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ラグナ・セカの改修と、キャメル・ヤマハ勢のニッキーへの挑戦
インテリマーク編集部
2006年7月19日

MotoGPクラスをのぞく小排気量クラスのライダーたちは前回のドイツGPを終えて短い夏休みに入ったが、MotoGPクラスのライダーたちはそのままオフウイークを挟まずに米国のカリフォルニア州で開催されるアメリカGPへの準備を進めている。

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ポイント・リーダーであるニッキー・ヘイデンが最も得意とし、昨年は絶好調だったにもかかわらずニッキーに歯が立たなかったラグナ・セカでのレースは、現在ランキング2位を行くバレンティーノ・ロッシにとっての正念場だ。

ここでは1回目のアメリカGPプレビューとして、ラグナ・セカの改修内容とそれに対する昨年のニッキー・ヘイデンの反応、およびキャメル・ヤマハ・チームのアメリカGPに向けてのコメントなどを紹介する。

写真■GPカレンダーに復帰して2年目のラグナ・セカ・サーキット

カリフォルニア州モンテレーの側に位置するラグナ・セカ・サーキットは、一昨年前の大改修を経て昨年よりMotoGPクラスのグランプリ・カレンダーに約10年ぶりに復帰し、昨年末からはさらに安全面を考慮した大規模な改修も加えられ、去年に引き続き2年連続のグランプリを今週の金曜日から迎える。

11のコーナーを持つ全長3,602メートルの小さなコースは、広々とした地形の上に構築されており、観客がレースを見るのには理想的な地形のサーキットとされているが、マシンを調整するメカニックにとってはまったくセッティングによるごまかしの効かないサーキットだと言う。

■ラグナ・セカの歴史と非営利の運営団体

マツダ・レースウェイ・ラグナ・セカ・サーキットが建設されたのは1957年の事であり、現時点においてFIMとFIA(グレード2)から認定を受けるアメリカ国内では唯一のサーキットだ。運営は当初からモンテレー半島スポーツ・カー・レーシング協会によって行われている。

モンテレー半島スポーツ・カー・レーシング協会は非営利団体であり、ラグナ・セカへのイベント誘致を支援しているボランティア組織に対して、各レース・シーズン中の利益を寄付する活動を行っている。

ラグナ・セカは2年前、200万ドル(約2億円)の費用を投じて改修され、MotoGPカレンダーへの復帰を昨年果たしたばかりだが、今週のGPに向けてはさらに700万ドル(約7億円)の大規模な追加改修が昨年末から行われている。

■豪快なコークスクリューとシークレット・ライン

アップヒルの高速ストレートの終端に突然現れる「コークスクリュー」と称されるダウンヒルの激しい勾配のクランクコーナーが有名なラグナ・セカ・サーキットは、現在のGPカレンダーの中でも大変に白熱するレース展開が期待できるサーキットの1つである。

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昨年のアメリカ勢が、ストレートからコークスクリューにかけてのライン取りのノウハウをあまり他のライダーに見せなかったと言われるほど(シークレット・ライン)、速度を落とさずに効率的なラインを取るのが難しいとされる部分がある事でも有名だろう。実際、ヘイデンとエドワーズのレース中におけるここ一番でのコーク・スクリューへの飛び込みの勢いは他のライダーに比べて激しく、ライン取りもやはり全く異なっていた。

バレンティーノ・ロッシは、ニッキー・ヘイデンとコーリン・エドワーズに続いて3位となったレースを終えた後、「シークレット・ラインを含め、2人の走りは勉強になった。」と発言しており、今年は簡単にはニッキーの独走を許さない構えだ。

■ノウハウを必要とする勾配

ラグナ・セカは迫力ある高速コーナーの数々を短いストレートで接続したレイアウトのサーキットであり、ニッキー・ヘイデンが得意とするアップヒル(上り勾配)の加速エリアなどでは走行中に前輪が浮いてしまうため、効率的にマシンをスピードに乗せるためには慣れとこつが必要とされる。

■勾配が削られたラグナ・セカ、ニッキーのアドバンテージに危機?

