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2月セパン合同テスト最終日、ご機嫌なロッシと不機嫌なロレンソ |
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2008年2月8日
公式IRTAテストの前の最後のテストとなる今年3度目のMotoGPメーカー合同テストが、灼熱のマレーシア、セパン・サーキットにて3日目の最終日を迎えている。
ここでは、レプソル・ホンダ・チームのニッキー・ヘイデンが前日の2日目に全てのテストを終えた事で、レギュラー・ライダーはフィアット・ヤマハのロッシとロレンソ、およびグレッシーニ・ホンダの中野選手とデ・アンジェリスの計4名のみとなったセパン合同テスト最終日の状況を紹介する。
■最終日も熱波と湿気に襲われた晴天のセパン、怪我人はゼロ
2月のセパンでのメーカー合同テスト最終日、この日も前日と同様に厳しい陽射しとなり、湿度は53%と蒸し暑く、最高気温は39度、日中の路面温度は57度まで上昇した。
この日は特に目立った転倒者や怪我人はなく、参加ライダーの全員がIRTA前の最後の走り込みを実施、無事にテストを終えている。
■ヤマハとカワサキのテスト・チームも3日間を通して作業を実施
最終日も、レギュラー・ライダーが参加しているフィアット・ヤマハとグレッシーニ・ホンダの2チームの他に、カワサキ・ファクトリーとヤマハ・ファクトリーの2つのテスト・チームが参加し、それぞれに2名のテストライダーを投入して開発作業を進めている。
■ヤマハのテスト・チーム2名はブリヂストンタイヤを装着
なお、ヤマハ・ワークスのテスト・チームとして開発作業を行っている藤原儀彦選手と吉川和多留選手の2名は、MotoGP公式の発表によればブリヂストンタイヤを装着して今回のテスト作業を進めており、この状況から見て、恐らくヤマハは今後のブリヂストン関係の開発にロッシ、吉川選手、藤原選手の3名、ミシュラン関係の開発にはロレンソ、ならびにTECH3のエドワーズとトーズランドの3名というフォーメーションを想定しているのではないかと考えられる。
■最終日の走行結果
以下に、終日のドライ・コンディションとなった2月7日のセパン合同テスト最終日の走行結果を、各ライダーのこの日の自己ベスト順に示す。
1) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分00秒705(73周)
2) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分01秒190(48周)
3) 中野真矢 JPN ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒135(23周)
4) アレックス・デ・アンジェリス RSM ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒194(20周)
5) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒021(-周)
6) 芹沢太麻樹 JPN カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒063(-周)
7) ヤマハ・テストライダー JPN ヤマハ・テスト・チーム YZR-M1 2分06秒000(-周)
8) ヤマハ・テストライダー JPN ヤマハ・テスト・チーム YZR-M1 2分06秒040(-周)
セパンのサーキットレコードは2007年(800cc)にケーシー・ストーナーが記録した2分2秒108、ベストラップレコードは2006年 (990cc)にバレンティーノ・ロッシが記録した2分00秒605。2007年(800cc)のポールタイムはダニ・ペドロサが記録した2分1秒 877。
■2月セパン合同テスト3日間の総合順位
続いて、今回のセパンでの総合順位を、各ライダーの3日間を通しての自己ベスト順に示す。
1) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分00秒300
2) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 2分00秒705
3) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 2分00秒900
4) 中野真矢 JPN ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒049
5) アレックス・デ・アンジェリス RSM ホンダ・グレッシーニ RC212V 2分02秒194
6) オリビエ・ジャック FRA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒021
7) 芹沢太麻樹 JPN カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 2分03秒063
■フィアット・ヤマハ・チームの最終日のテスト内容とコメント
最終日は、総合トップのバレンティーノ・ロッシと、総合2番手のホルヘ・ロレンソが所属するフィアット・ヤマハ・チームのみがテスト内容を公式発表している。以下に、異なるタイヤを履いて戦う2名のテスト状況と、3日間のテストを終えてのライダーと関係者のコメントなどを紹介する。
■総合トップタイムを記録し、3日間の全ての内容に満足するロッシ
この日の予選タイヤで記録した最終日の自己ベストである2分01秒190は、チームメイトのホルヘ・ロレンソの2分00秒705に0.485秒及ばなかったものの、あまり良くない路面コンディションの初日にいきなり2分00秒300というプレシーズン期間中のセパンでの総合トップタイムを記録したバレンティーノ・ロッシは、今回の3日間のセパン合同テストを終えて、現在までの作業内容には全て満足できると上機嫌で語っている。
この日のロッシはレースシミュレーションに集中、一貫した速いペースでロングランを走りきり、その中で昨年のレースタイムならびに1月のセパン合同テストにおけるレースタイヤでの自己ベストを上回る事ができたとしている。
