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2006年12月23日
2006年内のSBK(世界スーパーバイク選手権)における最後のピレリタイヤテストが、12月19日から21日に、来年のSBK開幕戦の舞台となるカタールのロサイル国際サーキットで行われた。
■今回のカタールで年内のSBKセッションも全て終了
今回のカタールでの走行テストが終わった事で、年内のSBK公式セッションは全て終了した。後は年明けの1月13日から開催される3日間のピレリタイヤ合同テストと、各チーム最後のプライベートテストを経て、2月22日から24日に行われるカタールでの2007年シーズン開幕戦を迎えるのみとなる。
なお、カタールでの開幕レースは例年通り宗教上の理由により、日曜日ではなく土曜日だ。
■5メーカーが選択した主要チームがカタールでのタイヤテストに参加
12月19日から21日までの3日間、カタールで行われた2006年最後のピレリタイヤテストに参加したのは、ドゥカティー(ドゥカティー・ゼロックス)、ホンダ(ハンスプリー・テンケイト・ホンダ)、ヤマハ(ヤマハ・イタリア)、スズキ(アルスター・スズキ・コロナエクストラ)、カワサキ(PSG-1 カワサキ)の5大メーカーが選択した主要5チーム、計10人のライダー。
■まだ決まらない中冨選手のチームメイト
今回のテストには参加していないヤマハ・フランス・チームだが、ノリックこと阿部典史選手が退陣後の同チームは、まだ2007年に向けてのライダー体制がはっきりしていない。現在決定しているのは、SBK2年目となる中冨伸一選手の1名のみであり、年内はそのチームメイトが決まらないようだ。
これまでに、今年のMotoGPシーズンでTECH3ヤマハに所属していたジェームス・エリソンや、BSBでリズラ・スズキ・チームに所属していたシェーン・バーンがヤマハ・フランスと来期に向けての交渉をしていた事がSBK公式などから報じられているが、2名とも持参金がらみの問題などから同チームとの契約が成立する事はなかったようだ。
11月のバレンシアでのピレリテストの時に、既にジェームス・エリソンは2007年AMAシーズンへの参戦(コロナ・エクストラ・ホンダ・レーシング)が決定していたが、現在までにシェーン・バーンもSBKではなくBSBに2007年も引き続き参戦(ストバルト・ホンダ)する事が決定している。
■クラフィ・ホンダはSBK参戦を見送りマン島TTに出場予定
アレックス・バロスのMotoGP復帰で、当初の計画が根底から狂ってしまったクラフィ・ホンダチームは、2007年シーズンのSBK参戦を断念する旨を、12月22日に公式発表した。
声明文の中でクラフィ・チームのオーナーであるクラウス・クラフェンボックは、2007年はSBKシーズン出場に向けての活動資金を調達できない事から、代わりに来年はマン島TTの主要な複数カテゴリーに出場する方針だと述べている。特にその中でもサイドカー・レースの勝利を狙うとクラフェンボックはコメントし、現在はそのライダー体制などの準備を進めているという。
なお、2008年シーズンはクラフィ・ホンダとしてSBKに復帰したいとの事だ。
■ピレリタイヤテスト、カタールでの3日間総合タイム
以下に、年末最後となったSBK公式ピレリタイヤテストの、3日間の総合タイムを示す。
1) トロイ・ベイリス ドゥカティ・ゼロックス 1分58秒1
2) マックス・ビアッジ アルスター・スズキ 1分58秒9
2) トロイ・コーサー ヤマハ・イタリア 1分58秒9
4) ジェームス・トスランド ハンスプリー・テンケイト・ホンダ 1分59秒1
5) レジス・ラコーニ PSG-1カワサキ 1分59秒2
6) ロレンツォ・ランチ ドゥカティ・ゼロックス 1分59秒3
7) フォンシ・ニエト PSG-1カワサキ 1分59秒5
8) 芳賀紀行 ヤマハ・イタリア 1分59秒7
9) 加賀山就臣 アルスター・スズキ 2分00秒1
