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2006年5月22日
5月21日、本格的なヨーロッパラウンドの始まりとなるフランスGPが、7万6千人の観客が訪れたルマン・ブガッティ・サーキットにてMotoGP最高峰クラスの決勝レースを迎えた。
三度天気予報は外れ、この日最初に行われた小排気量クラスの2レースは、少しの陽射しを得て完全なドライ・コンディションの中行われている。
MotoGP最高峰クラスの決勝スターティング・グリッドには、スリックタイヤを装着したマシンに跨り、レース中の天候を気にして空を見上げる不安そうなライダーたちが並んでいる。複数の日本人ライダーが久しぶりに表彰台を手にした250ccクラスのレースの時とは異なり、分厚い雨雲がルマン・ブガッティ・サーキットの上空を通過していた。
各チームのピットは、レース中の雨を気にしながら、レインセッティングを施したスペアマシンを待機させている。ウェットになった場合、各ライダーはピットと自身の判断によりスペアマシンに乗り換える事が現在のレギュレーションでは可能となる。
レース開始直前の気温は20度、路面温度は午前中のウェットでのウォームアップラップ時よりも15度ほど高い29度となった。湿度は27%、路面は一部湿った箇所があるものの殆どドライコンディションと言える環境だが、公式発表ではウェットレースの宣言がされた。
■復活にかけるバレンティーノ・ロッシとキャメル・ヤマハ
今回のレースで注目が高いのはキャメルヤマハ、バレンティーノ・ロッシの新型シャシー搭載マシンがレースでどれほどの力を発揮するかだ。今回はコーリン・エドワーズのみが乗る06年従来型のシャシーを搭載した06YAMAHA YZR-M1は、今期のレース中の全てにおいて、グリップの高い路面や高速走行時に振動が発生するという致命的な問題を抱えている。
レースタイヤでは、ファーステストラップを記録するような激しいスピードを出さない場合には振動による影響はないが、これは即ち、ロッシは今シーズンのここまでのレースでは自身のライディングスタイルが出来ていない事を意味する。
また、「予選タイヤで振動がなければ上位グリッドが取れるのに悔しい」と前日の予選でもらしたチームメイトのコーリン・エドワーズの言葉通り、キャメルヤマハの二人は開幕から上位のスターティンググリッドを確保できず、後方からのスタートを強いられている。これが結局、開幕戦ヘレス1コーナーでのトニ・エリアスからの追突や、トルコではオープニングラップでコース外に押し出されかかるといった不運につながっている。
中国GPではタイヤのトラブルに見舞われてレースをリタイアするなど、全く運のない今期のロッシだが、ルマンから導入された新型シャシーにはロッシのみならずヤマハワークス・スタッフ全員の期待がかかっている。予選タイヤではやはり振動問題は解消に至らず3列目スタートにはなったが、ルマンはヤマハのハンドリング性能とは非常に相性の良いサーキットであり、ヤマハワークス復活の舞台としては最高の場所だ。
■スターティンググリッド
1列目1番グリッドには2戦連続でポールポジションを獲得したレプソル・ホンダのルーキーであるダニ・ペドロサ、2番グリッドには予選のセッション後半の殆どをトップタイムで飾り、ダニの最終ラップを見るまでは自分のポールポジションを信じていたというカワサキの中野真矢選手。
ルマンに入って以来、中野選手は自身のライディングスタイルを改造中と述べており、ここまでの感触は好調のようだ。フリー走行を含める全てのセッションで高いポジションを維持している。3番グリッドには好調のリズラ・スズキ、ジョン・ホプキンス。
2列目4番グリッドは地元フランスで一気に予選での順位を上げたカワサキのMotoGPルーキー、ランディー・ド・ピュニエ。同じ2列目にはフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリとドゥカティーのロリス・カピロッシが並ぶ。
3列目にはMotoGP連続王者、キャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ、ドゥカティーのセテ・ジベルナウ、ロッシのチームメイトのコーリン・エドワーズが続く。
