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2007年2月23日
グレッシーニ・ホンダが2007年シーズンのチームカラーを発表したその前日の2月21日に、リズラ・スズキMotoGPチームも世界のプレスに対して、2007年仕様の新型800ccマシンとそのカラーリングを披露している。言うまでもなく、スズキの2007年型800ccマシンのカラーは昨年に引き続きリズラ・ブルーだ。
■リズラ・スズキも新型マシンをお披露目
前回のカタールまでは黒カーボン仕様のマシンでテストを行っていたリズラ・スズキ・チームだが、本日の2月23日からスペインのヘレスにて3日間の予定で行われるMotoGPクラスの2007年プレシーズン最後のIRTAテストには、今回の新しいリズラ・ブルーのマシンがサーキットに登場する事になる。
■怪我を負ったホプキンスも登場
今回の新マシン発表会には、リズラ・スズキMotoGPチーム監督のポール・デニングとレギュラー・ライダーのクリス・バーミューレンの他に、前回のカタールでのIRTAテスト中に時速190kmでハイサイドをおこして全身を打撲、さらに右足の指を骨折するという怪我を負ったジョン・ホプキンスも、XRG0の名で開発された新型マシンを彩る配色と同じリズラ・ブルーのレーシング・スーツに身を包み、その元気な姿を現している。
■新型GSV-R800の概要
以下に、今回の発表でプレスに公開された新型GSV-R800の概要、および990ccマシンからの変更点などを簡単に紹介する。
■よりコンパクトになった高回転800ccエンジン
コードネームXRG0、新型GSV-R800グランプリレーサーは、2006年シーズン中の990ccマシンでの戦いを通して集められたデータを分析する事によりその開発が進められたという。990ccから800ccへの小排気量化に伴い、改めて設計がし直されたボアによりエンジンはさらにコンパクト化が進み、ストローク長とシリンダーピッチの最適化もなされたようだ。
スズキが今回の800ccマシンを開発するにあたり目標としたのは、可能な限り高い馬力出力、信頼性の高い高回転域での運転性能、ならびにライダーにとって扱いやすく、予想がしやすい出力特性を持つエンジンの実現だという。
■ニューマチック・バルブ・システムの改良
ニューマチック・バルブ(空圧式バルブ)システムにも改善が加えられており、超高回転域での制御をよりスムーズにするために、バルブ動作の安定性を強化し、バルブの開閉高さも広げられたようだ。この結果、今年のGSV-R800のエンジンは高回転で高出力、かつスムーズで制御しやすいエンジン特性を実現しているという。
■ドライブ・バイ・ワイヤ・システムは全てスズキ製
また、スロットル本体とインジェクターを結ぶドライブ・バイ・ワイヤ(フライ・バイ・ワイヤ)システムは、完全にスズキオリジナルだという。
■新レギュレーションに対応する燃費性能
三菱製の新型ECU(エンジン・コントロール・ユニット)を搭載したインダクション(吸気)システムにより、新型GSV-Rは最大220ps/17,500rpmの出力を発生する。このシステムは優れたスロットル制御と、275ps/リットルに相当する低燃費を実現しており、今期のレギュレーションである21リットルの燃料タンクにて、大きな効果を発揮する事になりそうだ。
■繊細な効率化が図られたボディー設計
車体に関する設計の変更は、エンジン特性に合わせての最小限に留めており、シャシーの基本的なレイアウトとホイールベースの長さは最後の990ccマシンであるXRE4から基本的には変わっていない。なお、カウルの形状は、空力特性ならびにハンドリング性能の向上を狙って改良が加えられており、また、燃料タンクの形状も、ライダーがよりマシンを操作しやすいように設計されたようだ。
フロントカウルの中心に位置する吸気口は、高速走行中の吸気効率をより高める形状に見直されている。
■ホプキンス「モトクロスみたい」
前回のカタールでのテストで激しく転倒し、足の指を骨折した関係から、まだ本日2月23日からヘレスで行われるIRTAテストで実際に走行を行うか否かを公表していないジョン・ホプキンスだが、この新型GSV-R800のお披露目式には姿を現し、以下の通りコメントしている。
「新しいバイクはかっこいいですよね。」とホプキンス。
「すでにもう何度も乗っていますが、新しいカラーに塗られたのを見るのは今回が初めてです。これでまたコースを走って新型GSV-Rの性能を証明するのが楽しみですよ。スズキは新しいバイクをすごくいいパッケージに仕上げてくれましたし、ここまでのテストでも高い性能を示しています。あとはレースでどこまでできるかを見せるだけですね。」
「走ってみて最高のマシンですよ。なんだかGPバイクというよりもモトクロスに近い印象もありますね。990ccマシンよりコーナリングスピードも高いし、自分のライディングスタイルにはぴったりのバイクです。」
■バーミューレン「速いし青い」
年末からのプレシーズンテストを通して好タイムを記録しているスズキ2年目のクリス・バーミューレンは、現在の勢いを開幕後のレースにそのまま持ち込みたいと語る。
「この新しいバイクは本当に気に入ってます。すごく速いし、めちゃ青いですよね。」とバーミューレン。
「出力値的には以前よりも20%ほどダウンしていますが、乗った感じは去年のマシンにすごく近いです。スズキはテストの度に毎回新しい何かを持ち込んでくるので、ここまでのプレシーズンはすごく刺激的でした。もう今の自分に必要なのはこの勢いをレースの本番に持ち込むだけですよ。」
■デニング監督「スズキの過去最高のGPマシン」
リズラ・スズキのチーム監督であるポール・デニングは、今年のGSV-R800は過去のスズキのどのマシンよりも優れたGPマシンであるとの見解を述べた。
「レギュレーションの変更により、いくつかの興味深い全く予想外とも言える結果が、この冬季シーズン中に得られました。」とデニング監督。
「スズキ・ファクトリーが新型GSV-R800を用意してくれた事を本当に嬉しく思います。マシンの仕様は洗練されており、重量制限内における高い耐久性も実現されています。個人的な意見ですが、これはスズキが製造したマシンの中で、かつてない最高のGPバイクだと思いますし、今までの4ストロークの中ではそれを疑う余地はありません。」
「他のメーカーと異なり、スズキは最後の990マシンの技術を今回の800ccマシンに移植するという独自の方法で開発を進めてきました。実際に新型マシンで走ってみてほとんど問題は発生していませんし、過去の多くのデータがここまでのテスト結果に反映されています。」
「ジョンとクリスは冬季テストを通して高い結果を残していますし、彼らの自身の調整状況も素晴らしいレベルにあります。2人はMotoGPクラスで勝利をかけて戦う上での技術をまだ学ぶ必要はありますが、このバイクなら彼らが次の段階に足を踏み入れるきっかけを作れる筈です。2人には今の優位な状況を活用できる高い能力がありますからね。」
「2007年はMotoGPにとって素晴らしいシーズンになる筈ですが、リズラ・スズキがその歴史の一部に大きく関わる事を期待しています。」
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