10) ロベルト・ロルフォ ハンスプリー・テンケイト・ホンダ 2分01秒7
前回のバレンシアでは、2007年のSBKルーキーとなるアルスター・スズキのマックス・ビアッジがレースタイヤにおける総合のトップタイムを記録したが、今回の3日間を通してトップタイムを維持したのは、2006年のSBKチャンピオンであり、10月のMotoGP最終戦で優勝を飾るという快挙を成し遂げたドゥカティーのトロイ・ベイリスだった。
ベイリスに次ぐ総合2番手タイムとしては、アルスター・スズキからSBKに初参戦するマックス・ビアッジと、ヤマハ・イタリアに移籍したばかりのトロイ・コーサーが、揃って上記の同タイムを記録している。
■予選タイヤとレースタイヤの明確な区別はなし
今回のテスト結果は、前回のバレンシアのテスト時のように予選タイヤとレースタイヤという明確な区別はない。
各ライダーは、2007年仕様の新しいマシンのセッティングを頻繁に変更しながら、ピレリが持ち込んだ2007年に向けての新型タイヤの耐久性を探り続けるという状況だったようだ。レース・シミュレーションを通してのロングランで、実用的な耐久性を確保できたライダーは、今回の参加者の中でも一握りだったという。
その状況の中、トロイ・ベイリスからフォンシ・ニエトまでの総合上位7名が、2006年シーズン中にベイリスが記録したカタールでの最速記録である1分59秒696(予選タイヤ)を上回ったが、この7名の殆どが、実際のレースでは耐久性の問題から実用にはならないソフトタイヤを、3日目のタイムアタック用に使用したと述べている。
ちなみに、カタールでのレース中のベストラップ記録は、2006年の開幕戦でヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手が記録した2分00秒061(レースタイヤ)だ。
■年末最後のテストは悪条件、濡れた砂地の初日は2006年型タイヤ
カタールでのテスト初日は、前日まで降った雨の影響と、砂漠の砂が強風により路面に巻き上げられた状態の、悪条件の中でのテストとなっている。また、テスト開始時の気温は20度に満たなかったようだ。
SBKに限らずMotoGPでもそうだが、カタールで行われるセッションの初日は、決まってアスファルト上の砂に悩まされる傾向が強い。それに加えて今回は午前中に路面が湿っていた事もあり、一部のライダーは走行開始を午後近くまで遅らせている。
なお、初日は各チームに2007年仕様の新型タイヤは供給されず、2006年シーズン中に使用されたタイヤのみでのテストが行われており、この日のトップタイムはドゥカティーのトロイ・ベイリスが記録した2分00秒7だった。2番手はベイリスから0.4秒差となったヤマハ・イタリアのトロイ・コーサー。
■砂が舞う強風の2日目、ピレリは2007年向け新型タイヤを供給
2日目には雨の影響がなくなり、ピレリはこの日から、2007年シーズンに向けて開発中の新型タイヤを各チームに供給している。
2日目もライダーたちは、初日と同様の強風と砂に苦しめられたものの、徐々に改善されていく路面コンディションの中で、初日のタイムを約1秒から2秒縮めている。
この日のトップタイムもドゥカティーのトロイ・ベイリスが記録しており、タイムは1分58秒9だった。2番手タイムは、ハンスプリー・テンケイト・ホンダのジェームス・トスランドがベイリスから0.2秒差の1分59秒1を記録している。
■比較的に安定した好天候の3日目
最終日の3日目には強風が収まり、陽射しが安定して得られた事から、気温は前日までの2日間よりも上昇して21度を記録している。
初日と2日目は路面の悪条件からなかなか思うようにセッティングが決まらなかったという各チームだが、最終日はセッティングに良い感触が掴めたとするライダーが多かったようだ。
この日の終盤、多くのライダーはレースでは耐久面で実用にならないソフトタイヤに履き替えてのタイムアタックを行っており、ジェームス・トスランドとフォンシ・ニエトを除くほぼ全員が、前日までのタイムを更新している。最終日のトップタイムである1分58秒1も、3日間連続して他を寄せ付けなかったトロイ・ベイリスが記録している。
