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2006年7月25日
米国現地時間の7月23日、カリフォルニア州モントレー郡のラグナ・セカ・サーキットで、今年のMotoGP第11戦となるアメリカ・グランプリが開催された。
■初年度のカタールよりも厳しいレース環境
前日の予選では温度が38度、路面温度は65度近くまで上昇した事から、予選タイヤがまったく機能しないという事態に各チームが追い込まれ、2005年のポールタイムを上回るライダーは一人も現れなかった。
スプリントレースには高温すぎる温度条件が、レース当日には軽減される事を多くのライダーは望んでいたが、皮肉にも決勝当日のこの日の気温は予選当日よりも高い39度、路面温度は60度以上を記録している。
まるでカタールGPの初年度を思わせるような環境となった砂漠地帯のラグナ・セカでのレース環境は、ピットや各施設ごとに強力な冷房施設を持つロサイル・サーキットほどには高温への対策が整っておらず、ライダーやピットクルーは灼熱の耐久レースさながらの戦いを強いられる事になった。
■序盤の不運から驚異的な活躍を見せるロッシ
前回のドイツGP終了時点の年間ランキングは、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンが169ポイントを獲得してポイントリーダーの座に最も長く今期は君臨、それをキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが26ポイント差で追い、ヘイデンのチームメイトのダニ・ペドロサがMotoGP初年度ながらトップと29ポイント差の3位につけている。
今シーズンの序盤はタイヤ・トラブルやエンジン・トラブル、および他のライダーからの追突などでレースをリタイアし、最も最悪な事にハイグリップタイヤを装着した時のYZR-M1の状態がシーズン後半に突入しても完全な状態とは言えない様子のヤマハ・ワークスに所属するバレンティーノ・ロッシは、ヨーロッパ・ラウンドに突入してからは様々なハンデを乗り越えながらランキング2位まで順位を挽回するという驚異的な活躍を見せている。
ロッシのチームメイトのコーリン・エドワーズは、奇跡がなければ勝てないとドイツGPで語っていたが、その10番グリッドから優勝をさらったロッシに対し「チャンピオンはまた奇跡を成し遂げた。もう脱帽するしかない。」と全面的な賞賛をおくっていた。
■快進撃を続けなければならないロッシ
今回のラグナ・セカでも、ロッシは予選でのYZR-M1のセッティングに苦しみ、ドイツGPと同じ10番グリッドを獲得している。年間タイトルを争うロッシにとって、またヘイデンにとっても、今後1回でもノーポイントでレースを終えるような事態があれば、すなわちそれは今シーズンのタイトル争いにおいて致命的な状態となる。
また、アメリカGPの経験が少ない最近のヨーロッパ出身のGPライダーにとって、ラグナ・セカはライン取りが難しく路面状態の悪い圧倒的に不利なサーキットだ。アメリカのスプリントレースはダートトラックと見間違うようなサーキットで行われる事がしばしばあり、米国でのレース経験の有無が大きく勝敗に左右する場所でもある。
MotoGP990ccクラスの完全制覇を今年で達成する予定のロッシにとって、ラグナ・セカを大の得意とするニッキー・ヘイデン、および好調なケニー・ロバーツ・ジュニアを始めとする他のアメリカ勢は、彼にとって今回のレースでの大きな障壁となるだろう。
また、初の年間タイトルを狙うニッキー・ヘイデンは、ラグナ・セカではどうしても優勝を獲得する気でおり、対するロッシはドイツGPでの奇跡を再現するつもりだ。
■スターティング・グリッド
1列目ポールポジションはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン。ドライ・コンディションでのポールポジションはバーミューレンにとって今回が初めて。
2番グリッドは優勝を狙うキャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズ。エドワーズは今回のレースウイーク中にインフルエンザにかかって健康状態に問題があり、耐久レースなみの過酷な条件となりそうなこの日のレースでの体調が心配されている。
3番グリッドはコーリンと同じく地元アメリカ勢、チーム・ロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニア。予選後の発言では優勝をほのめかす発言とともに、エドワーズが今回のライバルだと捉えているようだ。
2列目4番グリッドはレプソル・ホンダのルーキーであるダニ・ペドロサ、5番グリッドは地元カリフォルニア出身であるリズラ・スズキのジョン・ホプキンス。
6番グリッドは今回の最大の優勝候補とされるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン。マシンのセッティングに関しては昨年よりも苦しいレースウイークを過ごしており、今年も去年と同様の圧勝が実現できるのかどうかに注目が集まっている。
