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SBKブランズハッチ決勝 スーパーマンvs.ハガノリ |
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2006年8月8日
8月6日(日)、SBK第8ラウンドの決勝レースが、11万5千人の熱狂的なイギリスのレースファンが訪れたブランズハッチで行われた。
今回のレースウイークは3日間を通して晴天に恵まれており、全てのセッションがドライ・コンディションの中で行われ、2004年のピレリ・ワンメイク化以前のラップタイムが次々と塗り替えられている。
ブランズハッチは、テン・ケイト・ホンダのイギリス人ライダーであるジェームス・トスランドにとっては今期2度目のホームレースであり、地元ファンの大声援とともに彼は迎えられている。
■今期初優勝に高い意欲を示す芳賀選手
今回2番グリッドをスーパーポールで確保したヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手にとって、ブランズハッチは相性の良いサーキットだ。昨年はレース1で2位、レース2では優勝を果たしており、本人も「大好きなサーキット」だと以前から述べている。
その現在ランキング2位につける好調の芳賀選手だが、今年はまだ一度も優勝がない。芳賀選手はスーパーポール後に、「ランキングにふさわしい成績(優勝)をブランズハッチでは果たしたい」とコメントし、またいつも課題となるレース中盤以降のタイヤの挙動に関しても今回は自信を示すなど、ブランズハッチで今期の初優勝を飾る事に意欲を燃やしている。
芳賀選手の今回のグリッドはポールシッターであるトロイ・ベイリスの隣の2番グリッドであり、追い抜きが難しいとされるブランズハッチで好成績を収める為の第1条件はクリアしている。
■ブルノでの好調さをイギリスのファンの前でも持続したい加賀山選手
また、アルスター・スズキの加賀山就臣選手にとっても、ブランズハッチは優勝を狙いたいサーキットだ。BSB時代のイギリスのファンが多く加賀山選手を応援しに訪れるだけではなく、コースレイアウトや路面特性が独特である事が知られるブランズハッチは彼のBSBでの走行経験を活かせるサーキットでもある。前回のブルノでダブルウインにより見せた復調の兆しにこのまま弾みをつけたいところだ。
残念ながら、加賀山選手はスーパーポールで調子を崩して3列目からのスタートとなっているので、追い抜き箇所の少ないブランズハッチでのレース序盤は苦しい追い上げを強いられるかもしれない。
■フランチェスコ・キリのSBK参戦は今期限り?
今年の4月12日にミサノの公式テストで大怪我を負い、引退説がささやかれながらも無事に今シーズンへの復帰を果たしたDFXトリームのフランチェスコ・キリは、今回のブランズハッチを「イギリスをSBKで走る最後のレース」と述べている。
キリの引退についてDFXトリームからの正式アナウンスはないが、キリは今回のレース2終了後にオフィシャルカーに乗って手を振り、イギリスの観衆に「Goodbyeの挨拶」をしている。
■イルモアからMotoGP参戦の打診を受けるアレックス・バロス
イタリアのロードレースサイトであるmotograndprix.itが8月6日に伝えるところによると、アレックス・バロスも、以前にマックス・ビアッジがオファーを受けた噂で話題となったイルモアから、来期のMotoGP参戦に関する打診を受けたという。
motograndprix.itはこの件に関するアレックス・バロスのコメントを掲載しており、バロスはこれを事実として認めているようだ。同記事に掲載されたバロスのコメントの一部を以下に引用する。
「色々な見解がありますが、まだ公式な提案があった訳ではありません。」とバロス。
「ホンダでスーパーバイクに乗り続けたいという自分の決意は固いです。2007年のSBK王者になるつもりですからね。オファーをくれる全ての人に言っているのは、年間タイトルが取れるパッケージ(バイク)を用意してくれる所からの提案を、私は受けたいという事です。」
バロスが2006年にSBKを選択した時も「自分がチャンピオンになれる世界で戦いたい」という理由だった事から、バロスが再びMotoGPに戻る可能性は低そうだ。
■スターティング・グリッド
1列目ポールポジションはポイントリーダーであるドゥカティーのトロイ・ベイリス。ベイリスにとってブランズハッチは、2000年にSBKデビュー後2度目の勝利をあげた事のある思い出深いサーキットだ。
