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■MotoGPクラスのレース内容
●MotoGP午後決勝
ダッチTTこと、2007年MotoGP第9戦目となるオランダ・グランプリが、9万1千429人の観客がつめかけた6月30日(土)のアッセン・サーキットにて決勝レースの日を迎えている。
この日は雲が多く若干風はあるものの青空に恵まれ、生憎の大雨となったフルウェットの予選とは異なる気温21度、路面温度32度、湿度38%という良好なドライ・セッションに恵まれており、今回の決勝レースでは、ウェットの予選で強かった上位グリッドのブリヂストン勢が、ドライのフリー・プラクティス中に好調だった後方グリッドのミシュラン勢から早期の追い上げを受けるという、順位変動の激しい展開が予想された。
ここでは、そのオランダGPにおけるMotoGPクラス決勝レースの詳細を紹介する。なお、全てのライダーや一部チーム関係者のレース後の詳細コメントはこちらの記事を参照の事。
■ウェットの予選で上位グリッドを独占したブリヂストン勢
レースウイーク中を通して1回きりのウェット・セッションとなった予選で上位グリッドを獲得したのは、ポールポジションが悪天候に強いリズラ・スズキのクリス・バーミューレン、2番グリッドが現在のポイントリーダーであるケーシー・ストーナー、3番グリッドが自身2度目の1列目スタートを獲得したカワサキのランディー・ド・ピュニエだった。
■ドライではセッティングに苦しんでいたポールシッター
ちなみにポールシッターであるバーミューレンのドライ・セッションでの総合順位は15番手であり、レースウイークを通してドライ用のセッティングに苦戦している。2番グリッドのストーナーはドライでも総合2番手と気象条件にかかわらず強く、3番グリッドのド・ピュニエはドライでは総合5番手と、レースウイークを通して安定した走りを見せている。
■ミシュランの最上位は6番グリッド
2列目4番グリッドにはシーズン前半を通してドライでのマシンの不調に苦しむホンダ・サテライト勢の1人であるグレッシーニ・ホンダのマルコメランドリ、5番グリッドにはリズラ・スズキのジョン・ホプキンスがつけるなど、今期のウェットタイヤの仕上がりを誇るブリヂストンユーザーが、予選ではウェットでの圧倒的な強さを示して決勝グリッドのトップ5を独占している。
ミシュラン勢の予選最上位となる6番グリッドを獲得したのは、ドライでも総合4番手の好位置につけているフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズだった。
■ドライで好調だったロッシとヘイデンが4列目以下に
今回はドライとウェットでの落差が激しかったミシュラン・ユーザーだが、その中でも特にウェット路面に苦しんだのはフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシとレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだ。
ドライでの総合トップタイムを記録しているロッシは、雨の予選ではセッティングに多くの問題を抱えて4列目11番グリッドに後退、レースウイークを通して新型シャシーの威力を発揮し、ドライではロッシとストーナーに続く総合3番手につけていたヘイデンは、予選では走行時の雨量と選択したタイヤの特性が合わずに5列目13番グリッドと低迷している。
■さりげなくドライでは絶好調だったダンロップと玉田選手
なお、今回のオランダではダンロップ勢が全てのフリー・プラクティスを通して好調な走りを見せていた。ドライでのフリー総合7番手につけるという久々の上位進出を見せた玉田誠選手の予選での走りに注目が集まったが、ダンロップが今期は特に苦手としているウェットタイヤを装着する事になった予選では、玉田選手は全く思い通りに走る事ができておらず、グリッドは最後尾となる6列目18番グリッドにまで沈む結果となった。
■トニ・エリアスは2名の医師に付き添われ専用ジェットで帰国
波乱の雨の予選を経て迎えたこの日の決勝レースは18人のレギュラー・ライダーで争われており、レースウイーク初日午前のフリー・プラクティス1で転倒して左大腿骨を骨折、事故当日の午後に緊急手術を受け、この日の午前中にはバルセロナの病院が準備した専用ジェット機で母国のスペインに帰国したグレッシーニ・ホンダのトニ・エリアスは欠場している。
■4列目からでも勝利を狙うロッシ