3列目7番グリッドはこの日午前中のウォームアップでトップタイムの1分23秒029をマークしたホンダLCRのケーシー・ストーナー。このタイムは3日間の総合ではニッキー・ヘイデンに次ぐ2番手タイムとなる。
カワサキの中野真矢選手は3列目8番グリッド、ドイツGPの転倒で左ひざを負傷し、2日目にはそのひざを路面にぶつけて怪我を悪化させてしまった玉田誠選手は5列目14番グリッドからのスタートとなった。
■アメリカ2日目にドイツで負傷したひざを悪化させていた玉田選手
2日目のコメントにはなかったが、この日のコメントで玉田選手は「昨日はフロントを失い、負傷している左足の状態を悪化させてしまった。」と述べている。玉田選手は2日目の走行中に左ひざをアスファルトに打ち付けており、怪我の状態を悪化させていたようだ。
玉田選手は2日目午前はセッション残り15分の段階でその痛みから走行継続を断念していた。
コニカミノルタチームの責任者であるジャンルカ・モンティロンは、「マコトの体調がこの3日間の悪条件で悪化してしまったのは大変に残念だ。彼が8耐でトップを走れるように、7月30日までには体調が戻って欲しい。」とコメントしている。
なお、技術監督のジュリオ・ベルナルデッレによれば、玉田選手のマシンはザクセンリンクの時に使用したセッティングを基本的に使っている。
■レース開始、好スタートを決めたエドワーズだが・・・
シグナルが消え、最初にスタートラインから勢いよく飛び出したのは2番グリッドのコーリン・エドワーズ。
エドワーズはその後の加速があまり伸びず、1コーナーに最初に飛び込んだのは先頭からチーム・ロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニアとリズラ・スズキのクリス・バーミューレン。この2人に続いたのは、AMAで活躍する兄のアドバイスに従い、アウト側のラインを使って順位を上げたレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだった。
■ホールショットを奪ったのはロバーツ・ジュニア
オープニング・ラップの1コーナーを順に、先頭のロバーツ・ジュニア、2番手のクリス・バーミューレン、3番手のニッキー・ヘイデン、4番手のケーシー・ストーナー、5番手のコーリン・エドワーズ、6番手にダニ・ペドロサ、7番手のジョン・ホプキンス、8番手のマルコ・メランドリ、9番手の中野選手、10番手のバレンティーノ・ロッシ、11番手のロリス・カピロッシ、12番手のセテ・ジベルナウが通過していく。
後方にはカルロス・チェカ、トニ・エリアス、アレックス・ホフマン、玉田誠選手、ジェームス・エリソン、ホセ・ルイス・カルドソ、スタートに失敗して最後尾となったランディー・ド・ピュニエが続く。ド・ピュニエはカルドソを交わし18番手に。
■バーミューレンが快調に飛ばしトップに
最終コーナーでバーミューレンがロバーツを交わしトップに浮上した。
2ラップ目、バーミューレンは猛加速に入り、全体よりも速いペースでロバーツ・ジュニアを引き離しにかかった。徐々にロバーツは先頭を行くバーミューレンから引き離されて行く。
抜き所が少なく、また高温のアスファルトとなったラグナ・セカで、各ライダーは長い1列となり、全体的にあまり順位に変動は生じない。
メランドリはホプキンスを交わし7番手となり、最終コーナーでペドロサも交わし6番手に浮上。ペドロサは7番手に後退。
■2番手のロバーツを序盤から引き離すバーミューレン
3ラップ目、バーミューレンは2番手のロバーツを約0.8秒引き離した。3番手を走行するニッキー・ヘイデンはロバーツが壁となり、前に出て先頭のバーミューレンを追いかける事ができない。
3コーナー付近でペドロサは一度メランドリを抜き返して前に出るが、5コーナーまでにメランドリに抜き返されている。メランドリとペドロサは前を争い、各コーナーが近づく度に接近戦を演じている。
■エドワーズのマシンはスタート直後からエンジンが不調
4ラップ目、ペドロサは再びメランドリの前に出るが、3コーナーから4コーナーにかけて抜き返されてる。熾烈な争いを続ける6番手争いの2名は、スタート直後からエンジンの不調に苦しむ5番手のエドワーズに近づいて行く。
■今年恒例となった追い上げを見せるロッシ
バレンティーノ・ロッシは中野選手を交わして9番手に。
5ラップ目、先頭のバーミューレンが2番手のロバーツを約0.9秒引き離してトップを快走している。順位は先頭から順に、先頭のバーミューレン、2番手のロバーツ、3番手のヘイデン、0.5秒後方に4番手のストーナー、さらにその0.5秒後方に5番手のエドワーズ、6番手のメランドリ、7番手のペドロサの3台が連なっている。
ペドロサの約0.8秒後方には8番手のホプキンス、9番手のロッシ、10番手の中野選手が続く。
■激しい攻めの走りを見せるペドロサ
最終コーナーでペドロサは激しく攻めてメランドリを交わしてエドワーズを追う。ペドロサの激しく揺れるマシンの背後には7番手となったメランドリのバイクが密着するように追走している。
11番手のチェカと12番手のエリアスに抜かれたドゥカティーの2台は、チームメイト間で13番手を争い、ジベルナウがカピロッシから前を奪った。
■風邪で体調不良のエドワーズ