■総合タイムに見るトップ3名の2007年にかける意地
結局、年末最後のSBKテストをトップで飾ったのは、2006年を通して1位の座を守り続けたトロイ・ベイリスだった。今年のSBKは、勝にベイリスの年だったと言える。
来年の2007年シーズンもベイリスがSBKの王座に君臨し続ける事ができるかどうかは、今回の総合2番手タイとなったマックス・ビアッジとトロイ・コーサーの因縁の対決次第だろう。
■ビアッジには負けたくないコーサー、ベイリスを負かしたいビアッジ
2005年度SBKチャンピオンのトロイ・コーサーは、2006年シーズン中にはアルスター・スズキGSX-R1000のメカニカル・トラブルに悩まされる事が多く、タイトル争いから早期に離脱する結果となった。
コーサーは、2006年の初頭からマックス・ビアッジをチームに迎える事で奔走していたアルスター・チームのオーナーであるフランソワ・バッタの下を去り、2007年は芳賀紀行選手のチームメイトとしてヤマハ・イタリアに移籍し、4気筒マシンで2度目となるSBKタイトル獲得を狙う。
また、フランソワ・バッタの希望通り、コーサーの後任としてアルスター・スズキのシートを獲得したマックス・ビアッジも、SBKデビュー・イヤーとなる2007年シーズンから、いきなりチャンピオンの座をベイリスから奪うつもりでいる事は間違いないだろう。
2007年はこの3名の意地の争いが、さらなる白熱したレースシーンや、熾烈なバトルを生むかもしれない。また、今回のカタールでは3名に次ぐ総合4番手となったホンダ2年目のジェームス・トスランドが、乗り慣れたホンダCBR1000RRで、このベテラン3名にどこまで絡むかにも注目だ。
■気になる日本勢、芳賀選手と加賀山選手
2007年シーズンのキーマンとなりそうなビアッジとコーサーのチームメイトは、それぞれに海外で高い人気を誇る経験豊かな日本人ライダー、アルスター・スズキの加賀山就臣選手と、ヤマハ・イタリアの芳賀紀行選手だ。
芳賀選手はコーサーと共に、加賀山選手はビアッジと共に2007年のマシン開発に携わる事にから、ヤマハとスズキの両チームが早期からマシンの高い完成度を見せつけてくる事は容易に想像がつく。コーサーとビアッジだけではなく、この日本人2名の年間タイトル獲得に向けての可能性も、来年は2006年シーズン以上に高くなるだろう。
今回のカタールでのピレリタイヤテストで、芳賀選手は総合8番手(1分59秒7)、加賀山選手は総合9番手(2分00秒1)で年内のテストを終えている。3日間を通して上位のタイムを記録する事はなかったが、2名ともに新型マシンの性能には満足した様子だ。
■各チームのテスト状況
以下に、ドゥカティーとアルスター・スズキ、およびヤマハ・イタリアとテンケイト・ホンダの各チームにおけるカタールでの3日間の状況と、ライダーのコメントを紹介する。
■ドゥカティーはSBK5年目のDucati999
2006年シーズンをトロイ・ベイリスの圧勝で終えたドゥカティー・ゼロックスチームは、その勝利に全く油断する様子を見せる事なく、日本メーカーの4気筒勢の追い上げが予想される2007年シーズンに向けて過酷なテストメニューをこなしている。
ドゥカティー勢は来期もツイン(2気筒)マシンのDucati999で戦うが、999がSBKに登場してから、来年で既に5年目を迎える。
スペイン選手権のスーパーバイク・カテゴリーでは、来年からツイン・エンジンの排気量は1000ccから1200ccまで引き上げられ、ドゥカティーは先月発表した新型マシンである1098を同選手権に投入する予定だが、SBKは排気量レギュレーションに変更が無かった事から、昨年までと同じ999が使用される。
■ベイリスは3日連続でトップタイムをマーク
