|
|
|
|
IRTAテストのヘレス2日目は中野選手がトップタイム |
|
|
|
|
2006年3月12日 ShoppingOn編集部
ヘレスでのMotoGPクラスのIRTAテスト、2日目の3月11日はカワサキの中野真矢選手が2番手のカピロッシのタイムを約0.5秒引き離すトップタイムをマークした。
2日目のコンディションは昨日とほぼ同様の晴天に恵まれ、気温は21度、路面温度が昨日より少し低めの30度だった。この好条件の下、ブリヂストン勢は最高のパフォーマンスを見せつけた。
1位はカワサキの中野選手、2位はドゥカティーのロリス・カピロッシ、3位はスズキのジョン・ホプキンス、そして4位にはカワサキルーキーのランディー・ド・ピュニエという、4人のブリヂストンライダーが上位に進出している。ミシュラン勢のトップにはレプソル・ホンダのルーキー、ダニエル・ペロドサがつけており、今年のルーキーたちのレベルの高さも窺える。
初日にタイヤの不調を訴えたキャメル・ヤマハ勢はミシュランの新しいタイヤを試したようだが、チャタリングの問題は2日目も殆ど解決できていない。
HRCの岡田忠之選手はヘレス2日目の今日も走行している。レプソル・ホンダのバイクだけではなく、コニカミノルタ・ホンダの玉田誠選手のマシンでも走行を行い、玉田選手が訴えるマシンの問題解決にも手を貸しているようだ。
開幕直前のライダーコメントはいつも毎年大変に興味深く、直接的に彼らの状況を隠さず話してくれる傾向がある。レースまでの調整時間が残り少なくなる中、自分のマシンが抱えた問題の事しか頭になくなるのだろう。
1番手タイムは中野真矢選手の記録した1分40秒047。冒頭でカピロッシの2番手タイムを0.5秒上回ると紹介したが、中野選手のこの記録はセッション終了間際に予選タイヤに履き替えての記録であり、カピロッシを始め他のライダーが2日目に予選タイヤを使用したという情報は入っていない。
ロッシが昨年に記録したレースタイヤでのファーステストは1分40秒519、同じくロッシが持つ予選タイヤでのファーステスト記録は1分39秒419だ。ロッシの記録を見る限り、多くのライダーが予選タイヤを試してくると思われる本日3日目のセッション終盤まで中野選手がトップタイムをキープできるかは疑問だが、彼のチームメイトのランディー・ド・ピュニエが4番手につけている事などからも分かる通り、カワサキのマシンが近年にない仕上がりである事は間違いないだろう。
2日目のド・ピュニエは、中野選手の使用したエンジンより一つ古い仕様のエンジンを使用している。先日の事故の影響かどうかは不明だが、新パーツの到着が遅れているようだ。
カワサキのチーム監督、ハラルド・エックルが「過去のカワサキの成績を知っている方はこれを奇跡と言うだろうが、これは現実だ。」と胸を張るように、マシン自体の仕上がりには相当の自信があるようだ。後はブリヂストンタイヤを通じてどれだけエンジンパフォーマンスを効率的に路面に伝えられるかだ。
中野選手は2日目、午前中はブリヂストンタイヤのテストを行い、午後は27周のレースシミュレーションを通してフューエル・インジェクション・システムの評価を行っている。最後に予選タイヤでトップタイムをマークした中野選手は、2日目の70周回を終えて以下の通りコメントしている。
「開幕レースに向けての調整作業に集中しているので、今日は一日忙しかったです。」と中野選手。
「そんな日をトップタイムで終れて嬉しいですね。午前は相当な数のブリヂストンタイヤをテストして、午後の最初には27周のレースシミュレーションを通して選択したレースタイヤの確認を行いました。開幕レースのコンディションも今回に近いでしょうからね。」
「午後のセッションの最後には予選タイヤのテストを行いました。今回の最速ラップはその時のタイムです。新しいZX-RRは戦闘力の高いパッケージに仕上がりました。今はこのサーキットに特化したエンジン性能の調整やシャシーのセッティングになっていますが、近いうちにもっと本来性能に近づける自信があります。」
「レースタイヤの選択にはもう少し決断まで時間がかかりますので、明日もタイヤテストを中心に行います。」