過去に5回の勝利を記録しているアッセンでは優勝を狙い、26ポイント先行するポイントリーダーのストーナーとの差を確実に縮めておきたいバレンティーノ・ロッシは予選終了時に「優勝を狙う上で4列目スタートは厳しい!でも以前に4列目からでも優勝が可能である事は見せたよね!」と、大きく不利となったスターティング・ポジションを嘆きながらも、変わらぬ勝利への高い意欲を示した。
■縁起かつぎのロッシに一抹の不安を生むスペシャル・カラー
ちなみに縁起をかつぐ事でも有名なロッシは「スペシャル・カラーを着ると勝てない」というジンクスを気にしていたが、皮肉にも今回はスポンサーのフィアットの新車、新型Fiat500の発売を記念したGP史上かつてなかった程の派手なスペシャルカラーに身を包み、全26周回のレースとなるアッセンのスターティング・グリッドに登場している。
■レース開始、ヘレスの再現を心配し慌てるホフマン
空気が張り詰める中、プラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマンはグリッド上でクラッチの不調を訴え狼狽の色を見せたが、無事にホフマンはピットレーンからではなくグリッド上でレース開始を待つ事ができたようだ。
■ホールショットはまたもストーナー
シグナルが消え、一斉に各ライダーがスターティング・グリッドから飛び出す中、最前列で好調な加速を見せたのは今期絶好調のポイントリーダー、ドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。
■今回も1コーナーまでに後続に飲み込まれるド・ピュニエ
ストーナーの背後にはクリス・バーミューレンと好スタートを見せたジョン・ホプキンスのリズラ・スズキ勢が続く中、1列目3番グリッドからスタートしたカワサキのランディー・ド・ピュニエは、今回も自身の課題とするスタートに失敗して後続集団に飲み込まれており、一気に8つもポジションを落としている。
■ヘイデンがいきなり上位に浮上
1コーナーに向かうストーナー、バーミューレン、ホプキンスの背後にはグレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリが続き、その後ろには5列目からのロケット・スタートを決めたニッキー・ヘイデンが迫る。「ギアをつないだ瞬間に最高のスタートがきれた」とヘイデン。
■1コーナーはノーアクシデント
1コーナーを先頭からストーナー、2番手にバーミューレン、3番手にホプキンス、4番手にメランドリ、5番手にヘイデンを抜き返したフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズ、6番手にヘイデン、7番手にレプソル・ホンダのダニ・ペドロサ、8番手にドゥカティーのロリス・カピロッシ、9番手にプラマック・ダンティーンのアレックス・ホフマン、10番手にロッシ、11番手にド・ピュニエの順となり、コースを外れそうになったプラマック・ダンティーンのアレックス・バロスが最後尾付近に後退した以外に大きなアクシデントもなく、各ライダーが右にマシンを傾けながら通り抜けていく。
■序盤から逃げの体制に入るストーナー、追うリズラ・スズキ勢
ストーナーは後続を圧倒するハイペースでいきなり逃げの体制に入り、その背後ではホプキンスがバーミューレンの前を奪って2番手に浮上。4番手につけるメランドリの後方ではヘイデンがエドワーズを再び交わして5番手につけ、エドワーズは6番手に後退。エドワーズの背後ではペドロサがヘイデンを追いたい素振りを見せる。
■着実にまわりのライダーを交わしながら浮上するロッシ
ロッシはホフマンを交わして9番手に浮上し、さらにホフマンはド・ピュニエにも交わされて11番手に。
2ラップ目のホームストレート、順位は必死に後続との差を広げるストーナーがトップ、2番手にホプキンス、3番手にバーミューレン、4番手にメランドリ、5番手にヘイデン、6番手にエドワーズ、7番手にペドロサ、8番手にカピロッシ、9番手にロッシ、10番手にド・ピュニエ、11番手にホフマン、12番手にカワサキのアンソニー・ウエスト、13番手には最後尾から浮上してきたTECH3ヤマハの玉田誠選手。
14番手にコニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手、15番手にバロス、16番手には唯一同じダンロップタイヤを履くチームメイトの玉田誠選手に猛烈なライバル意識と執念を燃やすMotoGPルーキー、TECH3ヤマハのシルバン・ギュントーリ、17番手には雨の予選で苦しんだホンダLCRのカルロス・チェカ、最後尾の18番手にはチーム・ロバーツのカーチス・ロバーツが続いた。
■ヘイデンが4番手に、チームメイトを追うペドロサ