ベイリスはワーナー・ブラザース配給の新作映画である「スーパーマン・リターンズ(SUPERMAN RETURNS)」のプロモーションの為、今回はいつもの真っ赤なドゥカティーカラーのレザー・スーツではなく、スーパーマンの衣装と全く同じカラーリングを身にまとっている。前日のプレス発表では真っ赤なマントをひるがえしていたスーパーバイクに乗るスーパーマンのベイリスだが、バイクでの走行前にはマントを外している。
2番グリッドは今期初勝利にかけるヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手。3番グリッドは、今年の3月29日のテスト中に背骨にひびが入るという大怪我を負い、それを克服した事を改めて喜ぶテン・ケイト・ホンダのカール・マガリッジ。4番グリッドには、昨年のブランズハッチではドゥカティー・ワークスのディフェンディング・チャンピオンとして戦い、現MotoGPライダーのクリス・バーミューレンと前を奪い合っていたテン・ケイト・ホンダのジェームス・トスランド。
2列目5番グリッドは昨年度チャンピオンであるアルスター・スズキのトロイ・コーサー、6番グリッドはヤマハ・イタリアのアンドリュー・ピット、7番グリッドはカワサキのレジス・ラコーニ、8番グリッドには同じくカワサキのクリス・ウォーカーが並んだ。
アルスター・スズキの加賀山選手は3列目9番グリッド、BSBからのスポット参戦ライダーであるバージン・モバイル・ヤマハのトミー・ヒルはその隣の10番グリッドからのスタート。
ヤマハ・フランスのノリックこと阿部典史選手は5列目19番グリッド、同じくヤマハ・フランスのルーキー、中冨伸一選手は7列目26番グリッドから決勝レースを開始する。
■レース1 先頭に立った芳賀選手を追うベイリス
正午のレース1開始時の気温は26度、路面温度は36度、湿度は56%。
オープニングラップを制したのはヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手。先頭を行く芳賀選手の真後ろには2番手につけるドゥカティーのトロイ・ベイリス。
3番手にはアルスター・スズキのトロイ・コーサー、4番手にはテン・ケイト・ホンダのカール・マガリッジ、5番手は同じくテン・ケイト・ホンダのジェームス・トスランドがつけた。
トスランドの後ろには6番手につけたアルスター・スズキの加賀山選手、ヤマハ・イタリアのアンドリュー・ピット、カワサキのクリス・ウォーカー、バージン・モバイル・ヤマハのトミー・ヒルが続く。
ヤマハ・フランスのノリックは16位、中冨伸一選手は最後尾の27番手を走行。
2ラップ目、加賀山選手はアンドリュー・ピットとクリス・ウォーカーに交わされ8番手に後退。
■順位を落とすマガリッジ、芳賀選手を交わすベイリス
3ラップ目、マガリッジはチームメイトのトスランドに抜かれて5番手に後退し、4ラップ目にはアンドリュー・ピットにも交わされ6番手に順位を落とした。
コーナーの飛び込みでベイリスは芳賀選手のイン側につけ、芳賀選手から前を奪いトップに立った。2番手となった芳賀選手はベイリスに引き離される事なくそのまま背後にを走行。
同じ頃、4番手のジェームス・トスランドは3番手のコーサーの前に出ようと隙をうかがっている。
■マガリッジが転倒しリタイア、トスランドは3番手に浮上
5ラップ目、マガリッジは6番手を走行中に縁石に乗り上げマシンは横転しスライド、そのままグラベルに飛び込みレース1をリタイアした。
先頭のベイリスに2番手の芳賀選手が並びかけようとする中、トスランドはコーサーから前を奪い3番手に浮上。コーサーは4番手に後退。
■前回好調だったファブリツィオが転倒
6ラップ目、13番手を走行するドゥカティーのロレンツォ・ランチを交わそうと追撃を続けていたDFXトリームのミッシェル・ファブリツィオは、右コーナーでバイクを傾けながらスリップし転倒。グラベルに飛び込みそのままリタイアしたが、ファブリツィオは特に怪我を負っていない。
■再びトップに立つ芳賀選手
7ラップ目、芳賀選手がベイリスから前を奪い返し再び先頭に立った。順位は先頭から芳賀選手、その真後ろにつける2番手のベイリス、その0.7秒後方に3番手のトスランド、さらにその1秒後方にコーサー。
コーサーの0.5秒後方にはアンドリュー・ピット、その1.5秒後方にクリス・ウォーカーとその背後につける加賀山選手が続く。
加賀山選手の3.7秒にはステルリガルダ・ベリック・ドゥカティーのルーベンチャウス、カワサキのフォンシ・ニエト、トミー・ヒル、クラフィ・ホンダのアレックス・バロス、カワサキのレジス・ラコーニが集団となって走行している。
■タイヤトラブルによりペースが上がらないアルスター・スズキ勢
