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ドニントン・パークと第2のホームGP
インテリマーク編集部
2006年6月28日

今週の6月30日(金)より、イギリスのドニントン・パークでMotoGPの第9戦が行われる。尚、今回の各クラスのレースは最初が250cc、次にMotoGP、最後に125ccクラスという変則的な順番で行われる。

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イギリスGPはカタルーニャGPからオフウイークなく続いている3連戦の最後に位置するだけではなく、2006年MotoGP年間シーズンの丁度真ん中、折り返し地点となるレースウイークだ。

運悪くこの3連戦は、1戦目と2戦目ともに骨折などの怪我を負うライダーが続出する事態となっており、怪我を負ったライダー達にとっては休息の期間があまり得られず苦しいシーズン中盤の戦いとなっている。

ここでは、キャメル・ヤマハチーム、リズラ・スズキチーム、フォルツナ・ホンダチーム、コニカ・ミノルタチームのドニントンに向けてのコメント、およびドニントン・パークに纏わる情報を紹介する。

■第2のホームGP

イギリスを第2のホームGPと称するライダーが多い事からも分かるように、今回の過密スケジュールの中にあっても、今週のレースがイギリスで開催される事により、多くのMotoGPライダーは移動時間をセーブしてリラックスする事ができるようだ。

写真イギリスに現在住居を構えているのは、TECH3ヤマハのカルロス・チェカ、レプソル・ホンダのダニ・ペドロサ、それにカタルーニャで左肩を脱臼したフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリと、アッセンで右手首と左足首の骨にひびが入ったバレンティーノ・ロッシの4名。

また、リズラ・スズキのジョン・ホプキンスの両親はホプキンスが生まれる直前にアメリカに移住したが、家族の親戚は今でも多くイギリスに住んでいる馴染みの土地だ。

元々はイギリスの移民国家であるアメリカやオーストラリアに住むライダーにとっても、イギリスは地元のように感じさせる土地だと言う。アメリカ人であるキャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズやレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、チーム・ロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニア、およびオーストラリア人のクリス・バーミューレンやケーシー・ストーナーにとってもリラックスできる土地だろう。

■エリソンはMotoGPバイクで初のホームGP?

TECH3ヤマハのジェームス・エリソンはBBC等のコラムに「MotoGPバイクに乗ったのは今年が初めて」と豪語する事から、彼の中では今年が初のMotoGPでのホームレースだ。

■レースの舞台

イギリスのドニントン・パークは、ダビーシャー地区の田園地帯の中にある全長4023メートルのサーキットであり、ロビンフッドの伝説で知られるシャーウッドの森のすぐ側だ。

サーキットはロンドンから200km、バーミンガムからは60kmの場所に位置し、最寄りの空港はサーキットから3km先のローカル飛行場であるイースト・ミッドランド。

■ドニントン・パークの歴史

ドニントン・パークは1931年に設立された歴史あるサーキットだ。

設立当初から数年は小規模な改修が加えられていたが、1971年にモーター・スポーツの熱狂的なファンであるトム・ウィート氏に個人的に買い取られ、1977年からは大幅に改修工事への増資が行われた。

また、サーキットが現在の形状となったのは1985年の大改修後の事だ。

■路面舗装を再び改修

日本のサーキットはヨーロッパと比較して舗装路面のグリップ力が高い事で知られているが、かつてのドニントン・パークはその対局のサーキットであり、日本人ライダーが苦手とするグリップレベルの非常に低いサーキットだった。

数年前には全面的に舗装が張り直されており、グリップレベルが若干改善された事を当時のライダーたちがコメントしていたが、今年はさらに大きな路面およびパドックまわりの改修が行われている。

昨年の10月から路面舗装およびピットとバドックには全面的な改修工事が施され、レース進行に不可欠なタイム・コントロール・センターを含むオフィスビルなども改築および新設されたようだ。

