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250cc 高橋選手、念願叶いフランスGPを制して堂々の初勝利 |
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2006年5月23日
5月21日、フランスのルマン・ブガッティ・サーキットにて、MotoGP250ccクラスの決勝が行われた。当初の天気予報ではレースウイーク中の全てのセッションが雨になる事が予想されたが、幸い最終予選や当日の決勝レースを含む殆どのセッションがドライ宣言の中で行われている。
この日最初に行われた125ccクラスの決勝では、まだ午前中の雨の為に路面が一部湿っており、一部のライダーはタイヤにカットスリック等を選択していたが、250ccクラス決勝開始時点の路面はほぼ完全に乾いており、全てのライダーがスリックタイヤを選択している。
レース開始時点の気温は18度、路面温度は午前のウォームアップセッションよりも5度高い19度となった。湿度は39%となり、決勝レース中に雨が降り出すような気配は全くない。
■スターティンググリッド
今期序盤は圧倒的な強さを見せるフォルツナ・アプリリア勢だが、今回の予選結果ではヒューマンゲスト・ホンダ、および日本人勢が上位グリッドに食い込んでいる。
1列目ポールポジションは、現在ポイントランキングトップであるヒューマンゲストホンダのアンドレア・ドヴィツィオーゾ。クレバーな走りで知られるドヴィツィオーゾは、開幕当初から連続して表彰台を獲得しながらも、あと一歩のところで優勝を逃している。
2番グリッドにはマステルMVAアスパルチーム(アプリリア)のアレックス・デ・アンジェリス、3番グリッドは中国GPにて自身の250cc初優勝を飾ったフォルツナ・アプリリアのエクトル・バルベラ。
1列目最後、4番グリッドにはドヴィツィオーゾのチームメイトの高橋裕紀選手。GPフル参戦以後は一度も表彰台を獲得できていない高橋選手だが、参戦2年目となる今年は今回のルマンを含む予選ではフロントローを4回、決勝では4位を1回、5位を2回獲得している。
2列目5番グリッドにはレプソル・ホンダチームのルーキー、青山周平選手、6番グリッドには今期から急激に調子を伸ばしているカルディオンABモーターのヤコブ・シュムルツ、7番グリッドには周平選手の兄であり、トルコGPではKTMに250cc初の優勝をもたらした青山博一選手が続く。開幕2連勝を果たしたホルヘ・ロレンソは今回予選での転倒が目立ち、2列目最後の8番グリッドからのスタートとなった。
■序盤からレースをリードするヒューマンゲストの2名
シグナルが消え、好スタートを決めたのはヒューマンゲストホンダの2名、ドヴィツィオーゾと高橋選手。高速右カーブの1コーナーから各ライダーが一斉に列をなして第一シケインに飛び込んだが、ここでカンペテーラのチャズ・デイビスを始めとする後続の3台が転倒してグラベルに飛び込みリタイア。
シケインをトップで飛び出して来たのはヒューマンゲストの高橋選手、続いてドヴィツィオーゾ、9番グリッドスタートからスタートしたチーム・トースのロベルト・ロカテリ、周平選手、博一選手、デ・アンジェリス、ロレンソ、ジレラのルーキーであるマルコ・シモンチェリ、ヤコブ・シュムルツ、フォルツナ・アプリリアのエクトル・バルベラの順で次々とチャペルコーナーに向かう。
■ドヴィツィオーゾが高橋選手を交わしてレースをリード
2周目、ドヴィツィオーゾは高橋選手をパスしトップでコントロールラインを抜ける。その後ろでは、3位を走行するKTMの博一選手と4番手まで順位を上げたフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソ、およびチームトースのロカテリが前を争っている。ロレンソは博一選手の前に。
