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2008年1月14日
ここでは、フェラーリのドメニカリ代表の1月9日の会見内容に引き続き、フェラーリF1チームとMotoGPドゥカティー・チームが合同で行ったマルボロ主催のプレス・スキー・ミーティングの中で1月10日に行われたキミ・ライコネンとフェリペ・マッサの会見内容を紹介する。
■キミ・ライコネンへのインタビュー
プレス・スキー・ミーティングの場に世界チャンピオンとして1年ぶりに戻ってきたキミ・ライコネンは、昨年の当時はまだ見慣れなかった赤いチーム・スーツに身を包んでプレスの見守る会場に登場し、1年前よりもリラックスした面持ちで席に着いた。その会見内容の全文を以下に示す。
●1年前、世界チャンピオンになってこの場に戻ってくる事を予想していましたか。
もちろんそう望んではいましたが、当時に予想まではできませんでしたよ。
年間タイトルを狙って可能な限りの努力をチームと一緒に続けるのはいつの年も同じですが、昨年は2つのタイトル(ドライバーズとコンストラクターズ)を獲得できたので本当に嬉しかったです。
当時はチームのメンバーについてあまり良く知りませんでしたが、あれから1年を経てここに戻ってきての居心地はさらに良く感じます。あの時よりもずっと気楽に過ごす事ができますからね。
●では、2008年シーズンも昨年よりも気を楽にして開始できる事と思いますが、ご自身の心持ちには昨年と大きな違いがありますか。
あまり自分自身が変わったとは思っていません。人生の中で達成しておきたかった目標に到達したのは間違いありませんが、世界チャンピオンになれたからと言って個人としての自分が変わるような事は今後もないと思います。
これから始まる新しいシーズンについては、昨年よりも気楽な心持ちでスタートできたらいいなと思っています。新しいシーズンと言ってもチームは同じですので、自分にとってチームにとっても今年は色々とやりやすくなるでしょうから、シーズン序盤から快調に飛ばして、行けるところまで行きたいですね。
●今週のシェイクダウンテストを通して新型マシンの性能については把握された事と思いますが、来週のヘレスのテストはどんな感じになりそうですか。
自分たちにとっては通常通りのテストになると思います。
フィオラーノ・サーキットでの車はとても好調でしたが、あの時の走行条件はあまり理想的なものとは言えませんでしたので、車の感触などについて正確にお伝えする事は今はまだ難しいです。今言えるのは、少なくとも自分は好感触を得たという事だけですね。
来週はヘレスで通常のサーキット走行を行う事ができますから、そこで色々はっきりすると思います。今は天気が良くなってくれる事を願っています。2台の車が準備されるので、順調に多くの周回をこなしてマシンの様子を確認したいです。
●年末のテストはミハエル・シューマッハが担当していましたが、この状況をどう見ていますか。
今の段階はテスト・ドライバーだけで作業を行うのは非常に大変だと思います。多くの周回数を何日も集中的に続けなければいけませんし、おまけにテストの回数だって限られている訳ですからね。
わたしたちドライバーは、純粋に現状把握を目的としたテストをこなす訳ですが、自分たちがテストに参加できない時にミハエル(シューマッハ)がテストを行ってくれるのは良い事ですし、それにより悪影響が生じる事などあり得ません。
彼にはフォーミュラワンでの豊富な経験がありますし、自分自身の行動を常に把握しています。わたしにとっては、自分たちがテストをできない時に彼が走ってくれるのはいい事ですよ。
●フェラーリに在籍しての今後の見通しなどを聞かせてください。また、今シーズンが始まる時に、ご自身のチーム内での立場はどのような位置づけになるのでしょうか。
自分が望みさえすれば、明日にでも新しい契約を交わす事ができるのは間違いありませんが、それは自分が本当に必要だと感じた時にするつもりです。これから何が起きて、自分がどう感じるか様子を見ながら、現在の契約を全て終えるまでに次のプランを立てておきたいと思っています。
ここまではフォーミュラワンでの活動を楽しんでいますし、チームにはすごく満足しています。今後も彼らと一緒に仕事をしたいと思っていますが、将来に何が起こるのかを見るのはこれからですよ。
チーム内での自分の立場については、特に今までと何も変わりはないと思います。自分たちドライバーはシーズンの最初は全員が同じ立場ですし、そこから可能な限りの全力を尽くして、レースでの勝利を狙っていくだけです。
シーズンのある時点で他の誰かが自分よりも上位のランキングにつけたとしたら、それはそのドライバーがチームの努力と全てのチャンスを最大限に引き出した結果ですので、自分の立場がナンバーワンであってもナンバーツーであっても気にしたりはしません。
自分は常に最善をつくすのみです。重要な事はそれだけです。
●それでは、今年は昨年よりもどんな部分を改善していきたいとお考えですか?
