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2006年8月4日
MotoGPが夏休みに突入する前の7月中頃、ドイツGPあたりを中心にヨーロッパのマスコミが多く取り上げていた話題の1つとして、来年のケーシー・ストーナーの移籍話がある。
ストーナーは800cc化が行われる2007年シーズンのMotoGPに、ヤマハ、ドゥカティー、およびホンダのいずれかから参戦する可能性があり、そのオファーが進行中だという噂だった。ここではそれらの噂話をまとめてみたい。
■元々ヤマハからのMotoGP参戦が噂されていたストーナー
特にストーナーのヤマハへの移籍の噂に関しては、昨年の250ccから今シーズンのホンダへの移籍が決定する前は、バレンティーノ・ロッシのチーフメカニックであり、ストーナーと同郷のオーストラリア人であるジェレミー・バージェスが、ストーナーの獲得に熱心だった事が当時から報じられており、これは今年に始まった話ではない。
2005年のこの当時はケーシー・ストーナーの能力を含め、MotoGPクラス移籍に疑問を示す声も多かったが、実際にストーナーは2006年に最高峰クラスへのステップアップを果たし、第2戦のカタールではポールポジション、第3戦のトルコでは決勝で2位表彰台を獲得するなど序盤の活躍は目覚ましかった。
■ストーナーはホンダへ
現在のストーナーのマシンは、移籍前に噂されていたヤマハではなくホンダだ。
ヤマハへの移籍の可能性が高かったストーナーだが、彼が所属するLCRチームのオーナーであるルーチョ・チェッキネロには、ホンダから「戦闘力の高いRC211V」が用意される事が伝えられた。これにより、2006年にバージェスの希望がかなう事はなく、ストーナーのホンダからの2006年MotoGP参戦が決定している。
ちなみに、元々ストーナーはカルロス・チェカのチームメイトとしてホンダ・ポンスからの参戦が予定されていたが、マックス・ビアッジにまつわるスポンサー問題からポンスチームが丸ごと消滅した事により、結局現在の通りLCRチームがストーナーと共にMotoGPクラスにステップアップするという形態が取られた。
■チームメイトとなる筈だったカルロス・チェカ
蛇足だが、カルロス・チェカにはホンダから救いの手が差し伸べられる事はなく、この後チェカは路頭に迷い、MotoGPキャリア継続は絶望的とする噂も多かった。しかしながら、彼と仕事をした経験の長いヤマハのスタッフやミシュラン、および金銭上の理由から当時まだジェームス・エリソン以外にライダーを獲得できていなかったTECH3チームが動き、チェカのサテライト・ヤマハからの参戦が最終的には決定した。
この時、チェカの支援に手を挙げていたミシュランはTECH3のダンロップとの契約上の理由から手を引く事となり、代わりにダンロップがTECH3のチームスポンサーとなって、現在のチェカを中心とするダンロップタイヤ開発プロジェクトが発足した。契約金には一切こだわらなかったチェカも、ダンロップを履く事だけには最後まで難色を示したが、2月のカタールでのプレシーズンテストでは好感触を得た後は、ダンロップの可能性を信じて開発の中心人物になる事を決意している。
■サテライトチームのバイクに不満?
話をケーシー・ストーナーに戻そう。
前評判の高かったライバルのMotoGPルーキーであるダニ・ペドロサをしのぐ活躍を序盤に見せたストーナーだが、シーズン中盤戦に向けて脚光を浴び続けたのはストーナーではなく、ワークス・ホンダに乗るダニ・ペドロサだった。
トルコ以降、ストーナーの発言には「ワークス以外のRC211Vにはチャタリングの問題があった」など、ワークスバイクに乗るペドロサをライバル視しての発言と取れるコメントもいくつかあり、サテライト・チームのマシンに対する不満も少し見え隠れする。若くて才能溢れる闘争心の高いライダーにはありがちな事だろう。
アメリカGPが終了した現在までに、ペドロサは2回の優勝を含む6回の表彰台を獲得しておりランキングは2位、ストーナーはトルコでの1回の表彰台(2位)獲得以降は惜しいところで表彰台を逃し続け、転倒などのミスも目立ちランキングは6位だ。
■今シーズン中盤にヤマハとドゥカティーが高額オファー
トルコでの活躍やサテライトバイクに関するストーナーの憂うつに目をつけ、2007年に向けてのアプローチを開始していると噂されるのが、ヤマハとドゥカティーだ。
イギリスの週刊誌であるモーターサイクル・ニュース(Motor Cycle News)が伝えるところによると、ヤマハはストーナーに対して200万ドル(約2億3千万円)の契約額を提示しており、ドゥカティーはさらに高額だという。
また、同誌によれば、ヤマハがストーナーに提示しているのはワークスバイクであり、ロッシのチームメイトとしてのポジションを約束しているという。ドゥカティーも当然ワークスバイクの提示であり、おそらくロリス・カピロッシのチームメイトとしてのポジションだ。
■エドワーズとジベルナウの後任に若手ライダー
バレンティーノ・ロッシは2007年もヤマハに乗る契約を交わしているが、現在の彼のチームメイトのコーリン・エドワーズについては来年以降の動向が明らかにされていない。噂によれば、ヤマハはエドワーズ、そしてドゥカティーはセテ・ジベルナウの後任ライダーとしてケーシー・ストーナーを獲得する動きにあるという。
