テレフォニカ・モビスター撤退までの経緯
2006年1月13日 ShoppingOn編集部

テレフォニカ・モビスターのMotoGP撤退宣言は昨年の衝撃的なニュースだった。最近のキャメルやゴロワーズの問題において、巨大スポンサーを失う原因は日本メーカーの傲慢な姿勢とする意見がヨーロッパの一部で報じられたが、ここではテレフォニカがMotoGP撤退に至るまでの経緯をできるだけ正確にまとめておきたい。

■テレフォニカ・モビスターのMotoGP撤退に関する真相

テレフォニカ・モビスターの撤退は、ホンダとテレフォニカの2社間のみで生じた問題ではない。事実は、HRCワークスチームのスポンサーとして君臨するレプソルと、その地位を奪い取ろうとしたテレフォニカの間に生じた仁義無き抗争劇だ。

一般的に知られている事実は、2006年の新しいHRC体制として、アメリカ人ライダーのニッキー・ヘイデンのチームメイトとして、スペイン人のダニエル・ペドロサとHRCが直接契約した事により、125ccから250ccまでのペドロサの3回の優勝を支えてきた冠スポンサーであるテレフォニカが激怒したという内容だ。セテ・ジベルナウの2004年と2005年のケースと同じく、テレフォニカはHRCの意向を無視してでも、自分がスポンサーであるグレッシーニ・チームにスペイン人の人気ライダーを配置する事を理想としていた。 しかしながら、これはあくまで表面上の話であり、HRCがペドロサと直接契約するに至るまでには多くの政治的交渉がなされている。

スペインの巨大会社であるテレフォニカの2006年シーズンにおけるホンダへの要求は、グレッシーニ・チームのライダーとして、セテ・ジベルナウとダニエル・ペドロサというスペインの2大スター体制の実現だった。 これに対してホンダの出した最終的な回答は、「HRCが文字通りのファクトリー・チームに戻る」という決意だ。

優秀なライダーはHRCの意志によりホンダワークスと契約し、そのスポンサーはレプソルであるという伝統を、ホンダは取り戻したかった。これは、HRCのレプソルというスペインの巨大会社への信頼、および忠誠心の表れでもある。レプソルはこの件に対して殆どコメントを出してはいないが、おそらく同意見だろう。

昨年2005年のはじめ、ホンダはセテ・ジベルナウをレプソル・ホンダで走らせようと試みたが、テレフォニカとセテの「グレッシーニ・チームで走る」という要求を完全に退ける事ができなかった。そこでホンダが最初に提案したのは、「一台のHRCワークス(ニッキー・ヘイデン)のメインスポンサーはレプソル、その二次スポンサーはテレフォニカ。そしてもう一台のメインスポンサーはテレフォニカ(セテ・ジベルナウ)、その二次スポンサーにはレプソル」という案だった。これは、2004年シーズンにセテがロッシに勝てなかったのは、ワークス待遇を受けられなかった事が原因と主張するセテ本人や、それを後押しするテレフォニカやスペインのマスコミ報道に疲れきっていたホンダ側の譲歩と取れる。

しかしながら、スペインの巨大ブランド2社が、そう簡単にこの案を受け入れる筈はなかった。そもそも、テレフォニカチームの二次スポンサーであるカストロール(イギリスのオイル会社)はレプソルとの競合相手である。また、このホンダの動向を受け、レプソル側も「レプソルがサポートするのはホンダファクトリーの1チームに所属する2名のライダーのみ。」という声明を出した。結局、ホンダは前言を撤回し、テレフォニカの信頼を裏切れないセテ・ジベルナウは、ワークスなのかサテライトなのかはっきりしないグレッシーニチームで2005年シーズンを過ごし、一方、レプソルチームはニッキー・ヘイデンのチームメイトにマックス・ビアッジを選ぶに至った。

2004年の暮れにこのセテ・ジベルナウのチーム問題は盛んに取りざたされていたが、チーム体制公表前の冬季テストに、レプソルのつなぎを着て嬉しそうにマックス・ビアッジが登場した時には皆言葉を失った。この時のマックス・ビアッジには、2005年シーズンはホンダ・ポンスのライダーとして走るという契約上の問題が残っており、それも未解決のままだった。実はこの時既に、ホンダ・ポンスにはキャメルから、「ビアッジを2005年にレプソル・チームで走らせる事に同意すれば、2006年シーズンも確実にキャメルはホンダ・ポンスのスポンサーになる。」という条件が提示されており、取引は成立していた。この取引が2006年に本当に実行されるか否かは、すでにご存知の通りである。

1995年のミック・ドゥーハンによる二度目の世界タイトル獲得の年に、HRCとレプソルはワークスチーム運営に関する同意書を取り交わしており、先に述べたレプソルの声明はこれに基づくものである。以後この2社間の関係は現在まで続いているが、このレプソルの特別権限を侵すというタブーをテレフォニカは冒してしまったようだ。

ダニエル・ペドロサとセテ・ジベルナウの2名をテレフォニカカラーの「ホンダワークス」から走らせたいテレフォニカは、「絶対に断れないオファー」と銘打って、ホンダに対して以下の条件を提示した。

「ホンダが、HRCとレプソル間で取り交わされた同意書を破棄するのであれば、テレフォニカはホンダに対してスポンサー投資を数百万ドル追加するだろう。」

しかし、ホンダとレプソルの信頼関係は、テレフォニカが考えるほど浅くはなかった。このテレフォニカの提示を受けた後の昨年のカタルニアで、ホンダの幹部はこう言い切った。「常に他の企業にも話している事だが、10年間私たちに協力して下さった企業の立場を奪おうとして、それに失敗した企業と今後の関係を維持するのは難しいだろう。」

この発言を受け、テレフォニカはホンダとの関係を断念せざるを得なくなったようだ。ペドロサが3度目の優勝を果たした昨年のフィリップ・アイランドで、ついにテレフォニカはMotoGP撤退の意思を表明し、今後はF1のスポンサーとして、スペイン人の国民的英雄となったフェルナンド・アロンソの支援に集中する計画を明らかにした。皮肉にも、アロンソは2007年以降、テレフォニカの敵対会社であるボーダフォンの支援するマクラーレン・メルセデスと契約を交わすようだが。

一部の感情的なスペインなどのマスコミを除けば、ホンダやヤマハなどのファクトリーが、ライダー選択の主導権を握る事に反感を覚えるマスメディアは少ないように思える。メーカーはたばこスポンサーやその他の巨大スポンサーの追い出しを望むのではなく、むしろ歓迎している。ただし、「ライダーやチーム運営に対しての過剰な口出しは止めて欲しい」というのが本音のようだ。
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