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2007年3月31日
MotoGPスペイングランプリが2日前に行われた3月27日のヘレス・サーキットでは、その前日の悪天候での合同テスト初日に引き続き、4月20日に開催されるトルコ・グランプリ以降の戦いに向けて、多くのチームが2日目となったこの日のテストにも参加している。
■テスト2日目午後にやっと得られたドライ・コンディション
豪雨に見舞われた1日目の天候の影響で、2日目も午前中の路面は濡れていたが、午後1時30分を過ぎた頃に路面は完全に乾き、レインセッティングのテストを初日に済ませ、一刻も早く通常のテストをドライ・コンディションで行いたかった各チームは、一斉にコースに飛び出して新型パーツやタイヤテストを忙しく行ったようだ。この日の気温は16度、路面温度は22度、湿度は50%だった。
■2日目の参加レギュラー・ライダーは10名のみ
なお、初日の雨の中テストに参加していた殆どのMotoGPクラスのレギュラー・ライダーのうちの7名は当初から1日目のみのテストを予定していた事から、2日目に参加したレギュラー・ライダーは、レプソル・ホンダからはニッキー・ヘイデンの1名のみ、フィアット・ヤマハからはバレンティーノ・ロッシとコーリン・エドワーズの2名、カワサキからはランディー・ド・ピュニエとオリビエ・ジャックの2名、グレッシーニ・ホンダからはマルコ・メランドリとトニ・エリアスの2名、ホンダLCRのカルロス・チェカ、TECH3ヤマハからは玉田誠選手とシルバン・ギュントーリの2名という、合計10名となっている。
ドゥカティー・マルボロチームは、ロリス・カピロッシが夫人の出産予定の関係上2日間通して不参加、ケーシー・ストーナーは1日目のみのテストを予定していた事から、2日目は同チームのテストライダーであるヴィットリアーノ・グアレスキの1名がマシンの開発作業を行った。リズラ・スズキとコニカミノルタ・ホンダ、プラマック・ダンティーンおよびチームロバーツは予定通り初日のみでテストを切り上げている。
■スペイングランプリ後のヘレス合同テスト、2日目の結果
以下に、3月27日にヘレス・サーキットで行われたMotoGP合同テスト2日目の結果を、各ライダーのこの日の自己ベストタイム順に示す。
1) マルコ・メランドリ ITA ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分39秒484(72周)
2) トニ・エリアス SPA ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分39秒675(59周)
3) ランディ・ド・ピュニエ FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分40秒225(82周)
4) カルロス・チェカ SPA ホンダ・LCR RC212V 1分40秒356(62周)
5) コーリン・エドワーズ USA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分41秒755(46周)
6) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分41秒900(72周)
7) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 1分41秒908(66周)
8) 玉田誠 JPN ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 1分42秒091(60周)
9) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分42秒348(42周)
10) シルバン・ギュントーリ FRA ダンロップ・ヤマハ・Tech3 YZR-M1 1分42秒736(54周)
11) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ デスモセディチ GP7 1分44秒780(77周)
■メランドリは予選タイヤ最速、エドワーズはレースタイヤ最速
各チームの発表を総合的にまとめると、今回予選タイヤを装着して最速タイムを記録したのは、2日目のトップにつけたマルコ・メランドリからカルロス・チェカまでの4名。
5番手のフィアット・ヤマハのコーリン・エドワーズや6番手のレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、ならびに9番手タイムとなったフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシの3名は、予選タイヤを今回使用しなかった事を明言している。