年内最後のテストを3日間通してトップタイムで飾った2006年度SBKチャンピオンのトロイ・ベイリスは、初日はすぐには走行せずに、気温が上がり、路面状態が良くなるのを待ってからコースに出ている。ベイリスは1日目の悪条件の路面の中、2006年仕様のレースタイヤでマシンのセッティングを調整し、今年の開幕戦で芳賀選手がレースタイヤで記録したサーキットレコードに0.5秒差まで迫る2分00秒7の1日目トップタイムを記録。
2日目にベイリスは、改善されつつある路面コンディションの中、2007年仕様のピレリタイヤで初日のタイムを2秒更新して、1分58秒9という好タイムを記録している。この日に殆どのパーツをテストしたというベイリスは、午後にはピレリの新型リアタイヤのテストを中心に行っているが、マシンのセッティングは、2006年のデータをそのまま利用したようだ。
■ベイリス「これ以上求めるものはない」
3日目にベイリスはレースシミュレーションを終えた後で、タイムアタック用のソフトタイヤを最後に装着すると、自身の持つカタールでのポールポジション記録を1.5秒上回る1分58秒1の3日間総合トップタイムを記録している。最終的にベイリスは2番手につけたトロイ・コーサーとマックス・ビアッジを0.8秒引き離す好タイムで、2006年を有終の美で飾る事に成功した。
「好調のまま最後までテストを終える事ができてとても満足です。いい仕事を終えてからクリスマスを迎えられるのなら、誰でも最高の気分になりますよ。」とベイリス。
「今回のベストタイムは、レースの距離はとても走りきれないソフト・タイヤで記録しました。ただ、ロングランをしていた時のタイムも悪くはありませんでしたし、その時は殆どレースと同じ距離を走り込みましたが、去年の2月のレースの時よりも速いペースで走れています。」
「長くて厳しい1年でしたが、努力の報われた素晴らしい年になりましたね。スーパーバイクに戻ってきて本当に良かったと思いますし、これ以上何も求めるものはないといった気分です。」
「みんな今年の自分の仕事に満足して、クリスマスを自宅で迎える事ができます。来年はさらに激しいシーズンになりそうですね。チームの誰も幻想は抱いていませんが、バイクの状態は素晴らしいし、みんなの準備は既に万端です。」
■ワークス1年目の不調を2年目で取り返したいランチ
ドゥカティーのワークスライダーとして初年度となった2006年は、2005年シーズン中のような目立った活躍ができなかったイタリア人ライダーのロレンツォ・ランチは、今回のカタールでは3日間総合6番手となる1分59秒3を記録し、年内のセッションの全てを終えた。
初日はベイリスとコーサーに次ぐ3番手タイムの2分01秒3を記録し、マシンの調整内容に満足していたランチだったが、2日目の午前はカタールの砂まみれの路面におけるピレリの新型タイヤの摩耗の激しさを訴え、あまりタイムが伸びなかったようだ。しかしながら、午後にはレースタイヤでペースを取り戻し、2日目終盤にはその日の5番手タイムの2分00秒3を記録している。
■ランチ「良いタイヤを見つけた時には疲れ切っていた・・・」
ランチは3日目に入っても精力的に走り込みを続け、2日目のタイムを1秒縮める好タイムを記録している。本当は1分58秒台後半を狙っていたというランチだが、夕方に良いタイヤを見つけた時には、既に疲れ切ってしまっていたようだ。
「今回の自分の走りにはとても満足できました。」とランチ。
「夕方になってからタイムを出せるいいタイヤを見つけたんですが、既にかなりの周回数を走り込んでいたので、その時には残念ながらもう疲れ切っていたんです。本当は58秒後半を出したかったんですが、普通のレースタイヤでいいタイムは出せましたから、結果には満足しています。」
「タイヤの耐久性だけが問題ですね。このサーキットではかなりそれが重要ですから。」
「前回のバレンシアと今回のロサイルではトップライダーたちと並ぶタイムを出せましたから、十分に喜んで一年を締めくくる事ができます。来年に向けての自信にもつながりました。」
■アルスター・スズキ、新マシンの理解に改めて取り組んだ3日間