5百万ユーロ(日本円にして7億3千万円)を投じて完成した新しい施設は今年の3月からオープンしており、竣工式には往年のイギリス人GPライダーとして知られるロン・ハスラムが、ホンダのスーパーバイクに乗って初走行を披露している。

■サーキットの特徴

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全長4023メートルの円形のサーキットは、二つの異なるサーキットの特性を同時に併せ持つ。前半の区間は高速サーキットであり、残る後半はハードブレーキングを多用する低速になりがちなサーキットだ。

高速コーナーとして知られるのが、4速や5速のまま飛び込む1コーナーと、年間のGPコースの中で最高速コーナーと言われる3コーナーのクレイナー・カーブだ。また、2コーナーから4コーナー付近にかけては非常に勾配が激しく高速かつテクニカルな部分として知られている。

さらにコース後半のバックストレートのタイトなS字(シケイン)はドニントン・パークにおける最も有力な抜き所であり、MotoGPバイクで時速280kmに達するバックストレートから一気に時速60kmまで減速してクイックなS字に進入するという過激なブレーキングポイントだ。

その後はタイトなメルボルン・ヘアピン、低速の最終コーナーを抜けてホームストレートに戻る。

ドニントン・パークは、各マシンに高速コーナーの伸びとハードブレーキング性能、クイックなハンドリング特性という全ての性能を要求するメカニック泣かせのサーキットであると同時に、コース全体に散りばめられたテクニカルな要素がライダーの技量を浮き彫りにする事でも知られる。

■得意のドニントン・パークに戻ったキャメルヤマハの2名のライダー

前回のアッセンでは初日のバレンティーノ・ロッシの骨折(ひび)、およびチェッカー目前の最終シケインで転倒してコーリン・エドワーズが初優勝を逃すなど、キャメル・ヤマハチームにとっては辛い3連戦の真ん中のレースウイークを過ごしたようだ。

幸い、今週のイギリスGPはロッシとエドワーズが得意とするサーキットであり、ドニントンで勝ち続けるロッシは昨年の大雨のレースにおいてもポール・トゥー・ウインを獲得しており、エドワーズには多くの熱狂的なイギリス人ファンが毎年応援に訪れる。

ロッシは125ccクラス参戦中から現在までに7回の表彰台をイギリスGPでは獲得している。ロッシにとってドニントンは年間シーズンの中で最も相性の良いサーキットであり、本人も大変に得意なコースだとコメントしている。

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また、昨年のイギリスGPでエドワーズは2位のケニー・ロバーツと3位のアレックス・バロスに敗れて惜しくも4位となり表彰台は逃してはいるものの、ドニントンのコースレコードである1分29秒973は、2004年にエドワーズが記録したものだ。

ちなみに予選での最速レコードは2005年にバレンティーノ・ロッシが記録した1分27秒897。

■ロッシ、本当は1ヶ月休みたいが優勝にチャレンジする

バレンティーノ・ロッシにとって今年はかつて無い苦しいシーズンとなっている。シーズン序盤はマシントラブルに悩まされ、マシンが改善された直後の前回のアッセンでは骨折を負い、レース結果を8位で終える結果となった。

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アッセンで今期の初優勝を飾ったポイントリーダーのニッキー・ヘイデンからは自分のバイクナンバーである46のポイント差を再び広げられてしまったが、ロッシはリハビリ療法士と一緒に自宅のあるイギリスへ帰国し、僅か5日間のみ与えられた休息期間を最大限に活用して得意のドニントンでの勝利に向けての回復を急いでいる。

「手首の怪我を良くするにはまだ多くの事をする必要がありますね。まず腫れがひくようにして、骨はもう少し休めないとだめです。」とロッシ

「一ヶ月くらい休めればいいんですけど、自分たちはレーサーですから今週も続けてレースに出ないといけません。辛い状況ですよ。」

「とにかく可能な限り早く良くなってドニントンではちゃんとバイクに乗りたいです。完璧な状態が望めない事は間違いありませんが、まだ5日間あります。」

「コーリンはバイクの仕上がりの高さを見せつけてくれましたから、二人とも同じようにドニントンでは走りたいですね。ドニントンは第二のホームGPみたいなもんです。それにファンの皆さんにはいつも通り出来る限りの応援を期待しています。今は力に繋がる事は全て利用させてもらわなきゃいけませんからね。」

