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今期のタイヤ・レギュレーションは厳しすぎる?
インテリマーク編集部
2007年8月2日

先回のアメリカGPにおいて、ミシュランタイヤが思い通りに機能せずに、ブリヂストン勢に表彰台を独占されたバレンティーノ・ロッシとヤマハのチーム首脳陣は、そのレース後に「ファンにとっても良くない傾向。タイヤが勝敗を左右しすぎるのはレースのショーとしての醍醐味を損なう」とコメントしている。このロッシたちの苦しいコメントの裏にあるのが、今期から導入された新レギュレーションだ。ロッシは新レギュレーションのタイヤ本数制限の緩和を、来シーズンに向けて求める姿勢をアメリカGP後に示している。
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■ロッシが嫌う31本のタイヤ持ち込み制限

今期からMotoGPクラスで施行されている新タイヤ・レギュレーションとは、過去2シーズン中のレースで2回以上の勝利(ドライ・コンディションのレースで1位を獲得)を収めたタイヤメーカーと契約しているチームに対して、1ライダーあたりに1回のレースウイーク中を通してフロントタイヤは14本、リアタイヤは17本の合計31本に使用を限定するルールであり、ミシュラン、ブリヂストン、ダンロップのタイヤメーカーの3社によってこの内容は昨年度中に取り決められた。
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予選タイヤを含む31本のタイヤは、レースウイークの前日までに持ち込みを申告して検査を受けなければならず、実際のコースの路面状況が予想とは大きく異なるものであっても、追加持ち込みはタイヤ破損や設計不良などの特殊な例を除き一切認められない。ロッシなどが求めるのはこの本数の拡大だ。


■そもそものタイヤ・ルールの意義

ここで新タイヤレギュレーション導入の意義を見直してみよう。
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一度も4ストロークMotoGP時代に入ってから勝利経験のないダンロップにタイヤ持ち込みの制限はない。これはダンロップなど、4ストロークGPに新しく本格参入するタイヤメーカーにとっては、ドライのレースに勝利できるようになるまでは好きなだけ新しいタイヤを持ち込んで開発を効率的に進める事ができるように配慮されており、可能であればレースの決勝当日に最も路面状況に適したタイヤを工場から直接搬入する事もできる。
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その一方、過去2年の間に2回のドライでの勝利経験を持つミシュランとブリヂストンは、すでに開発が熟成期にあるとみなされ、レースウイークの走行が始まる前に過去のデータや長年の経験に基づきシミュレーションして選択した31本のタイヤ以外に、サーキットへの新たな持ち込みは禁じられる。

■タイヤメーカーの3社が揃って歓迎した新ルール

すなわちこのレギュレーションは、使用するタイヤによって各チームの格差をなくす事が目的に施行されたものだ。不利になる筈のミシュランとブリヂストンが、シーズン序盤にこの新レギュレーションを歓迎する声明を出していたのは、まだ記憶に新しいところでもある。


■予想外の大苦戦となったミシュラン
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しかしながら、予想以上にこのルールに大打撃を受けていると見られるのが、昨年まではヨーロッパでの地の利を活かし、レースウイーク中のデータを短期間でまとめ上げて、フランスの工場からレース当日に新しいタイヤを搬送する事ができたミシュランだ。

写真■今期のここまでのミシュランの勝率は4割弱

実際、ミシュランはここまでの11戦のレースのうち、フィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシの3勝と、ダニ・ペドロサの1勝という計4勝しかできておらず、残りの計7勝はブリヂストン勢、ドゥカティーのケーシー・ストーナーの6勝と、リズラ・スズキのクリス・バーミューレンの1勝だ。おまけに今年のミシュランは本拠地フランスのルマンでも勝利を逃している。

■昨年のミシュランの勝率は8割弱

ちなみに、昨年の2006年シーズンは、全17戦のうちブリヂストンが勝利したのはドゥカティーのカピロッシの3回とベイリスの1回の僅か計4回であり、残る13勝はミシュラン勢(ロッシの5勝、メランドリの3勝、ペドロサの2勝、ヘイデンの2勝、エリアスの1勝)という圧倒的な強さだった。昨年までの実績から「勝って当然」と思っていたミシュランや、ロッシなどその多くのユーザーが、今シーズンの開幕後に大きな衝撃を受けた事は疑うまでもなく、新タイヤレギュレーションに不快感を示すのも感情的には自然な流れだろう。
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■タイヤルールに関係なく強くなったブリヂストン

ミシュランが新レギュレーションの導入によるタイヤ開発の変化に乗り遅れる一方、ブリヂストンはどうかと言えば、彼らは昨年度中も予め日本で研究開発したタイヤを持ち込む必要があったために、今期は31本という厳しい本数制限はあるにしても、レースウイークを戦う上での作業アプローチやシミュレーションに対する考え方に、ミシュランと比較すれば大きな違いは生じていない事も考えられる。
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なお、各チームやライダーの感想からも分かるが、ブリヂストンタイヤはレース中の一貫性の面でも昨年と比較して大きく品質を改善しており、新タイヤレギュレーションが施行されていなくても、今年のブリヂストンがミシュランと互角に戦っていた事は確かだ。今シーズンはストーナーの強さもある。