カタールで2007年仕様のアルスター・スズキGSX-R1000K7をテストしたマックス・ビアッジと加賀山就臣選手は、以前までの2006年仕様のマシンとは大きく感触が異なるという感想を初日に持ったようだ。
2名は2007年仕様のマシンをより良く理解する事の必要性を改めて感じており、タイムアタックを3日目の夕方まで保留して、データ収集などの開発作業に集中したという。この結果、ベイリスやコーサーが1分59秒台を記録した2日目に、ビアッジは6番手タイムの2分00秒4、加賀山選手は9番手タイムの2分00秒7を記録しており、他のチームと比較して最初の2日間にあまりタイムを伸ばしていない。
しかしながら、その厳しい状況下においてもマックス・ビアッジは、最終日の夕方に行ったタイムアタックで、ヤマハ・イタリアのトロイ・コーサーと同タイムの総合2番手タイムとなる1分58秒9を記録しており、11月中旬にバレンシアのテストで記録したレースタイヤでのトップタイムが、偶然ではない事を証明している。
ビアッジのチームメイトの加賀山選手は最終日のタイムアタックでタイヤ選択をミスしてしまい、2日間の自己ベストタイムは更新したものの、1分59秒台には惜しくも届かない2分00秒1の総合9番手タイムで年内の走行を終えた。
■ビアッジ「まだ全体的にスムーズに乗れない」
マックス・ビアッジは、まだ2007年仕様のGSX-R1000K7の仕上がり状況には納得できない様子だ。前回のバレンシアでトップタイムをマークした時の感触が全く得られなかったというビアッジは、チームの今後の頑張りにも期待するとコメントしている。
「ここの路面状況は自分たちにとってかなり難しい状態だったと思います。初日の路面は全然役に立ちませんでした。」とビアッジ。
「多分砂のせいだと思いますが、少し滑りやすかったですね。すぐに転んだりしたら嫌なので、あまり激しく攻める気にはなりませんでした。バイクの感触を理解できるようになったのは路面状況が良くなってからです。」
「前回のバレンシアのテストで得た好感触は、今回のテストでは最初から得られなかったので、これは大変な作業になるなと思いました。多分ここに来ている他のチームよりも厳しい状況だったと思います。チームの全員がまだ新しいバイクに慣れていない状態ですからね。エンジンの特性を学ばなければいけませんし、全体の安定性もこれから追求していく必要があるんです。」
「現段階のエンジンはまだあまり感触がスムーズじゃないので、それがコーナーへの進入や出口でのコントロールを難しくしています。シャシーの挙動もまだ納得がいきませんから、自分の思い通りにスムーズなライディングが出来る状態ではありません。」
「他のライダーたちと同じように、自分もレースでは実用にならないソフトタイヤで今回の自己ベストを記録しました。いずれにしても、ここで総合2番手タイムを記録できたのは良かったですね。」
「チームの仕事の進め方には満足していますし、みんなが次回のテストとその準備に真剣に取り組んでくれる事は間違いありません。もう最初のレースまで殆ど時間が無くなってきましたから、次回のテストでは現在抱えている問題が解決できるように願っています。」
■加賀山選手「全員が新型バイクを理解する必要がある」
3日間を通して、タイム的には他のチームのライダーよりもペースが上がらなかった加賀山就臣選手だが、新型バイクに加えた作業は順調だったとして、前向きなコメントを残している。
「今回のテストではもっと速いタイムを記録して終わりたかったのが本音ですが、新型のK7バイクに施した作業そのものは順調だったので、それほどガッカリではありませんよ。」と加賀山選手。
「それに、タイムアタックをした時のタイヤ選択があまり良くなかったように思うんです。これは自分の期待よりもだいぶ低い結果でしたね。テスト初日は路面状況のせいで時間をあまり有効活用できませんでしたが、一度路面が改善されてからは、かなり激しく攻める事ができるようになりました。」
