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125cc ルティーの復活とバウティスタの失望
インテリマーク編集部記事
2006年5月23日

5月21日、三度天気予報は外れ、ドライセッションでのMotoGP125cc決勝がフランスのルマン・ブガッティ・サーキットで行われた。

午前中の雨の跡が残るコースのスターティング・グリッドには、天候状況を心配してカットスリックを履くバイクや、路面が乾き続ける事を信じてスリックタイヤを選択したチームのバイクが並ぶ。



雲の合間から陽射しが覗く午前最初のレース開始時の気温と路面温度は共に16度、湿度は55%。

開幕から2連勝を果たしたアルバロ・バウティスタが所属するマステルMVAアスパルチームを始めとするアプリリア勢が圧倒的な強さを見せ付ける06年シーズンの125ccクラスだが、ここに来て徐々に対抗メーカーもマシンの仕上がりを増してきている。

第4戦の中国GPではKTMのミカ・カリオが優勝を奪うと同時に、デルビのルーカス・ペセックならびにヒューマンゲスト・ホンダのガボール・タルマクシ、ミカ・カリオのチームメイトのフリアン・シモンが好調な走りを見せるなど、中盤戦に向けての各メーカーの巻き返しが注目される。

■スターティング・グリッド

予選初日は以前の勢力を弱めたかのように見えたマステルMVAアスパルチームだが、2日目の最終予選ではフランスでも2名のアスパルライダーがトップに食い込んだ。

1列目ポールポジションは予選最後にチームメイトを交わして1番手タイムを刻んだマステルMVAアスパルチーム(アプリリア)のマティア・パッシーニ2番グリッドにはそのチームメイトで開幕2連勝を果たし、今シーズンは全レースで表彰台を獲得しているランキングトップのアルバロ・バウティスタ3番グリッドは好調デルビのルーカス・ペセック4番グリッドには中国GPからマシンの仕上がりに自信を持ったヒューマンゲスト・ホンダのガボール・タルマクシが並ぶ。

2列目5番グリッドはスキルドI.S.P.A(アプリリア)のロレンソ・サネティ、6番グリッドには中国GPを今期初優勝で飾ったKTMのミカ・カリオ、7番グリッドにはマルチメディア・レーシング(アプリリア)のパブロ・ニエト、8番グリッドにはバルジール・セードルフ・レーシング(ホンダ)のファブリツィオ・ライが続いた。

今期は全く調子の上がらないエリット・カフェラテ(ホンダ)に所属する前年度チャンピオンのトーマス・ルティーは中国GPから復調の兆しを見せ、今回のフランスGPでは9番グリッド、開幕戦で左足首を骨折し、現在も治療中のマラグーティ小山知良選手は予選で揮わず19番グリッドからのスタートとなった。

■決勝、ポールシッターのパッシーニがいきなり転倒

オープニングラップ、ワイルドカードの1名を含む4名が1コーナー奥の第一シケインで転倒する中、最初にチャペルコーナーに向かったのは先頭からファブリツィオ・ライ、ミカ・カリオ、ルーカス・ペセック。後続のライダーは群れをなして3台に続く。



1周目の後半、ポールポジションスタートのマティア・パッシーニがハイサイドを起こし転倒。そのマシンのすぐ後ろ9番手付近を走行していたロレンソ・サネティがそれに追突し、パッシーニのマシンとサネティーが宙を舞った。

危うく二人のマシンとの追突をさけたエリット・カフェラテのトーマス・ルティーが先頭集団を追って行く。

■ペセックがマシンを大破、先頭集団に追いつくルティー

2周目、3番手を走行していたデルビのルーカス・ペセックが転倒し、マシンは高速回転しながら宙を舞い大破。ペセックは残念なリタイアとなった。



4周目まで先頭集団はファブリツィオ・ライとミカ・カリオ。二人の2.5秒後方には一気に3番手まで追い上げたトーマス・ルティー、その0.5秒後方にはランキングトップのアルバロ・バウティスタが続く。

バウティスタの2.5秒後方ではガボール・タルマクシ、フリアン・シモン、ラファエレ・デ・ロサがポジションを争っている。

■レースをリードするファブリツィオ・ライとミカ・カリオ

5周目に入るとカリオがライを交わし先頭に出るが、次のコーナーですぐにライが先頭を奪い返し再びトップを走行する。二人が先頭を争う2秒後方ではトーマス・ルティーとバウティスタが3番手を奪い合っている。