1コーナーに続くノースループを抜けると5番手のヘイデンは前方のメランドリに各コーナーで並びかけ、そのアタックを阻止し続けるメランドリをコース中間地点のMANDEVEENで交わし、ヘイデンは4番手に浮上した。ペドロサはエドワーズを交わしてチームメイトに続くべく5番手に後退したメランドリの背後につける。
■メランドリ「ドライではやっぱりだめ」
順調に先頭で飛ばすストーナーが2番手のホプキンスから1.6秒の差を広げた3ラップ目の1コーナー、ペドロサはメランドリのインを奪うと5番手に浮上。メランドリは6番手に後退した。「ウェットの予選は良かったがドライではいつものマシンの問題が再発した。チャタリングがひどすぎて走るのが辛い」とメランドリ。
■メランドリの背後に迫るエドワーズ、8番手に浮上するロッシ
さらに後退するメランドリの背後にエドワーズの前輪が迫る。苦戦を始めるメランドリとは対照的に、エドワーズは安定した周回ペースを維持している。その後方8番手のカピロッシの背後では、ロッシが何度もそのインを奪おうとつけ狙うように追走している。
中野選手を交わしたバロスが13番手の玉田選手の背後に迫った頃、ロッシは最終区間でカピロッシを交わすと8番手に浮上し、追撃の対照を前方のメランドリへと切り替えた。
■リズラに割り込むレプソル、ヘイデンが表彰台圏内に
2番手のホプキンスが必死に先頭のストーナーとの距離を1.3秒に縮めた4ラップ目、ヘイデンはコース前半のSTEKKENWAL付近でバーミューレンの前を奪い、ついに今期はまだ一度も到達していない表彰台圏内にたどり着いた。チームメイトの追走を続けるペドロサもそれに続くコーナーでバーミューレンを交わして4番手に浮上。
■ロッシが6番手に
ロッシはメランドリを難なく交わし、続いて最終シケインでチームメイトのエドワーズも交わして6番手に浮上した。
5ラップ目突入時の順位は先頭からストーナー、2番手にホプキンス、3番手にヘイデン、4番手にペドロサ、5番手にバーミューレン、6番手にロッシ、7番手にエドワーズ、8番手にメランドリ、9番手にカピロッシ、10番手にド・ピュニエ、11番手にホフマン、12番手にウエスト、13番手にバロス、14番手に玉田選手、15番手にギュントーリ、16番手にチェカ、17番手に硬すぎるコンパウンドの選択が裏目に出てタイヤがまだ温まらない中野選手、18番手にカーチス・ロバーツ。
■初めてのセッティングで走るカーチス・ロバーツ
1ラップごとに4秒をロスしたというだだ遅れのカーチス・ロバーツは、改修後にフラットな路面にされた4箇所のコーナーのそれぞれで1秒ずつタイムをロスしたという。また、カーチスのマシンには不調だったレースウイーク中には一度も試した事のない試験的なセッティングが施されており、カーチスは「思い通りに走れずに不愉快だった」とコメントしている。
■ロバーツ・シニア「新型シャシーがラグナに間に合うとは限らない」
なお、チーム・ロバーツのオーナーであるキング・ケニーことケニー・ロバーツ・シニアは「レースに向けては以前と全く異なるセッティングを試した。今週はずっと調子が悪いので何かを試しておきたかった」とコメントし、さらに「でも結果は驚くほどに何もかも同じだったけどね」と付け加え、現在のシャシーに思い切った対策を施しても結果が変わらなかった事を明かしている。
また、現行シャシーでは走りたがらない様子のロバーツ・ジュニアを引き連れてサーキットに登場する予定の新型シャシーの製作状況については、「急いで開発は進めているし、ラグナからの投入を目標にはしているが、間に合う保証はないよ」とロバーツ・シニアは語っている。
■怒濤のペースでレプソル勢の背後に迫るロッシ
ここでファーステストを連発するロッシはコース後半区間入り口のDUIKERSLOOTでバーミューレンを交わして5番手につけ、前方のレプソル勢2名の追撃体制に入った。
6ラップ目、先頭のストーナーとの距離を順調に縮めていく2番手のホプキンスと3番手のヘイデンの距離は2.5秒であり、そのヘイデンの真後ろにつけるペドロサの背後にはすでにロッシが迫っている。
7ラップ目突入時点の順位は先頭からストーナー、2番手にホプキンス、3番手にヘイデン、4番手にペドロサ、5番手にロッシ、6番手にバーミューレン、7番手にエドワーズ、8番手にド・ピュニエ、9番手にカピロッシ、10番手にメランドリ、11番手にホフマン、12番手にバロス、13番手にウエスト、14番手に玉田選手、15番手にギュントーリー、16番手にチェカ、17番手に中野選手、18番手にカーチス・ロバーツ。
■ペドロサを交わしたロッシがヘイデンへの追撃を開始
