参戦を果たしている。ワイルドカード出場の日本人ライダー中、最も高いグリッドを予選で獲得したのは、11番グリッドからスタートする横江竜司選手。
及川誠人選手は17番グリッド、高橋巧選手は25番グリッド、250ccフル参戦ライダーの高橋裕紀選手の弟である高橋江紀選手は26番グリッドに並ぶ。2000年と2001年にMotoGP125ccクラスで年間タイトルを争った宇井陽一選手も、今回の250ccクラスにワイルドカード出場しており、27番グリッドから初のMotoGP250ccクラスでのレースをスタートする。
■決勝レース、序盤をリードするドヴィツィオーゾ
この日23周のレースが行われた250ccクラス決勝時の気温は27度、路面温度は45度、湿度は14%。
ホールショットを奪ったデ・アンジェリスを交わしてレース序盤をリードしたのはヒューマン・ゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾだ。オープニング・ラップで出遅れたポイントリーダーのホルヘ・ロレンソは、序盤はタイヤの調子が上がらず、2ラップ目にはドヴィツィオーゾから1.6秒後方の5番手に下がった。
3ラップ目の順位は先頭からアンドレア・ドヴィツィオーゾ、2番手にアレックス・デ・アンジェリス、3番手に2列目からの追い上げを見せる高橋裕紀選手、高橋選手のすぐ後ろ4番手には、KTMの青山博一選手がつけた。
■後退するロレンソ
気迫の走りで先頭を行くドヴィツィオーゾとは対照的に、青山博一選手の1.3秒後方まで下がったホルヘ・ロレンソは全くペースを上げられず、先頭の4人から引き離されていく。
5ラップ目に青山博一選手は高橋選手を交わして3番手に浮上し、4番手となった高橋選手の後方5番手のホルヘ・ロレンソはペースを取り戻す事が出来ておらず、先頭集団から2秒後ろまで下がっている。先頭のドヴィツィオーゾは2番手のデ・アンジェリスの追撃をかわすように前を急ぐ。
■青山博一選手が先頭の2台を交わしトップに
7ラップ目、青山博一選手は前の2台を豪快に交わすとそのままトップに立ち、レースのリードを開始。2番手となったドヴィツィオーゾは先頭で逃げる博一選手のスリップにつけて様子をうかがっている。
レプソル・ホンダの青山周平選手は、先頭を行く兄の4秒後方で、0.4秒前を行く6番手のロベルト・ロカテリを追い続けている。
■容赦のないデ・アンジェリス・アタック
8ラップ目、今回の日本GPにタイトル獲得の命運をかけるドヴィツィオーゾに悲劇が起きる。ドヴィツィオーゾのイン側に後方のデ・アンジェリスが飛び込み、ドヴィツィオーゾが接触を避けて少し外側に逃げるという今期は何度も見慣れた光景が日本GPでも展開されてしまった。
この追い抜き劇により、ドヴィツィオーゾのマシンは7ラップ目までの勢いを明らかに失い、3番手となった高橋選手の後方5番手まで順位を落としてしまう。ドヴィツィオーゾの1.5秒後方には、ペースを徐々に回復してきたタイトル争いの宿敵であるロレンソの姿が近づいている。
■ドヴィツィオーゾに追い打ちをかけるアクシデントが発生
レース中盤を過ぎた15ラップ目には、ヒューマンゲスト勢にとって大きなアクシデントが起きてしまう。3番手の高橋裕紀選手のスリップにつけてペースを維持していたドヴィツィオーゾの目の前で、左コーナーを曲がっていた高橋選手のマシンが突然ハイサイドを起こし、ライダーとマシンがアスファルトに叩きつけられた。
■グラベルに突っ伏す高橋選手とペースを崩すドヴィツィオーゾ
マシンがきれいにコース左外側に流れたため、ドヴィツィオーゾを転倒に巻き込むという最悪の事態は免れたものの、高橋選手はグラベルに飛び込み、事態を把握して地面に突っ伏した。
また、とっさのブレーキングで難を逃れたドヴィツィオーゾだが、高橋選手の転倒の影響により、この周回はラップタイムを1.2秒も落としてしまった。次の16ラップ目にはペースを上げてきたロレンソが一気にドヴィツィオーゾの0.4秒後方まで迫る事になる。
■忍び寄るロレンソの影
20ラップ目まで背後に迫るロレンソをブレーキングで抑え続けたドヴィツィオーゾだが、中盤以降は徐々に調子を少し戻したロレンソは、21ラップ目にドヴィツィオーゾを交わして3番手に浮上した。
ドヴィツィオーゾはロレンソの後半のペースにはついて行けず、大きく後退していく。
■昨年に引き続き青山博一選手が優勝!