8ラップ目、タイヤのグリップに問題を抱え始めたというトロイ・コーサーがアンドリュー・ピットに交わされ5番手に後退。9ラップ目に加賀山選手はクリス・ウォーカーを交わして6番手に順位を上げるが、コーサーと同様のタイヤ・トラブルを訴えており、ペースが思うように伸ばせない。
9ラップ目、ペデルチーニからSBK参戦を今回果たしていたカーチス・ロバーツがピットイン。カーチスは再びコースに出る事はなくそのままリタイアした。
■逃げる先頭の芳賀選手と余裕を見せるベイリス
芳賀選手とベイリスのトップ争いはそのまま続いており、ベイリスが再び芳賀選手の前に出るが、すぐに芳賀選手はこれを奪い返す。タイヤを暴れされる芳賀選手の後ろにつけるベイリスマシンは安定している。
13ラップ目にトスランドは先頭の2台の0.3秒後方まで迫り、14ラップ目には2番手を行くベイリスの背後につけた。
■トップ争いに加わるトスランドと、前に逃げるベイリス
15ラップ目、ベイリスはトスランドとの争いを避けるように芳賀選手を交わして先頭に立ち、続いてトスランドも芳賀選手を交わして2番手に浮上した。3番手の芳賀選手はトスランドの真後ろを走行している。
加賀山選手はチームメイトのコーサーを交わして5番手に浮上した。
17ラップ目、ベイリスは快調にペースを維持して2番手のトスランドを1秒引き離し、ペースを保てなくなった芳賀選手はトスランドの0.2秒後ろを走行。
芳賀選手の3.2秒後方には4番手を走行するチームメイトのアンドリュー・ピット、その3.5秒後方には5番手の加賀山選手、さらにその1秒後方には6番手のトロイ・コーサー。
コーサーの2秒後方には7番手を走るカワサキのクリス・ウォーカー、さらにその5.5秒後方にはクラフィ・ホンダのアレックス・バロスとカワサキのレジス・ラコーニが続く。ルーベン・チャウスはペースを落としてラコーニの後方に順位を下げていく。
ノリックは14番手、中冨選手は20番手を走行している。
■後続2名を引き離すベイリス、トスランドを交わせない芳賀選手
21ラップ目、上位ライダーの間で順位の変動はなく、先頭のベイリスが2番手のトスランドを1.5秒まで引き離し、トスランドの0.2秒後方には芳賀選手がそのままつけているが、芳賀選手はここからペースを落とし、徐々にトスランドから離されていく。
残り2周の24ラップ目、先頭のベイリスは2番手のトスランドを2.4秒後方に追いやり、この時に芳賀選手のマシンは軽くハイサイドを起こしかけ、あわててマシンを立て直す3番手の芳賀選手はトスランドの0.8秒後方に下がった。
■スーパーマンの勝利、トスランドは地元で2位、芳賀選手は3位
ファイナルラップ、トップでチェッカーを受けたのはそのまま逃げ切ったドゥカティーのスーパーマン、トロイ・ベイリスだ。ベイリスはスーパーマン・カラーのスーツで得意気にウイニングランを開始。
2番手は地元イギリスの大歓声を浴びてチェッカーを受けたテン・ケイト・ホンダのジェームス・トスランド、続いて、トスランドとの1秒未満の差を終盤に縮める事ができなかったヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手が3位表彰台を獲得した。
4位はヤマハ・イタリアのアンドリュー・ピット、5位は前回のブルノでダブルウインを飾ったアルスター・スズキの加賀山就臣選手、6位は今回も表彰台を逃した加賀山選手のチームメイトであるトロイ・コーサー。
ヤマハ・フランスのノリックは13位、中冨伸一選手は19位でレース1を終えた。
表彰台の頂点では、トロイ・ベイリスが真っ赤なマントを装着し、スーパーマンのポーズをとっている。3位表彰台の上で芳賀選手がそれを珍しそうに眺めていた。
今回のベイリスの勝利は、ドゥカティーのSBK通算250勝目だ。
■レース2 先頭を奪ったベイリスの背後につける芳賀選手
午後3時半のレース2開始時の気温は26度、路面温度はレース1から5度下がり31度、湿度は45%。芳賀選手はレース1とは異なるセッティングを施してあるセカンドマシンに乗り、レース2に出場している。
シグナルが消え、勢い良く前に飛び出したのはドゥカティーのトロイ・ベイリス。
オープニングラップ、ベイリスの後方には、2番手にヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手、3番手にテン・ケイト・ホンダのカール・マガリッジ、4番手にアルスター・スズキのトロイ・コーサー、5番手にテン・ケイト・ホンダのジェームス・トスランド、6番手にアルスター・スズキの加賀山就臣選手が続いた。
■序盤からベイリスと芳賀選手の熾烈なトップ争い
2ラップ目、先頭のベイリスと2番手の芳賀選手はお互いに並びかけるように進みながらペースを上げ、その0.2秒後方にマガリッジがつける。4番手のコーサーはマガリッジの0.5秒後方を走行している。