■慎重に順位を上げる2名の青山選手
3周目、1コーナーで周平選手は博一選手を交わそうとするが抑えられる。先頭を行くヒューマンゲストのドヴィツィオーゾと2番手の高橋選手は快調にペースを伸ばし、後続グループを離し始める。
4周目、1コーナー奥の第一シケイン入り口でロレンソが3位を行くロカテリを交わすがシケイン出口でロカテリが再び前に出た。
5週目入り口、先頭からドヴィツィオーゾ、高橋選手、ロカテリ、ロレンソ、デ・アンジェリス、博一選手、バルベラ、シモンチェリ、周平選手、ヤコブ・シュムルツが続く。先頭を離れていく2台を除き、3秒後ろの後続はコーナーごとに激しく順位が変わる。
■ロカテリとロレンソが接触
6周目、ロカテリとロレンソの激しい3位争いが続いている。この時6番手を走行していた博一選手の前にバルベラが最終コーナーで割り込む。
接近戦を繰り返すロレンソとロカテリのコーナーごとの争いが激しくなり、7周目に無理やりロカテリのインをついたロレンソと、前を譲らないロカテリが接触。ロレンソはたまらずクラッシュしレース継続を断念。トルコGPに続く2度目のリタイアとなった。
ロカテリは6番手付近まで後退。
8周目、3位に浮上したデ・アンジェリスの後ろをバルベラ、博一選手、ロカテリが追走し、ロカテリの真後ろに周平選手がつける。逃げようとするデ・アンジェリスにバルベラが追いすがる。
9周目、コーナーでブレーキングを遅らせKTMの博一選手がフォルツナ・アプリリアのバルベラを交わし4番手に浮上。
■中盤、高橋選手がレースをリード
ここで前を行く先頭2台に動きが現れる。裏シケインで高橋選手がドヴィツィオーゾを交わしついに先頭に立ち、レースは10周目に突入した。高橋選手が急にペースを上げドヴィツィオーゾを振り払おうとするが、ドヴィツィオーゾもペースを上げこれを逃がさない。
11周目、ストレートで逃げようとする高橋選手がコーナーに入るとドヴィツィオーゾが様子を窺うように高橋選手との差を縮める。後方では周平選手がバルベラを交わし、兄の博一選手の後方5番手に。
12周目中盤、ドヴィツィオーゾが高橋選手の前に再び出るが、高橋選手はドヴィツィオーゾに密着し差は広がらない。二人の5秒後方にはデ・アンジェリス、その後ろにつける博一選手、周平選手の3台が続き、後退したバルベラとロカテリが6位争いを展開。
14周目、高橋選手は再びドヴィツィオーゾの前に出る。デ・アンジェリスを交わした3番手を走る後続の博一選手とトップ2名の差がここで4秒まで縮まるが、15週目には再び5秒差に広がる。
■再びドヴィツィオーゾが先頭、兄弟パワーについて行けないデ・アンジェリス
17周目、一度は離されかけたデ・アンジェリスが再び3番手と4番手の青山兄弟2台に接近する。
18周目の第一シケインの奥で再びドヴィツィオーゾが高橋選手を交わしてトップに立った。それを追いかける高橋選手。後方では周平選手が兄の博一選手を交わし3番手に。周平選手と博一選手は接近し、3位争いが激化する中で5番手のデ・アンジェリスはこの表彰台を争う兄弟喧嘩について行けなくなる。
■背後の兄を引き離そうと過激にペースアップを始める周平選手
20周目、兄の博一選手の追撃を逃れたい周平選手が極端にペースを上げ、先頭を走る2台の2.9秒後方まで近づく。博一選手が再びそれを追いかける。5番手のデ・アンジェリスは二人の2.5秒後方まで後退。
21週目から22周目、先頭からドヴィツィオーゾと真後ろの高橋選手、2.7秒後方に周平選手とその真後ろの博一選手、さらに2.4秒後方にはデ・アンジェリス。デ・アンジェリスの2.7秒後方にはエクトル・バルベラが続く。
22周目、高橋選手が先頭のドヴィツィオーゾの真横に出るがコーナーで抑えられて前に出れない。激化するチームメイト同士のトップ争いと、さらに緊張感を持って激化する兄弟同士の3位争いとの差は2秒近くまで縮まっている。