6ラップ目、エンジンのパワーダウンとインフルエンザによる体調不良に悩むエドワーズがペースを維持できなくなる。
7ラップ目、エドワーズはコース前半でペドロサに交わされ6番手に後退。順位は先頭からバーミューレン、1.2秒後方に2番手のロバーツ・ジュニア、3番手のヘイデン、0.5秒後方に4番手のストーナー、5番手のペドロサ、6番手のエドワーズ、7番手のメランドリが続く。
■恒例のルーキーバトル
ペドロサはペースを上げながら前を行く4番手のストーナーとの差を詰め始めた。
8ラップ目の6コーナー入り口、4番手のストーナーに追いついたペドロサはストーナーのインに飛び込む姿勢を見せるが、ストーナーはこれを阻止。同じ6コーナーでメランドリがエドワーズのインを狙う。
9ラップ目、エドワーズはメランドリに交わされ7番手に後退した。
■分厚い壁をすり抜けるニッキー
ロバーツの背後につけていたニッキー・ヘイデンはコークスクリューへの飛び込みでついにロバーツ・ジュニアを交わして2番手に浮上し、2秒前方を走行するバーミューレンの追撃態勢に入る。
ロバーツの背後には、激しく前を争いながらストーナーとペドロサが近づいている。
10ラップ目、先頭からバーミューレン、2秒後方に2番手のヘイデン、その0.5秒後方に3番手のロバーツ。
ロバーツの0.2秒後方には4番手のストーナーと5番手のペドロサが迫る。6番手のメランドリと7番手のエドワーズはペドロサの2秒後方を走行。
■激しいライディングを続けるペドロサ
ペドロサは流れるように最終コーナーに飛び込みロバーツ・ジュニアとストーナーの前に出るが、その勢いでペドロサのマシンは軽くハイサイドを起こすような形で揺れながら右アウト側に流れた。ペドロサのイン側にストーナーとロバーツ・ジュニアが並ぶ。
この3台のうち、1コーナーへ最初に飛び込んだのはロバーツ・ジュニアだが、2コーナーまでの切り返しでストーナーがロバーツの横に並び駆け、3コーナーではストーナーが3台の先頭に立った。ほぼ同時にペドロサもロバーツ・ジュニアを交わす。
11ラップ目、ペドロサはコース前半でケニーのイン側に飛び込みストーナーの背後につける。3番手のストーナー、4番手のペドロサ、5番手になったロバーツ・ジュニアは僅差のグループとなり、前を激しく争っている。
■ペドロサ、コークスクリューであわや転倒
3コーナー付近でペドロサはストーナーを交わすが、4コーナーの折り返しですぐにストーナーがペドロサの前を奪い返す。
4番手のストーナーと5番手のペドロサはゆっくりとロバーツジュニアを引き離しながらコークスクリューに飛び込んだ。ペドロサは危うくコークスクリュー先の砂地に飛び出しそうになるがゼブラゾーンの上で切り返し、難を逃れた。
バレンティーノ・ロッシはエドワーズとホプキンスを交わして7番手に浮上。
■もう吐きそうなエドワーズ
8番手のエドワーズは気温の上昇によりインフルエンザの症状が悪化し、吐きそうな状態になって周回を続けている。この時点では、本気でピットインを考えていたと、後にエドワーズは語っている。
12ラップ目、先頭のバーミューレンの1.4秒後方まで2番手のヘイデンが迫っている。ヘイデンの1.8秒後方には3番手のストーナー、4番手のペドロサ、5番手のロバーツ・ジュニアが続く。その1秒後方には6番手のメランドリ、さらにその2秒後方には7番手のバレンティーノ・ロッシ。
■トップのバーミューレンのマシンに燃料系トラブルが発生
この時、バーミューレンのマシンのガソリン供給系装置にトラブルが発生。バーミューレンのマシンは時折エンストのような症状を見せ始める。
13ラップ目、2番手のヘイデンは先頭のバーミューンの1秒後方に迫った。先頭の2台の差が一気に縮まっていく。
14ラップ目、先頭2台の差は殆どなくなり、トップのバーミューレンと2番手のヘイデンの差は0.5秒となった。さらにヘイデンはバーミューレンとの差を縮めていく。逃げ切りたいバーミューレンだが、燃料が正常に供給されないマシンは不安定となり、コーナーを攻める事ができない。
■バーミューレンの背後に迫るケンタッキー・キッド
15ラップ目、先頭のバーミューレンの真後ろまで2番手のヘイデンが迫る。3番手のストーナーと4番手のペドロサの争いは周回ごとに激化している。ロバーツ・ジュニアはメランドリに交わされ6番手に後退。
順位は先頭からバーミューレン、2番手のヘイデン、2.6秒後方に3番手のストーナーと4番手のペドロサ、さらにその2.5秒後方にメランドリとロバーツ・ジュニアが続く。
ロバーツの1.5秒後方にはバレンティーノ・ロッシが迫り、その2.7秒後方には瀕死のエドワーズ。
■ストーナーが今回も転倒
ストーナーはペドロサの追撃から逃れるように5コーナーの左カーブに激しく飛び込んだが、曲がりきれずにコースの右側に飛び出し砂地に転倒。ペドロサはその横を悠々と通り抜け3番手に浮上した。ストーナーはレースに復帰する事なく、アメリカGPを15ラップで終える事となった。
■落ち込むストーナーと勇気づけるルーチョ。
今シーズンの度重なるミスにより良い結果を逃し、今回初めてストーナーは「チームに貢献できていない」と発言し、明らかに落ち込む姿を見せている。ただ、LCRチーム・オーナーであるルーチョ・チェッキネロは、良い成績を残せる可能性があっただけに結果は残念としながらも、「ケーシーにもチームにもには強い精神力がありますので、次のレースでは表彰台を狙って、より強くなって戻って来ます。」と前向きなコメントを残している。