コーサーの背後にトスランドがゆっくりと迫る。
■今回も後退するトロイ・コーサー、キリはジャンプスタート
3ラップ目、コーサーはレース1と同じくタイヤにトラブルを抱え、ペースを上げられないままトスランドに交わされ5番手に。トスランドは3番手を走行するチームメイトのマガリッジから0.5秒後方の4番手につけた。
20番手を走行していたフランチェスコ・キリにジャンプスタート(フライング)の判定が下り、キリはピットスルーペナルティーに従い、最後尾まで順位を落とした。
■レース1の再生のようにクラッシュするマガリッジ
5ラップ目、マガリッジはレース1の時と全く同じように右コーナーで縁石に乗り上げ、火花を散らしながらアスファルトの上をスライド。そのままグラベルに飛び込みリタイアした。マガリッジに特に怪我はない。
■芳賀選手が先頭に立ち、すぐにそれを奪い返すベイリス
6ラップ目、ついに芳賀選手がベイリスから前を奪いトップに立つが、先頭の2台に差は殆どなく、ストレートでベイリスは芳賀選手の真横に並びかける。振り返ってベイリスを確認する芳賀選手。
8ラップ目、高速右コーナー進入でベイリスは芳賀選手から前を奪い返し、芳賀選手は2番手に。ベイリスは先頭のまま逃げ切ろうとするが、レース1とは異なり全く芳賀選手のペースは落ちない。トップの2台は前を奪い合いながら疾走し、3番手を走るトスランドを寄せ付けない。
ヤマハ・フランスのノリックは12位、中冨選手は20番手を走行している。
■ストレートで並ぶトップの2台
12ラップ目のコントロールラインを先頭で通り過ぎたのは芳賀選手。ベイリスは殆ど真横に並びかけている。この時の順位は先頭から芳賀選手、2番手のベイリス、その1秒後方に3番手のトスランド、さらにその0.8秒後方に4番手のコーサー。
コーサーの1.5秒後方には5番手のアンドリュー・ピット、6番手のレジス・ラコーニ、その3.5秒後方には7番手の加賀山選手と8番手のクリス・ウォーカー。
クリス・ウォーカーの11秒後方では9番手のアレックス・バロスと10番手のルーベン・チャウスが前を争っている。その4秒後方には11番手のノリックと12番手のミッシェル・ファブリツィオが続く。
■キリがリタイア
フランチェスコ・キリは、クレイグ・ジョーンズを交わして最後尾から22番手に順位を上げた所でレースを断念しピットイン。イギリスのファンへの最後の挨拶はレース後にオフィシャルカーで行う事となった。
17ラップ目、先頭のベイリスと芳賀選手が激しく前を奪い合う中、アンドリュー・ピットがコーサーを交わして3番手を行くトスランドの0.8秒後方4番手につけた。コーサーは5番手に。
■ペースを落とすトスランド
タイヤのグリップに問題を抱えた3番手のトスランドは、2番手の芳賀選手から2秒後方まで下がっている。
19ラップ目、トップのベイリスの背後につけて2番手の芳賀選手が隙をうかがう中、アンドリュー・ピットはペースの上がらないトスランドも交わし、表彰台圏内の3番手に浮上した。トスランドが4番手に下がった際、ピットは芳賀選手の3秒後方を走行している。
トロイ・コーサーはカワサキのレジス・ラコーニにも交わされ6番手まで後退し、コーサーの4秒後方につけるチームメイトの加賀山選手も、ペースが上がらず単独で7番手を走行している。
■芳賀選手が再びトップに
21ラップ目、芳賀選手が高速左コーナーの進入でベイリスからインを奪いトップに。食い下がるベイリスはストレートで何度も芳賀選手に並びかける。
この時の順位は先頭から芳賀選手、2番手のベイリス、2.7秒後方につける3番手のピット、その2.6秒後方に4番手のトスランド。トスランドの0.6秒後方には5番手のレジス・ラコーニが迫り、ラコーニの0.7秒後方には6番手のコーサー、その4秒後方に7番手の加賀山選手、さらに6秒後方には8番手のクリス・ウォーカー。
ウォーカーの5秒後方には9番手のアレックス・バロスと10番手のルーベン・チャウス。ノリックはロレンツォ・ランチとミッシェル・ファブリツィオに交わされ13番手、中冨選手は17番手を走行している。
■芳賀選手から前を奪おうと必死のベイリス
残り2周の24ラップ目、ベイリスはストレートで何度も芳賀選手の横に出るがコーナーに先に飛び込むのは芳賀選手。2番手のベイリスは芳賀選手の前には出れない。
地元のジェームス・トスランドは終盤にもペースを落とし、レジス・ラコーニに交わされ5番手に後退した。ラコーニは4番手に浮上。
ノリックを交わしたランチとファブリツィオは11番手を争っている。
■最終コーナーを奪い、芳賀選手が今期初の優勝