「125ccで1996年に走ってからこのサーキットは大好きなコースの一つですし、特に2001年の500ccでの勝利と過去2回のヤマハでの勝利など、いい思い出ばかりです。」

「今週の日曜日に表彰台の頂点に立つのは大変なチャレンジになるでしょうが、手首の調子がこのまま良くなり続ければ、できない事じゃないと思いますよ!」

■コーリン、ドニントンで復讐を果たす

アッセンでは初優勝を目前に転倒し、13位でレースを終えたコーリンは今でも少し落ち込んでいる様子だが、アッセンの走りでバイクの仕上がりには自信が持てたとして、今週のドニントンでは多くのコーリンファンの前で勝利を目指すという。

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もうくよくよしないとコーリンは語る。

「アッセンの事にまだ落ち込んでるのは否定できないけど、とにかくもうその事は忘れて今はドニントンに集中です。自分にとって最高と言えるコースと場所の一つですし、いつも結果も悪くありません。」とコーリン

「アッセンで起きた最後の部分は忘れて、前回のレースウイーク中にバイクが完璧だった事を考えるようにしています。安定して速く走れていたし、レース運びも最後のシケインまでは本当に良かったしね。」

「あそこまでの状況を今週のドニントンでも再現しないといけません。今回の目標は前回の復讐戦ですよ!チームとファンをがっかりさせた分の埋め合わせを何とかしたいです。」

「イギリスではいつも自分のファンが大勢駆けつけてくれますし、前回のアッセンもたくさん応援に来てくれましたので、今週もまた懲りずに応援に来て欲しいですね。」

■スズキ、ドニントンはうちのライダーとマシンにぴったり

昨年の雨のイギリスGPにおいて、スズキチームの当時のエースライダーであるケニー・ロバーツ・ジュニアが2位表彰台を獲得している。続いて今年は好調の新エースライダーであるジョン・ホプキンスが第2の故郷での初表彰台獲得を目指す。

アッセンで初のポールポジションを獲得し、肩の荷が降りたというリズラ・スズキのジョン・ホプキンスは、次の目標である初表彰台に向けて闘志を燃やしているようだ。また、冒頭での説明の通り、イギリスはホプキンスにとっては馴染みの深い土地であり、チームメイトのクリス・バーミューレンにとってもリラックスできる英語圏だ。

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また、今年からスズキチームのメインスポンサーとなったリズラはイギリスの企業であり、彼らにとっては初のホームレースとなるが、特に今回はイタリアGPで話題を集めたリズラガールズの復帰や復讐といった情報は今の所ない。

リズラ・スズキチーム監督のポール・デニングは今週のイギリスGPに向けて以下の通りコメントする。

「チームの全員がドニントンでの成功に高い期待を示しています。」とデニング監督

「あのコースはGSV-Rのシャシーやセッティング、およびうちのライダーたちに適していると思います。」

「ブリヂストンは開発を必死に進めてくれていますので、ドニントンがウェットでもドライでも、チームが他と同等の戦いをする上で必要とする全ての支援を彼らがしてくれる事は間違いありません。」

「ジョンもクリスも今週は第2のホームレースと考えているようです。彼らはサーキットに見に来る自分の家族や友人の前でいい成績を残す事を望んでいます。」

「チームとしても、ドニントンに見に来る多くのスポンサーを大歓迎しています。チームとライダーの全員が全力を尽くして最高の成績を目指していますよ。」

■メランドリにとってのホームGP、エリアスは今回も欠場

フォルツナ・ホンダチームにとってこの3連戦は、カタルーニャでのオープニングラップでの大事故に巻き込まれたマルコ・メランドリの左肩脱臼から始まり、前回のアッセン初日にはトニ・エリアスが左肩を骨折するなど、両ライダーが重傷を負うという散々な状況に見舞われている。

