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スペインGP予選、キャメル・ヤマハのチャタリングが再発 |
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2006年3月26日
開幕後の今シーズン初となるMotoGP公式予選は、序盤から赤旗中断というアクシデントからスタートする事になった。セッション開始直後に故障したバイクからオイルが噴出し、それに乗って次々と後続のライダーが転倒するという事態が発生したが、幸い怪我人は1人も出ていない。
ブリヂストン勢のフロントロー独占
スペイン、ヘレスサーキット2日目のコンディションは晴天に恵まれ、眩しい陽射しから気温は20度まで上昇し、路面温度は27度という予選日和となった。この日はプレシーズン中のテスト結果の通り、昨年以前から好条件に強い傾向のあるブリヂストン勢の3台がフロントローを独占している。ドゥカティーのロリス・カピロッシ、同じくチームメイトのセテ・ジベルナウ、続いてカワサキの中野真矢選手だ。
セッション開始直後に赤旗中断
この日、プラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンのバイクがメカニカル・トラブルに見舞われたのは、セッション開始直後3分の事だった。8コーナーから9コーナーにかけての直線で白煙とオイルを噴出したホフマンのマシンは後輪にオイルを浴びて走行困難となり、その後ろから現れたディフェンディング・チャンピオン、キャメルヤマハのバレンティーノ・ロッシがオイルに乗り上げて転倒し、グラベルに飛び込んだ。
その直後、フォルツナ・ホンダのトニ・エリアス、チーム・ロバーツのケニー・ロバーツも同オイルでマシン制御が不能となり転倒、カワサキの中野真也選手とランディー・ド・ピュニエの二人も同じく転倒し、ホフマンを含む合計6人が第一マシンを予選で失うという結果になった。8コーナーからアクセルをあける部分だけに、怪我人が出なかったのは不幸中の幸いだろう。
この後は赤旗が振られ、路面清掃の為にコースは20分間閉鎖された。
ドイツ人のアレックス・ホフマンはこの事態に責任を感じ、転倒した各ライダーに謝罪のコメントを発表し落ち込んでいる様子だ。彼のマシントラブルは改善の兆しが見えず、ホフマンは1時間のセッションを殆ど使用する事ができなかった。
スペアバイクまで失いかけるランディー・ド・ピュニエ
セッション再開直後、ランディー・ド・ピュニエ自身の1周回目に不幸にして再びオイルに乗り上げ転倒し、最後の1台のスペアマシンを先ほどと同じグラベルに沈めてしまう。なす術も無くピットで待機するド・ピュニエだったが、マーシャルの努力で10分後にマシンはカワサキのピットに届けられ、最悪の事態を逃れる事ができた。すぐにマシンはクルーにより点検、調整され、ド・ピュニエは残り40分のセッションに飛び出していった。
プレシーズンを思わせるドゥカティーのワンツー体制
全体を通してドゥカティーワークス勢が好調な走りを見せる中で、残り30分を切ったところでトップに踊り出たのはスペアマシンに乗り換えて走るカワサキの中野真矢選手だ。
この時の中野選手のタイムはほぼ1分40秒だったが、続いてブリヂストンの予選タイヤを履くロリス・カピロッシが中野選手のタイムを約1秒上回る1分39秒20をマークし、カピロッシのチームメイトのセテ・ジベルナウも1分39秒285を記録してドゥカティーのワンツー体制、およびブリヂストン勢のフロントロー独占状態となる。
ドゥカティーの予選でのワンツーは、2003年のスペインGPにおけるカピロッシとトロイ・ベイリス以来の出来事だ。
カピロッシはこの後も自己ベストを更新し、追撃の手を緩めないチームメイトのセテ・ジベルナウを抑えて開幕戦のポールポジションを獲得した。タイムは1分38秒台への突入直前の1分39秒064。昨年のバレンティーノ・ロッシの予選タイムである1分39秒419を0.355秒上回るタイムとなった。
マシンは全て思い通りにコントロール可能であり、全てに満足できる状態だと自身の好調さをアピールしている。
「今日は最高でしたね。自由自在にライディングできました。」とカピロッシ。
「バイクはいつも通り傾きっぱなしでしたが、全て思い通りにコントールできるんです。最終ラップでは1分38秒台に突入しそうでしたね。2週間前のテストに続き、好調な週末でした。レースに向けて安定したタイムを出せるようにする事が目的でしたので、テストでは飛躍的なタイムアップはありませんでしたが、その結果マシンのバランスが良くなったんでしょうね。」
