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FIMがMotoGPクラスのシングルタイヤルールの詳細内容を発表 |
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2008年12月26日
FIM(国際モータサイクリズム連盟)は12月19日、MotoGPクラスにおける2009年シーズンからのシングルタイヤ・ルール施行に伴う新しい競技規約を発表している。ここでは、年明け以降のプレシーズン・テスト及び2009年シーズンのMotoGPクラス開幕に向けて用意された新レギュレーションの追加項目及び変更箇所の詳細を紹介する。
■ブリヂストンが少なくとも2010年まで公式タイヤを供給
2009年からの新レギュレーションにおける以前からの最大の変更点は、言うまでもなくタイヤ・サプライヤーが1社に限定される事だ。2008年までの複数タイヤメーカーによる自由競争形式ではなく、新シーズンからのMotoGPクラスにタイヤを供給できるのは公式タイヤ・サプライヤーとしてMotoGP運営組織に認められた1社のみとなり、2009年と2010年の2年間は日本のタイヤブランドであるブリヂストンがその公式サプライヤーを担当する事が既に決定している。なお、2011年以降は入札により改めて公式サプライヤーの1社が認定される予定だ。
■公式タイヤは各サーキット毎にA仕様とB仕様の2種類のみ
なお、2008年シーズン中は持ち込み本数制限内であれば、スリックタイヤの仕様を何種類も自由に準備する事が許されたが、新シーズンからは各サーキットに対して予め定義したA仕様とB仕様という2種類のスリックタイヤしか持ち込む事ができなくなる。このAとBに仕様を限定するルールは、公式タイヤ・サプライヤーが各グランプリの行われるサーキットの特性に最も適すると思われる2種類のタイヤを選んで持ち込む事を意味しており、AとBに実際に割り当てられるタイヤの仕様はレースウイーク毎に異なる。
■レースウイーク中に適用される新レギュレーション
ここでは最初に、シングルタイヤ・ルールの導入によりシーズン開幕後のレースウイーク中に適用される新レギュレーションの内容を紹介する。まずは各グランプリ開催時のタイヤ供給方法と各ライダーへの割り振り手順だ。
■タイヤ供給手順、持ち込みタイヤの選別はブリヂストンのみが担当
レースウイーク中に使用するタイヤは公式タイヤ・サプライヤー(ブリヂストン)が予め選別してサーキットに運び込む。従って、2009年からはこのタイヤ選別作業にMotoGPチーム等が関与する事は一切できない。なお、公式タイヤ・サプライヤーはレースウイーク初日のフリー・プラクティス前日の朝までにテクニカル・ディレクションに対して、各グランプリに投入するタイヤの仕様詳細、本数、およびそれらの識別方法を毎回提示する義務を負う。
■各ライダーへのタイヤ割り振りはレース・ディレクションが担当
続いて、公式サプライヤーから全てのタイヤと明細を受け取ったテクニカル・ディレクション(テクニカル・ディレクターとそのスタッフ)は、その同日(通常は木曜日)の正午までに、全ライダーに対するレースウイーク中のタイヤ割り当て作業を全て完了しなければならない。なお、引き続き17時まではチェックや調整作業等は許可されるが、当日の17時以降はタイヤの割り当て内容に対する一切の変更が禁じられる。
■全ライダーに同一仕様のタイヤを平等配布
タイヤ配分作業の大前提として、各ライダーに対するタイヤの割り当てはランダムに行われるものとし、タイヤ・サプライヤーやチームおよびライダーなど、レース・ディレクション以外のスタッフがこの作業に関与する事は決して許されない。
また、各ライダーに供給されるタイヤの仕様ならびに本数は、ワークス・チームやサテライト・チームを問わず全て同じであり、全てのライダーは各々に配分されたタイヤを全て使用できる権利を持つ。ただし、あるライダーがレースウイーク中に何らかの理由で欠場を余儀なくされて代役ライダーが起用された場合には、その代役ライダーにはオリジナルのライダーが使用予定だった残りのタイヤがそのまま割り当てられる。
■配布後のタイヤに問題が生じた場合の定義
なお、初日のフリー・プラクティス前日の17時以降は割り当てられたタイヤに変更が許可されない事は上に記した通りだが、タイヤの不具合など、安全面に問題が生じるような特殊なケースについてはその限りではない。この例外に該当するケースが発生した場合、タイヤ変更作業の主導権は公式タイヤ・サプライヤーが握り、全てのライダーに対し変更後の内容が同じ条件で行き届くようにタイヤの交換作業等を実施する。
また当然ながら、一度供給されたタイヤに対し、切り込みを入れるなどの物理的な加工を施す事は誰にも許されないが、摩耗などによりタイヤの管理識別マークが破損または欠落した場合については、公式タイヤサプライヤーはテクニカル・ディレクションが満足する何らかの対応策を提示する義務がある。またテクニカル・ディレクションは、タイヤのチェックをライダーの走行前や走行後に関係なくいつでも実施できる。
