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■250ccクラスのレース内容
●250cc午後決勝
2日間の予選が悪天候により大荒れとなったMotoGP250ccクラスの決勝レース当日は、午前のウォームアップ・セッションと午後のレース共に雲は多いものの好天に恵まれ、良好なドライ路面での戦いが行われている。レース開始時の気温は23度、路面温度は27度、湿度は22%。
■怒濤の追い上げを開始するロレンソ
ポイントリーダーとして今期は無敵の強さを誇るフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソが5列目20番グリッドからの好スタートを決めて、1コーナーまでの怒濤のストレート加速でまわりのライダーを一気に10人交わした頃、ホールショットを奪ったのは1列目4番グリッドからスタートしたエミー・カフェラテのトーマス・ルティーだった。
ルティーの背後には2番グリッドからスタートしたコプロン・チーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾ、ポールポジションからスタートしたマステルMapfreアスパルのアルバロ・バウティスタ、3番グリッドからスタートしたレプソル・ホンダの青山周平選手、マステルMapfreアスパルのアレックス・デ・アンジェリス、レプソル・ホンダのフリアン・シモン。
フリアン・シモンを後方にはミカ・カリオと青山博一選手のKTMコンビ、さらに9番手にまで順位を挽回したロレンソが続く。
■バウティスタがレースの前半をリード
2ラップ目のストレートでバウティスタは先頭のルティーを交わすと11ラップ目までレースをリードし、その間にロレンソは激しい走りで先頭集団となったバウティスタ、5ラップ目までに上位集団に浮上したチームスコットのエクトル・バルベラ、デ・アンジェリス、ドヴィツィオーゾの4名の背後まで迫った。
■ミカ・カリオがロレンソに追突されリタイア
なお、ロレンソは2ラップ目の最終コーナーからの怒濤の立ち上がり加速で6番手を走行していたカリオの背後から追突し、カリオのマシン後方の排気管はこの衝撃で完全に破壊されており、砕けながら宙を舞っている。
好調なマシンを壊されて走行不能となったミカ・カリオは、マシンを叩いて怒りを顕わにしながらスローダウンしリタイア。特にロレンソの方のマシンにダメージはなく、その後も好調なペースでトップ集団を追った。
■無念のカリオとノーコメントのロレンソ
レース後にミカ・カリオは「いいスタートがきれて1ラップを過ぎたところでポジションを6番手まであげたが、2ラップ目の最終コーナーで背後からロレンソに接触されて左の排気管が壊れた。確実にいいレースができると思っていたので非常に残念。」とコメントしているが、ロレンソ側のレース後のコメントには、ミカ・カリオへの追突に関する言及は一切なかった。
■ホンダ時代のロレンソ
ちなみにロレンソは昨年のアプリリアへの移籍以降は追突などの危険行為は目立たなくなっていたが、それ以前のホンダ時代には他のライダーとの接触も辞さない強引とも言えるライン取りが、まわりから非難される事の少なくないライダーだった。
■2005年にはペドロサの排気管に追突
2005年のドイツGPではダニ・ペドロサの排気管に追突して本人はリタイア。追突されたペドロサはその衝撃により排気管が大きく折れ曲がり、残りのレースを通して片方向にマシンを傾ける事が困難になっている。最終的にペドロサはライディング・テクニックを駆使してそのレースを勝利したが、アルベルト・プーチなど、ペドロサのチーム側は「これ以前にもロレンソには度重なる危険行為があった」と痛烈に非難した。
■2005年はその後の危険行為により厳しいペナルティー