「ブリヂストンは凄く進化していますよ。予選タイヤは以前にここで使ったものより速く走れるようになりましたし、レースタイヤも凄く良いです。予選でドゥカティーがワンツーを取るのは2003年以来ですね。レースでも好成績が望めそうです。」
「このコースはタイヤが重要ですので、レースでは1周目から他を引き離そうとは思いません。タイヤを最後まで残すのが得策でしょう。いつも通りドゥカティーとブリヂストンには感謝しています。」
セテ・ジベルナウもカピロッシと同じく昨年のロッシのタイムは更新するものの、チームメイトにタイムには及ばない1分39秒285を記録し、2番グリッドを確保。セテはまだ自分はマシンについて学習中である事を強調する。
「堅実な姿勢がまだ必要ですよ。」とジベルナウ。
「ずっと言い続けて来ましたが、自分はまだバイクやチーム、他の色々な事について学習中です。」
「今日の目標は1列目か2列目の確保でしたが、ファクトリーおよびチームやブリヂストン、それにチーフクルーのファン・マルティネスが素晴らしい仕事をしてくれました。このプロジェクトに関わっている全ての人に感謝を申し上げたいです。彼ら皆がレースに必要な感覚を取り戻させてくれました。」
「明日は自分にとっての学習レースです。目標は先頭グループと一緒に最後まで走り続ける事ですが、実現できれば嬉しいですね。」
セッション終盤に中野選手は次々とカピロッシの区間タイムを更新し、ポールポジションの可能性も見られたが、残り2つの区間でクリアラップが取れずにそのまま3番グリッドとなり、開幕戦を1列目からスタートするという幸先の良いスタートとなった。最終的なタイムは1分39秒526。
「予選で1列目に並ぶ事は今年の目標の一つでした。初戦で達成できるなんて最高です。」と中野選手。
「カワサキとブリヂストンが大きく進歩している事は確実ですが、実際に初戦を走ってみない事にはどのくらい他のチームと戦えるか正確にはわかりませんが、今回の結果から、自分たちのプレシーズン中の方向性が正しかった事は実感できます。」
「セッション開始直後にコース上のオイルで転倒してセカンドバイクに乗り換えましたが、特に予選結果への影響は無かったと思います。正直言って、自分がタイムを出した後に他のライダーがあまり上位に来なかった事に驚きました。自分がそれほど速いタイムを出したという感覚が無かったんです。」
「でもそのお陰で初戦から一列目に並べて本当に嬉しいです。また、チーム監督のハラルド・エックルの50歳の誕生日に良いプレゼントが出来たと思います。」
調子を取り戻したホンダ勢
また、プレシーズン中に不調を訴えていたミシュランタイヤを履くホンダ勢だが、今回の予選では再び発生したチャタリングに苦しむキャメルヤマハチームを抑えて第2列を独占した。
新型マシンを手にして以来、極端にタイムを落としていたレプソルホンダのエース、ニッキー・ヘイデンは1分39秒666を記録して4番グリッドを確保。マシンのセッティに課題は残るものの、ミシュランの予選タイヤに満足している様子だ。
「1列目だったら嬉しかったでしょうね。いえ、カピロッシが凄かったって意味ですけど。」とニッキー。
「ミシュランの予選タイヤの調子が今日は凄く良かったです。本番用の予選タイヤで走るのは久しぶりだったんで面白かったですよ。予選でいくつか問題が解決できたので4番という結果にそれほど興奮しませんが、凄い事だしチャンスだとは思いますね。」
「セッションの最初っからオイルで赤旗中断は珍しいね。序盤は色んな事を試したけど午前の時よりも良い感じが掴めなかったので、少しずつ元に戻しました。取り合えず明日のレース用の馬は手に入ったんで、出来る限り激しく乗るつもりです。」
「明日のウォームアップではもう少しバイクの調子が上がるようにいくつか試したい事があるんです。タイヤも最後まで持続させたいし、どのくらい改善できるか確かめます。スタートを成功させたいですね。」
「ヘレスの観衆は凄いですよね・・・明日は楽しむつもりだし、準備もOKです。」
5番グリッドは同じくレプソルホンダ、スペイン人ルーキーのダニ・ペドロサだ。予選タイヤに慣れる事を最優先したとするペドロサだが、昨日のフリー・プラクティス2での順位と同様に、MotoGP初となる予選結果にも満足している。予選タイムは1分39秒734。
「予選タイヤで走るのはそんなに簡単じゃないんで、このセッションは難しかったです。」とペドロサ。