「3日間を通してシャシーのセッティングに集中し、最終的にはだいぶ気分良く乗れるようになり、ライディングを楽しめるようになりました。同時にエンジンまわりの作業も行い、よりスムーズな感触が得られるように試みましたが、これらの2点はまだ改善の余地が残っています。」
「新型バイクは2006年モデルと比べてかなり感じが違います。マックスと自分、それにチームの全員が、セッティングに変更を加える以前にバイクそのものへの理解を深めておく必要性を感じました。」
「最初のレースまでにあと2回しかテストができませんので、それまでにバイクの準備が整う事を願っています。次回のテストでどれだけ課題を解決できるかによりますが、自分の感覚では期待ができると思います。」
■基本パーツのセッティングを探るヤマハ・イタリア
ヤマハ・イタリアのトロイ・コーサーと芳賀紀行選手は、3日間を通して2007年仕様の新型YZF-R1のセッティング・パターンを何種類も試したという。
今回、ヤマハ・イタリアは剛性が異なる3種類のシャシーと、標準に近いスイングアーム、および2種類のフルレース仕様のスイングアームを用意し、全てを順次組み合わせる事で最適なセッティングを探っている。しかしながら、今回は多くの新型ピレリタイヤも2日目から同時にテストしているため、セッティングの組み合わせは簡単ではなかったようだ。
この開発初期の複雑な作業の中、トロイ・コーサーは初日と3日目に2番手タイムを記録し、アルスター・スズキのマックス・ビアッジと同タイムの3日間総合2番手タイムとなる1分58秒9を記録している。また、コーサーはトップタイムを記録したドゥカティーのベイリスと同様に、今回の悪条件のカタールでハイペースのロングランを行う事が出来た数少ないライダーの一人だ。
コーサーのチームメイトの芳賀選手は、この3日間を通してシャシーとスイングアームのセッティングを見つける事には成功したが、タイヤの感触に納得が得られず、最終的に総合8番手タイムの1分59秒7で2006年最後のテストを終えている。
■コーサー「意識してないのにいいタイム」
総合2番手タイムを記録したトロイ・コーサーは、経験の少ないヤマハYZF-R1に乗り慣れる事を今回のテストの一番の目的としていたようだ。しかしながら、タイムをあまり気にしていない状態でも既に速く走れている事に、コーサーは満足している様子だ。
「最初の2日間はあまりいい路面状況とは言えませんでしたが、それでも今回のテストは有意義でしたね。」とコーサー。
「今回は3種類の異なるスイングアームと3種類のシャシーを持ち込んで、それぞれの組み合わせをテストしました。同時に新しいタイヤも何種類か試したのでちょっと難しい作業でしたが、全体を通しての結果にはとても満足しました。」
「連続して一番長く走ったのは最終日の午後の10周くらいでしたが、ロングランでタイヤを持たせる事はできたのはトロイ・ベイリスと自分の2人だけだったと思いますよ。今回途中でロングランを中断したのは、タイヤがリム(ホイール)の上で空回りを始めたからなんです。」
「今回はタイヤを何回も履き替える為にピットから出たり入ったりの繰り返しでした。時間を有効に使えなかった分の作業がいくつか残っていますし、次回のフィリップ・アイランドでも数点やり直したい事があります。ただ、今の段階で一番重要なのは、このマシンに乗ってまだ間もない今の段階で、既にマシンから好感触が得られている事でしょうね。」
「このテストではバイクの感触をつかむことが目的でしたので、ラップタイムについてはあまり気にしてなかったんですが、結構いいタイムがいつも出てるんですよ。」
■芳賀選手「課題はタイヤの耐久性」
カタールでの3日間のテストで、芳賀紀行選手はタイヤのグリップと耐久性不足に苦しんだようだ。最初の2日間の路面状況が厳しく、新パーツの評価が遅れてしまったと芳賀選手はコメントしている。
「今回は新しいスイングアームとシャシーをテストしましたが、最初の2日間は路面状況があまり良くなくて、それらを評価するのが難しい状態でした。」と芳賀選手。