■予選の練習に取り組むメランドリ
開幕後に予選で苦しむ傾向にあるマルコ・メランドリをはじめ、IRTAテスト中に予選タイヤのテストをあまり行わなかったチームとライダーは、プレシーズン中の反省もあり積極的に予選の練習を今回行ったようだ。
■ホンダはヘイデン対策、ヤマハとカワサキはエンジン強化
アドバイザーでありHRCテストライダーの岡田忠之選手も走行に加わった2日目のホンダ・ワークスが公表しているテスト内容は、新型シャシーやサスペンションの調整など、フロントまわりの基本セッティングに苦しむヘイデンのマシン改善が殆どだが、ヤマハとカワサキの2ワークスは、開幕前から課題としているストレートでのエンジンパワーの改善に向けて、新エンジンパーツの導入テストを行った事を発表している。
■グレッシーニ・ホンダ
初日にブリヂストンのレインタイヤに好感触を得たグレッシーニ・ホンダの2名は、2日目は今後のレースに向けてのセッティング改善に取り組み、セッションの最後にはそれぞれ2本の予選タイヤを試し、この日のタイムシート上のワンツーを独占した。
■メランドリ「イスタンブールは楽観視できる」
2日目は72周回を精力的に走り込み、最後には予選タイヤでこの日のトップタイムである1分39秒484を記録したマルコ・メランドリは、ここまでのレース結果を受けて、予選への取り組みが必要だと感じている様子だ。
「今日はバイクのセッティングに大きな進歩が得られたので満足です。」とメランドリ。
「フロントの感触とマシンの重量バランスが良くなるように、今までとは違うセッティングを試しました。いくつか面白い解決策が見つかっていますから、次のグランプリが楽しみですね。」
「タイヤを何本かテストした後、一番最後に予選タイヤも試しました。この分野の改善も今の自分には必要なんです。イスタンブールはかなり楽観的に挑めると思いますよ。」
■ブリヂストンとの相性がすっかり良くなったエリアス
スペイングランプリでは好調な走りで4位を獲得し、この日はチームメイトに次ぐ2番手タイムの1分39秒675を記録したトニ・エリアスは、このテストでブリヂストンが持ち込んだウェットとドライの両方のタイヤに好感触が得られたとしている。
エリアスは前回のカタール開幕戦翌日のテストでも好みのタイヤを見つけており、レースではその結果を実証して見せている。プレシーズン中に自分の走りのスタイルに合うタイヤが見つからずに苦しんでいたのが嘘のように上機嫌だ。
「良好な2日間のテストを終えてヘレスを離れる事ができます。ウェットとドライの両方で改善が進みましたから達成感は大きいですよ。」とエリアス。
「今日はブリヂストンが持ち込んだ新型タイヤを装着してバイクのセッティングに集中しましたが、すごくいい感触でした。予選タイヤも2本試しています。」
「トルコGPには自信が持てますね。あそこは大好きなサーキットなんです。」
■新型パーツを持ち込み、大幅にマシン改善を進めたカワサキ
午後に路面が乾いてから2日目のテスト走行を開始したカワサキのランディー・ド・ピュニエとオリビエ・ジャックは、カワサキのエンジニアが日本の明石から持ち込んだ新型エンジンパーツと、新型リア・サスペンションを揃って試している。
■課題だったエンジンとリアまわりを改良
800ccとなったNinja ZX-RRのエンジン出力をより向上する事を目的としたエンジンパーツの導入は、確実に今回のテストでその効果を発揮できたようだ。また、カワサキがプレシーズン中から抱えているコーナリング時のリアのトラクション不足に対する対策として持ち込まれた新型サスペンションにも、2名のライダーは好感触を示しており、ド・ピュニエとジャックは揃って低速コーナーと高速コーナーの両方でタイムを上げる事ができるようになったという。
■トップスピード向上に向け、空力特性の改善も実施
さらに、ランディー・ド・ピュニエはこれらの改善の他にも、空力特性の向上を考慮した新しいシートによるポジショニングの調整を行っており、トップスピードのさらなる改善に期待の持てる結果を得る事ができたようだ。
この日のテスト時の路面温度は22度であり、レース時と比較して10度ほど低かったが、それでも両ライダーはレース中の自己ベストをレースタイヤで0.5秒上回っており、今回カワサキが施したマシンへの対策が、明らかに大きな効果を発揮した事を数値で証明して見せている。
■ド・ピュニエはブリヂストンの新型予選タイヤもテスト
また、ド・ピュニエはブリヂストンの予選用新型フロントタイヤと、改良型予選用リアタイヤを試しており、この日の3番手タイムとなる1分40秒225を記録している。チームメイトのジャックの2日目の自己ベストは、7番手タイムの1分41秒908だった。