ファイナル・ラップ、トップ争いは最終コーナーの飛び込み合戦にまでもつれ込み、最初にホームストレートに向かったのはヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手。芳賀選手は今期初の優勝となるチェッカーを新デザインのヘルメットで受けた。2位となったドゥカティーのトロイ・ベイリスは僅差の0.184秒差でダブルウインを逃したが、芳賀選手とのフェアなバトルを楽しんだと後にコメントしている。
3位は芳賀選手のチームメイトのアンドリュー・ピット。ヤマハ・イタリア・チームは今期2度目となる2名そろっての表彰台を獲得した。
4位はカワサキのレジス・ラコーニ、地元のトスランドはレース2を5位で終えている。トスランドの0.5秒後方で6位チェッカーを受けたのは、表彰台から縁遠くなりつつあるアルスター・スズキのトロイ・コーサー、加賀山選手はチームメイトに続いて7番手でコントロールラインを抜けた。
ヤマハ・フランスのノリックは13位、中冨選手は17位でブランズハッチでのレースを終えた。
表彰台の上で高々と大きなトロフィーを持ち上げる芳賀選手の横では、マントのないスーパーマンがそれを見つめている。
■各ライダーのコメント
以下にブランズハッチ戦終了後の上位ライダーのコメントを示す。
トロイ・ベイリス(RACE1:1位、RACE2:2位)
レース1ではノリ(芳賀選手)とのバトルになったけど、自分の手の内は全部見せませんでした。しばらく彼の後ろを走りましたが、こっちには結構余裕があったんですよ。
ノリのペースが少し落ちてから彼をパスしました。ジェームスが来たのが見えたんで、そろそろ前に出なきゃと思ったんです。一度彼が前に出てしまうと奪い返すのはやっかいですからね。後の3周から4周をいいペースで走って勝ちました。
ノリとのフェアで激しいバトルは大好きですよ。2レース目も同様に勝ちたかったけど、ノリに2回交わされて、ちょっと焦りが出てしまったんだと思います。
また彼の走りを後ろから見ようと思ったんですが、これが失敗でした。でも年間ポイントは獲得できましたし、ポイント差も確保できましたから、今週の結果についてはとても満足です。
芳賀紀行選手(RACE1:3位、RACE2:1位)
トロイ(ベイリス)とは激しいバトルになりましたが、二度と彼に排気口を見せつけられないように途中で決心しました。今日の勝利は本当に気分がいいです。
特に最初のレースですが、お互いに何度も接触しそうなくらい近くを走りましたね。最終ラップで転びかけましたが、レース1で勝てなかったのには他にもいろんな理由があります。
今日のバイクとタイヤはすごく調子が良かったし、最初から最後まで完璧でした。
ジェームス・トスランド(RACE1:2位、RACE2:5位)
レース1でトロイ(ベイリス)とノリユキが争ってるのを見て、追いつけると思いましたが、トロイに近づいたら3周か4周の間すごく速いペースで走られて差を広げられてしまい、悔しい思いをしました。
ブランズハッチで表彰台に乗れた事はすごく嬉しいです。気分も変わりましたしね。
レース2ではレース1と同じようなグリップが得られませんでした。それで10周もしないうちにペースが維持できなくなったんです。
できる限りいい成績が残したかったので本当にがっかりですが、少なくとも1回はブランズハッチのファンの前で表彰台に乗ることができて良かったです。
アンドリュー・ピット(RACE1:4位、RACE2:3位)
両方のレースでスタートが最悪でした。自分たちのR1は普段はスタート性能がいいのでちょっと焦りました。
それでちょっと不安になり、オーバーレブ気味にまわしたんですが、それでも両方のレースで順位をかなり下げてしまったので、その後はひたすら早く順位を挽回しようと必死でした。
いいリズムがつかめたので、レース1での4位にも満足していますし、最後は表彰台にも乗れて素晴らしい日でした。友達がたくさんこのレースを見にオーストラリアから来てくれていたのも最高でしたね。
みんな遠くから来てくれたので、ちょっとは喜ばせる事ができて嬉しいです。
加賀山就臣選手(RACE1:5位、RACE2:7位)
今日はひどく腹が立ちますし落ち込んでます。自分のイギリスのファンにもっといい走りが見せたかったし、2回とも表彰台に乗って去年の分を取り返したいとも思っていましたからね。
両方のレースで同じ問題を抱えてました。5周も走ったらタイヤがたれてきて、そこからはグリップが少ししか得られなくなったんです。タイヤがちょっと変な感じでした。まるで中古のタイヤを履いてるみたいな・・・理由は今でもしっかりとは分かりません。