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幸いマルコ・メランドリは医師の検査を受けながら翌週のアッセンへの参加を果たし、見事に7位でチェッカーを受け、年間タイトルを争う上での貴重な9ポイントを獲得したが、トニ・エリアスは痛みが激しい状態にあり、怪我をしたアッセンに続き今週のドニントン・パークへの欠場も決定している。

トニ・エリアスはイギリスGPの欠場について以下のコメントを発表している。

写真「まだとても激しく痛みます。」とエリアス

「一刻も早く復帰できる事を望んでいますが、月曜日に受けた検査ではまだバイクに乗るのは早い事がわかりました。」

「ドニントンはライダーへの負担が激しく体力を消耗し易いサーキットですが、それに関係なく骨折(ひび)はまだ安静にする必要があり、今は体調を100%万全に整えなければなりません。」

「本当に残念ですが、できる限り早くレースに戻れる事を願っています。」

マルコ・メランドリはアッセンの後はイギリスの自宅に戻っており、カタルーニャから病院を経由してアッセンTTに出場した事で疲れ切った身体を休めているが、第2のホームGPに向けての意気込みは相変わらず高いようだ。

写真「バルセロナからはどたばたと過ごしましたので、2〜3日は身体を伸ばして休息したいです。」とメランドリ

「病院からアッセンに飛んで、医療検査を受けて、すぐにレースでしたからね。今はやっと落ち着いて少しずつ普段の生活ペースに戻しています。」

「ドニントンはライダーにとって挑戦しがいのある大好きなサーキットですから、日曜日までには体調がもっと回復して体力が戻ればいいですね。テクニカルですし、最初の第1区間と第2区間は凄く高速です。コース終盤は少し低速ですが。」

「腕に負担のかかるのが特徴ですね。クイックな方向転換も多いので自分の体調を確認するような感じになりそうです。アッセンでは方向転換とハードブレーキングに一苦労でした。」

■スポンサーに感謝するコニカミノルタ・ホンダチーム

ヨーロッパラウンド前には期待に満ちた発言が目立ち、それ以降は非常に厳しい発言が多くなったコニカミノルタ・チームだが、シーズンの折り返し地点となるイギリスGPを前にしてチームの首脳陣はスポンサーへの感謝の言葉を表明している。

コニカミノルタ・ホンダチームの責任者であるジャンルカ・モンティロンは以下の通りコメントした。

「もう日曜日のアッセンのレースの事は忘れました。今は次のドニントンに向けて既に集中しています。」とモンティロン

「チームはいつも、現在までにマシンのテクニカル・パッケージの優位な性能をフルに使い切れていないライダーを支援しています。」

「彼はイギリスのサーキットを好んだ事は一度もありません。しかし今年はマコトにとって初となる上海でもいい成績を納めていますので、レース結果の予想はしない事にしますが、シーズンを通して結果的に何らかの成果が得られる事は期待しています。」

「コニカミノルタとホンダが今でも私たちを信頼して下さる事に感謝を申し上げます。」

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シーズン序盤に比べ、徐々にレースウイーク中のフリー走行では調子を挽回しつつある玉田誠選手だが、予選と決勝での成績には過去数戦も苦しんでいる。イギリスではプラクティス中とレースの両方で一貫した走りを見せたいと玉田選手は語る。

「ドニントンにはあまりいい記憶がありません。」と玉田選手

「ここでの最高位は去年の大洪水のレースでの7位です。あんな路面状況は以前に経験した事がありませんでした。あの周辺の気象状況は不安定ですが、それがレース結果に影響しやすいですね。」

「ここまでに成績は上がっていませんし、先日のアッセンも悪い思い出になりましたが、それでも自分のRC211Vのフィーリングはとても良くなってきています。ここからはプラクティスとレース中に一貫した走りをしなければいけないと思います。」

「イギリスでは激しく戦って大きく前進できるようにしたいです。」


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