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2007年12月10日
前回のヘレスでの冬季テストをもって、多くのMotoGPライダーたちは年内に予定されていた全て作業を終えている。彼らは冬季テスト禁止期間が終わる年明けの1月20日まではしばしの休息を楽しみ、その2日後となる1月22日からのマレーシアでのテスト再開に挑む予定だが、この冬の連休期間をシーズン中に壊した身体の治療にあてるライダーの数も毎年決して少なくはない。
■冬季期間中に治療と静養が必要なMotoGPライダー4名
今回の冬季連休も例外ではなく、ケーシー・ストーナー、ニッキー・ヘイデン、トニ・エリアス、アンソニー・ウエストの4名は、前回のヘレス冬季テストまでの今シーズン、およびそれ以前に負った怪我の治療にこの冬は取り組む予定だ。ここでは、この4名の怪我の治療の状況と、ウエストについては本人の手術後のインタビューをカワサキ・レーシング・チームが公開しているので、この全文も合わせて紹介する。
■2007年最後のテストで負傷したストーナー
今年は昨年の2006年シーズンまでとは大きく異なりレースでの転倒は一切なく、年間ポイントを全レースで獲得した唯一のライダーとなり、2007年シーズンのタイトルを圧倒的な強さで勝ち取ったドゥカティーのケーシー・ストーナーだが、2008年型マシンのデスモセディチGP8を初めて試した前回11月末のヘレス冬季テストでは、初日と2日目に連続して転倒を喫し、2日目の転倒で強打した左肩の痛みのためにその最終日となる3日目のテストをキャンセル、オーストラリアに帰国して担当医による診断を受けている。
■2006年に右肩の靱帯を手術したスポーツ治療の権威が診断
ストーナーは今回とは反対側の右肩の靱帯に負った古傷を、2006年のMotoGPデビュー・イヤーの冬季テストシーズン中に手術しているが、その時の手術を担当したオーストラリアのスポーツ選手治療の権威とされる医師が、今回の左肩を診察したようだ。
■手術は不要、約二ヶ月間は安静
MotoGP公式がその後に発表した内容によればストーナーは、ヘレス冬季テスト2日目の転倒により左肩の靱帯数箇所にダメージを受けているが、治療に手術は必要なく、肩に負担をかけないように6週間から8週間の期間を静養すれば元通りに回復可能と診断されており、現在は本人はオーストラリアの自宅で安静にして過ごしているという。
■年明けのセパンとフィリップ・アイランドはキャンセル?
気になるストーナーの冬季テスト復帰時期だが、1月22日から始まる2008年最初のセパンでのテストへの参加はやや難しい状態にあり、さらにセパンの6日後から始まる母国オーストラリアでの年明け2度目の冬季テストへの参加も含め、現在は未定のようだ。
なお、通常の冬季休暇中は新シーズンに向けての筋力トレーニングをMotoGPライダーは行うが、今回ストーナーは1月末まで上半身のトレーニングができない事になっており、何よりもその点が本人にとっては悩ましい部分だという。
■ヘイデンは2006年の古傷を手術
2007年前半はタイヤとマシンの不調に苦しみ、ディフェンディング・チャンピオンとしては非常に辛いシーズンを送ったレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、2006年シーズンのポルトガルGPにおいて後続のライダーに追突される形で転倒しているが、12月3日にその時に骨折した右肩周辺の再手術を1年ぶりに受けている。
■内視鏡による小さな手術、腕の固定は2〜3日程度
MotoGP公式によれば、今回の手術は内視鏡を使った非常に小さな最終調整的な手術であり、右腕を術後2〜3日間吊って固定すれば、その後はほぼ通常通りの生活ができる程度のものだという。
なお、この手術は無事に成功しており、ヘイデンは年明け最初のテストとなる1月22日のセパン冬季テストには予定通り参加する。
■エリアスも2006年の古傷を手術
2007年までの2年間はグレッシーニ・ホンダに所属し、来年の2008年シーズンはアリーチェ・チーム(現プラマック・ダンティーン)からMotoGPに参戦するトニ・エリアスも、ヘイデンと同様に2006年シーズン中に負った古傷の手術を受けている。
■当初予定していた大腿骨の手術は見送り
当初エリアスはこの冬季休暇中に、今年の2007年のオランダGPにおいて大腿骨を骨折した際に埋め込んだチタンの金属辺を取り出す手術を受ける予定だったが、検査の結果、まだ骨折部分の回復状況が完全ではなかった事から、金属を埋め込んだままさらに半年は様子を見る事を担当医師が決定したようだ。
■今回の再手術は2006年のオランダGPで骨折した左肩
そのため、エリアスは今回は大腿骨の手術は見送り、それとは別の2006年シーズン中のオランダGPで骨折した左肩と鎖骨2本の再手術を12月7日に受けており、この手術が無事に成功した事と、2週間後にはリハビリが開始できる事をエリアスは自身の公式ページにおいて今回報じている。