走り続けるのが難しくなりましたが、とにかく完走はしたいと思いました。間違いなく転ぶので、全然プッシュできないんです。タイヤは両方のレースでソフトを選んでいましたから、もっとグリップがあって当たり前なのに全然だめでした。
これから短い休暇に入りますから、次のレースではもっといい成績を残すつもりですし、そうしなきゃいけないんです!
トロイ・コーサー(RACE1:6位、RACE2:6位)
今日はフラストレーションのたまる日でしたね。気分は最悪です。
レース1では10周を過ぎたところでリアタイアがへたってしまい、最後までそれを持たせる事で精一杯でした。フロントタイヤについてはすごく満足できたので、レース2でも同じものを使いました。
リアタイヤはできる限り固めのものをレース2では選び、最初のレースの時よりは改善されましたが、先頭集団と同じペースを維持するのには十分ではありませんでした。
ジェームス・トスランドが両方のレースでやっかいでしたね。いつもすごく抜きにくいし、あんなバトルしてちゃタイムが落ちるだけです。イラついてるのは、ブルノの時と同じで、本当はもっと速く走れたからですよ。
これからブレーキングのトレーニングを2倍に増やします。何か対策は立てなきゃいけませんからね。先頭集団と争わないまま今シーズンを終えるのは絶対に嫌です。
阿部典史選手(RACE1:13位、RACE2:13位)
ブランズハッチは難しいです。超難しいです。昨日までに希望もなくなってましたしね。
レースの中身自体はそんなに悪くありませんでした。レース1では多くのライダーとのバトルになり、ポイントを獲得できましたから、予選の時と比べれば大きな違いですよ。
今回はこれが精一杯でした。両方のレースの間にセッティングを変更して、序盤は悪くなかったんですが、後半はリアが暴れて滑りまくってタイムが落ちています。
それでも予選の時に比べれば相当ましですけどね。
中冨伸一選手(RACE1:19位、RACE2:17位)
ここは本当に難しいコースですよ。走るのは楽しいんですけど、コースを攻略したり速く走るのはすごく難しいです。
レース1ではプラクティスの時よりいい感じがつかめて、レース2ではさらに良くなりました。成績はあまり良くありませんが、進展はあったように思います。
■レース順位表およびポイントランキング
以下にブランズハッチの全順位表、およびポイントランキングを示す。
■SBK ブランズハッチ レース1(25周)
1. トロイ・ベイリス [AUS] [Ducati Xerox] [Ducati 999F06] [36分26秒855]
2. ジェームス・トスランド [GBR] [Winston Ten Kate Honda] [Honda CBR 1000RR] [36分28秒512]
3. 芳賀紀行 [JPN] [Yamaha Motor Italia] [Yamaha YZF R1] [36分29秒103]
4. アンドリュー・ピット [AUS] [Yamaha Motor Italia] [Yamaha YZF R1] [36分29秒715]
5. 加賀山就臣 [JPN] [Team Alstare Suzuki Corona Extra] [Suzuki GSXR1000 K6] [36分36秒521]
6. トロイ・コーサー [AUS] [Team Alstare Suzuki Corona Extra] [Suzuki GSXR1000 K6] [36分43秒586]
7. クリス・ウォーカー [GBR] [PSG-1 Kawasaki Corse] [Kawasaki ZX10R] [36分43秒747]
8. アレックス・バロス [BRA] [Team Klaffi Honda] [Honda CBR 1000RR] [36分47秒562]
9. レジス・ラコーニ [FRA] [PSG-1 Kawasaki Corse] [Kawasaki ZX10R] [36分52秒051]
10. ルーベン・チャウス [SPA] [Sterilgarda - Berik] [Ducati 999F05] [36分52秒193]
11. トミー・ヒル [GBR] [Virgin Mobile Yamaha] [Yamaha YZF R1] [36分53秒332]
12. ロレンツォ・ランチ [ITA] [Ducati Xerox] [Ducati 999F06] [36分53秒564]
13. 阿部典史 [JPN] [Yamaha Motor France-Ipone] [Yamaha YZF R1] [36分54秒190]
14. フォンシ・ニエト [SPA] [PSG-1 Kawasaki Corse 2] [Kawasaki ZX10R] [36分56秒320]