2番手のドゥカティー、ロリスカピロッシは、レースタイヤでロッシのコースレコードを0.025秒上回るタイム、1分40秒544を午前中のセッション中に記録した。午後は27周のレースシミュレーションを終え、その好調さをアピールしている。2日目の全68周回を終えて、カピロッシは上機嫌で以下の通りコメントした。
「今日は気分が良いですよ。」とカピロッシ。
「今朝はこれまでのセッティングに微調整を加えたのですが、とんでもなく速いタイムで走れるようになりました。コースレコードを上回りましたからね。バイクとタイヤの調子が良いし、気象状況も完璧でした。レースシミュレーションは大成功です。」
「シミュレーション中は安定して41秒台で走れた事が一番嬉しいですね。明日はもっと改善を進めます。間違いなく開幕戦では高い順位が取れそうですよ。」
3番手タイムはスズキのジョン・ホプキンス。昨日の8番手タイムから大きく順位を上げており、昨年の自身の予選タイムを0.035秒上回る1分40秒791を記録している。彼も今回は予選タイヤを使用していないので、昨年のスズキのマシンと比較して今年のGSV-Rが他チームと変わらぬ完成度を示していると言えるだろう。
2日目のホッパーは81周回の中で、コーナリングの快適性を意識したフロント周りの調整を行い、同時にヘレスサーキットに適したシャシーのセッティングを探っている。
4番手タイムはトップタイムを記録した中野真矢選手のチームメイト、ランディー・ド・ピュニエ。歯痛もほぼ治り、2日目はテストに集中できたようだ。このポジションには彼自身も驚き、大満足している。89周回を終えてのタイムは1分40秒839。
ド・ピュニエはブリヂストンタイヤのテストに集中し、何種類かのコンパウンドを交互に試したようだ。また、激しいスロットル・ワークにバイクが対応できるよう、フューエル・インジェクションとエンジン・マネージメント・システムの調整も同時に行っていたが、リアのトラクション不足に悩まされ、24周回でロングランを中断している。
「誰かがもし去年の10月に『君はIRTAテストのヘレス2日目は4番手タイムだよ』と言ったとしても絶対に信じなかったと思います。」とド・ピュニエ。
「プレシーズンを通して気分良くライディングできていますし、たくさん働きましたね。まだ少し歯の痛みはありますが、昨日ほど激しい痛みじゃないのでテストに影響はありませんでした。たくさん走行してマシンも進化しましたし、何より今日のラップタイムが嬉しいです。」
「明日は真矢と同じ仕様のエンジンが試せると良いですね。これは部品が明日に間に合えばの話ですが。聞くところによれば、マドリードで足止めを食らっているようです。」
マドリードはカタルーニャとヘレスのほぼ中間に位置する街だ。
「いずれにしろ、部品が新しくても古くてもバイクとラップタイムの改善は進めます。」
5番手タイムはミシュラン勢およびホンダ勢のトップ、レプソル・ホンダのダニエル・ペドロサが記録した1分40秒859。ペドロサはルーキーとは思えない程の安定した走りをヘレスで見せているようだ。
カタルーニャでは悪天候の為に実施できなかった短めのレースシミュレーション22周を終えて、課題としていた体力上の問題が克服されつつある事に満足している。2日目の全88周回を終えてペドロサは以下の通り述べた。
「以前よりも乗りやすいですよ。」とペドロサ。
「まだテスト中ですのでこの順位が本当の力関係かどうかは不明でしょう。でも僅差なのは間違いないし、今のポジションは悪くないですね。」
「今日は昨日よりも疲れました。たくさん周回しましたし、特に午後は気持ちも集中しましたから。でも短いレースシミュレーションも上手くいきましたし、調整も進んだので満足です。シミュレーション中は他のライダーよりペースが遅かったと思いますが、まずは経験ができて良かったです。バイクの挙動が周回毎にどう変化するかを感じる事ができましたし、それにどう適応するべきかを学べました。」
「MotoGPで一番で重要な事は、レース中にどうライディングスタイルを状況に合わせるかです。今回の目的ではありませんでしたが、正しい計算でタイムを刻めたと思います。今重要なのはレースシミュレーションです。ここまで何度も試そうとして、機会を全て失っていましたからね。」