24周目、バルベラはロカテリに交わされ、ロカテリの1秒後方となる7番手を走行。その真後ろにはジレラのシモンチェリが8番手につける。
トップ争いと3位争いはそれぞれ火花を散らし続けている。先頭は依然ドヴィツィオーゾだ。
■高橋選手がドヴィツィオーゾの背後につけファイナルラップへ
ファイナルラップの26周目入り口、先頭にドヴィツィオーゾ、2番手に高橋選手、その1.8秒後方を3番手の周平選手、4番手の博一選手、さらに7.7秒後方を5番手のデ・アンジェリス。その4.1秒後方には6番手のロカテリが続いている。
コース前半、加速する高橋選手がドヴィツィオーゾに並びかけるが、巧みにコーナーのブレーキングでドヴィツィオーゾがそれを抑えて進入する隙を与えない。追いすがる高橋選手と必死で逃げるドヴィツィオーゾ。
■同時に激化するチームメイト間の争いと兄弟間の争い
そのままコース後半まで熾烈な攻防戦が繰り返される。ドヴィツィオーゾはペースを上げて逃げる。背後では高橋選手が傾けたバイクを起こしながら加速しチームメイトの隙を狙い続ける。後方では博一選手が弟の周平選手の後ろに隙間なくつけ連続表彰台を狙う。
■勝利!
トップの2名は最終コーナー付近に差し掛かり、高橋選手がドヴィツィオーゾの真横に並びかけた。たまらずスロットルを開けるドヴィツィオーゾはそのまま最終コーナーに飛びこむがゼブラゾーンに乗り上げ、慌てて体制を戻しながらスロットルを開けるが、既にその横にはコントロールライン目がけて加速体制に入りスロットルを開けた高橋選手がいた。
高橋選手はコントロールラインを抜け、フル参戦初の表彰台を優勝で飾った。
バイクの上で力一杯に喜びを表わす高橋選手、その横を力の抜けたドヴィツィオーゾが通り過ぎる。
二人が熾烈な最終コーナー争いを演じていた頃、1.5秒後方ではついにKTMの博一選手が3番手を走行していた弟の周平選手を交わし最終コーナーに飛び込むが、転倒さながらの激しい勢いでその横を周平選手が通りすぎる。
チェッカーを先に受けたのは弟の周平選手だ。
■日本勢2名が表彰台へ
この結果、優勝はヒューマンゲスト・ホンダの高橋裕紀選手、2位は高橋選手のチームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾ、3位はGP参戦初表彰台のレプソル・ホンダの青山周平選手。
4位には惜しくも弟に敗れたKTMの青山博一選手が入り、5位はマステルMVAアスパルのアレックス・デ・アンジェリス、6位はチームトースのロベルト・ロカテリ、7位はフォルツナ・アプリリアのエクトル・バルベラ、8位にはジレラの250ccルーキーであるマルコ・シモンチェリがつけた。
開幕前に年間優勝候補の筆頭として謳われたホルヘ・ロレンソはリタイア、ノーポイントに終っている。
■各ライダーのコメント
以下にレース後の各ライダーのコメントを示す。
優勝)高橋裕紀 JPN ヒューマンゲスト・ホンダ
最終ラップではアンドレアを抜く事だけを考えました。
最初に2〜3回抜こうとした時はアンドレアのブレーキングが凄くて全然ダメしたが、最終コーナーで彼が大回りをしてくれたお陰で最後は抜く事ができました。
本当に嬉しいです。今も勝ったなんて信じられないです。
レースの前半はバイクが滑り始めて、チームメイトのリズムについて行くのに必死でしたが、チームがバイクを仕上げてくれてたので最終ラップでもプッシュできたんです。
ついにやりました!チーム全員に本当に感謝してます。
2位)アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA ヒューマンゲスト・ホンダ