コニカ・ミノルタの玉田選手は初日の好タイムを予選では維持できずに5列目13番グリッドからのスタートとなった。
■ウォームアップ・ラップでケニーのバイクがミスファイアリング
ウォームアップラップ終了時、マシンのミスファイアリングに気がついたケニー・ロバーツ・ジュニアはスターティンググリッドには戻らずピットに直行している。これにより、ケニーは他のライダーから遅れてのピットスタートを余儀なくされた。
シグナルが消え、各ライダーが一斉に高速1コーナーに向かって前に出る。好スタートを決めたのはペドロサ、カピロッシ、ホプキンス、メランドリ。1列目の中野選手はスタートに出遅れて6番手周辺まで後退した。1コーナーの加速中盤でペドロサも2つほど順位を落とす。
■地元ライダーのド・ピュニエを含む3台が第一シケインからグラベルに
波乱は最初のシケインで発生する。今期改修が施されて大きな直角カーブとなった第一シケインにカピロッシとホプキンス、それにメランドリが飛び込み、後続のライダーも勢いよくシケインに進入した。中盤付近を走行中の複数のライダーも左クランクの奥まで飛び込み右のグラベル側に寄る。
バレンティーノ・ロッシは進入速度が高すぎて曲がり切れずに左にバイクを傾けるが、ロッシの右側を走行していた地元ライダーのランディー・ド・ピュニエのタイヤをすくうような形で接近。あわや接触という瞬間に慌ててランディーはロッシから右に逃げるが、さらにランディーの右横を走行していたジベルナウとエドワーズにランディーが接触。ランディーはバイクと共に横転する形でグラベルの上を激しく転がる。
これに押し出されたセテ・ジベルナウとエドワーズは完全にコースアウトするが、転倒する事なくそのままグラベルを直進してコースに戻った。エドワーズとジベルナウの二人はこの騒動で15番手付近まで大きく順位を下げている。
尚、診察の結果、ド・ピュニエはこの時に激しく脳震盪を起こしており、レース開始からの記憶があまりないようだが、骨折などの怪我の情報は入っていない。
■レースをリードするホッパー
1コーナーからは、メランドリ、ホプキンス、ペドロサ、カピロッシ、中野選手の順にライダーが現れた。
レース2周目突入時、ホプキンスが先頭のメランドリを交わしてトップに踊り出る。メランドリはハードタイヤを装着しており序盤のペースが上げられない。続いて、ペドロサ、カピロッシ、中野選手、ロッシと続くが、すぐにロッシは中野選手を交わして5番手に浮上。
ピットスタートとなったケニー・ロバーツ・ジュニアは1周のみ走行した時点でレースを断念、リタイアしている。
6番手の中野選手の後ろには、トニ・エリアス、ストーナー、ヘイデン、バーミューレン、そして11番手の玉田選手が続く。玉田選手は前日の予選でも漏らしていたように、バイクのセッティングが金曜日午後のフリープラクティスの状態に戻せておらず、ハンドリングに問題を抱えて思うように高速コーナーでスピードが出せていない。
■ロッシが本来のペースで追い抜きにかかる
3周目、ホプキンスがやや後続のメランドリから中野選手までの5名に差をつけ始める。1コーナーでバレンティーノ・ロッシはカピロッシを交わして4番手に浮上し、レース序盤からのスムーズな追い抜きを見せている。中野選手の後方ではエリアスとストーナーが7番手を激しく争う。
ロッシはさらにペドロサを追い抜き、その直後一瞬にしてメランドリの脇を通り抜けると2番手まで順位を上げた。ロッシの前はリズラ・スズキのジョン・ホプキンスただ1人だ。
4周目開始のコントロールラインをホプキンス、ロッシ、メランドリ、ペドロサ、カピロッシ、中野選手、ストーナー、ヘイデン、エリアスの順で加速体制に入ったバイクが通り抜ける。
■ブロックしきれずメランドリがあわやコースアウト
ペドロサとカピロッシがメランドリに追撃をかけ、それをブロックするメランドリはブレーキングを遅らせすぎた事によりあわやコースアウトというラインを走行。その隙をついてペドロサとカピロッシはメランドリの横を悠々と通りすぎる。これによりメランドリは中野選手の前の5番手まで後退した。
12番手という会心のオープニングラップを走行したダンディーン・プラマックのホセ・ルイス・カルドソは、選択したダンロップタイヤが欠陥品である事がわかり、ピットに戻りタイヤを交換して再び走行。元々最後尾なので順位は変わらない。