■トニ・エリアスも転倒
フォルツナ・ホンダのトニ・エリアスは12番手を走行中、この周回の7コーナー、コークスクリュー付近でオーバーランを喫し砂の中にマシンを倒しているが、すぐにマシンを立て直して最後尾からの走行を再開している。
エドワーズとホプキンスの後ろには9番手のカルロス・チェカ、その後方10番手を走行中の中野選手のマシンのエンジンからは、この時に異音が発生する。
■カワサキ、度重なるマシンの不調、怒りの収まらない中野選手
16ラップ目、中野選手は原因不明のマシントラブルに見舞われエンジンが停止寸前の状態となった。力なくコース脇に中野選手はマシンを止め、アクセルをふかして何度もエンジンの状態を確認したが、マシンの調子は戻る事なく無念のリタイアとなった。
この後、中野選手はピットに戻り、スタッフに囲まれながら鬼のような形相で、手を振り回しながら激怒している。ここまで激しく人前で怒る中野選手を、彼のGPキャリアの中で実際に見た観客はこれまでには少ないだろう。
予選では好成績を残しながらも、レース本番ではマシンの不調や不運が続くカワサキの中野選手のノー・ポイント・レースは今期これで3度目だ。
■低速バーミューレンを余裕で交わすニッキー
17ラップ目の前半、全くコーナーでスピードが出せないバーミューレンのマシンを余裕で交わしたニッキー・ヘイデンがついにトップに立った。加速ができないバーミューレンのマシンは一気にヘイデンの0.8秒後方まで後退している。
19ラップ目、ロッシはロバーツ・ジュニアを交わして5番手に順位を上げた。
20ラップ目、先頭に立ったヘイデンがバーミューレンを快調に引き離していく。この時の順位は先頭からヘイデン、1.4秒後方まで後退した2番手のバーミューレン、その2.1秒後ろから追い上げを開始している3番手のペドロサ、さらに3.3秒遅れて4番手のメランドリと、その背後に迫った5番手のバレンティーノ・ロッシ。
ロッシの5.8秒後方には6番手のロバーツ・ジュニア、さらにその後方にはストーナーの転倒を見てポイント獲得に気持ちを切り替え、ボロボロの体調にむち打って走る7番手のエドワーズ。8番手にはホプキンス、9番手にはチェカが続く。
チェカの後ろには3台のデスモセディチ、10番手のカピロッシ、11番手のジベルナウ、12番手のアレックス・ホフマンが走行している。その後方13番手には玉田選手。
■表彰台に向けて、ハイペースで順位を上げるロッシ
ロッシは5コーナーでメランドリを交わし、ついに4番手に浮上した。8コーナーのコークスクリューまでにロッシは一気にメランドリを0.8秒後方まで追いやる程の、快調なペースで飛ばしている。
22ラップ目、先頭のヘイデンはバーミューレンを2.1秒引き離し、2番手のバーミューレンの1.3秒後方には3番手のペドロサが迫っている。
エドワーズはホプキンスに交わされ8番手に後退。
24ラップ目に入ると、3番手のペドロサは2番手のバーミューレンの真後ろまで迫り、交わすタイミングをうかがい始めた。ペドロサの4.7秒後方では4番手のロッシが6番手のマルコ・メランドリを3.1秒引き離している。
■次々と順位を落とすバーミューレン
25ラップ目の5コーナー、ペドロサはバーミューレンを交わし、先頭を走るチームメイトの2.7秒後方2番手につけた。バーミューレンは明らかに加速ができない状態となり、ペースを極端に落としている。
この後しばらく大きな順位変動はなく、レースは耐久レースの様相を呈していく。マシンがラグナ・セカの灼熱地獄に最後まで耐える事ができれば、各ライダーは無事にチェッカーを受ける事になる。
■冷えないエンジン、ロッシの突然の後退
残り4周の29ラップ目、それまでメランドリの3秒前方の4番手を走行していたバレンティーノ・ロッシが突然ペースを落とし、メランドリとロバーツに交わされ6番手に後退した。
ロッシはメランドリとロバーツの7秒後方まで一気に後退し、マシンの排気管から白煙を上げながらゆっくりと走行している。水冷装置のトラブルにより、ロッシのマシンはラグナ・セカの高温に耐える事ができず、完全にオーバーヒートをしていた。
ロッシのはるか後方を走っていた筈のメランドリは、ペドロサから7秒後方まで下がった3番手のバーミューレンを4番手の位置で追い上げている。
■メランドリが表彰台圏内に浮上
残り3周の30ラップ目、メランドリはバーミューレンを交わし表彰台圏内の3番手に浮上した。順位は先頭からヘイデン、2番手のペドロサ、3番手のメランドリ、4番手のバーミューレン、5番手のロバーツ・ジュニア、6番手のロッシ、7番手のホプキンス、8番手のエドワーズ、9番手のチェカ、10番手のカピロッシ、11番手のホフマン、12番手のジベルナウ、13番手の玉田選手、14番手のド・ピュニエ、15番手のジェームス・エリソン。さらに周回遅れとなった16番手のトニ・エリアスと17番手のホセ・ルイス・カルドソが続いた。
■マシンを最後まで持たせようと必死のロッシだが・・・
ロッシはあまりアクセルをふかさず、白煙を時折出しながら、完走だけを狙う走行に切り替えている。ほぼ惰性で動いているような状態だ。
