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2006年2月22日
唐突だが、テレビ朝日の番組「タモリ倶楽部」をご覧になっている方はどのくらい本サイトにはいらっしゃるだろうか。
■耳に残るメタルロック社歌
2003年の年末に同番組で「輝け!日本キャンペーンソング大賞」という企画あったが、その中で耳に残って離れず、今でも口ずさんでしまうメタルロック調の素晴らしく出来の良い「社歌」があった。聞けば社員(当時)の手作りだそうで、世の中には凄い人がいるものだと思った。
番組をご存知の方なら多分すでに頭の中にフレーズが流れている事だろう。「日本ブレイク工業」の社歌である。作曲と演奏、歌の全てをパーフェクトにこなしていたこの方、
萬Z(量産型)さんだが、実は当時からプロの音楽家を本職として活動しておられ、様々な方面の作曲や編曲を手がけて既に10年以上の活動キャリアをお持ちのプロミュージシャンだった。
ところで昨シーズン、世界250ccで活躍する関口太郎選手がチームスポンサーの失踪から資金難に陥り、関口選手のホームページ上でスポンサーを地道に募った事をご記憶の方も多いだろう。最近ではドイツのマックス・ノイキルヒナーが似たような状況に陥り、今年に入り急遽自身のホームページ上でファンにSBK参戦資金を募っていたが、彼もなんとかファンの支援により、今年のSBK参戦を実現したようだ。
ここでは、日本ブレイク工業の社歌と関口太郎選手にどんな関係があるのか、以下にご紹介したい。
■日本一タイミングの悪い日本一のライダー
2001年のMFJ全日本250ccのチャンピオンであり、2003年には独走勝利と呼ぶに相応しいヨーロッパでの年間タイトルを獲得している関口選手だが、なんともスポンサーやバイクに恵まれない印象の強い選手だ。
世界レベルでの実力の凄さはヨーロッパチャンピオンを1年型落ちのバイクで堂々と手にした事からもわかる通りだが、ワークスが手がける超高性能バイクがひしめくMotoGP250ccに参戦する以上、それなりのバイクがなければ到底勝てない。メーカーの支援が全くないプライベーターが簡単に勝利できるほどMotoGPは甘い世界ではない。プライベーターが勝利する時代もあったが、最近においてはかなり難しい状況だと言える。
2001年は125ccや250ccで戦う小排気量クラスの日本人選手にとってつらい年の始まりだった。日本の巨大バイクメーカーであるヤマハは、2002年からのMotoGPクラス(4スト化)に向けてワークス体制を強化し、国内外の2スト小排気量カテゴリからワークスチームを縮小した。もちろん、各企業の事情は様々なので、これについては時代の流れとして捉えて欲しい。以前から2スト小排気量には参戦していないメーカーも多い。とかく市販車に技術や利益を還元できない2ストにとっては都合の悪い時代なのだ。時代は大排気量4ストである。
この時代の狭間の影響として、ヤマハに乗って全日本を戦う選手は国内で勝利しても世界に飛び立つ機会が減り、また、日本企業のスポンサーがつきにくい海外レースで戦う日本人のヤマハ小排気量ライダーにとって、唯一の後ろ盾だった日本メーカー支援が消滅してしまった。関口選手がヤマハに乗り全日本で優勝したのは2001年、ちょうどMotoGPクラス制定の前の年である。何ともタイミングの悪い話だ。
現在125ccで戦う小山選手にしても同じ事が言える。彼は全日本のヤマハ時代、250ccでは常に青山(兄)選手や高橋(兄)選手とトップ争いをしていたが、この時代の狭間から逃れるべく、125ccにカテゴリーを落とし、メーカー支援枠が現在でも「唯一」残るホンダに乗り換え、世界参戦を果たした。相当の遠回り感は本人や関係者にもあっただろうと思う。
ちなみに2000年までは、ヤマハの250ccワークスバイクに乗り、中野真矢選手が世界タイトルを争っていた。2000年の事実上のチャンピオンはジャックではなく中野選手だと今でも個人的に信じているが、レースに「たられば」は無用であり今回のテーマとは無関係なのでこの話はやめておきたい。
■実力にあわないプライベーター仕様のバイク
この状況下、ほぼ自力で2002年に世界参戦を果たした関口太郎選手だが、彼のバイクは市販レーサー(メーカーがプライベーターに向けて出荷しているレース用バイク)だった。それでは勝てる筈がないと個人的に当時から思っていたが、それでもチャレンジする彼の精神構造には大変に興味をそそられたのも事実だ。数年前ならワークスバイク、最悪でもセミワークスで世界を走っていた可能性もあるライダーは、いったいどんな心境だったのか。
案の定、2002年の結果は散々だった。多くのファンが「関口は運のない男だった」と思った事だろう。資金のない挑戦は辛い。
もう世界戦で関口選手を見る事はないと思った2003年、彼はヨーロッパ選手権に参戦していた。正直、「諦めて全日本に戻って来い」と思っていたが、信じられない事がこの年に起きた。なんと彼は型落ちバイクでヨーロッパ選手権を全戦優勝し、余裕の年間チャンピオンに輝いたのだ。
こうして、関口選手は無事に2004年のMotoGP250cc参戦権を自力で獲得した。彼を信じなかった事を日本人として申し訳ないと思った。
■順風満帆と思われたヨーロッパチャンピオンのその後