その2戦後の日本GPでは、ロレンソはやはり強引なライディングで以前にも追突した事のあるアレックス・デ・アンジェリスに接触して転倒させており、この結果、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)はロレンソのこの時の行為を身勝手な危険行為だと断定、その次戦のマレーシアGPへの出場停止という厳しいペナルティーをロレンソに課している。
■先頭集団に加わり一気にトップを狙うロレンソ
話を今回のレースに戻そう。ルティーが先頭集団から脱落して間もない10ラップ目、ロレンソは、アプリリア勢の中でエンジンパワーの不足に苦しむホンダのドヴィツィオーゾを交わして4番手に浮上し、11ラップ目の1コーナーでは3番手のデ・アンジェリス、さらにはその前のバルベラも交わして2番手につけると、先頭を行くバウティスタの背後に迫った。
■ロレンソがトップに
12ラップ目の1コーナーでついにロレンソはバウティスタも交わしてトップに浮上。13ラップ目のストレートでバルベラはロレンソを抜き返してトップに躍り出るが、続く5コーナー付近では走行ラインを外してステップから両足が離れるほどのミスを犯してルティーの背後の6番手に後退している。
その後の先頭集団はトップにロレンソ、背後ではバウティスタとデ・アンジェリスがチームメイト同士で激しく2番手を奪い合い、やや遅れて4番手にドヴィツィオーゾ、その2秒後方の5番手には再び先頭集団に加わりたいバルベラがつけた。
■博一選手がレプソル勢を交わし7番手に
先頭集団から遙か後方の6番手にはルティー、7番手には青山博一選手、その後方ではフリアン・シモンと青山周平選手がレプソルのチームメイト同士で8番手のポジションを奪い合っている。
■激しいトップ3台の攻防戦
17ラップ目にバウティスタはロレンソを交わして再びトップに立ち、ロレンソは続く折り返しのコーナーでデ・アンジェリスにも交わされて3番手に後退したが、19ラップ目の最終コーナーからの立ち上がりでトップを走るバウティスタはマシンを暴れさせ、そのイン側をロレンソとデ・アンジェリスの2名に同時に奪われた事から3番手に後退した。
ドヴィツィオーゾがバルベラに交わされて4番手に後退した20ラップ目のストレート、先頭にはロレンソが立ち、2番手となったデ・アンジェリスに3番手のバウティスタが並びかけるが1コーナーを奪う事はできない。
■残り2周でデ・アンジェリスがトップに
20ラップ目の最終コーナーを先頭のロレンソ、2番手のデ・アンジェリス、3番手のバウティスタが順に抜け、ついに3台は21周目の最終ラップに突入した。ホームストレートの加速で前に出て1コーナーのイン側を最初に奪ったのはデ・アンジェリスだった。
■遺恨を残す事になったエスパーニャ・バトル
先頭に躍り出たデ・アンジェリスの背後には、2番手のロレンソと3番手のバウティスタが前を争いながら続いたが、ここで2番手争いにアクシデントが発生する。
■バウティスタが接触しロレンソは8位に後退
コース前半区間の右コーナーに入ろうとしたロレンソのイン側にバウティスタが直行するように進入。2台は煙をあげて接触し、完全にバウティスタに進路を奪われたロレンソはグラベルにスライドしながら突入していった。ロレンソはマシンを起こしてレースには復帰したが、ここまでの追い上げもむなしく順位を8番手まで後退させてしまう。
■最終ラップの最終コーナーを同時に抜けるアスパルの2台
ロレンソの脱落により優勝争いはトップのデ・アンジェリスと2番手のバウティスタの2台に絞られた。デ・アンジェリスは最終コーナーのイン側をバウティスタに奪われ、アスパルチームの同じカラーリングの2台は横一列に並んでコントロールラインに向けての最後の加速を開始。
■優勝はストレート加速で少し勝ったバウティスタ
僅か0.087秒先にチェッカーを受けたのは、250ccクラスで初の勝利を手にしたマステルMapfreアスパルのアルバロ・バウティスタだった。チームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは惜しくも2位となり、今期3回目の表彰台を獲得。