最終シケインの入り口、ペドロサの背後に密着するように走行していたロッシはペドロサの右イン側に並びかけると、滑り込むように前を奪って4番手に浮上してヘイデンの背後につけた。同じ頃、クラッチが滑り、苦しい走りを強いられているカピロッシはメランドリに交わされて10番手に後退。
■場内スクリーンでロッシの接近を観察するストーナー
先頭のストーナーがサーキット内の大型スクリーンに映し出されたロッシの快進撃をチラ見しながら先頭で必死に逃げる8ラップ目、ついにロッシは3番手を走行するヘイデンを捕らえ、コース前半最後のコーナーであるMANDEVEENでその内側を奪うと、ついに表彰台圏内の3番手に浮上。
■ロッシの次の照準は2番手のホプキンスに
この時点でロッシの前を行くのは、必死にストーナーを追いながらマシンに振動の問題を抱えだしたホプキンスと、その1秒前を走る先頭のストーナーだけだ。ロッシはストーナーの3.5秒後方を走行しており、2番手のホプキンスまでは2.5秒差だ。
■ロッシのハイペースに引っ張られるレプソルペア
ロッシに交わされて4番手となったヘイデンは、怒濤のハイペースで飛ばすロッシとの距離を空けられないようにペースを上げて追いすがり、その後ろにはペドロサがやはり追いすがっている。
■バーミューレンの背後には順位挽回を焦るド・ピュニエ
ヘイデンとペドロサが揃って前を行くロッシのペースに引っ張られている9ラップ目、コース前半のタイトコーナーでエドワーズがバーミューレンを交わして6番手に浮上し、7番手に後退したバーミューレンの後方にはド・ピュニエがゆっくりと迫りつつある。
■中間グループが大所帯に
先頭のストーナーと3番手のロッシとの差が3秒に迫った10ラップ目、メランドリとバロスが激しく9番手を争いながらコーナーごとに順位を入れ替える中、やがてカピロッシ、ホフマン、ウエスト、玉田選手、チェカなどがそれに加わり、大きな9位争いの集団を形成し始める。
■ホプキンスの背後にロッシが密着
11ラップ目に入るとやや分散していた上位集団が1つの塊となり、先頭のストーナー、2番手のホプキンス、3番手のロッシ、4番手のヘイデン、5番手のペドロサが均等な1秒程度間隔で1列に並ぶ。2番手のホプキンスと3番手のロッシとの差はやがて0.5秒を切り、7番手のバーミューレンの背後でド・ピュニエが密着走行を開始した12ラップ目に入ると、ここでホプキンスとロッシとの差は完全に削り落とされた。
■ロッシに交わされてリズムを落とすホプキンス
ストーナーの1.5秒後方でホプキンスとロッシが2番手を争い、ロッシは第1区間の中低速カーブでついにホプキンスから前を奪い取って2番手のポジションについた。振動するマシンにここまで絶え、ハイペースを維持してきたホプキンスは、3番手に後退後は全くストーナーとロッシについて行く事ができなくなり、背後から迫り来るレプソル勢2台の猛火にされされる事に。
■突然グラベルに飛び出すバーミューレン
ホプキンスが走行リズムを崩しかけたこの時、チームメイトのバーミューレンはさらに大きな不運に見舞われている。7番手を走行していたバーミューレンは、突如第1区間の終わりがけにド・ピュニエの体当たりを後方から受け、そのままグラベルに飛び込んで転倒した。
■うなだれるド・ピュニエ「クリスに申し訳ない・・・」
バーミューレンのインを奪おうと焦ったド・ピュニエが、右カーブへの華麗な進入を見せたバーミューレンの斜め右後方から容赦なく追突したのが原因だったようだ。「クリスには本当に申し訳ない。それにチームにも申し訳ない」と恐縮しきりのド・ピュニエ。
事態を把握してグラベル内でうなだれるド・ピュニエのマシンは完全に停止しておりレースの継続は不可能となったが、一方バーミューレンは元気にグラベルをこぐようにしながら必死でコースまで辿り着き、パーツが壊れてコーナリングが難しくなったマシンでレースに復帰している。まるでオリビエ・ジャックの誘発した玉突き衝突に巻き込まれたトルコの再現だが、今回ばかりはロスしたタイムは相当に大きく、先頭から20秒後れのポジションを走る17番手の中野選手からさらに20秒後方を走るカーチス・ロバーツとほぼ同じポジションからのレース再開となった。
■バーミューレン「どう考えても入る隙間はなかったでしょう」
「後ろに彼が迫っているのなんて全く見えなかったし、あれはどう考えても入る隙間なんかなかったでしょう。今シーズンはやたら他のライダーに押し出されるけど、次戦では勘弁して欲しいよね!」とバーミューレン。
■ポール・デニング監督「空中殺法にやられるとは」