■エリアス「2007年シーズン中は左肩の痛みに苦しんだ」
エリアスのコメントによれば、2006年当時の左肩の手術は非常にうまくいったものの、その後は患部が他の部分に干渉するようになり、2007年シーズンを通してライディング中にかなりの痛みに悩まされていた事から、今回の手術に踏み切った様子だ。
なお、エリアスもヘイデンと同じく、年明けの1月22日のセパン冬季テストには問題なく参加できるとしている。
■ウエストはヘレス冬季テスト終了後にドイツの病院へ直行
11月末のヘレス冬季テスト最終日に、「早く家に戻りたいがドイツのミュンヘンで左の手首から金属片やネジを取り出すのが先」と述べていたカワサキのアンソニー・ウエストは、その言葉通りヘレスからドイツに直行して左手首の手術を受けている。
■2002年に手首に負った大怪我の再治療
ウエストの今回の手術は2002年のレース中に左手首に負った大怪我の再治療であり、彼が最高峰クラスへの復帰を遂げた今年の2007年シーズン中も、左手首周辺に欠かさずテーピングをしていたのは周知の事実だ。
■チームメイトのホプキンスも2005年に金属片を取り出す大手術
ちなみにカワサキの新チームメイトであるジョン・ホプキンスも、かつての大怪我のために骨盤など身体中に埋め込まれた金属片を全て取り出す手術を2005年に受けており、「もうサイボーグではなくなった」と述べた後の彼は、2006年と2007年シーズン中にかつてない好調な走りを周囲に見せつけ、その走りをカワサキに認められた彼は2008年シーズンをウエストと共に戦う事になった。
■退院直前のウエストへのインタビュー
ここでは最後に、カワサキ・レーシング・チームが公開した退院直前の上機嫌なウエストのインタビュー全文と、カワサキの物理療法士であるウリ・アンベルガー氏のコメントなどを合わせて紹介する。
■ウエスト「2002年は医師に従うしかない大怪我だった」
「最初にこの部分を負傷したのは、2002年にフィリップ・アイランドの1コーナーで転倒した時です」と、ドイツの病院のソファーに腰掛けたウエスト。
「測定結果によると、転んだ時の速度は時速267キロだったようです・・・その時に手首周辺をものすごくひどい形で骨折してしまい、見た時はSの字を描くように折れ曲がっていました」
「普通ならギプスの石膏を自分で取り除いてそのままレース活動を続けるんですが、その時はあまりにひどい骨折の上にシーズンも終盤だったので、そのまま6週間我慢する事にしたんです。でも、その後ギプスを取り外した時には手首がひどく不格好になっていて、筋肉と靱帯が短くなってしまっていたんです」
「それを元通りに治すために1枚の金属片と4本のネジを入れる手術をその時に受けたんですが、今回の手術で取り出すまでは、ずっとそれが手首の中にあったんです」
■手術中は手に不気味な感触
さらにウエストは手術中の様子についても、以下の通り感想を述べている。
「手術中はすごく変な感触でしたね」とウエスト。
「局部麻酔が効いていたので、痛みが全然ないのに何かが起きている事だけは分かるんです。これは気持ち悪いですよ。自分自身の腕なのに、そこから何も感じ取れないなんて、とにかく奇妙でした」
■物理療法士のアンベルガー「今回はいい患者にしている」
なお、手首の金属片がライディングに悪影響を及ぼした事は今までに一度もないとウエスト本人はコメントしているが、カワサキで彼の物理療法士を務めるウリ・アンベルガーは、このまま金属を埋め込んでおくと腕の筋力の回復に悪影響が出る事と、再び転倒などで左手首に圧力がかかった場合に関節が再び折れてしまう危険性を、以前から彼に指摘していた様子だ。アンベルガーはウエストの手術成功を喜び、以下の通りコメントしている。
「手術はすごくうまくいきました。腫れもひどくありませんし、物理療法の観点から見ても、すぐにリハビリに取りかかる事ができるくらいです」とアンベルガー。
また、医師の言う事を普段はあまり聞かないと述べるウエストについて、今回は非常にいい患者だったとアンベルガーは続ける。
「ええ、とてもいい患者さんになってましたよ。これからは関節が機敏性と筋力を保てるように、手首を全ての方向にゆっくりと動かす練習に入ってもらう予定です。それと靱帯が短くなっている関係上、腕を完全に伸ばし切るのは難しいので、その状態に彼が慣れていけるような対処も今後は必要ですね」
■ウエスト「いい病院だった・・・」
ウエストは今回の治療と病院の環境には大変に満足できたとして、以下のコメントでインタビューを締めくくっている。
「もう手首がひどく痛むような事は全然ありません」とウエスト。
「この病院は素晴らしかったですよ。まるでホテルにいるみたいでした。食事もそれほど悪くありませんでしたし、はっきり言えばナースの方々が良かったです」
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