トップの2名から7秒遅れて3位のチェッカーを受けたのは、開幕戦以来の表彰台を獲得したチーム・トースのエクトル・バルベラ。コプロン・チーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは4位となり、地元イタリアでの表彰台を逃している。
最終ラップでバウティスタとの2番手争いの末に転倒を喫したフォルツナ・アプリリアのホルヘ・ロレンソは8位でチェッカーを受けた。
■バウティスタ「チームメイトを勝たせるわけにはいかなかった」
今回のイタリアで250ccクラスでの初勝利を飾ったバウティスタは「今回は初優勝ができて本当に嬉しい。自分の今期のメインの目標は学習する事だと言ってきたが、その目標を達成できているだけではなく、チームの頑張りのおかげで昨日のポールポジションや今回の勝利など、短期間に成果をあげる事もできたし、今週は完璧なレースウイークだった。」と、今回の初勝利への高い満足感を示した。
最後のデ・アンジェリスとのバトルについては「最終ラップではアレックスがトップを走っていて、彼からは地元勝利への強い意志を感じていた。彼がここで勝ちたかった気持ちは理解していたが、そのまま彼を先行させる訳にはいかないと思った。メインストレートでは2人で横並びになったが、彼のバイクより自分のバイクの方が若干速かったので、それが今回の結果につながった。」と述べている。
■デ・アンジェリス「今日はストレート加速が不利だった」
惜しくもチームメイトに勝利を奪われる形となったアレックス・デ・アンジェリスは「今日のアルバロのマシンは自分のよりも少し速かったので、ホームストレートで勝利を争う形になれば不利な事は分かっていたし、かなり難しい状況だとすでに理解はしていた。できる限り最終コーナーからの脱出加速を上げる事に意識を集中して頑張ったが、思い通りにはいかなかった。」と、ストレート加速では分がなかった事をコメントした。
■ロレンソとの見解の相違、バウティスタ「よくある事」
なお、バウティスタは最終ラップでのロレンソとの接触に関しては「ロレンソを交わそうと思い彼の背後につけたが、コーナーで接近して互いに接触した。これは最終ラップでは普通の出来事だし、よくある事だと思う」と述べ、特に特別な事ではないとする姿勢を強調している。
■怒りの静まらないロレンソ「今回が初めてではない」
これに対し、20番グリッドからの激しい追い上げの後にレースをリードし、表彰台を目前にバウティスタと接触して転倒、結果を8位に終える事になったロレンソは、「今シーズンの序盤から非常に速くなってきているスペイン人ライダーとの間に今回は悪い出来事があったが、これは今年に入ってから1回目ではない。誰もが今回のレースでの自分の走りはすごかったと賞賛してくれるが、現段階において自分は納得できていないし、非常に頭にきている」とコメントしており、バウティスタへの怒りを顕わにしている。
さらにロレンソは「年間ポイントを少し失う事になったが、このレースで自分たちの実力には改めて自信を持つ事ができたし、マシンの完成度の高さにも誇りが持てる。この怒りをいい方向に導き、次戦のレースにつなげたい。今回は表彰台を獲得できそうだったが、フェアではない方法で奪われる事になった」と語っている。
■昨年まではクリーンな走りに定評があったバウティスタ
ちなみにバウティスタはこれまでは非常にフェアな走りに定評のあるクリーンなライダーとされてきた。しかしながら、今年の中国GPではアンドレア・ドヴィツィオーゾを最終ラップの14コーナーでのハイスピードからのブレーキング合戦の末にコースの外に押し出すなど、今期はやや強引と言える場面も少なくはない。
■ミカ・カリオに押し出された昨年の記憶が影響?
