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2009年3月30日
スペイン公式テスト最終日の3月29日、現地時間の午後2時5分から新車のスポーツカーをかけて予選形式で行われる毎年恒例のBMW杯が行われた。2009年シーズン初の公式テレビ・セッションとなるBMW杯は、ドライコンディションに恵まれる中、45分間の予定で開始されたが、セッション残り15分のところでモンスター・ヤマハTech3のジェームス・トーズランドの転倒により5分間の赤旗中断となり、再開後は突然降り始めた強い雨により予定より3分早く切り上げられるという変則的なセッションとなった。ここでは、BMW杯終了後のトップ5の状況、並びに一部ライダーのコメントなどを紹介する。
■最終日の走行結果
公式テスト最終日は、午前中のFP2、及び午後のBMW杯の終盤まではドライコンディションが保たれたが、その後は強い風と雨に見舞われ、現地時間午後3時15分から開始されたFP3ではライダーの約半数が走行を見合わせている(最終日3セッションの各走行結果はこちらを参照)。
■BMW杯結果
気温13度、路面19度、湿度58%のドライ-ウェットコンディションの気象条件となったBMW杯の走行結果を以下に記す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分38秒646
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分39秒365
3) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒757
4) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分39秒829
5) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒848
6) ミカ・カリオ FIN プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 1分40秒149
7) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分40秒168
8) セテ・ジベルナウ SPA Guinea Ecuatorial デスモセディチ GP9 1分40秒228
9) トニ・エリアス SPA サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分40秒266
10) コーリン・エドワーズ USA モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 1分40秒305
11) ニッキー・ヘイデン USA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分40秒401
12) マルコ・メランドリ ITA ハヤテ・レーシング・チーム ZX-RR 1分40秒405
13) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分40秒646
14) 高橋裕紀 JPN スコット・レーシング・チーム RC212V 1分40秒814
15) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分40秒869
16) ジェームス・トーズランド GBR モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 1分41秒425
17) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分41秒485
18) ニッコロ・カネパ ITA プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 1分41秒551
19) 秋吉耕佑 JPN レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分42秒206
ヘレス・サーキットのサーキットレコードは、2008年にダニ・ペドロサが記録した1分40秒116。ベストラップレコードは2008年にホルヘ・ロレンソが記録した1分38秒189。
■2日間総合結果
以下にスペイン公式テスト2日間全セッションの総合結果を各ライダーの自己ベストタイム順に記す。
1) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分38秒646
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分39秒365
3) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒757
4) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 1分39秒791
5) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 1分39秒848
6) ミカ・カリオ FIN プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 1分40秒149
7) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分40秒168
8) セテ・ジベルナウ SPA Guinea Ecuatorial デスモセディチ GP9 1分40秒228
9) トニ・エリアス SPA サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分40秒266
10) コーリン・エドワーズ USA モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 1分40秒305
11) ニッキー・ヘイデン USA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分40秒401
12) マルコ・メランドリ ITA ハヤテ・レーシング・チーム ZX-RR 1分40秒405
13) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 1分40秒646
14) 高橋裕紀 JPN スコット・レーシング・チーム RC212V 1分40秒814
15) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 1分40秒869
16) ジェームス・トーズランド GBR モンスター・ヤマハTech3 YZR-M1 1分41秒122
17) ヴィットリアーノ・グアレスキ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP9 1分41秒485