「計画的に1周を走らなきゃいけないし、マシンのセッティングも考えないといけませんからね。ちょっと今日は計画にミスがありましたが、順位は良かったと思います。」
「経験不足ですし、全然100%の状態じゃありません。まだ今後も学習を進めて行く必要がありますけど、最初の予選でこの結果は上出来だし嬉しいです。2週間前にテストしたセッティングがあるので、それがベースになってレース用のセッティングも良い感じになりました。」
「明日は本当の自分たちのレベルが確認できるので今から楽しみです。スペインのレースファンにも楽しんでもらいたいですね!」
6番グリッドはフォルツナ・ホンダのトニ・エリアス。プレシーズン全体を通して不調だったエリアスだが、IRTAテストで地元ヘレスに入って以来、人が変わったかのようにその好調さをアピールしている。予選でもその勢いに翳りを見せる事はなく、着実に良いリズムを掴んだようだ。タイムは1分39秒875。
「今日の結果は本当に満足できます。」とエリアス。
「今朝は良い仕事ができてたので、本当は1列目に並びたかったんですよ。でも良いレースをする準備は出来ているつもりです。今はとにかく気分ものっています。スペインのファンの応援はトップギアを一個余分にくれますからね。バイクの調子も良いし、自分のペースも上がりました。」
「予選最初の転倒は残念でしたね。セカンドバイクの乗らなきゃいけなかったので少し問題がありました。」
7番グリッドはエリアスのチームメイト、昨シーズンを年間2位で終えたマルコ・メランドリ。惜しくも3列目スタートとなったが、メランドリまでの7名が1分39秒台を記録するという、ハイレベルな争いだったと言えるだろう。予選当日もこれまでのテストと同様に、レース用のマシンセッティングを優先課題とした様子だ。
「今日は張りつめた一日でした。」とメランドリ。
「予選開始直後のマルチクラッシュで色々遅れがでましたしね。それにオイルがまだ残ってたので通常使うライン取りが出来ず、用心深く走る事になりました。」
「今日はバイクのセッティングを何より優先しました。タイヤのテストと同時に色んなセッティングも試していいます。明日は多くのライダーが表彰台を競い合う面白いレースになりそうですね。」
8番グリッドはカワサキのフランス人ルーキ、ランディー・ド・ピュニエ。一度は予選継続を断念しかけたド・ピュニエだが、スペイン地元マーシャルとチームの努力により10位以内の予選タイムを確保する事ができた。タイムは1分40秒146。
「自分の最初の予選として期待した内容じゃなかった事は確かですね。」とド・ピュニエ。
「8コーナーのオイルで転倒したのは自分のミスじゃありませんが、セカンドバイクを全く同じ場所に沈めたのはブレーキングポイントを見誤った自分のミスです。バイクが戻ってくるのを10分間待っていた時は凄いストレスでした。その時はまだ1周も走りきっていなかったんですよ!」
「走行を再開できた時は少し緊張しましたが、終盤までには気分も落ち着きましたし、結果にも満足しています。まさかMotoGP最初のレースで世界チャンプの前にいるとは夢にも思いませんでした。でも明日のグリッド上ではあんまりそれは考えない事にします。」
「明日の目標はスタートを成功させて全27周を出来る限り激しく走る事です。」
チャタリング再発、課題を残したままのキャメル・ヤマハ
9番手と10番手には、プレシーズン前半の絶好調発言とはうって変わり、マシンの不調を解決できないキャメル・ヤマハの2名が続いた。初日のフリー・プラクティスではチャタリングの問題の解決を宣言した筈のキャメル・ヤマハ・チームだが、初日とは異なる良好な路面状態での高速走行時にはチャタリングが再発する事が判明したようだ。
3列目スタートとなる9番グリッドとなったバレンティーノ・ロッシの予選タイムは1分40秒160。ヘレスでのIRTAテスト初日には「決勝前日の午後に振動問題が残るようなら心配するかもね」と楽観的だったバレンティーノ・ロッシだが、それが現実になるとは予想していなかった筈だ。
「昨日は解決できたと思ったのに、また再発しました。」とロッシ。
「バイクは予選タイヤだとまだ振動します。リアのグリップが強力すぎてフロントが押し出される感じになるし、問題がちょっと大事になってきました。基本的に全てのコーナーでタイムが落ちます。」
「予選最初の転倒は避けられなかったと思いますが、今回の言い訳にはなりませんね。2001年から開幕戦は勝ち続けてきましたが、今年はちょっと難しくなりそうですよ。」
