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オランダGP250cc決勝 日本勢全員を巻き込んだ1ラップ目の災難 |
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2006年6月28日
6月24日(土)、オランダのアッセン・サーキットで2006年MotoGPシーズン第8戦目の250ccクラス決勝レースが行われた。
この日のレースは各クラスともダッチ・ウェザーと呼ばれる不安定な天候に悩まされる事なくドライ・セッションに恵まれた。250ccクラス決勝時の気温は22度、路面温度は25度となり湿度は16%だった。
プレシーズンテストから開幕2戦目まではアプリリア勢が圧勝的優位に立つと思われた今年の250ccクラスだが、第3戦目のトルコGPで年間タイトル候補の筆頭だったフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソが転倒ノー・ポイントに終わって以来、勝運の流れはカタルーニャGP終了時におけるランキング1位のアンドレア・ドヴィツィオーゾと、ランキング3位の高橋裕紀選手が所属するヒューマンゲスト・ホンダチームへと向かった。
■勢いに乗るヒューマンゲスト・ホンダチーム
アンドレア・ドヴィツィオーゾは前戦カタルーニャで念願の初優勝を果たし、開幕から連続して7つの表彰台を獲得している。これは96年のマックス・ビアッジの持つ250ccクラスの開幕からの連続表彰台記録に並ぶ快挙だ。
また、チームメイトの高橋選手は今期第5戦のフランスGPにおいて、05年のGPフル参戦から初となる表彰台を優勝で飾り世界の注目を集めた。
■活躍する2006年の日本勢
さらに今年の250ccは日本勢が全体的に好調だ。
今期は250ccへの参戦経験や実績のまだ少ないメーカーであるKTMに移籍し、マシンの開発も担当しながら、トルコGPではドライレースで初の優勝をKTMにもたらした青山博一選手、今年から初のGPフル参戦を果たし、兄の博一選手とのデッドヒートを制して参戦第5戦目のフランスでいきなり3位表彰台を獲得したレプソル・ホンダ250ccチームのルーキーである青山周平選手など、今年の日本勢は話題性のみならず成績も高い。
GP3年目の青山博一選手、2年目の高橋選手、1年目の青山周平選手の今期の表彰台獲得回数を合計すると、優勝を2回(博一選手、高橋選手)と3位を2回(博一選手、周平選手)の合計4回となる。
また、開幕戦のヘレスで残念ながら昨年に引き続き大怪我を負って休場中のカンペテーラ・チームの関口太郎選手もシーズン後半にはレースへの復帰が予想されており、強い4人の日本人ライダーが顔を揃える筈だ。
■復調し、タイトル争いに執念を燃やすロレンソ
このまま残りのシーズンも今の勢いを加速し続けたいヒューマンゲスト・チームだが、ここに来てフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソも復調の兆しを見せている。
第3戦トルコGPのオープニングラップ1コーナーで予選順位を挽回しようと加速中だった青山周平選手に運悪く追突される形となり、二人揃ってリタイア、ノーポイントに終わってからというもの、運に見放されたようにホルヘ・ロレンソは表彰台から遠ざかっていた。
しかしながら、第6戦のイタリアGPでは優勝、前回の第7戦のカタルーニャでは2位表彰台を獲得し、第7戦終了時点でポイントリーダーのアンドレア・ドヴィツィオーゾと25ポイント差のランキング2位まで成績を挽回している。
孤高のマックスビアッジを敬愛し、「ドヴィツィオーゾは偉大なライダーだが、まだ自分にチャンスはある」とコメントするロレンソが、シーズン中盤からどこまで序盤の勢いを取り戻すかにも、今後の注目が集まりそうだ。
■エクトル・バルベラは次戦のイギリスから復帰
前回のカタルーニャGP直前に右腕を骨折し、今回のアッセンも引き続き欠場したフォルツナ・アプリリアのエクトル・バルベラだが、フォルツナ・アプリリアの公式発表によれば、アッセンの次のイギリス、ドニントンパークからの復帰が6月26日に決定した。
また、バルベラの復帰により、当初代役としてのイギリスGP出場が決定していたアレックス・デボンのドニントン・パークへの出場はない。
■スターティング・グリッド