18) ニッコロ・カネパ ITA プラマック・レーシング デスモセディチ GP9 1分41秒551
19) 秋吉耕佑 JPN レプソル・ホンダ・チーム RC212V 1分42秒058
アンドレア・ドヴィツィオーゾ「この2日間で剛性とエンジン出力特性の2つの重要な分野での改善が進んでラップタイムはかなり良くなったが、ケーシーのタイムと比較するとその差はまだかなり大きい」
コーリン・エドワーズ「ケーシーはたった3周で1分39秒1を出したが、自分たちのマシンはチャタリングが発生したため今日は頑張っても39秒台は無理だった」
ニッキー・ヘイデン「BMW杯セッション序盤にクラッチに問題が発生して、この週末にはほとんど乗っていなかったセッティングの違うセカンドバイクに乗らなければならなくなった」
高橋裕紀選手「この2日間で改善が進んでうれしい。もちろんもっと慣れる時間は欲しいが、今はRC212Vでの初レースが楽しみ」
秋吉耕佑選手「BMW杯の終盤でヘアピンで転倒したのは残念だが、今回のテスト結果は全体的にとてもよかった」
■BMW杯セッション中にトーズランドは3コーナーで転倒
モンスター・ヤマハTech3のジェームス・トーズランドは、午後のBMW杯においてセッション残り15分のところで3コーナーを走行中に転倒し脳しんとうを起こした。その後トーズランドは念のため病院で精密検査を受けたが、検査の結果に特に異常は認められず夕方にはヘレス・サーキットのパドックに戻っている。テスト翌日の3月30日には母国であるイギリスに帰国し、開幕までの2週間は静養する予定だ。
■BMWを獲得したストーナー「どうしてこんな速いタイムが出たのか分からない!」
ドゥカティ・マルボロ・チームのケーシー・ストーナーは、ヘレスのサーキットレコードを1秒53上回る1分38秒646のトップタイムを記録して2年連続でBMWを獲得した。「どうしてこんなに速いタイムが出たのか分からない。このサーキットでは表彰台に乗ったこともないのに!」とコメントしたストーナーだが、この2日間でヘレス攻略の手応えを感じた模様だ。
初日の午後に改善の兆しを見つけたというストーナーは、2日目も朝から引き続きセッティングの試行錯誤を続け、午前の時点では「安定しているがさらにもう少し改善が必要」としていたが、続く午後のBMW杯では、セッション開始7分過ぎに1分39秒176を記録してトップに躍り出ると、そのままタイムシート上の1位をキープし続け、その後雨のためセッションが終了となる直前に駄目押しとなる1分38秒646を叩き出してそのまま一位を守りきった。セッション終了後にストーナーは「トラクションを良くするためにリアのセッティングを少し変更したが、予選セッションにはそれほど過剰な期待はしていなかった。激しい戦いになると思っていたし、みんなの全体のラップタイムは良くなってきていたので、あのタイミングでみんなを引き離せるタイムを出せるとは思ってもみなかった」と予期せぬBMW獲得だったと述べた。
また、初日に「手首の状況は良くなってきている」とコメントしていたストーナーは、最終日にも「手首の状態はどんどん良くなってきているし、腕にもさらに力が入るようになってきているので今は走行には影響ない。これから2週間はトレーニングを続けて開幕戦に備えたい」と順調な回復ぶりをアピールした。
■2位のロッシ「え?2位しか狙ってなかったよ」
初日には「午後はBMW獲得に集中したい」と述べていたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは、1分39秒365のタイムを記録してBMW杯の2位を獲得し、開口一番に「え?2位しか狙ってなかったよ。スポンサーのフィアットは僕に他の車をもらって欲しくなんかなかっただろうからね!」とジョークを飛ばした。
初日に引き続き最終日も順調に改善作業が進んだというロッシは、テスト全体の内容には満足した様子だが、BMW杯については「赤旗で中断になった時にはコースを最速ペースで走行していたので、その周回が駄目になったのは不運だった。それでもストーナーに勝てたかどうかは分からないけどね。だって、彼のタイムは1ラップ以上自分より速かったんじゃないの?」とストーナーの速さを称えるコメントを残した。
■3位のカピロッシ「予選形式のセッションで3位になれたことがうれしい」
公式テスト初日に6位につけていたリズラ・スズキのロリス・カピロッシは、BMW杯では初日のタイムを1秒近く縮める1分39秒757を記録して3位を獲得した。「とてもいい一日だった。特に午前中はいいセッティングを見つけたので、とても快適に速いタイムで走れるようになった」というカピロッシは、「マシンの感触は本当に良く、去年と比べて100%改善された」とマシンの仕上がりが上々であることを明かした。
また、昨年までは予選で苦戦する傾向にあったスズキ勢だが、カピロッシはBMW杯セッション中に出したこの2日間の自己ベストタイムについて「今回のタイムが今シーズンに実施される予選形式と同様のセッション中に出せたということがうれしい。みんなが同じタイヤを履くことになるので、その点も満足」と予選タイヤが廃止されることとなった今年のタイヤルールの変更を歓迎するコメントを述べた。
■4位のロレンソ「自分は予選タイヤのスペシャリストだったのに・・・」
初日トップタイムを記録したフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、BMW杯では初日のタイムを上回ることができず、1分39秒829を記録して4位となった。「昨日はよかったが、今日は気温がかなり下がって状況が全く違ってしまい、タイムを上げるのは難しいと分かった」と予選セッションに苦戦した状況を述べた。
また、今年から予選タイヤが廃止されることに関しては「今年の予選はスペシャルタイヤがないのでかなり厳しくなると思う。予選タイヤは自分のライディングスタイルにとても合っていたからね。自分は予選タイヤのスペシャリストだったが、今後はそのアドバンテージがなくなるからその状況に適応する必要がある。自分のライディングスタイルは固い方のブリヂストンタイヤとの方が相性がいいので、今年の予選でいい結果を出すのは本当に難しいと思うよ!」と、今年から導入される2種類のタイヤの使いこなしに課題があることをコメントした。
■5位のバーミューレン「もう2つくらい順位を上げられればよかった」
初日は総合4位、BMW杯では1分39秒848を記録して5位を獲得したリズラ・スズキのクリス・バーミューレンは「今日は変わりやすい天候だったので少し難しかった。ラップタイムに関してはかなり満足だが、もう2つくらい順位を上げられるか、ケーシーのタイムにさらにもう少し近づければもっとよかったのに」と最終日の結果に少し悔しさをにじませたが、マシンの仕上がりに関しては、スズキの両ライダー共にBMW杯セッション中に上位で走行を続けていたことで「ロリスと自分のタイムがチーム全体が好調であることを証明している」と自信を見せるコメントを残した。
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