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イギリスGP125cc決勝 カリオ「あれはレースじゃない」 |
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2006年7月6日
7月2日(日)、イギリスのドニントン・パークでMotoGP125ccクラスの決勝レースが行われた。通常は一日の最初のレースとして行われる125ccクラスだが、この日は250ccクラスとMotoGPクラスの後に行われている。
ポイントリーダーであるマステルMVAアスパル所属のアルバロ・バウティスタは、クリーンな走りとスムーズなライディングに今年は定評がある。
■優しすぎる走りを反省したポイントリーダー
フェアな走りを信条とするバウティスタだが、前回のオランダGP最終ラップ、ランキング2位につけてバウティスタを追うKTMのミカ・カリオとの最終コーナーへの飛び込み合戦では、その信条故に、カリオの接触も辞さない強気のライン取りに半ば押し出され気味となり優勝を逃してしまった。
3位となったオランダのレース後にバウティスタは「今後も無茶な走りをする気はないが、勝つためにはもっと攻撃的な部分が自分にも必要。接触で押し出されたのは自分が最後に緊張した事にも原因がある。今後2度と今回のような負け方はしない。」と、普段の笑顔を見せる事なく語っている。スムーズな走りだけではなく、シーズン後半に向けてはさらに強気のライディングを見せてくるかもしれない。
■小山選手はドイツGPからの復帰を目指す
カタルーニャで右の大腿骨を骨折するという重傷を負ったKTMのフリアン・シモンの代役として、今回のイギリスGPからは16歳のスイス人であるランディ・クルメンナッハがKTMから出場している。フリアン・シモンは転倒翌日に手術を受けており、最低でも2ヶ月は欠場する予定だ。
同じくカタルーニャで左手首を骨折したマラグーティ所属の小山知良選手の代役は、前回のオランダGPに引き続き今回のイギリスGPでも葛原大陽選手が担当する。小山選手は次戦となるドイツGPからの復帰を目指して日本で療養中。
尚、小山選手のチームメイトであるアレクシ・マブーも怪我の為に今回のイギリスGPを欠場しており、代わりにドイツ人のゲオルク・フレーリッヒが出場している。マラグーティのレギュラー・ライダーは2名ともイギリスGPを怪我で欠場する事態となった。
■スターティング・グリッド
1列目ポールポジションは現在のポイントリーダーであるマステルMVAアスパルのアルバロ・バウティスタ、2番グリッドはランキング2位につけるKTMのミカ・カリオ。3番グリッドはマステルMVAアスパルのマティア・パッシーニ、4番グリッドはジレラのシモーネ・コルシ。
2列目5番グリッドは前回のオランダGPで2位表彰台を獲得したマステルMVAアスパルのセルジオ・ガデア、6番グリッドは同じくマステルMVAアスパルのエクトル・ファウベル、7番グリッドはデルビのルーカス・ペセック、8番グリッドはSSMレーシングのジョアン・オリベ。
昨年度チャンピオンであるエリット・カフェラテのトーマス・ルティーは3列目10番グリッド、小山知良選手の代役としてマラグーティから出場している葛原大陽選手は40番グリッドからのスタートとなった。
■レース開始、ミカ・カリオが好スタート
シグナルが消え、好スタートを決めたのはKTMのミカ・カリオ。それに続くのはマステルMVAアスパルのマティア・パッシーニとアルバロ・バウティスタ。
オープニングラップ、各ライダーが一斉に1コーナーに向かう中、そのままホールショットを奪ったのはミカ・カリオ。1コーナーを抜け出したカリオ、パッシーニ、バウティスタ、ジレラのシモーネ・コルシが順にドニントンの高速ダウンヒル・セクションに向かう。
パッシーニがカリオの前を奪い先頭に立ち、バウティスタはコルシとデルビのルーカス・ペセックに交わされ5位に後退した。順位は先頭からパッシーニ、2番手にカリオ、3番手にコルシ、4番手にペセック、5番手にバウティスタ、6番手にマステルMVAアスパルのセルジオ・ガデア、7番手に同じくマステルMVAアスパルのエクトル・ファウベル、8番手にエリット・カフェラテのトーマス・ルティー、9番手にバルジール・セードルフ・レーシングのファブリツィオ・ライが続く。