1列目ポールポジションを獲得したのはポイントリーダーへの返り咲きを狙うフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソ、2番グリッドはマステルMVAアスパルチームのアレックス・デ・アンジェリス、3番グリッドにはランキングトップを行くヒューマンゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾ、4番グリッドにはレプソル・ホンダのルーキーである青山周平選手。
2列目5番グリッドはヒューマンゲスト・ホンダの高橋裕紀選手、6番グリッドはジレラの250ccルーキーであるマルコ・シモンチェリ、7番グリッドはMotoGPクラスのTECH3ヤマハチームの開発ライダーも務めるエキップGP・ド・フランスのシルバン・ギュントーリ、8番グリッドにはチームトースのベテランであるロベルト・ロカテリがつけた。
3列目9番グリッドは右腕を骨折して欠場中のエクトル・バルベラに代わり、2戦連続して代役を務めるフォルツナ・アプリリアの開発ライダーであるアレックス・デボン。KTMの青山博一選手は10番グリッドからのスタート。
■セバスチャン・ポルトの後任と、その後任ライダー
今回からカタルーニャで電撃引退したセバスチャン・ポルトに代わり、元ウルト・ホンダBQRのマルティン・カルデナスがレプソル・ホンダに移籍しての参戦を開始している。カルデナスは12番グリッドスタート。
また、ウルト・ホンダBQRのカルデナスの後任には、同チームの125ccライダーとして今期を戦っていたアレイックス・エスパルガロがステップアップし、今回からウルト・ホンダBQRの250ccライダーとして出場している。
■レース開始直後、日本勢が全員グラベルに
シグナルが消え、各ライダーが今年より改修されて新しくなった1コーナーと2コーナーに向かう。ホールショットを奪ったのはポールポジションからの好スタートを決めたホルヘ・ロレンソ。ロレンソの横には好スタートを決めた青山周平選手が続く等、日本勢も好位置をキープして1コーナーに飛び込む。
ここで1コーナーから繋がるノース・ループの出口附近でアクシデントが発生する。レプソル・ホンダのライダーとして初めて出場したマルティン・カルデナスを含む5台のマシンが次々と絡み合って転倒し、その前にコースを外れた高橋裕紀選手、絡み合うマシンを避ける形で青山博一選手と青山周平選手がコース右側のグラベルに直行。
■ポルトの後任ライダーはいきなりオープニングで骨折
ポルトの後任ライダーのカルデナスはここで左の鎖骨を骨折し、あえなくリタイヤした。カルデナスは「前のライダーたちが4コーナー付近で混乱して急にブレーキをかけたので、それを避けようとして減速したら転倒した。自分は誰にもぶつからなかった。」とコメントしている。
3人の日本勢はすぐにコースに復帰したが、高橋選手は12位、青山博一選手は22位、周平選手は23位まで順位を落としてしまう。
砂煙の舞うノースループから順調に遠ざかるのは先頭からフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソ、2番手にチーム・トースのロベルト・ロカテリ、3番手にヒューマンゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾ、4番手にマステルMVAアスパルのアレックス・デ・アンジェリス、5番手にキーファー・ボス・レーシングのアンソニー・ウェスト、6番手にフォルツナ・アプリリアのアレックス・デボン、7番手に今回125ccからステップアップを果たしたウルトホンダ・BQRのアレイックス・エスパルガロ、8番手はそのチームメイトのアルトゥロ・ティソン。
9番手には関口太郎選手の代役であるカンペテーラのフランコ・バッタイニが続いた。
2ラップ目、抜き所が少なくなったアッセンサーキットで長い列となったライダーを先頭で率いるのは変わらずホルヘ・ロレンソ。序盤からロレンソは後続を引き離そうと猛ダッシュをかけている。
■トップで悠々と加速するロレンソと迫るデ・アンジェリス
3ラップ目、ロレンソが2番手のデ・アンジェリスとドヴィツィオーゾを1秒引き離し、さらにその2秒後方にはロベルト・ロカテリが走行している。
4ラップ目、トップのロレンソから12.5秒遅れて高橋選手は11番手、青山博一選手は15番手、周平選手は20番手まで順位を挽回。
5ラップ目、先頭を行くロレンソ、デ・アンジェリス、ドヴィツィオーゾは0.5秒間隔で均等に並び、高橋選手は8番手までポジションを上げた。
3番手のドヴィツィオーゾが先頭のアプリリア2台に時々離されかけている。
6ラップ目、先頭からロレンソ、2番手にデ・アンジェリス、3番手にドヴィツィオーゾ、その6秒後方に4番手のロベルト・ロカテリ、さらに2秒後方に5番手のアレックス・デボン。デボンの1秒後方には6番手のアンソニー・ウェスト、その4秒後方には7番手のマルコ・シモンチェリ、さらに0.7秒後方には8番手の高橋選手が続く。
