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2007年8月5日
FIM(国際モーターサイクリズム連盟)と日本の4大バイクメーカーであるホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキは、7月26日(木)と7月27日(金)には東京、7月29日(日)には三重県の鈴鹿での計3日間、エネルギーや騒音の問題、ならびに世界グランプリや各国のロードレース選手権のあり方など、今後のバイク業界が取り組むべき様々な課題についての会議を設けている。
■MotoGPなど、小排気量カテゴリーに残る2ストローク・エンジン
この重要会議の中での1つの議題として取り上げられているのが、MotoGPにおける小排気量カテゴリーの今後のあり方だ。MotoGPの最高峰クラスは2002年から以前の2ストローク500ccに加えて4ストロークの場合は990ccマシンの参加も認められるようになり、今年の2007年からは4ストローク800ccマシンのみのグランプリとなって2ストロークの使用は禁止されたが、依然として125ccクラスと250ccクラスは2ストロークマシンにより争われている。
■4ストローク化に動く世論
地球資源や騒音などの問題もあり、日本国内のメーカーは2ストローク・マシンの製造を大幅に縮小し、市販のオートバイの多くが4ストローク化されて久しいが、近年はレースシーンにおいても、MotoGP最高峰クラスの4ストローク化に留まらず、その小排気量カテゴリーであるMotoGP125ccクラスと250ccクラスの存続意義を問う声や、2ストローク・マシンの撤廃に関する意見に触れる事も少なくない状況にある。各国で行われている2ストローク小排気量の国内選手権についても同様だ。
■避けて通れない4ストローク化議論
今回の日本での会議に限らず、FIMやDORNA、ならびに各バイクメーカーは、現存する2ストロークの小排気量レース・カテゴリを将来的にどうするかについて、まだ具体的な案は公式には提示されていないものの、SBKの小排気量カテゴリーに近い4ストローク600ccエンジンの導入など、何らかの案を検討しているのは確かだ。
■アプリリアの元レース部門責任者の意見
この避けて通れない動きの中でも、2ストロークの完全撤廃には反対する意見も少なくない。ホンダやヤマハのワークス・チームが小排気量カテゴリーから20世紀末に事実上の撤退をして以来、2ストローク・グランプリの中心的な位置づけを担うようになったアプリリア・ファクトリー(ワークス)だが、その元エンジニアであり、レース部門の責任者を務めてきた経歴を持つジャン・ヴィトフェーン氏の意見を、JiRは8月3日付のリリースの中で紹介している。
ここでは、そのヴィトフェーン氏が、FIMや日本メーカーの動きを受けての個人的な意見として提案する今後の250ccカテゴリーの変遷のあり方を、同リリース内のインタビューの全文を掲載する形で以下に紹介する。
●250ccクラスのルール変更に関する動きがあるようですが、その内容についてはどう思われていますか。
現在のルールは2009年の終わりまでは今のままですが、どうやら2010年には変更されるようです。ただ、正しい解決策を見出すのにはもう少し議論の時間が必要だとヨーロッパのファクトリーは主張しており、彼らは2012年か2014年まで決定を延期したいと考えています。
今回のルール変更の考え方は、ホンダが2ストロークのレース用マシンを2010年から製造しない事を表明したのが発端です。ですから、ドルナ社(DORNA:MotoGPの商業権利元)がその年をルール変更の時期に設定しているのも、それが理由だと私は考えています。
●これだけ短期間のうちにルールを変更する事で、どのような結果が生じるとお考えですか。
現在125ccや250ccの2ストロークマシンを生産しているヨーロッパの小規模なファクトリーが、いくつか消える事になるのは確実でしょう。
アプリリアで現在私たちが直面している状況は、KTMおよびジレラやデルビにとっても同じ筈です。確かにジレラとデルビはアプリリアのマシンを使用し、そのブランドロゴを付け替えているにすぎませんが、彼らにとっても、まだこの問題は重要なのです。
少なくとも、今後もこのクラスに向けてバイクを生産するのは、アプリリアとKTMの2社に絞られるでしょうね。
●2ストロークの250ccクラスを今後も継続する事には、主にどのような良い点があるのでしょうか。