23ラップの全周回を終え、先頭でチェッカーを受けたのは、8ラップ目からのデ・アンジェリスの追撃を抑える事に成功したKTMの青山博一選手だ。青山選手の日本GPでの優勝は、チームメイトだったペドロサを抑えて優勝した昨年に引き続いての2年連続となる。
青山博一選手から1.3秒遅れて2位でチェッカーを受けたのはマステルMVAアスパルのアレックス・デ・アンジェリス。
ポイントリーダーであるフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソは、ライバルのヒューマンゲスト勢の不運もあり、3位表彰台を獲得する事に成功した。
■圧倒的優位に立つロレンソ
ランキング2位につけるヒューマンゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾが4位に終わった事で、トップのロレンソとドヴィツィオーゾとの年間ポイント差は27まで開いた。このポイント差は、次戦のエストリルでロレンソがドヴィツィオーゾの前でチェッカーを受けた瞬間に、ロレンソの年間タイトルが決まる事を意味する。
最後までロベルト・ロカテリを交わす事ができなかったレプソル・ホンダの青山周平選手は6位、カンペテーラ・レーシングの関口太郎選手は予選順位を10挽回しての18位でホーム・グランプリを終えた。
ワイルドカード出場の日本人ライダーの中では、RT森のくまさん仙台に所属の横江竜司選手が8位と健闘を見せている。その他では、及川誠人選手が13位、宇井陽一選手が19位、高橋江紀選手が20位、高橋巧選手は23位だった。
表彰台の頂点では、地元ファンによるヒロシコールの大合唱を笑顔で受けていた青山博一選手が、国歌を聴き終えるまでの間に号泣し、そのまま涙は止まらなくなった。
■各ライダーのコメント
以下に、日本GP終了後の各ライダーのコメントを示す。
優勝)青山博一選手 レッドブルKTM
今日は特別な気分です。
去年はここで優勝していますから、当然今年も勝ちたいと思っていました。ただ、意味合いは全く異なりますね。今年はヨーロッパ製のバイクですから全てが違いますし、環境も全く別物です。
何よりもまず、KTMとRed Bull、それに自分のチームとスポンサーに感謝したいです。
スタートはあまり良くありませんでしたが、リズムがつかめてからは自分の思い通りにプッシュできるようになりました。先頭集団を交わしてからは、後続との距離を保つように頑張りましたが、2〜3回くらい転びそうになってます。
ハイサイドを押さえ込もうとした時に風よけのスクリーンを壊してしまいました。どうしても表彰台の真ん中に上がりたい気持ちだけで走ったせいですが、もう少し注意深くするべきでしたね。
結果的には目標を達成できましたし、自分のマシンには本当に満足しています。ストレートでも本当に速く走れましたし、ここに持ち込んだ新型シャシーも大成功だったと思います。
2位)アレックス・デ・アンジェリス マステルMVAアスパル
スタートはうまくいきました。誰かが自分の前に出たら、その後ろにつけてレースをリードしてもらうつもりでした。
徐々に後続のライバルたちを引き離して、最終的にはヒロ(青山博一選手)と自分だけの戦いになりました。いくつかの区間では彼より速く走れていたのですが、すべてのコーナーでしっかりとインを閉じられてしまいました。今日のヒロの戦闘意欲はちょっと桁違いだったと思います。
最終コーナーでミスをして大回りをしてしまい、彼と50メートルほどの差が開きましたが、今回はそれが致命的でした。ストレート・エンドのブレーキングで彼を交わす事がずっとできない状態でしたしね。
ランキング3位をキープしやすくなってきました。ポルトガルとバレンシアでもいいレースがしたいと思います。
3位)ホルヘ・ロレンソ フォルツナ・アプリリア
予想外と思われるかもしれませんが、今回の結果にはすごく満足です。
自分の壮大な野望に向けて、また一歩前進しました。もちろんまだ勝ったわけではありませんので油断はできませんが、今回の結果のおかげで、心に余裕を持って、落ち着いた気持ちでポルトガルに移動ができます。
レース中の走りについては満足できていません。タイヤも早く消耗させてしまい、レースの内容については今年最悪と言ってもいいでしょうね。これは自分のミスですから、仕上げてもらったバイクの状態に見合う走りができなかった事をチームに謝りたいです。
高橋の転倒が自分にとっては有利な展開を生みましたが、あれもレースの一部ですし、いつ自分に降りかかってもおかしくない出来事です。
4位)アンドレア・ドヴィツィオーゾ ヒューマンゲスト・レーシング
まさに不運ですよ。
裕紀が目の前で転倒してしまい、青山との距離を保てなくなりました。彼はいいリズムをつかんでいましたから、あそこから追いつく事は不可能でした。
ロレンソのアプリリアは自分のマシンよりも速かったので、彼にも最後には捕まってしまい、ストレートで距離を詰められるのでブレーキングで頑張りましたが、無駄な抵抗でした。ここではポイントを稼ぐ事が重要だったのに、逆に奪われる結果に終わっています。残り2レースで27ポイント差は大きいですね。
裕紀と自分は何も作戦を立てたりはしていません。ライダーはそれぞれが自分のレースを戦うべきだと思います。自分が勝つときは誰の助けも借りずに、自分の力だけで勝ちたいです。
6位)青山周平選手 レプソル・ホンダ
今日はがっかりです。
スタートはうまくいったのに、1ラップが終わるまでに順位をいくつか落としてしまいました。
何人かのライダーたちがコーナーごとに自分よりブレーキを遅らせてきたので、どうしようもありませんでした。彼らを抜き返してプッシュしたかったんですが、みんなラップタイムが同じくらいだったので難しい状況でした。
レースが進んでからはタイヤのグリップが良くなったのでタイムを上げる事はできましたが、それは他のライダーたちにとっても同じだったみたいです。
理由は全然わかりませんが、悲しいです。
DNF)高橋裕紀選手 ヒューマンゲスト・レーシング
転倒してしまったコーナーでは、その1周前にもいくつかトラブルが発生していました。
エンジンの出力が高すぎて、ギアをシフトダウンした時にコーナーの真ん中で転んだんです。あれは避けようがありませんでした。
ここでは応援してくれるみんなの前で勝つことが自分にとってすごく重要でした。それにアンドレア(ドヴィツィオーゾ)の結果にも悪影響を与える事になり、本当に落ち込んでいます。
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