15. セバスチャン・ジンバート [FRA] [Yamaha Motor France-Ipone] [Yamaha YZF R1] [37分06秒050]
16. ビットリオ・イアンヌッツォ [ITA] [Celani Team Suzuki Italia] [Suzuki GSXR1000 K6] [37分07秒263]
17. スティーブ・マーチン [AUS] [Foggy Petronas Racing] [Petronas FP1] [37分09秒244]
18. ロベルト・ロルフォ [ITA] [Team Ducati SC - Caracchi] [Ducati 999F05] [37分14秒908]
19. 中冨伸一 [JPN] [Yamaha Motor France-Ipone2] [Yamaha YZF R1] [37分18秒098]
20. ジョシュア・ブルックス [AUS] [Team Bertocchi Kawasaki] [Kawasaki ZX10R] [37分18秒854]
21. イヴァン・クレメンティ [ITA] [Team Pedercini] [Ducati 999RS] [37分26秒424]
--リタイア
マルコ・ボルチアーニ【14周】[ITA] [Sterilgarda - Berik] [Ducati 999F05] [20分52秒386]
クレイグ・ジョーンズ【12周】[GBR] [Foggy Petronas Racing] [Petronas FP1] [17分57秒396]
ピエールフランチェスコ・キリ【10周】[ITA] [D.F.X. Treme] [Honda CBR 1000RR] [14分53秒400]
カーチス・ロバーツ【8周】[USA] [Team Pedercini] [Ducati 999RS] [12分13秒544]
ミッシェル・ファブリツィオ【5周】[ITA] [D.F.X. Treme] [Honda CBR 1000RR] [7分26秒890]
カール・マガリッジ【4周】[AUS] [Winston Ten Kate Honda] [Honda CBR 1000RR] [5分53秒301]
■SBK ブランズハッチ レース2(25周)
1. 芳賀紀行 [JPN] [Yamaha Motor Italia] [Yamaha YZF R1] [36分29秒709]
2. トロイ・ベイリス [AUS] [Ducati Xerox] [Ducati 999F06] [36分29秒893]
3. アンドリュー・ピット [AUS] [Yamaha Motor Italia] [Yamaha YZF R1] [36分31秒951]
4. レジス・ラコーニ [FRA] [PSG-1 Kawasaki Corse] [Kawasaki ZX10R] [36分36秒232]
5. ジェームス・トスランド [GBR] [Winston Ten Kate Honda] [Honda CBR 1000RR] [36分36秒782]
6. トロイ・コーサー [AUS] [Team Alstare Suzuki Corona Extra] [Suzuki GSXR1000 K6] [36分37秒230]
7. 加賀山就臣 [JPN] [Team Alstare Suzuki Corona Extra] [Suzuki GSXR1000 K6] [36分40秒612]
8. クリス・ウォーカー [GBR] [PSG-1 Kawasaki Corse] [Kawasaki ZX10R] [36分49秒424]
9. アレックス・バロス [BRA] [Team Klaffi Honda] [Honda CBR 1000RR] [36分51秒911]
10. ルーベン・チャウス [SPA] [Sterilgarda - Berik] [Ducati 999F05] [36分56秒506]
11. ロレンツォ・ランチ [ITA] [Ducati Xerox] [Ducati 999F06] [36分59秒411]
12. ミッシェル・ファブリツィオ [ITA] [D.F.X. Treme] [Honda CBR 1000RR] [36分59秒513]
13. 阿部典史 [JPN] [Yamaha Motor France-Ipone] [Yamaha YZF R1] [37分01秒538]
14. セバスチャン・ジンバート [FRA] [Yamaha Motor France-Ipone] [Yamaha YZF R1] [37分03秒886]