■ロッシがホッパーを交わし余裕のトップに
5周目に入るとロッシはホプキンスの前に出てついにトップに立った。ロッシはこれまでの追い上げを1分35秒前半のタイムで走行しているが、ホプキンスは粘り強くロッシの後ろにつけ、それほど大きく差は広がらない。
6周目に突入すると、1コーナーではロッシ、ホプキンス、ペドロサ、カピロッシが1列に並び、カピロッシの真後ろをメランドリが追走する。ロッシから3番手のペドロサまでの差は0.6秒、
7周目に入るとメランドリはシケイン後半でカピロッシをパスし4番手に浮上するが、3番手のペドロサとはすでに2秒の差がついている。カワサキの中野選手はメランドリに交わされたカピロッシの後方1.5秒を走行している。
■ホッパーを抜きにかかるペドロサ
3番手を行くペドロサが執拗にホプキンスにアタックをかけ、直線で並びかけるがホプキンスはブレーキングを遅らせペドロサを前に出させない。
8周目、ホプキンスがオーバーラン気味になりゼブラゾーンを走行するインをついてペドロサが2番手に浮上し、悠々と先頭を走るチャンピオン、バレンティーノ・ロッシの追撃を開始する。
■中野選手に悪夢のペナルティー
この時、オフィシャルから6番手を走行する中野選手に対してペナルティーが提示された。ジャンプ・スタート(フライング)の為一度ピットに戻ってから再走行せよという指示だ。
カワサキのクルーはマシンのデータを採取し、オープニングラップ時の走行データを確認しているが、確かにシグナルオフの直前に中野選手のマシンのタイヤが僅かに転がった形跡を示すデータが検出されている。中野選手はしばらく走行した後ピットを通過し、順位を6番手から16番手まで落とす事となった。
失意の中、中野選手はこの後にカルロス・チェカやトニ・エリアスとのバトルを繰り広げる。
■5戦目にして実現するロッシ対ペドロサ
9周目のオープニング、キャメルヤマハのピットは「背後にペドロサ」を示すサインボードをロッシに示した。開幕から多くのファンが待ち焦がれた2名の対決が5戦目にして実現する。トップに立ってからロッシはペースを落として1分36秒377で走行しており、ペドロサは1分36秒029と確実にロッシを狙っている。
10周目、先頭のロッシからペドロサ、ホプキンス、メランドリ、カピロッシが長い列を作って走行している。
■ホッパーが握りゴケ
ここまで好調なホプキンスだったが、ダンロップコーナー通過後にアクセルオープンのタイミングが遅れたホッパーは急ブレーキをかけ、右に傾いたバイクをそのままコース左側までスライドさせて転倒。慌ててマシンを起こして再度走行を開始するが順位は15番手まで後退した。
ホプキンスのSuzuki GSV-Rはハンドル右側を転倒時に強打しており、走行が困難な様子をホプキンスは見せている。
ホッパーの先頭集団脱落により、順位は先頭からロッシ、すぐ後方にペドロサ、ペドロサの2.3秒後方にはメランドリ、4番手にカピロッシ、カピロッシの3.6秒後方にはニッキー・ヘイデン、さらに1.6秒後方にはホンダLCRのケーシー・ストーナーが続いた。ストーナーの1.3秒後方には7番手まで順位を挽回した玉田選手がつけている。後ろには1コーナーでコースアウトしたエドワーズとジベルナウ。
11周目、レースはマッチレースの様相を見せ、ロッシとペドロサが先頭を走り、メランドリとカピロッシが2.5秒後方を走っている。
12周目、ハンドルの調子が悪いホプキンスは一度ピットイン。メカニックに見せた後再びコースに復帰し15番手を走行。
■快調にルーキーを引き離すチャンピオン
13周目、ロッシが徐々にペドロサを離し始める。ペドロサはシケインでロッシとの差をつめようとプッシュするが、差は殆ど縮まらない。余裕の走りを見せるロッシ。
ダンティーン・プラマックのカルドソは走行を断念しピットイン。「これ以上走ると他のライダーに迷惑」というコメントを残した。
レース折り返しの15周目、コントロールラインをトップのロッシ、2番手のペドロサ、その3.2秒後方を3番手のメランドリ、4番手のカピロッシ、さらに4.8秒後方をニッキー・ヘイデン、ヘイデンの1.6秒後方をストーナー、その2.5秒後方を玉田選手を交わしたコーリン・エドワーズと8番手の玉田選手が続く。
ペドロサはロッシから後退していくが、ロッシは快調にハイペースで飛ばし続ける。