6番手は、新型M1とミシュランタイヤがヘレスサーキットと噛み合わず、レース直前のIRTAテストで予想外の不調を訴える事となったキャメル・ヤマハチームのバレンティーノ・ロッシ。予定通りミシュランから新しいタイヤの供給を朝から受けたようだが初日の問題は解決されず、2日目もマシンの細かい調整に時間を費やしたが、最後まで問題解決には至らなかったようだ。チャタリングに悩まされ続けたロッシが76周回を終えてのタイムは1分40秒915。
「まだ振動についてかなり多くの問題を抱えたままですので、まったくバイクの性能は発揮できませんし、タイムも速くなりません。」とロッシ。
「今日は多くのセッティングに変更を加えました。重量バランス、サスペンション、でも問題は消えません。いくつかの高速コーナーで普段の15〜20km/hくらいタイムが落ちています。良かった事は、チームで熱心に作業して昨日より少し改善はされた事ですが、まだ十分ではありません。他のライダーが凄く強敵に見えます。」
「幸いまだ明日も一日ありますから、それほどは心配していません。レースウイークの土曜日の午後にまだこの問題があったらその時に心配します。今でもヤマハとミシュランには100%の自信を持っています。」
「明日はまた新しいタイヤを試す予定です。ミシュランが今からレースまでの間に頑張ってくれる事は間違いありませんし、次回ヘレスに戻る時にはポジションも回復する筈です。」
7番手タイムはTECH3ヤマハ、ダンロップタイヤを履くカルロス・チェカの1分40秒943。初日の自己ベストタイムを0.789秒縮めており、2日間このポジションのキープした。TECH3関係のコメントはIRTAテスト終了後にまとめてお伝えしたい。
8番手タイムはドゥカティー・ワークスのセテ・ジベルナウが記録した1分40秒954。本日はレースシミュレーションを実施し、マシンやタイヤの期待通りの仕上がりに満足している。82周回を追えての彼のコメントは以下の通り。
「まともな路面コンディションでロングランが出来たのはこれが初めてです。」とセテ。
「チームとブリヂストンの作業は好調です。昨年の11月と比較すると飛躍的に進歩してますよ。ただ、まだ目標までの距離は少しありますので、ここまでの作業と同様に最後まで手は緩められません。」
「27周回のシミュレーションは全くトラブルがなかったので気分が良いですよ。明日はもっと改善が進められるって事ですから。」
9番手はロッシのチーム・メイト、コーリン・エドワーズ。期待したミシュランの新タイヤにもチャタリング改善の兆しが得られず、カタルーニャまでの温厚な彼とは打って変わって少しイラついた様子を見せてきたエドワーズ。74周回中のベストラップは1分41秒105。キャメル・ヤマハチームのダビデ・ブリビオ監督によれば、そろそろ何か別の解決策も3日目に向けて検討するらしい。
「新しいタイヤが来ればもう少し状況は変わると思ったけどね。」とコーリン。
「昨日よりは改善されてタイムも少し良くなりましたが、期待した程の進展は見られません。自分もバレンティーノもチャタリングのせいでスピードを抑えて走っており、以前のようなプッシュはできません。ミシュランの新しいタイヤを試す前にバイクをひっくり返したら洒落にならんと昨日は思いましたが、今日の調子だと明日もまた同じでしょうね。」
「この2日間で先週から何も進展がないのは本当にイラつきます。ミシュランがまた新しいタイヤを持ち込んでくれるのは確実ですから、明日の時間を最大限に活用してセッティングを試し、何か解決できれると良いね。」
続く10番手タイムはリズラ・スズキのクリス・バーミューレン。初日のタイムを1秒828縮める1分41秒110を記録しており、彼の初戦での活躍が期待できる雰囲気になってきた。2日目のバーミューレンはリアタイヤのグリップ向上に専念しており、71周回を経て確実にその効果が得られた様子だ。
11番手タイムはフォルツナ・ホンダのトニー・エリアス。ベースセッティングが見つかってから彼は急激に調子を上げており、91周回を終えてのタイムは1分41秒254。2日目もサスペンションのセッティングを中心に行っている。地元サーキットは彼の味方についたようだ。
「午前はサスペンションにもう少し乗りやすさを追求しました。」とエリアス。