「最終的にはスイングアームとシャシーのいい組み合わせを見つける事はできましたが、タイヤに関しては自分の期待ほどに好感触を得られませんでした。」
「まだバイクのリアまわりのセッティングを煮詰める必要がありそうです。このコースはグリップがあまり得られないので、調整の方向性を見いだすのが難しいんですよ。タイヤが新品の状態ならそれなりにタイムは出せますけどね。」
「ロングランも試しましたが、もうちょっとタイヤの耐久性が得られないと長距離は難しいです。」
■好調に年内のテストを終えたテンケイト・ホンダ
ハンスプリーを冠スポンサーに持った新生テンケイト・ホンダは、ドゥカティー・ワークスで2004年にSBKタイトルを獲得した同チーム2年目の英国人ライダーであるジェームス・トスランドと、その新チームメイトであるスペイン人ライダーのロベルト・ロルフォという体制で、2006年最後のテストに挑んでいる。
他のチームと同様に、両ライダーは初日の路面コンディションには警戒したようだが、全体的には揃って納得のいくマシンの改善を進める事ができたようだ。
昨年のこの時期はドゥカティーからの乗り換えに苦しんでいたジェームス・トスランドだが、今年は乗り慣れたホンダのバイクで順調にセッティング作業をこなし、路面コンディションがやや改善された2日目には、その日トップのトロイ・ベイリスに次ぐ2番手タイムの1分59秒1を記録している。
トスランドは最終日に2日目のタイムを更新できなかったものの、このタイムを最後に上回る事ができたのは、総合トップのトロイ・ベイリスと、総合2番手同タイムのマックス・ビアッジとトロイ・コーサーのみだった。
名実共にホンダのエースとなったジェームス・トスランドは、ホンダ2年目の2007年も、打倒ドゥカティー・ワークスの姿勢を崩さないだろう。
また、トスランドのチームメイトとなったロベルト・ロルフォも、昨年のトスランドと同じくドゥカティー999(SCカラーチ)からホンダCBR1000RRへの乗り換え組だ。ロルフォは前回のバレンシアと同じく、今回のカタールでも3日間を通してホンダのSBKマシンの理解を深めている。
■トスランド「今年は不利な状況だったが来年は自信がある」
今回の3日間を通して、あまりセッティングに苦しむ様子を見せなかったのは、総合トップタイムを記録したドゥカティーのトロイ・ベイリスと、総合4番手タイムを記録したハンスプリー・テンケイト・ホンダのジェームス・トスランドの2名だ。
トスランドは、マシンの乗り換えに苦しんでいた1年前のプレシーズンを思い出し、2年目となる2007年への意欲と自信を示すコメントを残している。
「とてもいいテストになりましたが、まだ残課題もたくさんあります。去年のこの時期はチームもバイクも新しくなったばかりで慣れるのが大変だったのを思い出しますね。」とトスランド。
「今年はそういう点で不利な状況でしたから、ライバルたちに引き離されないようにとそればかり考えてきました。でも今はこのチームと一緒に作業を進めやすいし、来年に向けての自信もあります。」
「カタールの天候は変化が激しいので、レース当日も何が起こるか予想がつきませんが、既に自分たちの準備は万全な状態にあると思いますよ。」
■ロルフォ「チームの豊かな経験を自分の力にしたい」
まだホンダのマシンの学習を続けている段階のロベルト・ロルフォは、新チームでの年内の2回のテストを終えて、好感触をつかむ事ができたとコメントしている。
「このチームでのテストを終えてみて、いい感触をつかむ事ができたと思います。」とロルフォ。
「ロサイルはテストをする上で重要なサーキットの1つだと思います。開幕戦の舞台ですからね。」
「まだ学ぶ事ばかりですが、チームは豊富な経験を活かして自分の学習を助けてくれていますので、レース当日は大きな力になってくれると思います。」
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