どんな部分でもいいから改善したいですよ。車については、あるいくつかのレースとサーキットではかなり大変な思いもしましたからね。
ただ、ここまでに常に自分のドライビングは走る度に改善されましたから、このままチームと頑張って改善を推し進めていけば、苦手としていた分野もいずれ解決できると思っています。
●今回のスキー・ミーティングに参加しているMotoGPの世界チャンピオンのケーシー・ストーナーは上手にあなたに対するお世辞を述べていましたが、あなたはMotoGPをご覧になっていますか。また、ケーシーの人柄と昨年の業績についてはどう見ていますか。
もちろんMotoGPは楽しんで観ていますよ。だって毎回色んなハプニングがすごくたくさん起きますからね。レースは常に白熱して面白いし、それに同じようなチーム体制での戦いですから大半のレースは観ています。
ケーシーはいい青年ですよ。今までに他のイベントでも何回か一緒に過ごした事があります。今年の彼は多くを達成しましたし、今後もずっと年間タイトルを獲得するんじゃないですかね。
彼が自分について良く言ってくれているなんて嬉しいし、私も彼にほめ言葉を返したいです。
●あなたの以前のボスであったロン・デニスについて、どのような印象を持っていますか。
他の人たちの騒動に関係するような話はしたくありませんし、それについては何も言わない方がいいと思います。さもないと自分たちについても別の視点から何かとやかく言い出す人が出てきますからね。
彼は真面目でいい人物だと思います。物事全体を判断するのには多くの観点が存在しますし、誰もが異なる考え方を持って然るべきでしょう。
●今シーズンに新しく追加される2つの市街地レース、バレンシアとシンガポール戦について何か意見はありますか。
わたしは市街地レースは大好きですよ。いつもモナコはとても楽しんでいます。
観客の方々にとって、特にテレビで見る場合にはあまり迫力が伝わらないかもしれないので喜ばれないかもしれませんが、個人的な見解を述べれば、速く走ろうとするドライバーにはとても楽しめるものなんです。
現地でどんな準備が進められるのか楽しみです。2つの新しい公道サーキットが登場する訳ですから、どんな景色で、実際に走ってみてどんな感触が得られるのか知りたいですね。いずれにしても、わたしが楽しめる事だけは間違いないです。
■フェリペ・マッサへのインタビュー
ライコネンに引き続き行われた同日のフェリペ・マッサへのインタビューでは、2008年シーズンに向けての心構えや現在のプレッシャー、ならびにトラクション・コントロールがなくなる新型車両のF2008の開発に関する質問が飛び交った。
●昨年はどんな1年でしたか。また、今年に向けてプレッシャーを感じたりはしますか。
去年はいい年でしたね。チームの年間タイトルと、自分にとって特別な1日となった結婚式を祝って1年を締めくくる事ができましたから、本当に満足できるものでした。
今年は特にプレッシャーは感じていません。状況はそれほど去年も今年も変わりませんしね。ただ、過去2年間は勝利を記録できていなかったので、昨年まではレース優勝に向けてのプレッシャーがあったのは事実ですが、それには打ち勝ちました。
去年は勝利を記録しましたが、チームでトップを狙い続ける事へのプレッシャーについては今後も当然同じように続きますよ。フェラーリのようなチームで走っている以上、常にプレッシャーの下に置かれるのは仕方のない事です。
ただ、誰に何を言われようとも、走る時には常に全力を尽くすしかありません。その他に考慮しなきゃいけないのはチーム精神でしょうね。
●チーム代表がジャン・トッド氏からステファノ・ドメニカリ氏に交代しましたが、そのチーム体制の変化が今年の心理面に何か影響する事はありますか。
すでにステファノとは長い付き合いですよ。フェラーリに初めて自分が来た日から彼の事は良く知っています。それにジャン・トッドもまだチームの一部ですし、今年も身近にいてくれる事になります。