16周目の第一区間でロッシとペドロサの差は1.1秒、第二区間では1.3秒、第三区間では1.5秒、最終区間では1.7秒と、後半のロッシの持久力とペドロサの差が歴然としてきた。
後方ではニッキー・ヘイデンに追いついたストーナーが激しくヘイデンから5番手を奪おうと攻撃を仕掛けている。
■ルーキーにファーステスト更新を見せつける余裕のロッシ
18周目の入り口でのトップのロッシと2番手のペドロサとの差は2秒、さらに19周目入り口では3秒まで広がった。ロッシに無理をしている様子は全くない。20週目の最終区間でのロッシとペドロサの差は4秒。
ここでコーナーのインにつけないヘイデンの隙をついてストーナーが並び、すんなりとヘイデンを交わして5番手に浮上した。
21周目、ロッシ、ペドロサ、カピロッシ、ストーナー、ヘイデン、エドワーズ、玉田選手、セテ・ジベルナウの順でコントロールラインを各ライダーが通過。
先頭のロッシを完全に逃したペドロサはペースを上げられなくなり、2.4秒後方のメランドリが差を詰めてくる。
■悲劇、かからないYZR-M1のエンジンに立ち尽くすロッシ
従来からのロッシの勝ちパターンである完全単独勝利を誰もが確信した時、コーナーを先頭で走り抜けてきたバイクはキャメルヤマハの46番ではなく、レプソルカラーの26番だった。後方には自らコースアウトして他のバイクを避ける黄色のバイクがうなだれるように走っている。バレンティーノ・ロッシのバイクからはエンジン音が全く聞こえていない。エンジンの故障だ。
惰性で走っていたYZR-M1は完全に停まり、マシンに跨り両足をついたまま何もしないロッシが呆然としばらく正面を眺めている。
前戦の中国GPでのタイヤトラブルに続き、ロッシはリタイアした。ピットに戻る車の中でロッシはヘルメットを被ったまま、バイザーだけを上げて皮手袋の両手で両目を押さえたまま塞ぎ込み、身動き一つしない。
レースは22周目に突入し、ペドロサの1.2秒後方にメランドリが迫る。
■ロッシの離脱を見て元気になる両イタリアン
23周目の第一区間、トップのペドロサとメランドリの差は1.0秒、第二区間では0.8秒、第三区間では0.5秒となり、最終区間でついに差は0秒となった。序盤は選択ミスと思われたハードタイヤが温まり、佇むロッシを通りすがりに見たというメランドリは、ペドロサに執拗に密着して前に出ようと勢いが止まらない。ハードに攻め続けるメランドリ。
24周目、先頭にペースを上げられないペドロサ、密着するメランドリ、その2.6秒後方には、やはり呆然と佇む黄色のスーツを見た瞬間に表彰台を確信し、元気いっぱいにカピロッシが二人の後方に迫る。
■メランドリが先頭に
1コーナーでメランドリは華麗にペドロサをパスし、ついに先頭に立った。それでもメランドリの勢いは止まらない様子だ。ペドロサの1.9秒後方にはカピロッシが序盤とは別人のように勢い良く走行してくる。
ロッシがまわりの誰とも口を聞かず、目も合わせずにモーターホームへ戻った頃、他のライダーは26周目に突入した。先頭からメランドリ、1.4秒後方に下がったペドロサ、その1.3秒後方にカピロッシ。3台構成となった先頭集団の4.8秒後ろにはケーシー・ストーナー、それに追いすがるニッキー・ヘイデン、その2.8秒後方にはコーリン・エドワーズ、さらに3.8秒後方には玉田選手が続く。
■ルーキーを追い詰める熟練ライダー
ラスト2周の27周目、ペドロサとカピロッシの差がなくなっていく。余裕で先頭を走るメランドリの後ろ2台の争いは最終ラップに持ち込まれた。
28周目の最終ラップ、すでにペドロサとカピロッシの差はどこにもない。1コーナーからシケインにかけてペドロサはカピロッシを必死に迎撃するが、ダンロップコーナーでついにカピロッシが2番手に浮上。
そのまま意地をぶつけ合う二人は無理をして同時にホプキンスが転倒したゼブラゾーンに2台仲良く乗り上げてコーナーを真っ直ぐに走行するが差は縮まらない。諦めずにカピロッシを攻め続ける悔しいペドロサ。
■メランドリ、今期2度目の勝利
最終コーナーを抜け、後半からの激しい巻き返しを見せたフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリが今期2度目の優勝を決めた。その後方では最終コーナーを抜ける2台、カピロッシとペドロサが最後のコントロール・ラインに飛び込む。