15. ビットリオ・イアンヌッツォ [ITA] [Celani Team Suzuki Italia] [Suzuki GSXR1000 K6] [37分04秒976]
16. スティーブ・マーチン [AUS] [Foggy Petronas Racing] [Petronas FP1] [37分10秒649]
17. 中冨伸一 [JPN] [Yamaha Motor France-Ipone2] [Yamaha YZF R1] [37分13秒122]
18. ロベルト・ロルフォ [ITA] [Team Ducati SC - Caracchi] [Ducati 999F05] [37分15秒694]
--リタイア
フォンシ・ニエト【18周】[SPA] [PSG-1 Kawasaki Corse 2] [Kawasaki ZX10R] [28分36秒797]
イヴァン・クレメンティ【12周】[ITA] [Team Pedercini] [Ducati 999RS] [17分56秒857]
クレイグ・ジョーンズ【12周】[GBR] [Foggy Petronas Racing] [Petronas FP1] [17分57秒169]
ピエールフランチェスコ・キリ【11周】[ITA] [D.F.X. Treme] [Honda CBR 1000RR] [16分40秒687]
マルコ・ボルチアーニ【11周】[ITA] [Sterilgarda - Berik] [Ducati 999F05] [16分41秒779]
ジョシュア・ブルックス【10周】[AUS] [Team Bertocchi Kawasaki] [Kawasaki ZX10R] [14分54秒682]
トミー・ヒル【5周】[GBR] [Virgin Mobile Yamaha] [Yamaha YZF R1] [7分28秒246]
カール・マガリッジ【4周】[AUS] [Winston Ten Kate Honda] [Honda CBR 1000RR] [5分51秒916]
カーチス・ロバーツ【1周】[USA] [Team Pedercini] [Ducati 999RS] [1分38秒492]
■ポイントランキング
1. トロイ・ベイリス [AUS] [Ducati] 307
2. 芳賀紀行 [JPN] [Yamaha] 230
3. ジェームス・トスランド [GBR] [Honda] 219
4. トロイ・コーサー [AUS] [Suzuki] 193
5. アレックス・バロス [BRA] [Honda] 166
6. アンドリュー・ピット [AUS] [Yamaha] 157
7. 加賀山就臣 [JPN] [Suzuki] 126
8. ロレンツォ・ランチ [ITA] [Ducati] 96
9. クリス・ウォーカー [GBR] [Kawasaki] 96
10. ミッシェル・ファブリツィオ [ITA] [Honda] 87
11. ルーベン・チャウス [SPA] [Ducati] 84
12. フォンシ・ニエト [SPA] [Kawasaki] 83
13. 阿部典史 [JPN] [Yamaha] 77
14. レジス・ラコーニ [ITA] [Kawasaki] 72
15. カール・マガリッジ [AUS] [Honda] 66
16. ロベルト・ロルフォ [ITA] [Ducati] 52
17. 中冨 伸一 [JPN][Yamaha] 29
18. ファビアン・フォーレ [FRA] [Suzuki] 19
19. セバスチャン・ジンバート [FRA] [Yamaha] 18
20. ピエールフランチェスコ・キリ [ITA] [Honda] 16
21. トミー・ヒル [GBR] [Yamaha] 13
22. マルコ・ボルチアーニ [ITA] [Ducati] 9
23. マックス・ノイキルヒナー [GER] [Ducati] 9
24. ビットリオ・イアンヌッツォ [ITA] [Celani Team Suzuki Italia] 5
25. スティーブ・マーチン [AUS] [Petronas] 4
26. ロレンツォ・アルフォンシ [ITA] [Yamaha] 2
27. ホセ・ダビィ・デ・ヘア [SPA] [Honda] 2
28. イヴァン・クレメンティ [ITA] Ducati] 2
29. ジャンルカ・ナンネッリ [ITA] [Honda] 1
■マニュファクチャーズ・ポイント
1. Ducati 317
2. Honda 267
3. Suzuki 259
4. Yamaha 259
5. Kawasaki 140
6. Petronas 4
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