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ペドロサ担当ミシュラン技術者インタビュー
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  2008年8月21日

MotoGPホンダ・ワークスのタイトル・スポンサーを務めるスペインの石油会社のレプソルYPFは先週のチェコGP開催の直前となる8月14日、ミシュランタイヤのトップ技術者であり、現在はレプソル・ホンダのダニ・ペドロサへのタイヤ供給を担当するパトリック・イザッコへのインタビューを世界のメディアに向けて公開している。
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■過去にはロッシ、現在はペドロサを担当するミシュラン技術者へのインタビュー

パトリック・イザッコは、ミシュランがWGPでの活動を縮小した1991年を除き、過去15年間を通して世界グランプリにおけるミシュランのタイヤ技術者を担当、ミック・ドゥーハン、ワイン・ガードナー、アレックス・クリビーレ、ホンダ時代のバレンティーノ・ロッシなどの最高峰クラス・チャンピオン、さらには250cc時代のルカ・カダローラなどにタイヤの提供とアドバイスを行ってきた、最もチームやライダーから信頼されているミシュラン技術者の1人だ。
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ここでは、現在のミシュランのタイヤ開発状況や昨年からMotoGPクラスにて施行されたタイヤルールについての感想、ならびに過去の2ストローク500ccマシンの時代から現在の4ストローク800cc時代までのタイヤ技術進化に関する意見を語ったパトリック・イザッコのインタビュー全文を紹介する。


まずはじめに、タイヤを構成する素材など、主な要素について説明していただけますか。

それほど細かい部分までは説明できませんが、基本的にタイヤは内部構造となる骨組みと、トレッドなど路面に接触する外部表面のゴムから成り立っており、これら構成要素の硬さを調整する事で、場面ごとに必要とされるトラクションやグリップ性能を実現しています。どんな時でも研究活動が止まる事は決してありませんし、全ての要素には常に改良と調整が加えられています。
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ライダーたちは常により多くの事を求めてきますから、わたしたちはタイヤの開発を絶え間なく続けています。一度シーズンが始まってしまえば開発の方向性にそれほど大きな変化が生じる事は希ですが、時には外径などの寸法を変更する場合もあります。ただ、テストは行うにしても、基本的に言えば1シーズン中の方針は全て同じですね。今年は全ライダーがフロントに16インチタイヤ、リアには16.5インチタイヤを使用しています。

去年はミシュランにとって大変に厳しいシーズンでしたが、今はその事は全て忘れるようにしており、誰も以前のように過去のタイヤについて語る者はいません。
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あなたの見解として、2008年シーズンはうまくいっていると思いますか。

レースでの競争はいつでも激しいものですから、完璧と言える状況など存在しません。先にも述べた通り、常に多くのやるべき事を抱えていますし、休みなく改善を進めていかなければなりません。
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今シーズンの競争も熾烈ですから、今年もまた非常に難しい状況ですし、昨年の状態から飛躍的な進歩を得る事は簡単ではありません。現在もわたしたちが新しい解決策を探り続けているのがその証拠です。

ストーナー、ロッシ、ダニ・ペドロサ、そしてまだチャンスの消えていないホルヘ・ロレンソを見れば、今期の戦いの激しさが分かると思います。全てのライダーがいい走りを見せていますから、わたしたちも頑張り続ける必要があります。物事は実際に進めていかなければ、結論を述べる事などできませんよ。
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タイヤの持ち込み本数を制限している現在のルールについてはどう思っていますか。

写真グランプリ前日の木曜日までにタイヤを選択しなければいけなくなったので、その時の内容が日曜日のレース結果に大きな影響を及ぼすようになった事は間違いありません。事前の選択は決して簡単な事ではありませんし、本音を言えば、このルールがわたしたちの作業をより難しいものにしました。いずれにしても、今年は去年よりも多くの本数が持ち込めるようになったのも事実ですが・・・。

新しいルールが導入された当時、状況が難しくなった事からわたしたちの誰もがこのルールを批判していましたが、今は全員がその環境にも慣れ、新ルールを頭にしっかり入れた上での作業を進めています。規則とはそういうものですし、わたしたちが尊重していくべきものですからね。

ですから、今年に入ってからの状況はそれほど悪くはありませんが、実情としては、もっと正しいタイヤ選びがレースの前の木曜日にはできるよう、ミシュランとチーム、ならびにライダーたちがさらに協力しあって、より正確なレースウイーク中の予想ができるようにしていく必要がまだあります。
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事前のタイヤの選び方について、その作業方法は現段階においてほとんど極秘事項とされている訳ですが、大枠でも構いませんのでそのタイヤ選びの作業の過程を簡単に教えていただけないでしょうか。レースで使えるタイヤとそうでないタイヤをどうやって選別しているのですか。
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ゴムやコンパウンドなど、構成要素が異なる非常に多くの本数のタイヤをわたしたちは用意しますが、最終的には現地の天気予報を見てその中から選別を行っています。非常に高い気温になるのか、雨になるのかなどを天気予報で事前に見極める訳です。またその前段の作業として、ミシュランのエンジニアとタイヤ開発者は、フランスの工場においてそのサーキットに適したタイヤの準備と一次選択を行っています。