2位はドゥカティーのロリス・カピロッシ、レプソル・ホンダのダニ・ペドロサは最終ラップで3位に順位を落としたが中国GPでの優勝に続く連続表彰台を獲得。
ペドロサは、タイヤ選択のミスがペースを維持できなかった原因と述べている。
4位はホンダLCRのケーシー・ストーナー、5位はウイルス性の風邪で体調が治らないままフランスでのレースウイークを過ごしたレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン。ニッキーの連続表彰台記録は中国GPまでの8回となった。
6位にはオープニングラップでシケインをオーバーランして順位を大幅に落としたキャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズ、7位はコニカ・ミノルタの玉田誠選手、8番手にはエドワーズと同じくオープニングラップのシケインで押し出されたセテ・ジベルナウが続いた。
今回は完走者が15名のみとなり、ジャンプスタートのペナルティーを受けた中野選手は12位、10周目の転倒からピットインして再び走行したジョン・ホプキンスは15位となり、二人共に貴重なポイントを獲得している。
フランスGP終了時点のポイントランキングは、依然としてニッキー・ヘイデンがトップを維持しているが、僅か4ポイント差にマルコ・メランドリとロリス・カピロッシの2名が迫った。
■ロッシ、年間タイトル不安
尚、今回も不幸なノーポイントに終ったディフェンディング・チャンピオンのバレンティーノ・ロッシは、トップと43ポイント差の8位まで後退している。キャメルヤマハ監督のダビデ・ブリビオは後の会見で「エンジンの故障」とだけ述べ、原因の追究はこれから行う事を明らかにした。
また、ロッシは年間タイトルに不安を示すコメントをレース後に発表している。
■歓喜に沸くパルクフェルメの風景
パルクフェルメでは、前回の優勝とは異なり、今回はいつも通りあまり表情を変えないペドロサにプーチが語りかけている。
フォルツナ・ホンダのグレッシーニ監督がメランドリに飛びつき、有頂天で喜ぶメランドリ。その背後からは、同郷の先輩であり仲の良いドゥカティーのロリス・カピロッシが忍び寄り、メランドリの股間に背後から手を入れたまま離さない。たまらず振り返るメランドリのバイザーにニヤニヤと笑いかけるカピロッシ。直後にメランドリはカピロッシの頭を力強く張り倒している。
■各ライダーのコメント
以下に、各ライダーのレース後のコメントを示す。
優勝)マルコ・メランドリ ITA フォルツナ・ホンダ
驚きのレースでしたね!全然この結果は期待してなかったので本当に嬉しいです。レース前は天候が安定してなかったのでミシュランのメカニックと相談してリアにハードタイヤを選択したんです。出だしは調子が良くて、最初のラップでレースをリードする事が出来ました。
ホプキンスに抜かれた時はハードタイヤに少し苦しんでましたが、数周走り続ける内に調子が良くなってきました。それで先頭集団と同じくらいのラップタイムで走れるようになったんです。
周回を重ねるうちに勝てるかもと思い始め、ロリスを抜いてしばらくしてからペドロサもパスできました。いい仕事をしてくれたチームに本当に感謝してます。
2位)ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティー・マルボロ
マルコと走ってた時、バレンティーノのコースアウトが見えたんです。すぐ表彰台のチャンスだと思いましたね。
マルコがダニを捕らえたのが見えたので、最後の何周かはそのままついて行って最終ラップでダニを抜けるか様子を窺いました。本当にダニの前を奪えて2位になれたので凄く嬉しかったですよ。
タイヤは昨日使った物ですが、1分35秒後半のペースが維持できる事はわかってましたのでレース中は諦めずにそのくらいで走るよう頑張りました。
ここはそんなに自分たちに合ったコースではりませんし、雨ならもっと良かったと思いますが、結局2位表彰台に乗れてポイントもたくさん稼げました。
ドゥカティースタッフ全員とブリヂストンの皆に感謝します。
3位)ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ
今日は運が良かったので今回の結果には満足です。表彰台に乗れた事は自分にとってもチームにとっても良かったと思います。しかもドライになりましたしね。
序盤は快調でしたが、バレンティーノが周回毎にコンマ数秒ずつペースアップしているのに気づき、引き離されないように頑張りました。でもどんどん差は広がるばかりなので、その後は自分の後続との差を意識するように切り替えました。
先頭を走ってからも追いつかれる事は分かっていましたし、2〜3周しかトップを維持できない事も分かっていました。
1周する間に2回もミスしてしまい、そこで自分が徐々に限界に近づいてる事を理解しました。もうトルコのような転倒は繰り返さないと決心してスロットルを緩め、完走する事に集中しました。
でも結果は良かったので、この調子を今後も続けられるように今回のレースから学びたいと思います。
4位)ケーシー・ストーナー AUS ホンダLCR
4位はかなり気分がいいです。もう一回言っておきますけど、僕はタイヤが減ってから戦えないって言ってた評論家にはお答えできてますよね。
ニッキーとのバトルはクリーンで最高です。でもレースの最初にニッキーを押し出しそうになった事は残念ですし、謝りたいです。本当にブレーキをちょっとミスしただけなんです。
複雑な天候状況がセッティングにひどく影響しました。スタートの時のバイクの調子は最悪で、とても先頭集団について行くなんて無理でした。燃料も満タンだったのでブレーキを遅らせる事すらできませんし。
レースの中盤までにはバイクの調子も良くなってきて、プッシュできるようになりました。
5位)ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ
今回はきつい週末ですね。レースウイーク中の毎日きつかったです。
中国で計画を中断しているのでスムーズに事が進みませんでした。天気も悪いし風邪もひどいままだし、今日は自分たちに逆風が吹いてましたね。
昨日はセッティングを少し前の状態に戻して、チームで考えたセッティングを朝のウォームアップで試しました。そこで少し変更も加えています。
レプソルホンダの仲間たちは頑張って凄くいい状態のバイクを仕上げてくれたので、今日は走りに全力を尽くすのみでした。結果は5位です。全然いい結果じゃないし、こんな成績を望んでいたわけじゃないんです。でもまだポイントランキングは1位ですし、明日のテストも運よくドライならまだ改善できる事はいくらかあります。
そしたら夏に向けて準備はOKです。
何週間かしたらムジェロですしその後はレースの目白押しですね。連続表彰台記録が止まるのはすごく嫌でしたが、また新たに1回目からはじめられますよ。
6位)コーリン・エドワーズ USA キャメル・ヤマハ
去年のようになるべく外周に沿って走る作戦を取りたかったんですが、スタートでいきなりライダーがあちこちから来て混乱しました。
誰かに前を邪魔されるような形にされて、ダニ・ペドロサだと思いますがはっきりは分かりません。それで外側には寄れずに狭い方に流されたんです。
左側からシケインに入ったらみんな右側から広がってくるので逃げ場がなくなりグラベルに直行しました。去年なら何も問題なかったのに、改修後のシケインに弄ばれたね。それで4〜5秒ロスして、それから最初の6ラップの間に順位を挽回しようと追い抜きをかけてたからさらに4〜5秒はロスしてます。
コーナー出口でパスしたかったんですがその時はみんなタイヤのグリップが良くてダメで、ブレーキングのタイミングにしかチャンスはありませんでした。バイクのセッティングはとても良くて、足りなかったのは終盤のリアのグリップくらいです。
今回のペースなら表彰台に乗れてたでしょうね。
7位)玉田誠 JPN コニカ・ミノルタ・ホンダ
今日の結果の一部には納得できますが、金曜日の午後のRC211Vの状態の方が遥かに今のレベルより高くて乗りやすかったです。
レース中はずっとハンドリングに問題を抱えていて苦しみ、高速コーナーで思い通りに走れていません。
いずれにしろ、シーズン序盤に比べればバイクは格段に良くなってますし、次のレースに期待も持てます。
8位)セテ・ジベルナウ SPA ドゥカティー・マルボロ
自分たちとしてはいい仕事ができたし、ロリスを祝福したいですね。この結果はブリヂストンがいい仕事をした証拠ですよ。