残り2周の31ラップ目、ロッシが最後までエンジンを持たせようと惰性走行を続ける中、クリス・バーミューレンはロバーツにも交わされ5番手に後退した。
ロッシは失速を続けながら2コーナーに向かうが、3コーナー以降はマシンに殆ど速度がなくなり、残り1周と少しを残してレースをリタイアした。
ロッシはタイトル争いすらすっかり諦めたという様子でマシンから降りている。
32周目の最終ラップ、1コーナーを先頭からヘイデン、3.4秒後方をペドロサ、その7.5秒後方をマルコ・メランドリが、コース脇にたたずむロッシの横を通り過ぎていく。
■優勝は今年もケンタッキー出身25歳
最終コーナーまで上位の順位は変わらず、コントロールラインを余裕で越え、自身のGP通算3度目の優勝を決めたのはレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだ。2位チェッカーを受けたのはそのチームメイトのダニ・ペドロサであり、これによりレプソル勢はアメリカGPでの1・2フィニッシュを達成した。
3位にはフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリが入り、ラグナ・セカの表彰台を独占したのは猛暑によるマシンの熱トラブルに悩まされる事のなかったホンダ勢だ。
続いて4位には、ホームGPでの優勝を狙っていたチーム・ロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニアが入り、惜しくも表彰台を逃している。
■キング・ケニー「フリーと予選のみ速くでもダメだ」
チーム・ロバーツのオーナーであるキング・ケニーことケニー・ロバーツ・シニアは、「今回直面したのが、現在チームが越えなければいけない壁でしょう。イギリスでも言ったように、0.25秒さらに全体のペースを上げなければいけません。マシンの調子は最高ですが、タイヤが減った時の問題は何も解決されていません。エンジニアはレースウイーク始めの2日間のためではなく、3日目のレースでもいい走りができるようにバイクを設計する必要があります。」とコメントした。
5位にはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン、6位にはそのチームメイトのジョン・ホプキンスが続いた。
■ヤマハの最高位はチェカ、「今年のヤマハは残念な状態」
ダンロップタイヤを履いてからの自身最高位となる7位を獲得したのはTECH3ヤマハのカルロス・チェカだ。尚、チェカのこの成績は今回のアメリカGPにおけるヤマハ勢の最高位でもある。
チェカは今期の自信最高位となる7位には大満足だが、度重なるヤマハ勢の不調については「今年のヤマハは残念な状態」と、今年のYZR-M1を駆るヤマハ全体の落ち込み状況に憂いを示す発言をしている。
チェカに続いたのは8位となったドゥカティーのロリス・カピロッシ。優勝を狙い、星条旗スペシャル・カラーに色塗られたキャメル・ヤマハのマシンに乗った体調不良のコーリン・エドワーズは、無事に9位完走を果たした。
レース終盤には10位まで順位を上げていたプラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンは、最終ラップの最終コーナーで転倒するという不運に見舞われ、結局14位でレースを終えている。
■ホフマン「人生最悪の惨事」、今後に期待を示すルイス・ダンティーン
トップ10を走行しながら、加熱した路面にフロントをすくわれて転倒するという残念な最終ラップを「レース人生で最悪の惨事」と落ち込むアレックス・ホフマンだが、プラマック・ダンティーンのチーム・オーナーであるルイス・ダンティーンは、「レースでタイヤが正しく機能した今シーズン初めてのレース。ホフマンは最高の走りをしたし、最後の転倒はレースなんだからそういう事もある。」と喜びのコメントを残し、残りのレースへの期待を高めている。
ルイス・ダンティーンは特にカルドソの完走についてはコメントしていない。カルドソ本人は「ずっと一人で走っていて退屈だった」とコメントしている。
また、コニカミノルタの玉田誠選手は、左ひざの痛みとの戦いに耐え、11位でアメリカGPを無事に完走した。
■喜びのニッキー、コースに座り込むロッシ
ニッキー・ヘイデンはヘルメットを脱ぎ、コークスクリューの途中でマシンを停車して歓喜の叫び声を上げ続けている。
このレースの結果、ロッシはポイントリーダーのニッキー・ヘイデンから51ポイントを離されランキング4位に後退。今シーズン残りのレースはあと6戦しかない。
バレンティーノ・ロッシはピットに歩いて戻るのを途中でやめ、チェッカーを受けた直後の3コーナー付近でとまってしまったクリス・バーミューレンの水色のマシンの横に座り込み、悲壮感の漂う姿で呆然としている。
場面は表彰式に移り、表彰台の真ん中では、昨年に引き続きアメリカ国歌を聴きながらニッキー・ヘイデンが涙ぐんでいた。
■各ライダーのコメント
以下に、レース後の各ライダーのコメントを紹介する。
優勝)ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ
やりましたね!去年よりもさらに気分はいいですよ!