「いつも開幕戦の勝利が好調なシーズンにつながるので、まだ諦めませんよ。」
10番グリッドとなったコーリン・エドワーズもチャタリング問題を深刻に捉えている。速度リミッターを付けられたようだと語る。
「僕らが途方に暮れてると思うだろうけど、本当に重要なのは明日だし、まだ終っちゃいません。」とエドワーズ。
「解決できたと思うと背後から問題が忍び寄るね。週末のテストは3日間あるし今日はその2日目だけど、どうにも頂上に到達できない。一定の速度でコーナーに入ると必ず振動するから、スピードリミッターでもつけられたような感じです。」
「最悪だったのは予選タイヤを履いた途端にパンクした事です。セッション終盤の時間をかなりロスしました。現状はあまり良い感じじゃないけど、明日は帽子からウサギを出したいよ。」
調子をあげるクリス、クリアラップの取れないホッパー
チーム・メイトのジョン・ホプキンスを抑えての11番グリッドはSBKから転向して初のMotoGPフル参戦となるクリス・バーミューレン。レース前日にマシンのセッティングが満足のいくものに仕上がったらしい。
「今日は最高に嬉しいです。」とクリス。
「ブリヂストンのフロントタイヤのお陰でコーナーが凄く攻めやすくなったんです。今日もクルーは真剣にセッティングを手伝ってくれましたし、午後は予選タイヤをいくつか試して11番グリッドを確保しました。」
「本当はトップ10入りが良かったんですが、それは明日にします。」
12番グリッドはスズキのジョン・ホプキンス。予選では終始クリアラップが取れず、不完全燃焼といったところか。
「今日はレース用のセッティングに集中しました。全部上手くいったし、明日のレースに向けても大きな進歩が見られますよ。」とホッパー。
「冬季中は安定して速いペースを保つ事が一つの目標でしたが、残念ながら今日の予選はあまり上手くいかなくて、速いペースに入れなかったしミスも少しあって結局4列目スタートになりました。目標としていた状態からは大分まだ離れています。レースでは予選のような事にならないようにしないとね。」
「明日はスタートを成功させて、誰も逃がさないようにしながら様子を見ます。」
元チームメイトのジョン・ホプキンスに続いたのは、今シーズンから父のチーム・ロバーツでKR211Vを駆るケニー・ロバーツ。セッション序盤の転倒後にセカンドバイクに乗り換えているが、思い通りのタイムを出す事はできなかったようだ。明日は13番グリッドからのスタートとなる。
「2周目にオイルで転倒してしまったので、セカンドバイクに乗る事を余儀なくされました。」とケニー。
「セカンドバイクで予選タイヤを数セット試しましたが、今日のタイムはレースタイヤで出した記録です。レース用のタイヤとセッティングは今も凄く調子が良いですよ。明日は10位には入れるでしょうね。」
14番グリッドはTECH3ヤマハでダンロップを履くカルロス・チェカ。チームメイトのジェームス・エリソンはIRTAテスト終了時に「初戦で最低でも15位」と述べていたが、予選ではダンロップ勢はエースライダーのチェカが15位以内に入るのが精一杯という苦しい戦いだったようだ。
IRTAテスト不参加を悔やむケーシー、不本意な結果となった玉田選手
15番手以降は、「予選がテストのような状態」と古傷の手術によりIRTAテスト参加が不可能だった事を悔しがるLCRホンダのケーシー・ストーナー、「こんな順位は過去に経験した事がない。頑張って追い抜くしかない。」と語るコニカ・ミノルタ・ホンダの玉田誠選手、プラマック・ダンティーンのホセ・ルイス・カルドソ、TECH3ヤマハのジェームス・エリソン、プラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンが続いた。
不幸にして予選の赤旗中断の原因となってしまったアレックス・ホフマンは、予選後の会見で以下の通り述べている。
「今日の予選はマシン・セッティングとタイヤテストから始めましたが、たった1周走っただけでメカニカル・トラブルが発生してオイルが漏れ出しました。」とホフマン。
「皆の転倒を防ぎようがありませんでした。本当に他のライダーには申し訳ないと思います。彼らには合図を送ったんですが誰も僕なんか見てくれないんです。」
(写真提供:レプソルYPF、カワサキレーシング、ヤマハレーシング、ドゥカティーコルセ、チームスズキMotoGP)
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