最初のコーナーに誰かがひどく深くまで飛び込みすぎて、コースの外に押し出されたんです。今日の自分のレース結果はそれで決まっちゃいました。その後はリズムがうまく掴めなくなりましたが、なんとか前に追いつけるように努力しました。
セッティングをまだ今後も少し続ける必要はありますが、今日はいつもより調子良かったですよ。さらに前進を続けますが、今は今後が楽しみです。今回は色々改善が進んだレースでした。
9位)トニ・エリアス SPA フォルツナ・ホンダ
厳しい日でしたね。ウォームアップでも問題が解消できず、スタートは成功したんですがペースが全然保てませんでした。
明日はここに残ってテストがありますので、今の問題を解決できればいいなと思います。状況をしっかり見て、努力に見合うポジションに戻りたいですね。
今日はクレバーな走りをしたマルコを祝福したいです。
10位)クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ
どうしても入りたかったトップ10ですけど、レース全体を通しての自分のペースにはあまり満足できません。
今朝のウォームアップを使ってもっと事前に試しておきたいことが何点かあったんですが、ドライで走れる時間がなくてできなかったんです。セッティングは昨日の状態で臨み序盤はいいペースで走れましたが、タイヤの耐久テストが出来てなかったので後半にどんどんタレてしまいました。
自分の最初のフランスGPとしては10位は上出来ですよ。ムジェロではもっと上を狙いたいですね。
11位)カルロス・チェカ SPA TECH3ヤマハ
今日の結果は良かった。今年一番の進展と言えます。
レース序盤はいいペースを保てたんですが、12周目か13周目に入るとリアタイヤの性能が極端に落ちてペースが下がりました。その時はもちろん完走を意識しましたが。
ペースを37秒台キープに設定してバーミューレンやエリアスとバトルしましたがリアがやたら振られるので、「OK、タイヤをできる限り温存しよう」と決心しました。中野が後ろから来た時はさらにプッシュして、彼を前に出させないようする事で考えはうまくいったと思います。レースの大半をバトルできて良かったです。
ここからは多くの情報を持ち帰る事ができます。今の自分たちの状況と、さらに今後の目標もはっきりしていますよ。進展にはとても満足ですし、明日から二日間はここでテストもできます。
テストでは、ウェットでもドライでも計画中のタイヤテストを行うつもりです。また、バイクのセッティングの改善案も試します。トルコの時のように今はテストが楽しみです。
中国の時は全く壁が越えられない気がして落ち込みましたが、今は壁を越えたと思いますし、以前より前進していますからチームにはとても満足できます。今はまだ他より遅れていますが、改善できた点は多いんです。二日間で予定のメニューが全部こなせる事を祈ってます。どうせその先はもっと試したい事が増えるでしょうからね。
2日間のテストへの意気込みは高いですよ。どうすれば速く走れるようになるか見えてきたんです。ダンロップは多くの物とアイデアを持ち込んでいますから、今後のレースの大きな助けになると思います。
12位)中野真矢 JPN カワサキ・レーシング
スタートに少し失敗しましたが、先頭集団の後ろに最初の数周はつけましたので、いいリズムでバイクが操れるように集中しました。
何週か走った後で、ピットからのペナルティーの知らせを見た時には信じられませんでした。理由が分からないし、とてもレースに集中するどころじゃなかったです。
今はジャンプスタート(フライング)だったと分かりましたし、確かにデータを見ると完全に白線からスタートする前に一度タイヤが微妙ですが動いています。でもいくらペナルティーが正当だと分かってもがっかりな事に変わりはありませんよ。
ペナルティーの後は失望しながらレースに戻りましたが、最後に少しでもポイントを稼ぐ事に頭を切り替えて走りに集中しました。
今週は毎日フリー走行や予選が良かっただけに、むしゃくしゃする結果に終りました。でももう今回の事は忘れて次のムジェロに集中するつもりです。
13位)アレックス・ホフマン GER プラマック・ダンティーン
今日はこれ以上は無理でした。チームも自分も100%頑張りましたが、うちの公式タイヤ供給元のダンロップはこういう難しい路面状況の時に選択できるタイヤをもっと増やすべきですよ。自分たちはMotoGPという世界選手権の最高峰クラスで戦ってるのに、こんな目に会わせるなんて普通じゃないですよ。