コークスクリューと同様に、ラグナ・セカの名物でもあるこのコースの上り直線だが、昨年末からの改修工事によりコークスクリュー周辺の勾配がいくらか削られたようだ。

実際にどの程度削られるのかは不明だった改修内容の発表当時の昨年末、ニッキー・ヘイデンは悲鳴に近いコメントを発表していた。

写真「僕だってあの上り坂はあまり好きじゃないけど、あれがラグナ・セカなんだ。タイヤがスピンしないように走れるのは運じゃなくてテクニックだよ。平らにするなんてあまり良い考えじゃないね。いろんな要素が絡んで抜きにくい場所だったのに、簡単にパスできるストレートになってしまう。」

また、当時噂されていたコークスクリュー近辺の改修については、安全面を考えた意義のある工事がされる事は嬉しいとしながらも、ライン取りが変わる事について不安を抱くとともに、以下のコメントを述べていた。

「バス停と間違えるようなシケインのあるサーキットは嫌だね。単に速度を落とす事だけを考えたようなカッコ悪いサーキットにはしないで欲しい。」

ちなみに、今のニッキー・ヘイデンは改修について以前よりも前向きな発言をしているが、それは次回のプレビューで紹介する。

■ラグナ・セカの改修内容

昨年のレース終了後、バレンティーノ・ロッシを始めとするMotoGP安全委員会のメンバーは、ライダーの安全面を確保する上での改善策をFIMに申し入れている。昨年末から今週のGPに向けて約700万ドル(7億円以上)をかけて行われた改修工事には、その内容が大きく反映されているようだ。

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最も大きな改修となったのが1コーナーであり、コース全体の路面も全面的に再舗装がなされている。

安全委員会が最も懸念した1コーナーのランオフエリア(コースアウトした場合の逃げ場)は以前よりも拡張され、丘の側面が削り取られた。またかつてそこにあったメディア・センターが撤去され、代わりに最新のホスピタリティー施設がそこに用意されている。

また1コーナーのみではなく、ランオフエリアは3コーナー、4コーナー、6コーナー、それと7コーナーにも追加された。6コーナーは両サイドにランオフエリアがとられ、7コーナーからコークスクリューにかけての上り勾配は、以前の噂通りいくらか削られたようだが、ニッキーのアドバンテージをも削りとるのかどうかは不明だ。

■エドワーズのメカニックが語るラグナ・セカでのマシン・セッティング

キャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズのチーフ・メカニックであるダニエーレ・ロマノーリは、「以前に思っていた程テクニカルではありませんが、ストレートが殆どない特殊なサーキットだと言えます。従って、上限のエンジン出力よりもライダーに乗りやすくスムースなパワー・デリバリー(エンジンからタイヤに伝達される出力の配分)が重視されます。」と述べている。

勾配によりコーナーリング条件が各コーナーごとに異なるため、シャシーのセッティングにもメカニックは細心の注意を払うようだ。

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■アメリカ勢の『シークレット・ライン』を可能とするサスペンション調整

ロマノーリは、高速走行をしながらストレート・エンドから左にマシンを倒し込んでコーク・スクリューに飛び込む時について、「マシンを傾けた状態で十分なトラクションが得られるようにしなければなりません。また、去年のコーリンを見ると彼はあそこでの追い抜きを好みますから、特にブレーキング時にサスペンションを安定させて、良い性能を引き出す必要があります。」とコメントし、昨年のエドワーズの『シークレット・ライン』を使った豪快な追い抜きを可能とする足回り調整について強調した。

■今年のミシュラン・タイヤに合わせたシャシーとサスペンションの変更は必要

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昨年にエドワーズが2位表彰台を獲得した時は、コーリンのラグナ・セカでの経験を活かす事でセッティングを見つける事が容易だったと述べるロマノーリだが、今年は06年型YZR-M1のシャシー・セッティングにヤマハ勢全体が苦しんでいる事もあり、今年のマシンに去年のノウハウが直接的に使えるかどうかはまだ疑問とするコメントを、ロマノーリは以下の通り語った。

「今回の状況は去年とは少し異なるでしょうね。仮に同じセッティングを今回のマシンに施したとしても、タイヤは去年と大きく異なりますから何かシャシーやサスペンションに新しい調整は必要になると思います。」

「ドイツでは正しいセッティングの方向性を見つけるのが難しい状況でしたが、コーリンが今週にその影響を持ち込む事はないでしょう。アッセンの時のような活躍ができる筈です。」

■キャメル・ヤマハ「ニッキーに挑戦する」

写真現在のポイント・リーダーであるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだけではなく、それを追うキャメル・ヤマハ勢にとっても、ラグナ・セカは待ちわびたサーキットだ。特にエドワーズにとって、アメリカGPは自身2度目のホームGPとなる。