「プレシーズン中の試行錯誤の結果、もうベースセッティングは決定しています。午後はミシュランタイヤのテストを行いタイムを縮められましたが、他の部分を調整すればもっとタイムは良くなります。まだあと一日ありますから、時間を有効に活用するつもりです。」
12番手タイムはコニカミノルタ・ホンダの玉田誠選手。基本的なマシンの改善には良い結果が得られて満足げな玉田選手だが、彼の2台のマシンが異なる挙動を見せると言う新たな問題に直面したようだ。これについてコニカミノルタの技術監督であるジュリオ・ベルナルデッレに相談を受けたHRCの開発ライダー、岡田忠之選手は問題のマシンで数周回を行い、データをベルナルデッレに渡している。ベルナルデッレは現在データの分析中だ。玉田選手のタイムは1分41秒561。
「今日は全体を通して納得できました。」と玉田選手。
「ここまでのレースセッティングは、去年のここでのIRTAテストのレベルには確実に到達しました。ただ、問題は開幕戦まであと一日しかない状態なのに、上位のライダーからタイムが離されている事です。」
「明日は確実に前進したいです。特にずっと悩んでるリアタイヤのチャタリングの問題は解決したいです。ブレーキングの最後がうまくいきませんから。」
13番手タイムは悩めるホンダのエース、レプソルホンダのニッキー・ヘイデンが記録した1分41秒745。97周回を精力的にこなすも進展は得られておらず、2005モデルでの冬季メーカー合同テストが好調だっただけに、開幕を前にして不安な心境を隠しきれなくなった様子のニッキー。レプソルチームの首脳ミーティングは2日目以降も続くようだ。
「ダメ。今日期待したような進展は何一つなし。」とニッキー。
「集中して行ったリア周りの改善もできなかったし、特に言える事もないね。タイヤをいくつか試して少しはましになったけど、全体的な性能は昨日からそれほど上がらないし、気分もあんまり良くない。やる事もたくさんあるし、早く解決策を見つけないとね。」
「昨日と同じように、明日もいくつか変更を加えてみるつもり。」
14番手タイムはKR211Vを駆るチーム・ロバーツのケニー・ロバーツ・ジュニア。ここまで淡々と満足げにテストをこなしている雰囲気のジュニアだが、シャシーの開発が落ち着いた2日目は、サスペンションとタイヤの調整など、基本的なセッティング作業を行っている。タイムは1分42秒127。今期のケニーからは初心にかえったような発言が目立つ。
「特に話すような事はあんまりないです。」とケニー。
「基本的な部分から改善する方法を検討しているんです。特にサスペンションを調整してタイヤとの最適な組み合わせを確認しました。機能しない部品を取り除くだけでも毎回このバイクには勉強させられますよ。調子は良いのでこのまま改善を続けます。」
15番手タイムはダンティーン・ドゥカティーのホセ・ルイス・カルドソが記録した1分42秒593。昨日の自己ベストを1秒908上回るダンロップ勢の2番手タイムだ。
16番手はタイムアタックをする様子を全く見せないフォルツナ・ホンダのマルコ・メランドリ。84周回を終えてのタイムは1分42秒636と、初日の自己ベストである1分42秒106すら更新できなかった。初日の本人の発言通り様々なセッティングを試しているようだが、開幕に向けての戦略なのか、ただ単に不調なのかはっきりしない様子を見せている。彼を中心にヨーロッパで噂になったミシュラン疑惑の後、彼の口数は非常に少ないのかもしれない。
「今日もたくさん作業をこなし、多くのセッティングを試しました。」とメランドリ。
「いくつか良い事が分かっていますが、ここまでが限界ですね。自信はありますよ。明日も予定の作業を続けるのみです。」
17番手から20番手には、ダンティーン・ドゥカティーのアレックス・ホフマン(1分42秒647)、すっかり定位置に戻ったTECH3ヤマハのジェームス・エリソン(1分43秒797)、ドゥカティーの開発ライダーとして参加のビットリアーノ・グアレスキ(1分43秒846)、HRCの開発ライダーでありWGP最高峰クラス年間2位の記録を持つ岡田忠之選手(1分45秒622)が続く。
(写真提供:レプソルYPF、ドゥカティーコルセ、カワサキレーシング、ヤマハレーシング、チームスズキMotoGP)
|
|
|
|
|
|
|
|
|