7ラップ目、博一選手は14番手、周平選手は17番手に。トップ集団は殆ど順位が変わる事なく1列に続いていく。
■再びデ・アンジェリスを引き離すロレンソ
10ラップ目までに、ロレンソが再び2番手のデ・アンジェリスとの差を1秒まで広げ、3番手のドヴィツィオーゾもデ・アンジェリスから1秒ほど後退。
11ラップ目に入ると先頭の3台は均等に1秒間隔差となり、徐々にロレンソがデ・アンジェリスを引き離し始めると、追いかけたいドヴィツィオーゾが2番手のデ・アンジェリスに迫る。
■高橋選手に抜かれたシモンチェリ
ここでジレラのシモンチェリから前を奪った高橋選手が7番手に浮上しているが、背後には8番手となったシモンチェリが粘着走行で食い下がる。後方ではKTMの青山博一が9位に浮上。
13ラップ目から15ラップ目にかけて、先頭のロレンソはデ・アンジェリスとの差を3.0秒、3.7秒、4.6秒と順調に広げ、16ラップ目にはデ・アンジェリスとの差を5.2秒まで引き離して独走態勢に入った。
2番手のデ・アンジェリスと3番手のドヴィツィオーゾの14秒後方では4番手のデボンを捕らえようとロカテリが猛ダッシュを続けている。さらにその後方の6位争いはアンソニー・ウェスト、高橋選手、マルコ・シモンチェリの3台体制となり、シモンチェリは変わらず高橋選手の背後からプレッシャーをかけ続ける。
青山博一選手は安定して単独9番手を維持。
■またシモンチェリが高橋選手の前に
16ラップ目、シモンチェリは高橋選手を交わして7番手、青山周平選手は12番手まで浮上した。
18ラップ目、アンソニー・ウェストがシモンチェリと高橋選手との6位争いから取り残されて遅れ始める。
20ラップ目、先頭からロレンソ、その5.8秒後方に2番手のデ・アンジェリスと0.5秒の差が縮められない3番手のドヴィツィオーゾが続く。
■単独走行でも力を緩めないロレンソ
ロレンソは単独走行に入ってもペースを落とすことなくプッシュを続け、デ・アンジェリスとの差はさらに広がっていく。
ラスト2周の23ラップ目、トップのロレンソとデ・アンジェリスとの差は8.4秒まで広がった。デ・アンジェリスとの差を縮められない3番手のドヴィツィオーゾの20秒後方には4番手単独走行のアレックス・デボン、その2.8秒後方には5番手のロベルト・ロカテリ。
■諦めない高橋選手とシモンチェリと
ロカテリの6秒後方では6番手のシモンチェリと7番手の高橋選手がいつまでも前を争い続けている。
■突然優位性を失い焦るデ・アンジェリス
コース中盤に入り、2位集団のデ・アンジェリスとドヴィツィオーゾの前方にはバックマーカーが数名迫る。2台がこれを交わした時にはデ・アンジェリスとドヴィツィオーゾの差が完全に消え、焦ったデ・アンジェリスは必死の猛加速で逃げようとすると、ドヴィツィオーゾがこれを追い上げる。
デ・アンジェリスは必死で逃げ続ける。
■上位の順位はそのまま、ロレンソは余裕の勝利
最終ラップ、最後まで力を抜く事なく走りきったフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソが開幕戦を思わせる独走を見せ、最終シケインを抜けて余裕の今期4度目の勝利を挙げた。
2位は最後まで逃げ切ったマステルMVAアスパルのアレックス・デ・アンジェリス。3位は最後の追い上げが届かず0.073秒で開幕からの今期8回目の連続表彰台を獲得したヒューマンゲスト・ホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾ。
■まだ勝負がついてなかった高橋選手とシモンチェリ
フォルツナ・アプリリアのアレックス・デボンが単独4位でチェッカーを受ける後方では、マルコ・シモンチェリと高橋選手が最終シケインでもまだインを奪い合っている。この6位争いを制したのはヒューマンゲスト・ホンダの高橋裕紀選手。ジレラのマルコ・シモンチェリは0.057秒差の悔しい7位チェッカーを受けた。
KTMの青山博一選手は9位でコントロールラインを抜け、レプソル・ホンダの青山周平選手は12位でオランダGPを終えた。
■今後の心理戦に向けて価値ある勝利を手にしたロレンソ
ロレンソは開幕戦でのウイニングランと同様にマシンを離れて観客席に駆け寄るが、今回はオフィシャルがマシンを支えている。再びコースに戻って走り始めるロレンソの側にはエクトル・バルベラの代役ライダーであるアプリリア開発ライダーのアレックス・デボンが近づき、互いにたたき合って今回の勝利を祝った。