■オープニングラップを制したのはパッシーニ
最終コーナーでバウティスタはコルシとペセックを一気に交わし再び3番手に。
2ラップ目に先頭で突入したのはマティア・パッシーニ、その後ろから2番手のカリオと3番手のバウティスタが追い上げる。ペセックはコルシを交わして4番手に順位を上げた。
9番手のライの後ろには10番手となったヒューマンゲスト・ホンダのガボール・タルマクシ、11番手にはデルビのニコラス・テロール。
バウティスタはカリオを交わし先頭のパッシーニの背後につける。先頭のパッシーニ、2番手のバウティスタ、3番手のカリオが4番手のルーカス・ペセックをやや離し始めた。
■強引に先頭を奪うバウティスタ
3ラップ目、バウティスタは気迫の走りを見せ、高速2コーナーでパッシーニのインを奪いついにトップに立った。後方ではエクトル・ファウベルとセルジオ・ガデアがコルシを交わし、ガデアはさらにファウベルからも前を奪って5番手に浮上。
4ラップ目、順位は先頭からバウティスタ、2番手にパッシーニ、3番手にカリオ、4番手にペセック、5番手にガデア、6番手にファウベル、7番手にコルシ、8番手にライが続く。
先頭のバウティスタはさらにペースを上げ、徐々に2番手のパッシーニを離し始めた。パッシーニの背後では3番手のミカ・カリオが間隔をつめて隙を狙っている。
バックストレート前のコピスコーナーでカリオはパッシーニのインを奪い2番手に浮上。
■バウティスタが序盤から逃げの体制
5ラップ目、バウティスタが独走体制を築き始め、2位集団となったカリオとパッシーニを2秒引き離した。その背後のペセック、ガデア、ファウベルの3台は激しく前を奪い合い、ガデアがペセックの前を奪って4番手に浮上。
順位は先頭からバウティスタ、カリオ、パッシーニ、ガデア、ペセック、ファウベル、コルシ、テロール、ライとなり、その後ろにタルマクシとトーマス・ルティーが続く。
ヘアピンでセルジオ・ガデアは大回りをするが、立ち上がり加速で後続を離す。
■パッシーニにブレーキングで抑えられるカリオ
6ラップ目、パッシーニがカリオを交わし2番手となり、シケインの進入で3番手のカリオは前を奪い返そうとするがパッシーニはこれを阻止。続くヘアピンでもカリオはパッシーニの前に出ようとするがインを閉められて断念。
カリオは最終コーナーでもパッシーニを攻めるがやはり前には出られない。
7ラップ目の全てのハードブレーキングポイントでも、6ラップ目と同じ攻撃をカリオは繰り返すが、パッシーニに全て抑えられる。
■高速セクションでパッシーニを交わすカリオ
8ラップ目、低速区間にある全てのブレーキングポイントで追い抜きを阻止されたカリオは、コース前半の高速ダウンヒル区間でパッシーニの前を奪い2番手に立ったが、すぐにパッシーニの必死の攻めに会い抜き返される。
必死に逃げるパッシーニの後ろでカリオは、再び全てのブレーキングポイントで追い抜きのタイミングを図るかのような挙動を見せている。
9ラップ目のホームストレート、先頭からバウティスタ、その3秒後方から2番手のパッシーニと3番手のカリオ、さらにその5秒後方からはガデア、ファウベル、ペセックの3台が激しく前を争いながら通り過ぎて行く。ペセックの2秒後方には7番手のテロール、8番手のコルシ、9番手のルティーが続く。
カリオはパッシーニを交わし2番手に。
■後方では4番手争いも熾烈化
10ラップ目、ガデアとファウベルの4番手争いが熾烈化し、6番手のペセックは二人から徐々に離される。テロールはコルシとルティーの2台に交わされ9番手に後退し、ルティーはコルシを交わして8番手に順位を上げた。
11ラップ目、ファブリツィオ・ライはペースを維持できずに13番手まで後退。
■ルティーがコースアウト
12ラップ目、エクトル・ファウベルがセルジオ・ガデアを交わして4番手に。トーマス・ルティーはシケインで左側を走るコルシとの接触を避けてコースアウトし、13番手まで順位を下げた。
13ラップ目のホームストレート、先頭からバウティスタ、4.1秒後方に2番手のカリオ、3番手のパッシーニ、その6.2秒後方に4番手のファウベル、5番手のガデア、6番手のペセック、さらに3.7秒後方に7番手のコルシと8番手のテロールが続く。
2番手のカリオの後ろではパッシーニが0.2秒の間隔を保って追走している。
■マブーの代役がパッシーニを助ける?