■ド・ピュニエ「サスペンションがかなり違う」
半日の短時間に多くの異なるテストをこなしたランディー・ド・ピュニエは、新パーツの導入により、スペインでのレースウイーク中に解決できなかった問題が改善されたとコメントしている。
「今日はかなりの事をバイクに試しました。」とド・ピュニエ。
「ライディング・ポジションを変えた事でフロントスクリーンのすぐ側まで身体が近づきましたので、トップスピードを上げるのにいい効果が得られると思います。」
「新しいサスペンションの部品類はかなり違いますね。バイクは曲がりやすくなりましたし、レースウイークを通して解決できなかったリアのトラクションも大きく改善されました。全体を通してチームにとってすごく有益な2日間でしたね。」
■ジャック「全ての点で改善が進んだ」
スペイングランプリでは最後尾を争う結果となり、深く落ち込んでいたオリビエ・ジャックは、レースウイークを通して不調だった原因をスタッフと話し合い、今回の2日間のテストを通して、納得のいくタイムを出せるようになったようだ。トルコには自信を回復して挑めるとジャックは語る。
「日曜日のレース直後よりも、かなりいい状態のマシンでテストを開始できています。」とジャック。
「今日はフリー走行と予選で解決できなかった問題に集中して取り組みました。レースの後は相当に落ち込みましたからね。スタッフとは問題の全てについて話し合いましたから、彼らが今回調整してくれたバイクは日曜日のレースの時よりもずっといい感触が得られています。」
「午後には全ての変更箇所をチェックしましたが、大きく改善が進んでいますので、自信を回復するのには十分な結果でした。今日の最終的なラップタイムにも満足できましたから、今は次のトルコが楽しみです。」
■金子技術監督「エンジンの分野への取り組みは今後も必要」
カワサキ・レーシング・チームの技術監督である金子直也氏は、今回は2日間を通してマシンの改善テストに集中したかっただけに、初日の雨が残念だったが、結果として初のフル・ウェットでの800ccマシンのテストを行う事ができたのは有意義だったとしている。
また、2日目のテスト内容については、まだ多くの課題は残るとしながらも、明らかにマシンに大きな改善の見られた様々な検証作業を効率的にチームがこなした事に、大変満足している様子だ。
「また雨が降ってしまい、午前中は予定のテストを行う事ができませんでしたが、午後に路面状況はだいぶ良くなりました。」と金子技術監督。
「改良型のエンジン部品については、より大きい出力が得られる事を確認はしましたが、まだこの分野への取り組みは今後も必要です。」
「今日ライダーたちは、新しいサスペンション部品をテストしてすぐに、コーナーが曲がりやすくなった事を報告してくれました。またランディーは、レースウイークを通して抱えたリアのトラクション不足についても改善が見られたと言っています。」
「良好ではない気象条件にもかかわらず、ライダーは2名ともにレース中の自己ベストをそれぞれに0.5秒も上回りましたから、カワサキにとって効果的なテストが今回行えた事は間違いありませんね。」
■ホンダLCRはミシュラン・タイヤのテストに集中
ドライ路面が得られた2日目の午後、ホンダLCRのカルロス・チェカは、ミシュランタイヤのテストを中心に62周回を走行し、この日の4番手タイムとなる1分40秒356を記録している。
■チェカ「いいタイヤが見つかりチャタリングが減少」
この日はミシュランタイヤのテストに集中し、午前にはインターミディエット、午後にはスリックタイヤを試したというカルロス・チェカは、トルコで使えそうないいタイヤを見つけたと満足げだ。
「午後2時には路面が乾いたので、その後の残りの時間は主にタイヤテストを行いました。」とチェカ。
「午前にも何本かインターミディエット・タイヤを試しましたが、アスファルトが完全に乾いてからはスリックタイヤを使用しています。」
「フロントには次回のトルコで使えそうないいタイヤを見つけたので結果は良好でした。それを使うと、以前から悩んでいたチャタリングの問題もいくらか解消されるみたいですしね。」
「この2日間のテスト内容には満足できました。トルコ・グランプリまでの休暇は、自宅で多くのトレーニングをしながら過ごす予定です。」
■フィアット・ヤマハも改良型エンジンパーツのテストを開始
初日はヤマハが日本から持ち込んだエンジン出力向上に向けての改良型パーツテストを保留したフィアット・ヤマハチームだが、路面が乾いた2日目の午後には、バレンティーノ・ロッシがその新しいエンジンパーツを搭載したマシンで走行を行い、期待の持てる結果が得られた様子だ。