■ストーナー「移籍するならロッシの隣しかない」
ニュースサイトのFOX SPORTS(オーストラリア版)が、ヤマハからのオファーに関するケーシー・ストーナーのコメントを紹介しているので、以下に一部を引用する。
「もしヤマハに行くとすれば、ファクトリーのガレージでバレンティーノの隣しかないでしょう。もちろん彼と同じバイクでね。」とストーナー。
「今ホンダのサテライトチームにいるのに、ヤマハに移籍してまたサテライト・チームでは意味がありませんよ。」
■オファーの事実を認めるドゥカティー、ネックはタイヤ
また、モーター・サイクル・ニュースは、ドゥカティー・ワークスのチーム責任者であるリビオ・ズッポが、ケーシー・ストーナーのマネージャーである彼の父親のコーリン・ストーナーに対して、来期のドゥカティーへの移籍に関するオファーを行った事を認めたと報じている。同紙が紹介しているズッポのコメントを以下に引用する。
「ケーシーはドゥカティーに興味を示していますし、彼の父親には来期の可能性について相談しています。ケーシーには若さと才能があります」
しかしながらFOX SPORTSは、ヤマハ以上の金額をドゥカティーがいくら提示しても、ストーナーがドゥカティーのオファーを受ける可能性は低いと予測している。ドゥカティーへの移籍のネックとなるのは、今年序盤のカルロス・チェカと同じく「タイヤ」だ。ストーナーが希望するのはミシュランを履いたワークスマシンであり、ブリヂストンを履くドゥカティーは、この才能ある若いライダーの獲得競争においては不利な状況にあると言える。
■最新の噂)ビアッジはサテライト・ドゥカ?
ちなみに現在、スペインのロードレースサイトであるas.comが報道し、ヨーロッパ中のネットを騒がしている「マックス・ビアッジが2007年のMotoGPに参戦に向けてドゥカティーと話を進めている」という噂があるが、このビアッジへのオファーはドゥカティー・ワークスからではなく、サテライト・ドゥカティーからのものだ。ビアッジにはこの他にもイルモアからの2007年MotoGP参戦の噂や、同時にSBK参戦の可能性も模索しているとの話もあり、現在もビアッジに関する2007年の予測は不透明だ。
■ホンダは強気の姿勢、浮上するアンドレア・ドヴィツィオーゾ
今シーズンにストーナーを獲得しているホンダも、ストーナーを来期に獲得しようとする他メーカーの動きを傍観している訳ではない。ドイツGPにおいてホンダはストーナーに新型シャシーを提供し、ストーナー本人もこのシャシーには好感触を示している。また、来期についての話し合いもすでに行っているとの噂があり、モーター・サイクル・ニュースはホンダのスポーツ・ディレクターのクリス・ヘリングのコメントを紹介している。以下にそのコメントを引用する。
「私たちはケーシーとの関係を継続したいと思っていますし、それを前提に話し合いを進めています。(今の動向は)双方にとっても良い機会だと思いますよ。」
尚、イタリアのロードレースサイトであるmotograndprix.itは、「ホンダは強気の姿勢」だと伝えている。ホンダのスタイルとして、仮にストーナーがヤマハに移籍すると決断したとしてもそれを引き留める事はなく、代わりに現在250ccクラスのヒューマン・ゲスト・ホンダで活躍しているイタリア人ライダーのアンドレア・ドヴィツィオーゾをMotoGPに迎え入れるだろうと予測している。その他のイタリアのサイトもほぼ同意見のようだ。
■ストーナーの父親「第1候補はホンダだが、オファーも期待」
モーター・サイクル・ニュースによれば、上記のヤマハとホンダの動きについて、ケーシー・ストーナーの父親は全面的に認めるコメントをしている。同誌よりそのコメントを以下に引用する。
「ヤマハとホンダの両方と、ケーシーの将来についてそれぞれ真剣に話し合っていますが、特にそれを隠す気はありません。」と、ケーシーのマネージャーを務める彼の父親のコーリン・ストーナーは述べる。
「ケーシーは現在ホンダに乗っていますし、これを継続したいとは思っていますが、同時にアメリカGPの翌週には他のチームからの公式なオファーが提示される事にも期待しています。」
■ストーナーのヤマハへの移籍をけん制するロッシ
ストーナーの来期にまつわる噂を聞いて、現在のヤマハ・ワークス・ライダー、特にバレンティーノ・ロッシはどう考えているのだろうか。
ストーナーにシートを奪われる可能性を噂されているキャメル・ヤマハのコーリン・エドワーズは、ロッシと大変に仲がよい事で知られている。
確かにエドワーズの今期の成績はYZR-M1自体の不調もあり、来期のシートを確保するのに十分な状態ではない。以前にユーロスポーツ(英)は、「エドワーズの来期のヤマハのシートについては、鈴鹿8耐で芳賀と一緒にホンダを倒す事があれば確保される事もあり得る。」と述べていた。この意見に信憑性がある訳ではないが、エドワーズの8耐の結果は、オープニングラップ中に他のバイクにヘアピンで進入されて転倒し、数周を走行後にリタイアするという散々なものだった。
ドイツGPのザクセンリンクでバレンティーノ・ロッシは、ストーナーのヤマハへの移籍に関する意見を求められている。ユーロスポーツが伝えたロッシのその時のコメント以下に引用する。
「ストーナーにとって一番いい選択肢は、今いる所(ホンダ)に留まる事でしょうね。」
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