7周目、ディフェンディング・チャンピオンのトーマス・ルティーがバウティスタを交わしトップを行くミカ・カリオとファブリツィオ・ライの0.6秒後方まで迫った。

ミカ・カリオはついにファブリツィオ・ライを交わし先頭に立つ。

■バウティスタがトップに追いつき先頭集団は4名に

8周目、ルティーに続きバウティスタもペースを上げて先頭集団に追いつき、先頭グループは順にカリオ、ライ、ルティー、バウティスタの4台体制となる。

9周目、ペースをキープできなくなったファブリツィオ・ライが後退し、先頭集団はトップにカリオ、2番手にルティー、3番手にバウティスタ、4番手にライの順に並んだ。

先頭の4人は団子状態になり前を激しく争い、10周目にはライがバウティスタを交わして3番手に浮上。



11周目、ルティーが昨年優勝を争ったミカ・カリオを交わしてトップに立つと、バウティスタはコーナー外側から前輪を浮かせながらライを捕らえ、再び3番手に浮上した。

■トップに立ち逃げの体制に入るルティー

12周目、エリット・カフェラテのトーマス・ルティーはファーステストを記録しながら2番手のミカ・カリオを引き離しにかかる。追いすがるKTMのオレンジのマシン。

4番手のライは必死にコーナーごとに3番手のバウティスタのマシンの前に割り込もうとするが、バウティスタはこれを全てブロック。ライは思うように前には出れない。

14周目の高速1コーナー、明らかにトップスピードの劣るバウティスタのマシンをファブリツィオ・ライが交わして3番手に浮上。バウティスタは4番手に後退した。

■ファブリツィオ・ライが先頭集団から脱落、後退するカリオ

ライはそのままミカ・カリオのマシンも交わそうとするが、勢い余ってコースアウトしてしまう。慌ててライはコースに戻るが先頭の3台から大きく引き離されて4番手を走行。



15周目、先頭集団は3台となり、ルティーが2番手走行中のミカ・カリオの1秒先を走行している。カット・スリックを選択したミカ・カリオのマシンは路面が乾く中、徐々にペースが伸びなくなる。カリオの背後ではバウティスタがミカ・カリオのマシンの挙動を窺う。



バウティスタはミカ・カリオを交わし2番手に浮上。

16週目、エリート・カフェラテのトーマス・ルティー、マステルMVAアスパルのアウバロ・バウティスタ、KTMのミカ・カリオがそれぞれ1.3秒の間隔を空けて先頭集団を形成。バウティスタの2.5秒後方にはファブリツィオ・ライ、さらに7秒後方にはラファエレ・デ・ロサ、ジョアン・オリベ、パブロ・ニエト、アンドレア・イアンノーネが続く。

■トップ争いは前年度チャンプと今年度ランキングトップ

18周目に入ると2番手のアルバロ・バウティスタがトーマス・ルティーに追いつき前を窺っている。ミカ・カリオは二人から1秒後ろを走行。



19周目、ストレートで全くスピードの伸びないバウティスタが高速1コーナーの中盤ではルティーから差を広げられるが、第一シケインで隙間を詰める。シケイン奥で完全にルティーとバウティスタは並ぶが、バウティスタはややオーバーラン気味となり、ルティーがトップでシケイン出口を抜けた。

20周目以降、バウティスタはルティーに密着して走行を続け、3番手のミカ・カリオは全く先頭2台のペースにはついて行けず4.5秒後方に下がる。

■巧みなライディングでトップに踊り出るバウティスタ

22周目、ストレートでルティーに離されたバウティスタがチャペルコーナーのブレーキングでルティーを捕らえトップに踊り出た。ルティーは先頭を奪い返すべくバウティスタを追走する。



最終コーナー手前でトーマス・ルティーが先頭のバウティスタのマシンに並ぶが、直後にインを完璧に閉ざしたバウティスタの前にルティーは出る事が出来ない。最終ラップまでバウティスタはスピードの伸びないマシンを巧みに操りルティーを全てのコーナーで抑える。