■タイヤウォーマーの使用に制限なし
ちなみにタイヤウォーマーによる温度調節はタイヤへの物理的な加工とは見なされず、使用は制限されない。
■レースウイーク中のタイヤ本数制限
次に、2009年シーズンの開幕以降に向けて定義されたレースウイーク中のタイヤ本数制限を示す。
2006年以前にはタイヤの使用本数に制限値は存在せず、2007年に入り初めてタイヤの持ち込み本数の厳しい制限がレギュレーションとして具体的に明記されたが、シングルタイヤ・ルールが初めて施行される2009年からは、このタイヤ本数制限はさらに厳しいものとなる。
■スリックタイヤは2008年度規約の半分の20本、予選タイヤは廃止
2008年シーズン中のスリックタイヤの使用本数制限は予選タイヤを含み、1ライダーあたりレースウイークの3日間を通してフロントが18本、リアが22本の合計40本だったが、2009年シーズンからはその半分の合計20本しか使用できなくなり、予選専用のスペシャルソフトタイヤは供給されない。
具体的には、フロントのスリックタイヤはA仕様とB仕様がそれぞれ4本ずつの合計8本、リアのスリックタイヤはA仕様とB仕様がそれぞれ6本ずつの合計12本、フロントとリアを合わせて合計20本のスリックタイヤがグランプリ期間中の3日間を通して各ライダー1人あたりに割り当てられる。さらに予選専用タイヤが存在しない事から、レースのみならず予選でも、これらA仕様とB仕様のタイヤを駆使してタイムが競われる事になる。
■ウェットタイヤにも本数制限、原則は合計8本
また、2008年までは使用本数に制限が存在したのはスリックタイヤのみだが、2009年シーズンに向けてはウェットタイヤにも本数制限が定義されており、レースウイーク3日間を通しての1ライダーあたりのウェットタイヤの本数制限は、フロントにはスタンダードウェットが4本、リアも同様にスタンダードウェットが4本、すなわちフロントとリアを合わせて合計8本が原則となる。
■例外的に悪天候が続く場合には合計10本まで使用可能
ただし、ウェットタイヤについては上記の8本(4セット)以外に、公式タイヤ・サプライヤーは天候の悪化などを考慮して各ライダーにさらに余分の1セット(5セット目)を割り当てる事も許されており、レース・ディレクションが使用を許可した場合にのみそれを各ライダーに配布する事も可能となる。
なお、ここで定義された「スタンダードウェット」とはカットスリックから一般的なレインタイヤまでのウェットタイヤ全般を指す言葉であり、2008年シーズン中の「ウェットタイヤ」の数値定義がそのままスタンダードウェットの定義として引用されている。すなわち、現在F1の世界でスタンダードウェット以外に定義されている「エクストリームウェット」ような天候別のレベル分割は今回特に用意されていない。
■テスト期間中に適用される新レギュレーション
今回のシングルタイヤ・ルールの導入により、上記に示したレースウイーク中の競技規約変更に加えて、冬季プレシーズン中やグランプリ翌日の合同テストに関するレギュレーションも2008年シーズン中の内容から大きく変更されており、2009年以降はレースウイークのみならずテストの運営についてもレース・ディレクションが全ての権限を持つ事になった。
■2009年からはテスト期間中の使用タイヤ本数にも制限
また、これまではタイヤの使用本数制限が存在しなかったMotoGPクラスの合同テストだが、レースウイーク中と同じく、2009年以降はテスト作業中もライダー1人あたりのタイヤ使用本数が厳密に制限される。
以下に、年明け後の2月5日に再開するMotoGPクラス冬季合同テストから早速施行が開始されるテスト関連レギュレーションの変更内容を示す。
■グランプリ翌日の合同テストについて、実施回数は年5回に縮小
まずはシーズン開幕中のレース後に行われるグランプリ翌日の合同テストについてだ。
2008年シーズンまでは各グランプリ翌日の合同テスト実施の回数に規約は設けられていなかったが、2009年からは年間に最大5回までとの制限が明記され、これまでは合同テスト1回につき最長3日間まで許されていたテスト日数についても1日のみに縮小された。
■スリックタイヤは計8本、ウェットタイヤは計4本のみ
年間に最大5回、日数は1回につき1日のみとなったグランプリ翌日合同テストにおける1ライダーの1日あたりのタイヤ使用本数制限は、後述する新開発タイヤのテスト作業を除外した場合、原則スリックタイヤはフロントがA仕様2本とB仕様2本の合計4本、リアタイヤも同じくA仕様2本とB仕様2本の合計4本、フロントとリアを合わせて合計8本のみとなる。ウェットタイヤはフロントとリアのそれぞれにスタンダードウェット2本ずつの合計4本だ。
■プレシーズン中の公式合同テストについて、