なお、この件に関してリズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、「まさかレース中盤にライバルから空中殺法が飛んでくるとは思わなかったし、想定していなかった。クリスが怪我をせずに済んだのはいいニュース」とコメントしている。
■快進撃の止まらないロッシがストーナーの背後に到達
その後もロッシの勢いは全く留まる様子を見せず、13ラップ目に1.5秒あった先頭のストーナーとの距離は、翌周回の14ラップ目には一気に0.5秒差にまで縮まった。この時点のロッシのペースはストーナーを1秒上回っている。リアを激しく揺らし、ホイールスピンを頻発しながら必死に逃げ回るストーナーの背後から、カタルーニャでの敗北後「ストーナーに勝てる事は分かっている」とコメントしたロッシは容赦なく攻め立てる。
■ホプキンスに連なるヘイデンとペドロサ
3番手のホプキンスはロッシの2秒後方まで後退しており、真後ろにはヘイデンとペドロサが列車のごとく連なっているが、速度的にはまさに新幹線だ。
■シケインで並びかけるロッシだが
最終シケイン直前にロッシはストーナーからイン側を奪うが、ラインを崩さずに最初にシケインに進入したのはストーナーの方だ。ロッシはストーナーの背後に続きホームストレートでの激しい加速を開始。リアを揺らしながら逃げる先頭のストーナー。
■ホプキンスが5番手に後退
クラッチの不調のためにカピロッシが一気に15番手まで後退した15ラップ目、ストーナーとロッシがノースループに向けて走り去った直後の1コーナー、ヘイデンはホプキンスを交わして再び表彰台圏内に返り咲き、ひるんだホプキンスを続け様にペドロサも交わして4番手に浮上。ホプキンスは一気に5番手に後退した。
■リアを滑らしながら逃げまくるストーナー
リアが暴れまくるマシンを危なげなくコントロールしながら逃げるストーナーの背後でロッシがプレッシャーを与え続ける16ラップ目、順位は先頭からストーナー、2番手にロッシ、その2.6秒後方の3番手にヘイデン、4番手にペドロサ、5番手にホプキンス、ホプキンスから2.5秒後方には6番手のエドワーズ、さらに13秒後方には7番手のバロス。
■ようやくペースを上げ始める中野選手
バロスの4秒後方ではメランドリ、ウエスト、ホフマン、チェカの4台が激しく8番手を奪い合い、その背後を走る玉田選手の後方にはタイヤがようやく温まった中野選手が迫る。
■ミスをしてもすぐに距離を縮める余裕のロッシ
コース前半の右コーナーでロッシはストーナーの横に並びかけるがカーブを曲がりきれずに大回りとなり、その差を若干空けられてしまう。17ラップ目に再びストーナーの真後ろにつけたロッシは最終シケインで再びインを奪うべく並びかけるが、やはりラインを崩す様子を見せないストーナーが悠然と最初にシケインに飛び込み、それをロッシが再度追いながらメインストレートに向けて加速するというシーンが繰り返された。
■これ以上ペースを落とせないホプキンス
ここで先頭集団は完全にストーナーとロッシの2台のみとなっており、第2集団はヘイデンとペドロサのレプソルコンビの2台のみ。遅れた5番手のホプキンスは後方から迫るエドワーズの圧迫感を気にしつつ、リズムを回復して再びペースを維持しており、エドワーズはホプキンスにすぐには近づけない状態となった。
■無念のカピロッシ「今の自分は厳しい状況」
クラッチの不調がどうしようもなくなったカピロッシは18ラップ目にピットインし、レースの継続をここで断念している。「すごく悲しい事態。今の自分が厳しい状況に立たされているのは間違いのない事実だが、諦めずに改善を続けていきたい」とカピロッシ。
■中野選手は玉田選手を交わして12番手に
19ラップ目、メランドリ、ウエスト、ホフマン、チェカが次々と順位を入れ替えながら8番手を争うその後方では、TECH3の2台に挟まれた中野選手が玉田選手の前をうかがい始めた。20ラップ目に中野選手は玉田選手を交わして12番手に浮上するが、8番手を争う4人の集団との距離はなかなか縮まらない。
21ラップ目の最終コーナーでホフマンはメランドリとウエストを交わして8番手に。
先頭のストーナーと2番手のロッシが全く同じ周回ペースでトップを争う22ラップ目、3番手のヘイデンはペドロサをおいて徐々にロッシとの距離を詰め始めている。
■ついにロッシがトップに浮上
ロッシがストーナーの背後での密着走行を続ける23ラップ目の最終シケイン入り口、ロッシは完全にブレーキング競争でストーナーと横並びになり、ラインを奪われてシケイン側に倒し込めないストーナーよりも先にマシンを右に傾け、メインストレートを先頭で走り抜けた。24ラップ目のリードを開始したのはロッシの方だ。
■ロッシのハイペースについていけないストーナー