今日は自分は何もミスしませんでしたが、裕紀に最後から2番目のコーナーで抜かれました。インをついて抜き返そうとしましたが、最終コーナーを素早く抜けられてしまい、やられましたね。
凄くいいレースでした。裕紀はずっと近くを走ってましたが、最終ラップは自分より乗れてました。裕紀を祝福したいです。
今日は二人とも同じリズムで走ってたので、ずっと引き離そうとしてたんですが出来ませんでした。高橋が前に出た時は後続のライダーがペースを上げて近づいてたので、もう一度抜き返してレースをリードしようと思ったんです。
最終ラップで彼が抜きにくるのは分かっていました。裕紀もブレーキングが凄いですからね。
いずれにしろ、今回は二人でレースのリズムも掴めましたし、チームでレースを制する事ができましたからとても満足です。年間タイトルを考えてもいい結果でした。2勝だけしてその後遅れを取るよりは、14ポイントのリードを広げる方がいいです。
マシンを戦えるように仕上げてくれたホンダとチームに感謝します。
3位)青山周平 JPN レプソル・ホンダ
とても嬉しいです。最初はペースを上げるのは大変でしたが、中盤にかけて自分のペースがつかめてきました。
先頭集団が見えてきたらお兄ちゃんが後ろから激しくプッシュしてくるんで、絶対抜かせないようにしようと前を追いかける事にしたんです。
チームとアルベルト(プーチ)に感謝してます。この調子を次からも続けたいですね。
4位)青山博一 JPN レッドブル・KTM
いいレースでしたけど激しかったですね。
今回はずっと第二集団と第三集団があわさったような大きなグループの中で戦いました。最後の6周は兄弟対決になりましたね。
チームがダンロップタイヤを正しく選択してくれてたので、レースは周平よりも有利でしたね。それに自分のKTMのマシンの方がブレーキングでもストレートでも優れてました。あいつのがコーナーがちょっとうまかったですよ。
鼻の差で表彰台を取られちゃいましたが、今日は4位で満足です。
中国の体調不良をここまで持ち越して、レースウイーク中はずっと腹痛に苦しめられました。バイクに跨ってからは全然気にならなくなりましたが、まだちょっと調子悪いです。今週末がきつく感じたのはそのせいもあるでしょうね。
■衝突した2名のコメント
6位)ロベルト・ロカテリ ITA チーム・トース
今日はほぼ満足です。9番手スタートでしたが1コーナーではほとんど2番手まで順位を上げられました。
後続集団で走った時はできるだけドビツィオーゾと高橋からから離されたくないと思い、彼らと同じようなラップタイムで走っていたんですが、第7周目にロレンソのせいで計画が狂いました。
僕が転ばなかったのは奇跡です。ロレンソは多分2台のアプリリアを合体させて2シーターにでもしたかったんじゃないのかね。
まあ冗談はさておき、自分のアプリリアはそれほどダメージは受けなかったので、順位を取り戻そうとコーナーで頑張りましたが、7位で第三集団まで後退してました。最終ラップでバルベラだけは交わす事ができて6位にはなれましたけどね。
僕のフランスでの3日間の為に素晴らしい仕事をしてくれたチームとアプリリアに感謝します。
DNF)ホルヘ・ロレンソ SPA フォルツナ・アプリリア
できる限りとにかく早く今週の事は忘れたいです。1回のグランプリで3回も転んだ事は今までにありませんから。
1コーナーの出口では他のライダーに気をつけて安全なポジションを確保しました。それでいい位置につけたんですが、ロカテリをパスする時にクラッシュしたんです。
頭を打って少し傷が残りましたが、そんな事より嫌だったのはレースウイーク中にずっと自分の実力が出せなかった事です。
さっさとここを離れて2週間後のムジェロの事を考えます。自分の名誉の為にも次回はもっといい戦いをします。
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