去年は完璧だったので楽な試合運びでしたが、今年は本当に大変でしたからね。
すごく頑張ってくれたレプソル・ホンダチームに感謝したいです。それに今日はすごくいいタイヤを提供してくれたミシュランにも感謝です。また、自分の体調を整えてくれたトレーナーのエルドン・ベーカーにも深く感謝します。
いくつかのサーキットでは自分の調子に見合う成績を残せていませんでしたが、今日はすごく暑くて体力的に厳しかったですね。
今日は身体的に絶好調でしたし、朝日が昇るのと同時に起きてトレーニングをしましたが、それが役に立ちました。
イン側ですごくいいスタートが決まったんですが、兄がくれた助言の通りアウト側に進んだんです。この作戦は大成功で1コーナーに入るまでに数人のライダーを交わす事ができました。
あまり速すぎるペースで走らず、タイヤを温存していました。レース全体のペースが速かったですからね。その後はできるだけリラックスして走りながら順位を挽回する事に集中しました。
今日の結果は年間タイトルを考える上で大きな結果ですが、まだ先は長いですから健康に注意して、あと何勝か狙いたいです。
2位)ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ
結果が最高でしたのですごく嬉しいです。
本当に厳しいレースでした。暑くてライダーの体力的に辛い状況でしたね。今まで自分が経験した中で一番厳しいレース条件でした。安定したリズムで走る事がすごく難しかったんです。
すごく頑張ってくれたチームに感謝しています。それとこのレースを見に来てくれた伝説のライダーの方々(レイニー、ローソン、シュワンツなど)や有名人の人たちにもお礼が言いたいです。みんな本当にバイクが大好きなんです。
もちろんファンの人たちも最高でした。
序盤はブレーキを早くかけすぎて順位を2つくらい落としました。これを挽回している最中にもミスをしてしまい、また順位を落としましたので、最初のうちは大変でした。
最終的には前に出る事ができて2位フィニッシュができましたから、これは自分にとって本当に嬉しい結果です。1・2フィニッシュができた事はチームにとっても最高でした。
3位)マルコ・メランドリ ITA フォルツナ・ホンダ
カタルーニャの怪我の影響で体調もまだ完全ではありませんし、今回は本当に厳しいレースでした。
最初に後続を引き離す事はできましたが、序盤はペースを維持するのが難しい状態でしたが、15周を過ぎたあたりからバイクの感触が良くなり、そこで順位を2つか3つ挽回する事ができました。レース後半では誰よりも一番速いペースでしたね。
今回は自分にとってすごくいい結果になりましたし、シーズンの前半を好調に過ごす事ができました。
ブルノでも表彰台に上りたいですね!
4位)ケニー・ロバーツ Jr USA チーム・ロバーツ
レースの開始時点から全くグリップがありませんでしたよ。スズキほどひどくはないにしても、他のホンダ勢と同じくらいかな。今日できる精一杯の走りがこの成績です。
速いうちから自分のトラクション・コントロールは限界近くに達していました。だいたいこの症状がいつもトラブルが始まる時の予兆ですから、なんとかレースを走りきろうと頑張りました。
メランドリと同じようなペースでしたが、彼は終盤にフロントタイヤを活用し始めました。自分のはほんの少しだけソフトでしたから、その時にはもうタイヤを使い切っていたので転倒のリスクは冒したくなかったんです。サスペンションの問題ではありません。
ひたすら彼についていく事に集中して、ミスしてくれる事だけを願ってましたが、全然ミスしないんですよ。
今回見せた通り、あまり自分の姿勢は変えたくありませんでした。あんまり自分たちの殻から抜け出すような調整をしたくなかったんです。あえて毒と知りながら自分たちの今の状態に甘んじたってところですかね。
今の調子を崩したくないがばかりに、自信を失うわけです。まあ、自分の知ってる物事の範疇から抜け出さなかったって事です。
5位)クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ
スタートは全てうまくいって、バイクは快調に走ってましたし大成功でした。タイヤの選択にも成功したと思いましたね。色々助けてくれたチームの全員とブリヂストンにはすごく感謝しています。
でも12周を走ったところでバイクがガクガクしだしたんです。全然なめらかに走れなくなりコーナーへの進入が怖くなりました。ライディング自体がすごく大変な状態です。
マシンの具体はどんどん悪くなるので、後は完走する事だけを考えていました。実際、レースが終わってコーナーを3つ過ぎたらバイクが完全に止まったんですよ!
表彰台に乗れなくてがっかりですが、リズラ・スズキのマシンとブリヂストンの性能は証明する事ができたと思います。チーム全員の今週の頑張りもね。
今回の走りを今後の何戦かでも続けたいです。
6位)ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ
今回はクリスが気の毒です。彼は最高の走りをしてたのに本当に最悪だよね。
クリスがトップにいるのを見てすごく勇気づけられたから、自分もできる限りの走りをしました。
スタートではまわりのライダーにとり囲まれてしまい、コーリンを抜くのに苦労しましたし、バレンティーノに抜かれた時はちょっとミスをしてたんです。
先頭集団に離されてからは自分自身との戦いに集中して、いい周回を重ねる事だけを考えました。ブリヂストンがいいタイヤを持ち込んでくれたおかげで、こんな激烈なコンディションの中でも最後まで走りきる事ができました。彼らは頑張ったね。
ここまでリズラ・スズキのどちらも表彰台に乗ってないのは悔しい(It's shame)です。でもまだレースは残り6回ありますから、シーズンの終わりまでにはどっちかが上りますよ。
これでしばらくは夏休みだし、ブルノに照準を合わせていきます。楽しみなレースの1つだからね。