ストレートを抜けて1コーナーまで逃げ切ったロッシはそこからレース序盤と同様の猛チャージを開始し、あっけに取られる様子のストーナーとの距離を0.7秒差にまで開いた。2番手のポジションからロッシを追う側になったストーナーの2.5秒後方には3番手のヘイデン、さらに4秒後方には4番手のペドロサ、5番手のホプキンス、6番手のエドワーズが続く。
中盤グループの8番手争い以外に大きな順位変動はないまま、ロッシはストーナーから1.5秒の差を保ちながら最終ラップ開始のホームストレートを通過。トップのロッシ、2番手のストーナー、3番手のヘイデン、4番手のペドロサ、5番手のホプキンス、6番手のエドワーズの長い間隔の1列となった上位集団が1コーナーを通過した後、大きく遅れて7番手のバロスが単独通過し、さらに遅れてホフマン、ウエスト、メランドリ、チェカの4台がほぼ同時に1コーナーを奪い合った。その後方の中野選手、遅れた玉田選手もそれに続いた。
■バレンティーノ・ロッシが今期3度目の優勝!
26周を終えて最初にチェッカーを受けたのは、希望通りに4列目からの勝利を成し遂げ、スペシャル・カラーでの敗北ジンクスを打ち破ったフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだ。
■ストーナーが2位、ヘイデンは9戦ぶりとなる表彰台への復帰
2番手でチェッカーを受けたのはポイントリーダーであるドゥカティーのケーシー・ストーナー。続く3番手は、2006年シーズンのバレンシア以来となった表彰台に9戦ぶりに戻り、2007年シーズン前半の絶不調からの脱出を、笑顔をこわばらせて感動を隠しきれないといった表情で喜ぶディフェンディング・チャンピオン、レプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンだった。
■ロッシ「昨晩はあまり寝られなかった」
激しくマシンの上で小刻みに揺れながら今期3度目の勝利を喜ぶロッシは「自分の経歴の中でも5本の指に入るすごいレースだった。昨晩はあまり寝られなかったし、こんな結果が待っているとは夢にも思ってなかった」と述べ、後方グリッドスタートしたレースでの完璧な勝利を心から喜んでいる様子だ。
また、ヤマハは1961年の国際レース初参戦から数えて46年目にして、最高峰クラスでの150勝目をこのロッシの劇的な逆転勝利により達成している。
■ブリビオ監督「バイクとタイヤは完璧だった」
フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、「ヤマハの150勝目を飾るのにふさわしい素晴らしいレースだった。今回はバイクとタイヤの両方が完璧だったのでバレンティーノが最高の走りを実現できた。ミシュランとヤマハ、それに全てのチームのメンバーに感謝したい」とコメント。
■ストーナー「バレンティーノの速さは凄まじかった」
序盤から逃げ切り体制に入ったものの、今回は惜しくも2位に終わったドゥカティーのケーシー・ストーナーは、「バレンティーノがすごい勢いでバトルをしながら近づいてきているのは場内スクリーンを見ながら分かっていた。しかもバレンティーノの速さは凄まじかった。ペースを何とか上げようと試みたが、一度交わされた時にはすでに限界ぎりぎりの状態だった」と述べ、今日のロッシの速さには完敗である事を認めている。
なお、ストーナーはスローダウン・ラップ中にガス欠を起こし、自力でパルクフェルメに戻る事ができなかったが、これについてストーナーは「あれは今回のレース中に横滑りやホイールスピンを頻発させたので、プラクティスの時よりもガソリンを多めに使ったから」とコメントした。
■スッポ監督「さすがに毎回勝つのは難しい」
ドゥカティーMotoGPチームの監督であるリビオ・スッポは「さすがに全てのレースで勝利を飾るのは難しいね」とレース後に述べている。
■ヘイデン「そろそろ見捨てられてもおかしくなかった」
新型シャシーの投入と同時に突如安定したと走行ペースを取り戻し、今回のオランダで9戦ぶりの表彰台を獲得したニッキー・ヘイデンは、パルクフェルメに戻るとすぐに、シーズン前半の屈辱とも言える不調の中を共に戦ってきたレプソル・ホンダのクルーの側に歩み寄り、噛みしめるように喜びを静かに分かち合った。
ストーナーと同様にスローダウン・ラップ中にガス欠を起こし、5位に終わったリズラ・スズキのジョン・ホプキンスのマシン押してもらってパルクフェルメまで戻ったヘイデンは「自分のために頑張ってくれたチームと全てのレプソル・ホンダのスタッフに深い感謝の気持ちを伝えたい。もう自分の事を諦めたり非難をし始めてもおかしくない時期だったのに、特にバルセロナの後の2日間のテストでは一緒にものすごく頑張ってくれた。彼らの事を、本当に有り難く思う」とコメントし、苦しかったシーズン前半を振り返りながら、チーム関係者に対する感謝の気持ちを伝えている。