2002年とは異なり、2004年は多くのファンが関口選手のMotoGP250ccへの復帰を喜び、彼の成績を期待したと思う。海外で注目度の高いヨーロッパチャンピオンの実績があれば、きっと海外のメーカーやスポンサーが彼を支援するに違いないと思われた。だがやはり、メーカーの後ろ盾のない日本人に海外の大口スポンサーはつかないのである。
2004年に所属したチームのマシンは2002年と同様の市販マシンであり、この年の成績も散々だった。さらに最悪だったのは自称「天才メカニック」という所属のエンジニアが関口選手に自由なマシンセッティングを許さなかった事だろう。当時の噂なので事実は良くわからないが。
昨年の2005年には無事にチームを変わり、マシンもワークス仕様車ではないがアプリリアとなり、海外のスポンサーも決まった。今年こそはと思ったのだが、ここでもやはり関口選手は金運に見放される。
■チーム2ちゃんねる
状況は良くわからないが、突然チームのスポンサーが2005年シーズン開幕前に失踪して音信不通となってしまったらしい。参戦すら危ぶまれた関口選手は、急遽自身のホームページでスポンサーを募った。大手スポンサーから小口5万円のスポンサーまで。
2輪ロードレースファンが殆ど普段生活していても見当たらない日本だが、ネットの世界は少し事情が異なる。かつての3ない運動の影響が残っているのかは定かではないが、テレビなどのメディアが2輪情報をあまり扱わない為、情報欠乏症と化している2輪ファンは世界のロードレース情報をインターネットを通じて得ている事が多いようだ。不幸な事態ではあるが、ネットで支援を呼びかけるという関口選手の取った手段は正しかったように思う。ノイキルヒナーも彼の話をヒントにしたのではと勘ぐってしまう程だ。
日本の無記名制の巨大BBSと言えば「2ちゃんねる」だ。荒地のような場所もあれば秩序正しい場所もあり、マスコミでは荒地部分のみがクローズアップされて毛嫌いする方も多いが(本気で「2ちゃんねる」というニートやテロリストの団体が存在すると思っている企業もあるようだが)、実際は会社経営者から一般会社員、学生、主婦、時にはある分野のスペシャリストなどが、予め分類された話題毎に好き勝手に情報を書き込むという巨大な井戸端会議場である。
関口選手がネットで支援を呼びかけた時、この2ちゃんねるのバイクレース好きな面々がネットでこの話題を取り上げた。関口選手を助けたい一般個人全員が5万円をそれぞれ出費するのは厳しいだろうと判断し、スポンサー名をチーム2ちゃんねる「Team(・∀・)2ch」と題して小銭レベルからの募金を呼びかけている。ロードレースファンなら一度は夢見るGPのスポンサーに、小額で誰でもなれるというアイデアだ。
この狙いは当たり、ネット上で賛同したロードレースファンの多くがチーム2ちゃんねるに対して関口選手への支援金を送った。2005年の彼のマシンにはこのアスキーアート「Team(・∀・)2ch」が誇らしげに貼られていたのを覚えてらっしゃるだろうか。
世界200ヶ国に中継されている映像で、関口選手がテレビカメラに掲げた「Team(・∀・)2ch」のロゴは印象深かった。世界中の人は不思議なマークだと思ったに違いない。
2005年はテスト走行中の不幸な大怪我で第9戦からの参戦となったが、無事にチーム2ちゃんねるやその他の理解あるスポンサーの後押しで関口選手はMotoGP250ccに復帰を果たした。途中参戦や怪我の具合から年間でのランキングは21位だったが、終盤は今シーズンの2006年に期待の持てる走りを見せてくれた。今年こそ本当に関口太郎選手の復活が見れるに違いない。
■2006年のしゃれた支援活動
2006年シーズンは失踪しないメインスポンサー(少なくとも現在は)が「チームに」ついたが、シーズン全戦を通して関口選手が戦う上で十分な資金は現在も得られていないようだ。彼は現在もスポンサー集めの営業活動に余念がない。なんとか彼にレースだけに集中してもらう方法はないものだろうか。彼の夢は今や日本人ロードレースファンにとっての夢だ。
今年も関口選手の活動をチーム2ちゃんねるは支援し、チーム2ちゃんねるへの多くの参加(募金)をネットで今も呼びかけているが、今回はしゃれた方法で関口選手を支援する別のオプションを提示してきた。関口太郎選手の応援歌「フルスロットル」をCD化し、その収益を関口選手のレース活動にあてるというのだ。
このカッコいいロックナンバー「フルスロットル」の原型は、2ちゃんねるの中で昨年から有志が時間をかけて仕上げたものだ。最後はプロの手にかかり、そう、冒頭で紹介した元日本ブレイク工業の萬Z(量産型)氏が編曲して演奏し、最高のメタル系ロックナンバーに仕上がった。彼の作った有名な社歌を知っていれば、チーム2ちゃんねるならずとも彼に仕上げを頼みたくなるのはごく自然だ。(萬Z氏が元々プロのミュージシャンだった事は依頼時に知ったらしい)
チーム2ちゃんねるから関口選手の事情を聞いた萬Z氏は、快くこのプロジェクトへの協力を承諾してくれたそうだ。
このCDには「Team(・∀・)2ch」ロゴのステッカーや、いくつかのおまけが同封されている。購入や予約を希望される方は、本サイト内に関口選手の公式サイトにある販売ページへのリンクがあるのでご利用頂きたい。
募金という形は振込み手間などが面倒だと思っていた方も、このCDは是非聴いてみて欲しい。募金による協力ももちろん可能だ。 尚、今年の「Team(・∀・)2ch」ロゴはバイクではなく、関口選手のヘルメットに貼られるので、今シーズンも注意して見てみたい。
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