14ラップ目、マラグーティのアレクシ・マブーの代役であるゲオルク・フレーリッヒが、バックマーカーとして2番手のカリオと3番手のパッシーニの前方に迫る。パッシーニはこのタイミングでカリオを交わし、2番手に順位を上げた。
15ラップ目、順位は先頭から余裕で後続を引き離して単独走行するバウティスタ、熾烈な2位争いを繰り返す2番手のパッシーニと3番手のカリオ、前を奪い合う4番手のファウベルと5番手のガデア。ガデアから2.5秒遅れて6番手にペセックが続く。
■ブレーキングで確実にカリオを抑えるパッシーニ
3番手のカリオはシケインでパッシーニのインに飛び込もうとするが、2番手のパッシーニはしっかりとインを閉めてこれを阻止。
16ラップ目、レース序盤と同様にカリオが後半のブレーキングポイントで2番手のパッシーニにプレッシャーを与え続けている。
17ラップ目、コースアウトして順位を落としていたトーマス・ルティーが、ガボール・タルマクシを交わして11番手にポジションを上げた。
18ラップ目、3番手のカリオはシケイン手前のブレーキングで完全に2番手のパッシーニに並びかけるが、最初にシケインに飛び込んだのはパッシーニ。
■再び高速セクションでパッシーニを交わすカリオ
19ラップ目、やはりブレーキングでパッシーニを交わせないカリオが、前半の高速ダウンヒルでパッシーニを交わして2番手に再浮上。3番手となったパッシーニが必死でその背後につける。
20ラップ目、先頭からバウティスタ、4.5秒後方に2番手のカリオと3番手のパッシーニ、その8.1秒後方には4番手のファウベルと5番手のガデア、その5.5秒後方に6番手のペセック、さらにその2.7秒後方に7番手のオリベ、8番手のコルシ、9番手のテロール、10番手のライ、11番手のルティー、12番手のタルマクシ。
■元MotoGPアカデミーのブラッドリー・スミスが好位置をキープ
タルマクシの1.9秒後方には13番手の地元イギリス人ルーキー、MotoGPアカデミー第一期生のブラッドリー・スミスが続いた。
パッシーニは高速区間でカリオを捕らえて2番手に。
21ラップ目、トーマス・ルティーがガボール・タルマクシを交わして10番手に浮上。
22ラップ目、4.8秒まで後続との差を広げたバウティスタが余裕の単独走行を続ける中、3番手のカリオがシケイン入り口のブレーキングで2番手のパッシーニのインを狙うが前には出られない。
■シモーネ・コルシが転倒
8番手を走行していたシモーネ・コルシは最終コーナーでマシンを左に傾けたままスライドし転倒。すぐにレースには復帰したが、14番手まで順位を落とした。
23ラップ目と24ラップ目、カリオは何度もバックストレートでの加速競争とシケイン入り口のブレーキングで2番手のパッシーニに挑むが、やはり前には出られない。
ジョアン・オリベはルーカス・ペセックを交わし6番手に。
最終ラップの25周目に先頭からバウティスタ、4.8秒後方から2番手のパッシーニ、3番手のカリオ、その11秒後方から4番手のファウベル、5番手のガデア、さらに6秒後方から6番手のオリベ、7番手のペセック、8番手のテロール、9番手のルティーが突入した。
5番手のガデアは必死に4番手のファウベルに迫るが前を奪う事は出来ない。
■最終ラップでもブレーキングでカリオを抑える2番手のパッシーニ
3番手のカリオはシケインでパッシーニに並びかけるが、最終ラップでもシケインに先に飛び込んだのは2番手のパッシーニ。続くショートストレートでパッシーニとカリオの2台はメルボルン・ヘアピンに向けて猛ダッシュ。
先にヘアピンへ飛び込んだパッシーニの背後に3番手のカリオが張り付くように連なってコーナリングをするが、やはりカリオは前に出られない。残りは最終コーナーのみだ。
■最終コーナー、激しく飛び込むパッシーニだったが・・・
最終コーナーにマシンを揺らしながらの激しいブレーキングで飛び込むパッシーニに、ほぼ追い越せない形となったミカ・カリオがやはりハードブレーキンで続く。
ここでパッシーニは最終コーナーの終わりギリギリの位置まで飛び込んでしまった。パッシーニはすぐに加速体制に入ろうとマシンをコース内側に寄せるが、そこにはすでに加速体制に入ったミカ・カリオがいた。カリオのマシンに接触して慌てて右側にマシンを戻すパッシーニ。
■バウティスタは4度目の勝利、カリオが逆転の2位獲得
マステルMVAアスパルのアルバロ・バウティスタが余裕で単独チェッカーを受けて今期4度目の優勝を決めたその頃、ミカ・カリオがコントロール・ラインに向けて猛ダッシュを行い、遅れたパッシーニがそれを必死に追っている。
2番手でチェッカーを受けたのは最後に逆転劇を見せたKTMのミカ・カリオ。両手を挙げて喜ぶカリオの後ろからは3位チェッカーを受けてうなだれるマステルMVAアスパルのマティア・パッシーニ。