ステファノはジャン体制の時とは異なる采配を振るう事になるでしょうが、彼の才能は折り紙付きですからね。過去にもフェラーリは人員を変更しましたが、その時に信条が変わるような事はありませんでしたし、同じチーム精神が常に存在していました。
●ご自身のドライバーとしての成長についてはどうお感じになっていますか。
ドライバーは常に学習を続けていくものです。特にフォーミュラワンの世界は毎年レギュレーションが変わりますし、タイヤや電子制御装置の変更など、いつでも学ぶ事ばかりです。毎年何か新しい事に遭遇する訳ですし、この結果どんなシーズンでもゼロからの出発を強いられる事になりますからね。レギュレーションに影響されるところは大きいです。
また、過去のシーズンで抱えた問題点や、逆に良かった点についても集中して検討を重ねる必要がありますし、それらの経験を新しいシーズンに活かして、過去の悪かった点を改善していかなければいけませんしね。
●2008年の新型マシンについて不安な点などはありますか。
そうですね、今後のマシンはより人に依存するものになるでしょうね。電子制御によるアシストがなくなり、言ってしまえばその部分を人間が直接制御する事になる訳ですから、今シーズンは序盤からドライバーの力量が重要視されるようになる筈です。
昨シーズンまでは技術者の仕事がシーズンの序盤には重要視されましたけどね。これでドライバーの全員がどんな車でも同一の条件下に置かれるので、自分たちにとっての楽しみは増えました。
トラクション・コントロールの分野に関しては、過去に電子制御ユニットが行ってきた事を自分たちドライバーが引き継ぐ事になります。でも、だからと言って全く別の惑星でレースをする程の違いが生じる訳ではありません。今までよりもペダル操作を慎重に行う事を単純に学ぶだけです。
シーズン終盤にトラクション・コントロールを使って走った時のタイムと比べても、それほど大きな違いは生じていませんから、新しいルールに沿って取り組んでいく事はそれほど難しい事ではないと思っています。
ただ、トラクション・コントロールがなくなる事で、レースのスタート時の攻め込み方や、レース中の運転の仕方にも違いが出てくるとは思います。これは、あまりに激しく攻め込むような操作を行うと、タイヤを早めに消耗させる事になるからです。
ですから、トラクションが得られない時にはレース中のマシンの扱いが以前よりも慎重になると思いますし、タイヤを持続させるには今までとは少し異なるドライビング・スタイルが要求されるでしょうね。
もちろん、これから学習を続けていけば、それにあった正しい走り方は見つけられるでしょう。
●新しい車に今後求めていく性能はどんな部分ですか。
今後は信頼性についての検証を進めていく事になります。昨年はマシンの信頼性の問題から多くのポイントを失う事になりましたから、今年のシーズンに向けては問題点が車に何か残っていないかを慎重に検証しながら理解を深め、100%信頼できる状態のマシンで開幕を迎えたいと考えています。
新しい車はすでに性能面では大丈夫な状態にあるようですし、新たな試みも色々なされています。個人的には車の準備は全て整うのは開幕直前のぎりぎりの時だと思いますが、来週のヘレスでも昨年末と大差のないラップタイムが記録できるように開発を進めておきたいです。タイム差を縮める事だけに今後の時間を消費するようじゃ今年はいけませんからね。
風洞実験によるデータを見る限りでは期待の持てる状態ですが、当然の事ながらライバルたちがどのくらいのレベルに仕上げてくるのか、その様子を見ていく事も重要です。仮に自分たちのデータが単独では素晴らしかったとしても、ライバルたちの新車がさらに速ければ彼らは自分たちよりも大きな努力を払って改善に成功したという事ですから、それらの状況を実際にサーキットに出て観察しながら、開幕戦までに自分たちが決定的と確信できるようなデータを得られるようにしたいです。
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