ロレンソはこの優勝により、ランキングトップのドヴィツィオーゾに16ポイント差まで迫る事となり、今シーズンを戦う上で心理的に重要な戦いを制した。
■各ライダーのコメント
以下にレース終了後の各ライダーのコメントを示す。
優勝)ホルヘ・ロレンソ SPA フォルツナ・アプリリア
今回はレースウイークを通してライバルたちよりも優れていました。
ここではライバルたちより抜きんでてる事は知っていましたが、レース以外にそれを証明する手段はありませんからね。
スタートで後続を引き離すのに成功して、そのままストレートで全開にしようと思いましたが、まだタイヤが新しかったのでそれは無理でした。
タイヤが減り始めてからは常に同じペースを保ち、デ・アンジェリスとドヴィツィオーゾを引き離す事に成功しました。
今回は今シーズンで一番楽しめましたね。この勝利を自分が親しくしているダニとマルコスに捧げます。
まだシーズンの戦いを半分終えたに過ぎません。トップとの16ポイント差を埋められる事は確実です。
自分たちはこの流れのまま焦る事なく進み続けますし、トップとの差を奪うチャンスを決して逃さないという心構えが必要です。
2位)アレックス・デ・アンジェリス RSM マステルMVAアスパル
全体のペースがとても速くて難しいレースでしたが、ドヴィツィオーゾとの凄い戦いを制して2位表彰台を獲得しました。コースの新しくなった部分が難しくて苦しみましたね。
終盤にバックマーカー2人のグループに殆ど押し出される形になってドヴィツィオーゾとの差がなくなりましたが、その災難以後は何も問題なく走れて、残りは最終コーナーのみになりました。
最後にミスだけはしない事を考えてコーナーを抜けたら、結果的にドヴィツィオーゾを引き離す事ができたんです。
ポイントランキングも挽回しましたから、この結果を目指して頑張ってくれたチームの為にも良かったです。この調子になるのをずっと待っていました。
3位)アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA ヒューマンゲスト・ホンダ
もし表彰台の別の位置に立ってても今日は嬉しくなかったと思います。
今回は仕上がりのレベルでロレンソに負けている事は分かってましたが、ここまでの差が開く程の違いじゃありませんでした。今日はロレンソが最高の走りをしていましたので、彼を祝福したいと思います。
ここではバイクのセッティングが完璧ではありませんでしたし、加速はアプリリアに負けていました。
最終ラップでは最初からデ・アンジェリスの後ろについて行くつもりでした。スピードが完全にこっちのマシンより速いので、抜いた所で簡単にコースの終盤で前に出られてしまいますからね。
だから最終コーナーで抜こうとしたんですが、それまでに差が開きすぎてました。
いずれにしろ3位は年間ランキングを考える上では悪くありません。来週はホンダと相性のいいドニントン・パークですしね。
6位)高橋裕紀 JPN ヒューマンゲスト・ホンダ
オープニングラップ最初の衝突でタイムを大幅にロスしたのが残念です。
デ・アンジェリスと接触して、青山君がブレーキレバーに当たり、その後は同じように騒ぎに巻き込まれていたギュントーリを避ける為に大きく回り込みました。
14位でコースに戻ったあとはいいリズムが掴めましたが、先頭集団との差は広がりすぎていました。
写真判定でシモンチェリより前の6位でフィニッシュができたので、年間ランキングの点では良かったですね。
9位)青山博一 JPN レッドブル・KTM
スタートは良かったんですが、その直後に変な状況に巻き込まれました。
一人が狂ったように無茶なつっこみをしてライダーを2〜3人道連れにしたんです。もう草の上に逃げるしかなかったんですが、滑ってきたバイクに当てられました。
今回はそこで順位を大幅に落としてしまいましたね。
今日はバイクの調子が最高だったので悲しくなりますよ。
12位)青山周平 JPN レプソル・ホンダ
スタートはうまくいったのに1ラップ目で誰かが後ろから接触したんです。左側から押される形でコースの外に出されました。
コースに戻ったら今度は自分の前を走っていた他のライダーが右側で転倒したので、またコースから外れる事になりました。
接触したり転んだりしてる間に先頭グループは遠くに逃げてしまい、1ラップ目でかなりポジションを後退してしまいました。後は順位を挽回していく事だけになり、残りのレースはずっとそれだけでした。
イギリスはもう少し運に恵まれたいですね。もうアッセンの事は忘れました。
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