■ブリヂストンやストーナー側の見解
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冒頭にて紹介した通り、ここに来てロッシやヤマハのチーム監督が「レースのショーとしての醍醐味の欠落」を訴えている。すなわち「ルールによってタイヤ選択の幅が減らされた事により、レースの行方をその要素ばかりが左右しすぎるので、ファンにとってレースが面白くなくなる」という主張だが、彼らとは逆の立場にあるブリヂストンや、ポイントリーダーのケーシー・ストーナーは、この風潮をどう見ているのだろうか。

■山田推進リーダー「ファンにとっても面白いルール」

写真ブリヂストンが公開しているインタビューの中で、今シーズンのタイヤ戦争と今期の新レギュレーションについての意見を求められたブリヂストンの2輪スポーツ推進リーダーである山田宏氏は、アメリカGP直後にロッシとは異なる見解を述べている。この時に山田氏は、タイヤ戦争はファンにとっても面白い要素ではないかと語った。

「バイクの出力を路面に伝える唯一の要素ですし、タイヤは常にオートバイのレースでは重要な役割を果たしてきました。ですから、他のタイヤメーカーとの高いレベルの争い、いわゆるタイヤ戦争は、技術的な実力を示す上で私たちにとっては歓迎すべき状況と言えますね。」と山田氏。

「今期の新しいタイヤ・レギュレーションは、MotoGPにかかわるタイヤメーカー3社間での協議に基づき、その内容を決定しました。11回のレースを終えた今でも私たちはこれらのレギュレーションを支持していますし、このルールによってタイヤメーカー間やチーム間の力の差が均一化されたのではないかと個人的には考えています。」

「ブリヂストンとしての観点からすれば、新レギュレーションにより私たちの仕事が新しい局面を迎えたと言えます。これはタイヤメーカーやチーム、それにライダーたちにとっても挑戦しがいのあるレギュレーションですし、ファンの方々にとっても面白い部分だと思います。」

■ストーナー「過去のミシュランの優位性を証明したにすぎない」
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また、ブリヂストンを履いて今シーズンのトップを走り続けるドゥカティーのケーシー・ストーナーは、オーストラリアのAAP通信に対し、ロッシのアメリカGP後のコメントへのけん制とも取れるコメントを述べているので、その言葉を以下に引用したい。

「シーズンの序盤はバレンティーノをはじめ他の多くのライダーが新しいルールを認めていた筈です。」とストーナー。
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「で、自分たちが勝てなくなった途端、すぐにルールがくだらないとか言うし、そのくせ勝った時にはルールは関係ないって態度です。僕にだって今年はひどいレースが何回かありましたよ。特にドイツがそうでしたが、でもその時に自分はタイヤルールについての不満は一言も述べませんでした。そんなのフェアじゃありませんから。」

「彼らは好きなだけ泣き言を聞いてもらえるようですね。でもそれは彼ら(ミシュラン)が過去にはそれだけの優位性を確保していたという事への証明にすぎません。今期の彼らはレースの当日にはタイヤを持ち込めなくなりましたからね。」

「ようするにこの問題は、成績を支えている企業への依存度合いによります。」


■ロッシとは異なるバージェスの意見

実際に施行が始まってからシーズンの半分以上が経過し、改めてクローズアップされる事の多くなった新タイヤ・レギュレーションだが、これに対する考え方は各チームやライダーによって様々な考えが方が存在するようだ。
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■バージェス「ルールは今のままがいい」

AAP通信は上記のストーナーのコメントと同時に、現在のバレンティーノ・ロッシのチーフ・メカニックであり、ミック・ドゥーハンの勝利を支えてきたスーパー・カニックとしても知られるジェリー・バージェスのコメントを最後に紹介している。

「今シーズンのバレンティーノがレースに勝てないのは、タイヤルールだけが主な原因ではありません。」とバージェス。

「私は誰にとっても公平な今のルールが好きですし、このままであって欲しいと願っています。」

蛇足だが、バージェスは昨シーズンの序盤から、ストーナーをチームに迎えて育てたいとの意思表示を示しており、実際にストーナーの父親でありマネージャーのコーリン・ストーナーが昨シーズンの夏季までにヤマハとの交渉を進めていた事は有名な事実だが、当時のロッシは「ストーナーはホンダに残るのが一番幸せな選択」とメディアに述べるなど、この動きにけん制の構えを見せていた。結果としてバージェスのストーナー獲得の願いは叶わず、現在のドゥカティーとブリヂストン、ならびにストーナーという今期最強パッケージが誕生するに至っている。


■タイヤルールに関する投票
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最後に、今期の新タイヤルールに関して以下の投票箱を用意してみた。興味のある方にご参加いただければ幸いである(投票や結果の参照はこちらから)。

質問)今期から導入された新タイヤルールの感想は?(複数選択可)

 )レースが面白くなった。
 )レースがつまらなくなった。
 )レースの面白さは特に変わらない。
 )予選が面白くなった。
 )予選がつまらなくなった。
 )予選の面白さは特に変わらない。
 )今期のルールのまま何年か続けてみるべき。
 )ルールは必要だが、持ち込み本数を全体的に拡大するべき。
 )持ち込み本数をもっと少なくするべき。
 10)予選タイヤの本数制限は不要。もしくは別の本数枠を設けるべき。
 11)新タイヤルールは不要。全面的に撤廃するべき。
 12)今後タイヤはワンメークにした方がいい。
 13)ワンメーク化には反対。



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