バウティスタが攻めのライディングに転じたのは昨年のオランダGPに起因するところが多い。バウティスタは、昨年の125ccクラスのアッセンのレースでは、最終ラップまで優勝を争っていたKTMのミカ・カリオが取った強気のライン取りが原因で最終シケインからコース外に押し出され、勝利を逃すという悔しい経験をしている。この時にバウティスタは「クリーンなだけでは勝てない事が分かった。今後は攻め方を考えたい」と述べており、それ以降は現在に近いアグレッシブな走りが目立つようになっている。
■ドヴィツィオーゾ「エンジンパワーが厳しかった」
今回は地元での表彰台を逃し、4位でチェッカーを受けたコプロン・チーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、「今回の結果には満足できていない。常に限界走行を強いられ、非常にリスクの高い戦いだった。路面状況が良くなりレースのペースが上がったので、馬力がライバルたちに負けている分を他の方法で補わなければならなくなったが、この方法では色んな問題が発生してしまう。例えばタイヤが通常よりも早く消耗してしまうし、腕もしびれてくる。」と、今年は昨年に比べて言及する事が減っていたホンダとアプリリアのエンジンパワーの差について述べ、高速サーキットのムジェロではそれが原因となり、厳しい戦いを強いられた事を明かした。
■日本勢のトップは青山周平選手の6位
日本勢では、レプソル・ホンダの青山周平選手が6位、怪我からの復帰戦となったコプロン・チーム・スコットの高橋裕紀選手が11位、カンペテーラの関口太郎選手は3戦連続のポイント圏内となる嬉しい15位を獲得している。
なお、レース中は常に7位付近を走行していたKTMの青山博一選手は、19ラップ目にエンジントラブルに見舞われてスローダウンし、最終的には21位で今回のイタリアGPを終えた。
■青山周平選手「今期のここまででは一番のレース内容」
今期最高位となる6位での完走を遂げた青山周平選手は、「燃料タンクが満タンの時に若干問題があったのでスタートでは少し苦しみ、序盤はあまり好感触が得られていなかった。ただ、レースが中盤に入ってから終盤にかけてはすべての調子がかなり良くなり、まわりのライダーと戦えるようになった。何度か彼らを交わそうとしたが、最終ラップでミスをしてしまい順位を5位に上げる事はできなかった。最後は全く右足に力が入らなくなったが、痛みそのものはもうほとんどない。6位は今期の自分の最高位だし、レースもここまでの一番の内容だったので復調の兆しにあると思う。次戦でもさらに調子を上げられるか楽しみ」とコメントし、今回の結果が今後の成績アップのきっかけになる事に期待を示した。
■高橋選手「体調を考えれば満足のいく結果」
骨折した腕の手術後の復帰戦で11位を獲得した高橋裕紀選手は、「体調を考えれば今回のレースには満足。スタートのグリッド位置も低かったので、ポイントを獲得するのは簡単じゃない状況だった。スタートがうまくいて、最初はリスクを避けて注意深く走り、5周をすぎたあたりから今できる最大限の走りをした。左腕がまだ100%の状態ではないので、今回のレースではかなり右腕を酷使し負担がかかったが、成績は悪くなかったので自分の自信につながった。頑張ってくれたチームに感謝したい。」と述べ、万全ではない左腕で獲得した今回の成績には満足している様子だ。
■関口選手は3戦連続のポイント獲得
昨年の大怪我の影響により今シーズンの序盤を苦しんできた関口太郎選手は、完走者が多い中での今回のポイント獲得について「スタートは良かったがいいペースをつかむまでに何周かを要した。最後の5周では自分の前のグループを捕らえようと頑張ったが難しかった。それにまだあまり大きなリスクは冒したくなかったので、僅か1ポイントでも今回の成績には満足」とコメントし、3戦連続のポイント獲得を喜んでいる。
■青山博一選手「終盤にエンジンにトラブル」
今期4戦目のノーポイントとなった青山博一選手は、「第2集団ではいいバトルができていたし、弟の周平とそのチームメイトのフリアン・シモンの前に出ることはできたが、そこからエンジンがスローダウンし順位が落ちてしまった。」とレース後にコメントしている(全ライダーの順位は結果表を参照)。
・決勝日の気温は23度、路面温度は27度、湿度は22%。路面状況はドライ。
・ムジェロのサーキットレコード(250cc)は今回H.バルベラが記録した1分54秒061
・ムジェロのベストラップレコード(250cc)は2005年にJ.ロレンソが記録した1分53秒457
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