続いて、冬季プレシーズン中の公式合同テストに関連するMotoGPレギュレーションの変更内容を紹介する。なお、本記事に示したルール改正内容は2009年の1月1日から施行されるため、先に記した通り年明けの2月5日から始まるセパン合同テストはこの新ルールに沿って実施される。
■冬季公式テストの実施回数は5回、ライダーの参加は合計12日間のみに制限
2008年シーズンまで、DORNAとIRTAが管轄するプレシーズン中の公式テストは最大7回までと定義されていたが、2009年以降は最大5回までに縮小されている。また、テスト1回あたりの最長日数についてはこれまで通り3日間と定義されてはいるが、1ライダーにつき合計12日間を越える作業を禁ずるとの項目が今回追加された事から、1人のライダーがプレシーズン中の5回のテストの全てにおいて3日間走行する事は不可能になった。ちなみに、2008年シーズンまでは1ライダーあたりプライベート・テストを含む最大8回まで、合計24日間のプレシーズン中のテスト参加が許可されていた。
■プレシーズン中はテスト初日と2日目以降にそれぞれ異なるタイヤ本数制限
新型タイヤの開発テストを除けば、冬季プレシーズン中の公式テストにおけるタイヤ使用本数の制限は、テスト1日目はシーズン中のグランプリ翌日合同テストと全く同じ(スリックタイヤはフロントとリアのそれぞれにA仕様2本とB仕様2本の合計8本、ウェットタイヤはフロントとリアのそれぞれにスタンダードウェット各2本の合計4本)だが、テストが2日間以上に及ぶ場合には、2日目以降は以下の本数制限が適用される。
スリックタイヤについては1日目の8本に加えて、テスト2日目と3日目にはフロントとリアのそれぞれにA仕様とB仕様が混在する各3本ずつの合計6本が1日あたり各ライダーに供給される。
ウェットタイヤについては、基本的にフロント2本とリア2本の合計4本のスタンダードウェット使用を1日あたりの上限とし、2日間または3日間のテスト期間を通して1ライダーあたり最大合計8本まで追加供給が許される。
■新型タイヤのテストに関しては使用本数の制限なし
最後に、グランプリ翌日合同テストならびに冬季テスト期間中に新型タイヤの開発テストを行う際の新タイヤ・レギュレーションを示す。以上に紹介したテスト中のタイヤ本数制限はA仕様とB仕様のスリックならびにスタンダードウェットのタイヤ消費のみに該当するテストルールであり、公式タイヤ・サプライヤーがサーキットに持ち込んだそれら以外の仕様の新型タイヤを開発テストする場合のライダー1人あたりの本数制限は存在しない。
■2ヶ月前までに通知、ワークスライダー全員への新型タイヤ配布が最低条件
新型タイヤの持ち込み判断は公式タイヤ・サプライヤーの権限のみで行う事が可能であり、A仕様とB仕様として定義されたものとは全く異なる仕様のタイヤをサーキットに持ち込む事が許可されるが、その際に公式タイヤ・サプライヤーは以下に示す2つのルールを厳守する必要がある。
その1つ目として、新型タイヤのテストを計画するにあたり公式タイヤサプライヤーは、、最低でもテスト実施の2ヶ月前までに新型タイヤの詳細仕様を全てのチームに対して連絡しなければならない。
また2つ目として、公式タイヤ・サプライヤーは新型タイヤをサーキットに持ち込んだ際には、少なくともMotoGPクラスのファクトリー・チームと契約している全てのライダーに対しては、同じ仕様のタイヤを同じ本数だけ平等に配分しなければならない。
■おまけ)シングルタイヤ・ルール以外の目立ったレギュレーション変更箇所
以下は蛇足だが、シングルタイヤ・ルールの導入に伴う上記のレギュレーション変更箇所以外にも、2009年シーズンに向けて競技規約の一部が少し変更されているので、その内の目立ったものを紹介しておく。
2008年シーズン中はチェッカーを受けた後のライダーがヘルメットを脱いでウイニングランを行うようなケースが特に目立ったが、今回発表の新ルールではピットレーンやパルクフェルメに到着するまではライダーにヘルメットの着用が義務付けられた為、2009年以降はライダーが素顔を見せながらサーキットを走行するようなシーンはなくなりそうだ。
また、例外事例が非常に多い事でも知られる予選の足切り規約である107%ルールだが、2009年からは天候悪化など予選中の不測の事態を予め加味し、予選でのポールポジションタイムからの107%範囲内だけではなく、いずれかのフリー・プラクティス・セッションにおいてもタイムシート上のトップから107%範囲内に一度でも入った記録を残せば予選通過を認める事が初めて明記された。
その他には、2008年シーズン中はAMAライダーのベン・スピーズがインディアナポリスで行われた事前タイヤテストに参加し、その後のインディアナポリスGPにもリズラ・スズキからワイルドカード・ライダーとして出場したが、2009年からはグランプリに出場予定のライダーが年間カレンダーに登録されたサーキットでの事前タイヤテストに参加する事は禁止されるため、前回のスピーズのようなケースは今後発生しない。
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