先頭2台の熾烈なトップ争いの2秒後方にはミカ・カリオが走行している。

■ファイナルラップ、勝利目前のバウティスタだが・・・

ついにトップ争いは最終ラップに持ち込まれた。1コーナーでストレートの勝る前年度チャンピオンのルティーが現在ランキングトップのバウティスタに仕掛けるがバウティスタはこれを第一シケインで抑える。

バウティスタがルティーを最後まで抑えるかに見えたコース中盤、突然バウティスタのマシンが失速し、追突ぎりぎりで真横をルティーが通りすぎる。

バウティスタのマシンはメカニカル・トラブルにより全く加速しなくなった。



先頭に立ったルティーのマシンがバウティスタのマシンを後方に追いやり、やがて3番手を走行していたミカ・カリオも失速中のバウティスタのマシンを交わし2番手に浮上。

エリット・カフェラテのトーマス・ルティーは最終コーナーを単独で悠々と曲がり、今期初の優勝と表彰台を手にした。2位でチェッカーを受けたのはKTMのミカ・カリオだ。

最終コーナーを惰性で進むかのようにゆっくりと通過しながらコントロールラインに向かう落胆したバウティスタの横を「いいのかい?」と言わんばかりに振り返りながら、気の毒そうに3位チェッカーを受けたのはバルジール・セードルフ・レーシングのファブリツィオ・ライ

■失意のアルバロ・バウティスタ

マステルMVAアスパルのアルバロ・バウティスタは、終盤の追い上げも空しく失意の中で4位チェッカーを受けた。

マラグーティの小山知良選手13位まで順位を挽回してチェッカーを受け、開幕から連続してのポイントを獲得している。

トーマス・ルティーの今期復活とも言える優勝に沸くホンダ陣営の横では、開幕以後、優勝2回と連続表彰台を達成していたバウティスタががっくりと肩を落としていた。



■各ライダーのコメント

以下にレース終了後の各ライダーのコメントを紹介する。

優勝)トーマス・ルティ SUI エリット・カフェラテ

スターティング・グリッドに立った時はまだ路面の所々が湿った感じでしたが、気温も暖かくなってきたのでスリックタイヤを選択しました。

オープニングは滑りっぱなしで、かなりリスクがありましたね。路面が乾いてからは先頭に出れて、後続集団との差も広がりました。

終盤はバウティスタに捕まってしまい彼を追いかける事になりましたが、最終ラップでは抜き返す作戦を立てていました。でも突然彼のバイクが止まってしまったので、自分にとっては楽な勝利になりましたね。

表彰台のトップに戻ってこれて最高です。この結果を可能にしてくれたチームに御礼が言いたいです。

2位)ミカ・カリオ FIN レッドブル・KTM

今日はタイヤの選択に失敗してしまい、レース中盤に路面が乾いてからはルティーとバウティスタのペースについて行けなくなってしまいました。



その時に後方との差が十分にある事に気がつき、表彰台は大丈夫だと思いました。ルマンで2位が取れるなんて自分には優勝に等しい事です。

3位)ファブリツィオ・ライ ITA バルジール・セードルフ

ここ何ヶ月も自分を信じて頑張ってくれたチームに今回の表彰台を捧げたいです。もっといい成績が取れると思ってましたが、途中でミスをして先頭集団を逃してしまいました。

路面状況を考えてタイヤにはインターミディエットを選びました。ハードブレーキングをしながらトップについて行こうと頑張りましたが、一箇所でプッシュしすぎたのがミスの原因です。

結果には満足しています。

4位)アルバロ・バウティスタ SPA マステル‐MVA・アスパル

路面状況が怪しかったのでタイヤの選択に迷いましたが、結局スリックを選びました。天気はそのまま回復したので運が良かったと思います。

レース中にバイクの調子が100%にならなくて、1コーナーでは他のバイクの方が確実に速かったですね。でも最後の3ラップまでには何台か交わしてトップに立つ事ができたのですが、運悪く最終ラップでエンジンが止まってしまいました。

なんとか4位には入れたので少しポイントを失うだけで済みましたが、勝てるレースだと思ってたので本当にがっかりです。

今はもう次回のムジェロの事だけを考えています。アプリリアのホームレースですからね。

13位)小山知良 JPN マラグーティ・アジョ・コルセ

(写真提供:motogp.com)

今日はエンジンもサスペンションの調子も含めてバイクは好調でしたが、最後にミスをして集団の中でポジションをあげる事が出来ませんでした。


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