7位)カルロス・チェカ SPA TECH3ヤマハ
この結果には大変満足しています。
レースの序盤にバレンティーノと中野の後ろといういい位置につけましたし、彼らとの差も広がりませんでした。
熱のせいでレース中盤には少しタイヤの性能が落ちてしまい、最後の5〜6周は大変でした。
7位という結果は今シーズンここまでの最高位ですから、今週全体を通しての状態を考えればとても満足できます。自分たちにとって簡単な状況ではありませんでしたからね。
全くテストしていなかったタイヤをレースでは選択しました。少しここの路面には苦労しましたが、全体を通しては満足できる内容でしょう。
タイヤ選択にリスクを冒しましたが、最終的にはこの位置で終わる事ができましたし、チームとしても嬉しい結果になりました。
そうですね、ヤマハの中で今回は最高位です。でも今年のヤマハは残念な状況ですよ。
多分コーリンは何かトラブルをタイヤに抱えていたと思います。バレンティーノも同様でしょう。彼は常に100%以上の力を発揮するんですが、今年は本当に運がありませんね。
私だってヤマハチームの一員ですから、この状況には本当に失望しています。
もちろんヤマハの先頭に立てた事は嬉しいですが、普通のレース条件でそれを実現したかったですね。それなら本当に満足できますよ。
8位)ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティー・マルボロ
自分たちが準備していた内容からすればいいレースだったと思いますよ。すごくいいレースだったと言えるでしょうね。とてもこれ以上は無理でした。
諦める事なくセテや玉田を交わして差を開き、最後までその差を維持しました。
今回はレースウイーク中に使ったどのタイヤよりも固めのものを選びました。フロントの状態は大丈夫でしたが、レース中盤にリアがたれ始めました。まあ全体的にはいい結果だったと思います。
完走ができてポイントも獲得できた事が嬉しいです。
これが自分たちにとって最後の厳しいレースだと思いたいですね。今年の厳しい期間はこれで終わったと信じたいです。
9位)コーリン・エドワーズ USA キャメル・ヤマハ
スタートは良かったんですが、1コーナーにマシンを傾けて飛び込んでからエンジンのパワーが少し出なくなり、その後は徐々にスピードが落ちていって数人に抜かれてます。
以降は24.1秒か24.2秒を維持する事に全力を尽くしました。これは昨日レースタイヤで走っていたペースよりも速かったんですけどね。また、バイクのブレーキにも少し問題があり、その状態で走るのにも苦労しました。
金曜日から煩ってる病気(インフルエンザ)の影響で、10ラップ目を過ぎた時点ではもうボロボロでした。体力が衰弱しきって身体に力が全然残っていない状態です。
気分も悪くなり、本気でピットインしようかと考えましたが、その時にストーナーが転倒したのを見て、このまま走り続けてポイントだけは何点か獲得しようと気持ちを切り替えたんです。
20ラップを過ぎたらホイールスピンが起こるようになり、ラップを重ねるごとにその状態はどんどん悪化しました。
最後の数周では、特に1コーナーで何度かすごく怖い思いをしています。残り3周か4周といったところでリアタイヤを振り返って見て、タイヤのトラブルがどれだけ深刻かを確認しました後は、もう安全に最後まで走りきる事しかできませんでした。
本当に吐きそうな状態でしたよ。今週はまったく期待通りにはいきませんでした。まあ、レースはそういうもんですけどね。
10位)セテ・ジベルナウ SPA ドゥカティー・マルボロ
レースウイークを通して状態は同じでしたね。このコースに自分たちのバイクを適合させる事はできませんでした。
今回は完走だけはしたいと思うレースの1つでした。肩の調子(先月骨折した鎖骨)もあまり良くないですからね。
8周目を越えたところで、誰もまわりに近くにいて欲しくないと思い始めました。うまくブレーキがかけられずに苦しんでたんです。
とにかくここでのレースは終わりましたし、これから家に戻って夏休みです。ここでの状況をみんなで真剣に分析しますよ。
完全な休日ってわけにはいかないでしょうね。肩の体調を取り戻せるように頑張らなきゃいけませんから。
11位)玉田誠 JPN コニカ・ミノルタ・ホンダ
今朝の早いうちから、今日はマシンに乗る時に左ひざの状態が100%じゃない事を自覚しました。
レースの後半は感覚がなくなり、リズムがつかめなくなってきました。アスファルトの温度が昨日より5度も上がってリアタイヤのグリップがなくなり、特に左コーナーが大変でした。
昨日はフロントを失って、怪我をしている左ひざを地面にぶつけたんです。レース中は左コーナーで痛みが激しく、あれ以上プッシュする事はできませんでした。
12位)ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング
今まで経験した中でも一番厳しいレースでした。
今日の気象条件でレースが難しくなる事は分かっていましたが、ここまで体力的に厳しいとは思っていませんでした。
スタートには大失敗しました。その時に午前のウォームアップの時とバイクの感触が全く別物になっている事に気がついたんです。多分温度が上昇したせいだと思います。
リアがすごく振られる感じだったので、レース終盤には玉田誠の後ろまで近づいたんですが、追い抜きをかけてプッシュするのは危険すぎてできませんでした。
最終的には貴重なポイントを獲得できましたが、今日の結果に満足とは言えません。
13位)ジェームス・エリソン GBR TECH3ヤマハ
厳しいレースでしたが、レース序盤はすごくいい感じでした。
スタートがすごくうまくいって、玉田やド・ピュニエと一緒にダッシュしましたので、いいバトルができる事を期待しました。
彼らと一緒にだいぶ多くの周回を走ったんですが、フロントタイヤが逃げる感じになり、ちょっと危ない場面がありました。温度の上昇で前輪が暴れている中で、彼らを抜こうとブレーキを思ったより激しく効かせてしまったんです。