世界選手権を戦うタイヤの進化はどのような方向に現在向かっているとお考えですか。

研究と改良が常に繰り返されていますから、最近のタイヤは過去に使われてきたものとは全く別ものと言っても過言ではありません。近年のオートバイの進化はタイヤメーカーにも進化を強いるものですからね。
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グリップとコーナーでの安定性が大きく進化しましたから、わたしがこの世界に身を投じた頃のものとは完璧に別ものです。バイクそのものも当時とは全く違いますから、タイヤに要求される内容も以前とは全く異なりますし、これは素材の技術進歩にもつながっています。


バイクの電子制御技術がライダーの走りを助けるようになり、特にタイヤが消耗した場面などの難しい状況でライダーのマシンコントロールを支援していますが、こうした電子制御システムはタイヤに新たな負担を強いるものでしょうか。それとも、レース中のタイヤの扱いに関してライダーたちはより楽になったと言えるのでしょうか。
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ライダーたちのマシンコントロールが楽になった訳ですから、タイヤへの負担も同時に軽減されたと言えるでしょう。タイヤよりも先に電子制御システムの方がエンジン出力を直接的に受ける事になりましたからね。

ライダーがスロットルを開けた時にエンジン出力を全て受け止めていたのは以前はタイヤでしたが、今は電子制御システムのおかげでうまく抑制された状態の出力が伝達されてくるようになっています。


タイヤへの要求が非常に激しいサーキットを2つほどあげるとすると、それはどこでしょうか。理由なども聞かせて下さい。

一番厳しいのはフィリップ・アイランドです。理由はタイヤの左側面にかかる負担が大きく、側面全体に高い剛性が求められるからです。あのサーキットで必要となるタイヤ性能は非常に特殊と言えますね。ただ、ドイツにも近いものはあります。
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他には、路面が再舗装されて新しくなったサーキットは実際に走ってみるまで状況が分からないので、その点も重要なファクターです。当然、完全に新しいサーキットについても同様ですから、今年はインディアナポリスがそのケースに該当します。


ライディング・スタイル、もしくはタイヤの機能面への深い理解や鋭いフィードバックを示したような点において、あなたにとって近年最も印象に残るライダーは誰ですか。
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それは答えにくい質問ですね。ただ、最も多くの情報を提供してくれたのと、コースに出てからの状況を素晴らしく繊細に伝えてくれたのは、バレンティーノ・ロッシとダニ・ペドロサの2名でした。
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彼らは他の多くのライダーたちとは異なる方法で作業を進めますが、それがより繊細な情報提供につながっているんだと思います。他のライダーたちが繊細じゃないと言っている訳ではありませんよ。ただ、彼らがより多くの情報を提供してくれたのは紛れもない事実です。
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荒々しかった500ccマシンの時代から電子制御の発達により洗練の進んだ現在の800ccクラスまでを振り返り、最高峰クラスにおけるタイヤの進化状況について簡単に教えて下さい。

正確な進化の過程について説明するのは難しいと思いますが、出力特性に関して言えばオートバイそのものは完全に別のものです。500ccから4ストロークに変わった当時のタイヤへの要求は全てエンジン特性のみから生まれていましたね。
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500ccから990ccへの変更当初、エンジン出力の増大に合わせてわたしたちはまずタイヤサイズを大きくしましたが、実際に開発と非常に大きな改良が進んだのはその後の事でした。そして現在の800ccマシンに至る訳です。


ダニ・ペドロサのライディング・スタイルと体重を考慮した上で必要とされるタイヤの特性にはどんなものがありますか。
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ダニ・ペドロサは、その流れるようなライディング・スタイルや体重の軽さから、多くの人がソフトなタイヤを望むと信じていますが、彼はレースでのタイヤ寿命を大変に重要視する傾向がある事から、多くの予想に反し、非常に硬めのタイヤを毎回要求するライダーです。
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彼はタイヤ剛性を維持する事を好みます。楽に乗れる事だけを重要視せず、仮にタイヤが少し硬すぎても、レースを通して性能を維持できるものであれば、それを承知の上で使用します。多くの人が考えているような最も柔らかいタイヤを使用するのではなく、実際はその逆なんです。


ダニがもしニューマチック・バルブ・エンジン搭載マシンを選択した場合、その変化に最も適したタイヤを提供する準備はできていますか。また、従来エンジンとニューマチック・バルブ・エンジンで使用するタイヤにはそれぞれどんな違いがあるのでしょうか。
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ニッキー・ヘイデンはすでに新しいバイクを使用していますが、現時点において以前と異なるタイヤは使用していませんし、わたしとしても特にタイヤに大きな違いが生じるとは現段階において思っていません。

今の2種類のエンジンは非常によく似ています。ニッキーがここまで走り込んだ結果を見た上で、特にわたしたちは専用のタイヤ開発を行ってはいません。

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