■基本的にはトルコに向けたレースセッティングに集中
基本的にフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシとコーリン・エドワーズは、この日は次回のイスタンブールでのトルコ・グランプリに向けてのレースセッティングに取り組み、新型のレースタイヤを試して貴重なデータをミシュランに提供する事ができたという。
■2名ともレースタイヤのみで走行
エドワーズは2日目の5番手タイムとなる1分41秒755、ロッシは9番手タイムの1分42秒348を記録しているが、両者ともに予選タイヤは1本も装着しなかったようだ。
なお、トップスピードの向上に効果が得られたという新型のエンジン・パーツは、ヤマハが日本に今回のデータを持ち帰って検証を進め、トルコからの実戦に導入するべきかどうかをこれから決定する予定だという。
■ブリビオ監督「エンジン性能は若干向上」
フィアット・ヤマハチームのダビデ・ブリビオ監督は、この2日間のうちに完全なドライ路面が得られたのは半日だけとなったが、予定のタイヤテストをこなすのには十分な時間が得られたとコメントしている。
「今日は完全に路面が乾くのを午後まで待ちました。午前中はまだ少し雨が降っていましたからね。」とブリビオ監督。
「いずれにしても、タイヤのテスト作業を進めるのには十分な時間が取れたと思います。バレンティーノはそれ以外にも新しいエンジンの調整テストを行っており、エンジン性能の向上を若干ですが確認できています。私たちのエンジニアはこれから日本に戻って今日集めたデータを元に作業を進め、次回のイスタンブールに今回の調整テストの内容を反映するかどうか決定する予定です。」
「それに今日はミシュランのタイヤテストをたくさん行い、次回からの何戦かに役立つ多くのデータも収集できました。」
「日曜日のような素晴らしい1日を過ごしたそのすぐ翌日にテストをするのはいつも厳しいものですが、みんな本当に真剣に頑張ってくれたと思います。おかげでイスタンブールに戻る前にいい休暇が取れそうですよ。」
■レプソル・ホンダの参加ライダーはヘイデンのみ
ダニ・ペドロサは初日のテストにしか参加しなかったため、レプソル・ホンダチームから2日目のテストに参加したのは、昨年度チャンピオンのニッキー・ヘイデン1名のみとなった。
開幕後もフロントまわりのセッティングに苦しみ続けているヘイデンは、72周回をこの日は走り込み、6番手タイムとなる1分41秒900をレースタイヤで記録している。なお、この日はHRCのテストライダーである岡田忠之選手も、ヘイデンとともにヘレスサーキットを走行した。
■セッション終了ぎりぎりまでレースタイヤで走り込んだヘイデン
ヘイデンは午後1時30分にドライ路面が得られると、HRCが用意した新型シャシーの評価を行い、同時にミシュランの新型レースタイヤを装着してサスペンションのセッティングを何種類か試している。
ヘイデンはこの日は最後まで予選タイヤをテストせずに、チェッカーフラッグの振られるセッション終了の午後6時ぎりぎりまで、レースタイヤを用いたテスト走行を繰り返したようだ。HRCは今回得られた貴重なデータを日本に持ち帰り、次回のトルコ・グランプリ以降に使用するマシンの改善作業に反映する予定だ。
■ヘイデン「ここまでうまくいってないのは事実」
この日は新型パーツやタイヤを試しながら、レースタイヤでセッションぎりぎりまで走り込んだニッキー・ヘイデンは、開幕から2戦目までは順調ではなかった事を認めながら、次戦のトルコで再びトップ争いに戻るための準備について、休暇中にもいくつか考えておきたいとコメントしている。
「サーキットの路面は午前中には乾きませんでしたが、午後にはいいテスト条件に恵まれています。」とヘイデン。
「改良型のシャシーを使っていくつかの作業を行う中で、今日の終わりまでにはパッケージの感触を良くする方法を見つける事ができました。ここまでの2レースが自分の思い通りに進んでいない事は隠しようもありませんし、まだやる事だらけなのも事実ですが、今日はいくつか進歩が得られたと思いますよ。」
「早くトルコで走りたいですね。ここから何週間かの休みの間には、トップ争いに戻る上で必要な準備を色々考えておくつもりです。」
「チームとHRCには本当に感謝しています。全員がすごく頑張ってくれましたし、一緒に戦ってるって感じですよ。」
■次回はトルコ・グランプリ
今回の2日間のテストを終えた各チームとライダーは、イースター(感謝祭)を祝う母国で3週間の休みを経て、4月20日にはトルコ・グランプリの行われるイスタンブール・サーキットに姿を現す予定だ。
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