パッシーニに続いて、4位のマステルMVAアスパルのエクトル・ファウベル、5位には同じくマステルMVAアスパルのセルジオ・ガデア、6位のSSMレーシングのジョアン・オリベ、7位のデルビのルーカス・ペセック、8位となった昨年度チャンピオンであるエリット・カフェラテのトーマス・ルティーがホームストレートに飛び込み順番にチェッカーを受けた。マラグーティの葛原大陽選手は26位チェッカー。
アルバロ・バウティスタは嬉しそうに、スペイン国旗をマフラーのように首に巻いてウイニングランを行っている。
パルクフェルメでは最終コーナーでの逆転2位を獲得したミカ・カリオがKTMのスタッフと談笑していたが、3位となったマティア・パッシーニが仏頂面のままカリオの背後に近づいた。
それに気がつき、笑顔が一瞬にして冷めたカリオの肩を、パッシーニは優しく数回叩いて通り過ぎた。
■各ライダーのコメント
以下にレース終了後の各ライダーのコメントを示す。
優勝)アルバロ・バウティスタ SPA マステルMVAアスパル
今回はレースウイークを通して強かったです。今日の午前のウォームアップ以外はずっとトップタイムでしたからね。
独走勝利になりましたから本当に満足です。アッセンのシケインで優勝を逃してからずっと気分的に落ち込んでいましたから、今日は最初から全力で行きました。
ここは以前に初めての表彰台と初のポイント獲得を達成した場所ですから、いい思い出のある大好きなサーキットです。今日は凄くいいペースで走れる事が分かっていましたから、できるだけ早く他のライダーを引き離しておこうと思いました。
スタートの時は少し遅れ気味でしたが、少しリスクを冒しながら他のライダーを交わして前に出ました。危うく転ぶところでしたが何とか立て直す事ができて、その後はペースを上げる事ができています。
カリオとマティアを抜いた後は、自分のリズムを保って逃げ切る事に集中しました。いくつかのコーナーで二人がついてこれないとわかり、差を広げる事もできたので、レース中はひたすらミスをしないようにだけ気をつけていました。
今年4回目の優勝が出来て本当に嬉しいです。
2位)ミカ・カリオ FIN レッドブル・KTM
もっとバウティスタに追いつけるくらい速く走る自信がありましたが、パッシーニに足止めを食らってしまいましたね。
コーナーの度に前に入られて、前をブロックされてしまいました。このバトルのせいで二人ともペースが伸びず、トップに引き離される結果になりました。
2位という結果は悪くないです。自分のバイクはレースウイーク中ずっと速かったし、感触もずっと良かったです。ただ、今回のはレースというより1対1のバトルでしたから、本当のレースだったとは言えません。
自分が気分的に嬉しくなれないのはそれが原因です。
3位)マティア・パッシーニ ITA マステルMVAアスパル
過去2戦は表彰台に乗れてなかったので、今回の結果はチームにとってはいい結果となり良かったです。
今週はバイクにいくつか問題を抱えていましたが、今日の結果については何も文句が言えないです。
レースの最初は燃料が満タンだったせいでリズムを掴むのに少し時間がかかり、速く走れるようになった時にはアルバロは既に遙か彼方でした。追いつくのは難しかったですね。
最終コーナーで2位を奪われたのは本当に惨めです。でもこれがレースですから、今週を通して強かったアルバロを祝福したいです。もちろんカリオにも祝福を送ります。
4位)エクトル・ファウベル SPA マステルMVAアスパル
1コーナーでミスをしてしまい、先頭集団について行く事ができなくなりました。みんな最初から飛ばしていたので差が広がり逃げられてしまいました。
ガデアと自分が一緒に遅れを取って、前の集団に追いつく事ができなくなったので、終盤は4位を守る事に集中しました。
ドイツでいい走りがしたいです。
5位)セルジオ・ガデア SPA マステルMVAアスパル
このレースでは表彰台に上れるくらいの成績を期待していましたし、本来であればその可能性も十分ありました。
先頭集団のペースにはとてもついて行けませんでしたので、エクトルと4位争いを続けていました。ストレートの後の最終コーナーで彼を交わすつもりでしたが、ミスをして追いつく事ができずに逃げ切られてしまいました。
ドイツではもっといい成績が取りたいです。
8位)トーマス・ルティ SWI エリット・カフェラテ
厳しいレースでした。本当に厳しかったです。
スタートが上手くいって第2集団につけましたが、低速コーナーでブレーキングミスをしてしまいました。
リアタイヤがコースを外れてしまったので、後はブレーキを離して真っ直ぐ進む以外に方法がありませんでした。4つか5つくらい順位を落としてしまい、順位を上げる為にバトルをし続ける事になりました。
3つの高速コーナーではフロントまわりにチャタリング出るという問題を抱えていてタイムをロスしましたが、ブレーキングでその分頑張りました。
今は体調が良くなり、身体はほどんど元通りに回復したと思います。あとは両手が少し曲がりにくい事だけです。
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