昨年のエドワーズのラグナ・セカでの成績はニッキー・ヘイデンに次ぐ2位だが、ラップレコードはエドワーズが記録した1分23秒915だった。

また、昨年初めてラグナ・セカを経験し、3位を獲得しているバレンティーノ・ロッシは、経験の差があったにしてもヘイデンやエドワースを去年も追う事はできたと述べ、既に経験済みとなった2年目のアメリカGPを楽しみにしている。

キャメル・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、「ニッキー・ヘイデンが速いサーキットである事は知っていますが、これこそが挑戦ですし、私たちはこの戦いを楽みながらシーズンを過ごしています。また、昨年の私たちの2名のライダーの走りを見る限り、今週の日曜日はニッキーに楽な思いはさせませんよ。」と述べ、ニッキー追撃に向けての意欲を示した。

■エドワーズ「ニッキーとの一騎打ちなら勝つのは自分」

今期はチームメイトのバレンティーノ・ロッシと同様にYZR-M1のシャシーセッティングに苦しむ事も多かったコーリン・エドワーズだが、アッセンでは殆ど優勝に値する走りを見せており、ラグナ・セカでも同等の走りができると信じている。

エドワーズは今週の火曜日にL.A.(ロス・アンゼルス)に入り、MotoGPの新作ドキュメンタリー映画である「ザ・ドクター、ザ・トルネード、アンド・ザ・ケンタッキー・キッド」の上映会への参加の直前に、ハリウッド・ブルーバード(映画俳優などのネームプレートやチャイニーズ・シアターのある通り)で行われたMotoGPバイク・パレードに参加している。この映画の中で、彼は3人の主役の中の一人のトルネードだ。

またアッセンと同じくニッキーとの一騎打ちになるのなら、今度は負けないとエドワーズは語る。

写真「ザクセンリンクの前はラグナ・セカでは勝てると思ってないと言ったけど、今は勝ちたいし、可能性は十分にあるでしょう。」とエドワーズ

「ドイツでは複数の問題を抱えていました。でも、それ以前のカタルーニャでも問題はありましたが、その7日後のアッセンでは優勝争いができています。」

「どうも今のバイクは所々のサーキットでは正しく機能するようですが、それ以外の場所ではダメみたいです。でもアッセンと同様に、ラグナは他とはちょっと違う筈ですよ。1つ確実に言える事は、徹底的に戦うし、勝利のためなら何でもするという事だけです。」

「またアメリカ人同士の戦いなら、ヘイデンとの一騎打ちでも、今回は自分がトップに立つ事はわかっています。バイクがアッセンと同じように好調にいってくれれば、絶対に同じミスは犯しませんよ。」

■昨年提案した改修内容を楽しみにするロッシ

昨年はニッキー・ヘイデンに追いつく事が出来なかったバレンティーノ・ロッシだが、今年は誰も自分の前を走らせる予定はないようだ。改修後の影響は現地で実際に走って見ないことには不明だが、昨年中にサーキットのデータは十分収集できたと、ロッシはコメントしている。

「あのコースを走ったのは去年が初めてでしたが、それでも多くの周回をニッキーの後ろについて走る事ができていました。コーリンについてもそうです。2人からは多く学びましたね。」とロッシ

写真「レースの終盤はかなり自分も速くなってましたし、実際に自己ベストは最終ラップで記録しました。だから今年は最初から強くなってると思いますし、今回はあのアメリカ勢を打ち負かしますよ!」

「ドイツではいくつかバイクに問題を抱えていた上に、今週はあまりセッティングを変更する時間ありませんが、前回の日曜日に見つけたいいセッティングと去年のデータさえあれば大丈夫だと思います。」

「コースの最近の改修によって去年とは異なると思いますが、それは現地で確かめます。シーズン中の他のサーキットと比べて安全基準に本当に達していなかったので、去年のレースの後、安全委員会と一緒に議論していくつか改善点を提案したんです。」

「スーパーバイクなら問題のないレベルだったでしょう。でも、自分たちはそれよりも40km/h速い速度でコーナーに進入しますから、特に1コーナーなどにもう少し改修が必要でした。」

「どのくらいコースが良くなって安全になったか、今から見るのが楽しみです。」


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