少し柔らかめのタイヤを選んでいたこともあって自信がなくなってしまい、それからは徐々に後退しています。
その後は自分自身に対して「こんな(弱気な)事は二度とないようにしよう」と言い聞かせました。まだそれほどプッシュしてないんだから、もっと頑張ろうと思ったんです。転倒してどんなにひどくへこんだとしても、それは(レースの)過程に過ぎないと考える事にしました。
そこからは自信を持って走れるようになりました。熱でバイクが暴れてはいましたが、グリップはまだ大丈夫でした。
レース終盤に向けてはペースを上げられましたし、前を走るバイクたちとの距離も縮める事ができました。それにコースのまわりで旗を振って自分を応援してくれている人たちが見えて、終盤にかけては本当にいいレースでした。
レースの中盤にそんな瞬間があったのは残念でした。歯を食いしばって壁を越えなければいけないと思います。
ポイントはいくらか獲得できましたから、みんないい気分でここを離れられますね。
14位)アレックス・ホフマン GER プラマック・ダンティーン
素晴らしいレースでしたが、最後の1ラップを残したところで、自分のレース人生の中で最悪の事態が発生してしましました。
スタートも良かったし、外側から何人ものライダーを交わす事ができました。前にいた玉田は正常なリズムで走れておらず、その前の集団に追いつける状態じゃなかったので、彼の後ろでかなりタイムをロスしました。
玉田を交わすのはすごく大変でしたが、彼を交わしてからジベルナウも同様にパスしました。
限界ぎりぎりの状態でしたが、バイクの調子は最高でした。常にいいリズムが保てましたし、今までに全然追いつく事ができなかったライダーたちを何人も交わしていくのは本当に楽しかったです。
タイヤもそうですが、今回は自分にとって今シーズンの中での最高のレースでした。
最終ラップの自分の転倒については自分でもあまり説明ができませんし、何が起こったのか良くわかっていません。コークスクリューの後の左コーナーでフロントを失いましたが、多分路面の不安定な状態が原因だったと思います。
ミスをした事には本当に落ち込んでます。
15位)トニ・エリアス SPA フォルツナ・ホンダ
本当に厳しいレースでした。すごい暑さと肩の具合がレースを余計に難しくしました。
スタートに失敗してしまい、その後はドゥカティーの2名とカルロス・チェカと一緒に走ってましたが、15周目にコークスクリューの上の付近でオーバーランをしてしまい、転倒しました。
レースにはそのまま戻りましたが、結果は15位まで順位を下げてしまいました。
これでやっと次のレースまでに身体を休める事ができますが、今はそれが一番必要なんです。ブルノには100%の体調で挑みたいですね。
16位)ホセ・ルイス・カルドソ SPA プラマック・ダンティーン
レースの序盤は自分のリズムに満足できていましたが、7周か8周を過ぎたあたりからバイクが少し滑り始めて後退しました。
温度が高くてすごく難しいレースでした。心理的にもあの順位を一人きりで走ってレースするのはすごく退屈なんです。
今からの夏休みを最大限に利用したいです。リラックスしてからブルノのレースに備えます。あそこのサーキットはすごく好きですし、良く知っているんです。スーパーバイクで昨シーズンは走っていますから、ライン取りの記憶もまだ新しく残っていますからね。
DNF)バレンティーノ・ロッシ ITA キャメル・ヤマハ
今週は本当に難しい状況の連続でした。問題は山積みだし、運悪くその中でも今日が最悪でした。
午前のウォームアップでは大きく改善が進み、とても速くなりました。だからレースではいい走りができるだろうと思っていましたし、スタートでもうまく順位を挽回できていました。
ところがリアタイヤに問題を抱えて全くグリップがなくなり、転倒を避けるにはスローダウンする以外に方法がなくなってしまい、その直後にエンジンの水冷装置にも問題が出てオーバーヒートを起こしたんです。
煙を見た時には終わったと思いました。
残り6戦しかない状態でヘイデンとは51ポイントも差が開いてしまったので、やっとこれで残りのレースに年間タイトルへのプレッシャーを感じずに走れるようになると思います。
今後はできるだけ楽しんでレースをしますよ。それと可能な限り優勝は狙っていきますので、何が最後までに起きるかは誰にもわかりませんよ。
DNF)中野真矢 JPN カワサキ・レーシング
メカニカル・トラブルで戦列を外れるのは本当に悔しいです。特に今回は年間ランキングの順位も下げてしまいましたからね。
スタートはまあまあでしたが、自分たちがこのコースに適したセッティングをできていなかった事は明白でした。
先頭集団のペースにはついて行けませんでしたが、いいリズムはつかめたのでトップ10フィニッシュはできるかなと思ってました。
運悪く、レースの中盤にエンジンから異音がしだしたと思ったら止まってしまい、リタイアを強いられました。原因はわかりません。
でも、この夏休みにリラックスして、ブルノにはもっと強くなって帰ってきます。
DNF)ケーシー・ストーナー AUS ホンダLCR
全て快調に思えていました。先頭で走れるのに十分なセッティングもありましたしね。
小さなミスをして、5コーナーに向けてブレーキをゆるめたところでスライディングしました。
レースの序盤はタイヤを温存しなければいけない事はわかってましたが、ダニとケニーの前に出た時には何も問題がなかったので速いペースを維持する事にしたんです。そんなに激しく走っていたわけではありませんよ。
LCRのチームの全員には深く感謝しています。このシーズンを通して自分が先頭を走れるように、みんなすごく頑張ってくれています。
僕はチームに貢献できていないライダーの一人です。
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