■ヘイデンの勝利に自分たちの将来を重ねるサテライト勢
また、今回のこのディフェンディング・チャンピオンの復調を喜んでいるのは何もホンダ・ワークスのスタッフだけではない。今期は思い通りにセッティングが進まないという問題を抱え、揃って低迷状態にあるホンダのサテライト陣営のほとんどのメンバーも、この改良型RC212Vの好調な走りに自分たちの近い将来のイメージを重ねて、大きく期待を膨らませているようだ。
今回は中野選手が12位でレースを終えたコニカミノルタ・ホンダのチームオーナーであるジャンルカ・モンティロンは、現状のパッケージでは完全にはスポンサーの期待に沿う事ができないとした上で、「ファクトリー・ホンダ(レプソル)が好調に改善の兆しを今回のレースで示してきた事に期待が持てる。これからのシーズン後半戦に向けて、サテライト・チームについても、私たちが抱える現在の状況に何らかの変化が加えられる事を願いたい」とレース後にコメントした。
■オランダGPレース結果
以下にフランスGP決勝レースの結果を示す(全ライダーの詳細コメントはこちらの記事を参照の事)。
1) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 42分37秒149(26周)
2) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 42分39秒058(26周)
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 42分43秒226(26周)
4) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 42分47秒614(26周)
5) ジョン・ホプキンス USA リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 42分50秒287(26周)
6) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 42分52秒288(26周)
7) アレックス・バロス BRA ダンティーン デスモセディチGP7 43分13秒224(26周)
8) アレックス・ホフマン GER ダンティーン デスモセディチGP7 43分18秒917(26周)
9) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 43分20秒754(26周)
10) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 43分20秒945(26周)
11) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 43分20秒975(26周)
12) 中野真矢 JPN コニカミノルタ・ホンダ RC212V 43分25秒045(26周)
13) 玉田誠 JPN ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 43分31秒217(26周)
14) シルバン・ギュントーリ FRA ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 43分34秒867(26周)
15) カーチス・ロバーツ USA チーム・ロバーツ KR212V 44分05秒786(26周)
16) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキ・MotoGP GSV-R 44分11秒957(26周)
-) ロリス・カピロッシ ITA ドゥカティ・マルボロ デスモセディチGP7 28分48秒517(17周)
-) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 18分14秒507(11周)
・決勝時の気温は21度、路面温度は32度、湿度は38%。路面状況はドライ。
・アッセンのサーキットレコード(990cc)は2006年にN.ヘイデンが記録した1分37秒106
・アッセンのベストラップレコード(990cc)は2006年にJ.ホプキンスが記録した1分36秒411
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