ダンロップが今回持ち込んだ新しいタイヤはルマンのフリー走行ではまあまあでしたが、レースで使うには全然十分な性能とは言えません。
最初の数周はムラのある挙動を示しましたが、それは何周か走るうちに良くなってきました。自分としてはいいリズムが掴めたと思いますが、終盤はバイクをコントロールするのが大変になってきたんです。なんかロデオの練習をしてるような感じで、レースが終った時にはもうくたくたでした。
せめてもの慰めはポイントを3点取れたことだけです。
14位)ジェームス・エリソン GBR TECH3ヤマハ
レースはそれほど悪くありませんでした。それにカルロスのタイムにどの周回も近くなったのを見て喜びました。今週は期待の持てる進歩が多かったです。
レース中は自分にとってはいい感じでプッシュできましたし、カルロスにタイムも近いし、レース終盤にはトップのレースタイムにも近くなってるので前進した気がします。でもここだけじゃなく他のレースでも同じ事ができないとダメです。
フルに2日間取れる月曜と火曜のテストが楽しみです。多分大きく進化できると思いますよ。まるまる2日間ってのが嬉しいですね。
タイヤのテストを続ける以上、どんな天気だろうと構いませんよ。バイクに試したい事は山ほどありますので、理想的には全部ドライの方がスムーズにできるでしょうね。
他のヤマハライダーが使っているタイヤとは大きく性質が異なりますので、最初はスイングアームの長さを色々試して、他にも多くを組み合わせて最適なセッティングを探します。
15位)ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ
少しクラッチに問題を抱えてたのでレース序盤から本調子とは言えませんでしたが、レース全体のペースが遅ければ大丈夫かなとは思ってました。
加速が少し遅れたのをカバーしようとブレーキを強く握りましたがリアが跳ねて、そのままフロントも失って転んじゃいました。
でも今回、ここまでのリズラ・スズキとブリヂストンの進化を見せる事はできたと思います。トップも走れるって事ですし、最初の表彰台も時間の問題でしょ。とにかく今回の結果が次のサーキットではもっと頑張れる機動力になってんのは間違いないですよ!
DNF)ホセ・ルイス・カルドソ SPA プラマック・ダンティーン
スタートがうまくいってオープニングラップは12位でした。
でも残念な事に、何周か走った後で欠陥品のタイヤをピットに交換しに行く事になったんです。新しく装着したタイヤは調子が良くてすぐにタイムがあがりました。
でもレースは完走していません。もう時間をロスしすぎてましたし、他のライダーたちの中でそれ以上走ってると迷惑になるのでやめました。
DNF)バレンティーノ・ロッシ ITA キャメル・ヤマハ
今週チームは新型シャシーを使って凄くいい仕事をしてくれました。レース中に速く走れて本当に楽しかったです。バイクもタイヤもパーフェクトで全てが好調でした。
でもエンジンが逝っちゃったんです。
自分が走ってる状態でエンジンが完全に止まった経験は数回しかありません。今まで4ストロークでは一回もありませんでしたから、今回のケースは今の自分たちの運勢に合った特有のもんでしょう。
カタールは別としても、今期は最初のレースから何かがうまくいってない気がしますね。年間タイトルはこれで窮地に追い込まれました。今の状況でタイトルを狙うのは大変なチャレンジですよ。絶望的とまでは言いませんが。
今後はタイトルの事は考えずに残り12回の毎レースをしっかりやって、可能な限り勝利を増やす事が大切でしょうね。
DNF)ケニー・ロバーツ Jr USA チーム・ロバーツ
いったい何がどうなったのか分かりません。
突然バイクがウォームアップラップでミスファイアリングを始めたんです。燃料圧が安定しなくなったんですが、バラして中を見るまでは原因はなんとも言えません。
DNF)ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング
(公式コメントなし)
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