継続への理由はいくつもあります。先ほども述べましたが、私たちはこのクラスからヨーロッパのファクトリーを失いたくないのです。しかしながら、コストの問題からそういう事態は発生する事になるでしょうね。
250ccマシンは単に125ccマシンの排気量を倍にしているだけですので、開発コストは共有する事が可能です。しかしながら、おそらくこのクラスの代替案として提案されるのは、市販の600cc4ストローク・エンジンと独自シャシー(プロトタイプ)の組み合わせによるマシンです。
現在のヨーロッパのメーカーはそのようなエンジンを製造していません。造っているのは日本のメーカーだけです。この点から見ても、非常に馬鹿げた提案であると私は考えています。
●あなたはレース用の2ストローク250ccマシンがライダーの育成に有益だとお考えですね。
もちろんです!現在のMotoGPのトップライダーを見て頂ければ分かるでしょう。ケーシー・ストーナーにしてもバレンティーノ・ロッシにしても、皆が250ccの出身者です。それにクリス・バーミューレンの雨天のルマンでの勝利を除けば、今期のここまでの優勝者は全員が250ccクラスのグランプリ経験者です。
250cc時代に速かったライダーはMotoGPでも速いのです。それにランディー・ド・ピュニエやシルバン・ギュントーリのようなライダーでさえ、MotoGPに適応する高い能力を示しています。
ジョン・ホプキンス(AMAフォーミュラ・エクストリームの元チャンピオン)のようなライダーは適応にさらなる時間を必要としましたし、ニッキー・ヘイデン(AMAスーパーバイクの元チャンピオン)でさえホンダやHRCの投資を得ながらも5年の歳月が必要でした。
●では、なぜ250ccマシンはライダーの育成に適しているのでしょうか。
マシンの絶対的なパワーです。重量が100キログラムのマシンでも膨大な馬力を得る事ができますからね。4ストロークよりも出力を得る仕組みがエンジン単体として見ても直接的なんです。
4ストロークのエンジンには過激さが足りません。その一方で、2ストローク250ccのマシンはスロットルの操作に技術がいります。後輪の挙動や感触を意識したスロットル操作が必要になりますから、エンジン哲学の面でも、ライダーの教育には有益だと言えます。
4ストロークのバイクは限界に達した時や進行方向を変える時など比較的に対処が容易ですから、ライディングやマシンのセッティングの面で学ぶ事は少ないと私は思っています。
もしこのクラスをなくすような事があれば、各チームは新しい世代のMotoGPライダーを探す事が非常に難しくなりますよ。これまでにも、250ccクラスのトップ3に入るライダーは、MotoGPクラスでも速いライダーになってきました。2ストロークの125ccマシンから直接MotoGPマシンに乗り換えるのはあまりに無謀でしょう。
●4ストローク化への動向を認めつつ、MotoGPクラスへの導入カテゴリーとしての2ストローク250ccクラスを維持していくにはどうすればいいとお考えですか。
全てのメーカーが2ストロークを作り続けたいと思っていない事は知っています。また、イルモアやKTM、ならびにアプリリアなどのファクトリーの例にもある通り、MotoGPクラスへの参入はあまりにも費用が高額です。
だから私は2ストロークのカテゴリーは残すべきだと思いますし、新しい4ストロークに関してはMotoGPマシンの性能の半分にするべきだと考えています。要するに、4ストローク400ccのマシンにするんです。250ccの2ストロークマシンよりは高価ですが、現在の125 ccマシンと250ccマシンの関係と同じように、大排気量側の開発コストを削減する事になる筈です。
すなわち、将来的にMotoGPクラスを目指すメーカーのために、250/400ccという1つの入門クラス(2スト・4スト混在)を設けるというのが私の案です。いきなりMotoGPクラスに挑戦するのは、メーカーにとってはあまりにリスクや費用が高すぎます。
●今後どのくらい議論や変更を重ねていく事になりそうですか。
そうですね、現在進行中の議論ですし、決定までには3年間しかありませんから、皆で意見を近いうちにまとめなければならないでしょう。上に述べた通り、私の提案なら全てのメーカーが2ストロークと4ストロークのどちらでも参戦する事ができるようになるので、良い解決策だと思います。
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