ロッシは今回のセパンでの作業を通して、2008年型シャシーとニューマチック・バルブ・エンジンを搭載するYZR-M1の1月からの性能改善状況に大変満足し、今シーズンから初めて経験するブリヂストンタイヤへの理解も大幅に深まった様子だ。
■ロッシ「次回のヘレスはライバルとの比較が楽しみ」
今回の2月のセパンにおいて、1月のセパン合同テストに参加していたMotoGPレギュラーライダー18名のタイムを全て打ち破る事に成功したバレンティーノ・ロッシは、最終日のレースシミュレーションではブリヂストンタイヤの挙動への理解をより深め、2008年型YZR-M1にも満足がいった事から、次回のヘレスIRTAテストで再び他のレギュラー全員と合流して自分の現在の仕上がり状況を確認するのが楽しみだと語った。
「今日のレースシミュレーションの内容には本当に満足です。この3日間のテスト全体がバランス良く進みましたね」とロッシ。
「今回のテストは自分たちの仕上がりがどのくらいのレベルにあるのかを知る重要なテストでしたが、全てにおいて順調でしたし、レース・シミュレーションの結果も前回より良くなっています」
「様々な種類の作業項目に取り組み、それらを通して期待感のある情報を得る事ができました。自分にとってはタイヤへの理解を深めるいい機会になりましたね。それに今日のレース・シミュレーションのおかげでブリヂストンの挙動に関する知識がさらに増えました」
「今回のテストでは新しいタイヤを履いた時にできる限りバイクの調子を上げられるようなセッティングに取り組みました。また、今期の標準パーツの1つとなる新しいエンジンや、エレクトロニクス関係の作業も引き続き行っています」
「まだやる事だらけですが、ここまでは全てが順調に進歩を遂げています。今は次回のヘレスが楽しみですね。他の全てのライバルたちが揃っている中でどのくらいいけるのか見てみたいと思います」
■ブリビオ監督「まだプレシーズンは半分」
今年からブリヂストンタイヤを使用するロッシ側フィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダビデ・ブリビオは、1月の状態と比べて大幅にマシンの改善を進めてくれたヤマハのエンジニア全員に感謝すると同時に、このままの調子で開幕までの準備が進む事への期待感を示している。
「今回のテストは大変に好調でした。冬の間にヤマハのエンジニアがどれだけ頑張って開発に労力を費やしてきたかを、わたしたちの良好な結果を持って示す事ができましたから、彼らの全員に深い感謝の気持ちを伝えたいと思います」とブリビオ監督。
「今週を通して作業に取り組んだ様々な全ての分野において進歩を確認する事ができました。今回得られた結果は、高いレベルのパッケージを今後仕上げていく上で大いに役立つ事でしょう」
「今日のレース・シミュレーションはとてもうまくいきました。1月の時よりいい結果が得られましたし、おまけに1周回ごとのラップタイムも一貫して速くなっていますので、これはわたしたちの今の仕上がり状態を知る上で大変に重要な内容でした」
「まだプレシーズンテストは50%しか終わっていませんし、さらに2回のテストが開幕までには待ちかまえていますが、このままの調子で改善が進み、良好な状態で最初のレースが迎えられるよう、挑戦への準備が整う事を願っています」
■ペースが上がらずにロレンソはレース・シミュレーションを中断
最終日には予選タイヤでトップタイムを記録し、この3日間の総合ではチームメイトのロッシに次ぐ2番手につけたミシュランを履くフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソだが、今年2度目となったセパンでのテスト内容にはあまり納得できていない様子だ。
今回のセパンでは、以前から課題としていたハードブレーキング時のフロントまわりの感触改善が初日から進まず、2日目に入り多くのセッティング変更を行ったがこの時にも大きな進歩は得られていない。
最終日となる3日目の作業に入る前に、ロレンソはチームのエンジニアと長時間のミーティングを行い、ここまでのデータを全て分析してIRTAテストに入る前の最後のセッティング改善にこの日は挑んでいるが、結局レースタイヤ装着時のコーナー進入時に感じるフロントの違和感と振動の問題を解消するには至らなかったという。
また、ロレンソはチームメイトのロッシと同様に最終日はレース・シミュレーションの実施を計画していたが、シミュレーションの2〜3周を走行した段階でペースがつかめない事が分かり、本人の意志でロングランをその場で中断、残りの時間を再びフロントまわりのセッティング改善とミシュランのタイヤテストに費やした。
しかしながら、ロレンソはこの日の最後に装着した予選タイヤでは前回のセパンでの自己ベストを0.061秒という僅かだが更新する事に成功しており、落ち込む中でも一番最後にやや元気を取り戻した様子だったとフィアット・ヤマハ・チームは伝えている。なお、ロレンソが3日間のテストを終えた直後に今後の課題として掲げたのは、本人のライディング・スタイルの改善だった。
■ロレンソ「今回の結果については特に心配はしていない」
年明け2度目のセパンでは改善を進める事ができなかったホルヘ・ロレンソは、特にこの結果については心配していないと今回の全てのテストを終えてコメントしている。次回のヘレスIRTAテスト以降のセパンとは特性の異なるサーキットで走った時にどうなるかが楽しみだとロレンソは語る。
「今回のテストは難しい内容になりましたが、全てが不調だったという訳ではありません」とロレンソ。
「今も一番の問題はコーナー進入時のフロントですね。バイクが安定しないし、少し振動もあります。色んなセッティングをいくつも試しましたが、期待するほどの効果はここまでに得られていません。要するに、もっと自分のライディング・スタイルを色んなコーナーに合わせられるよう見直す必要があるという事です」
「今日はレース・シミュレーションにも着手しましたが、十分なペースで走れなかったので途中でやめました。ただ、夕方に予選タイヤを何本か試した時には前回のテストの時よりもいいタイムが出たので、これについては悪くなかったと思います」
「今回のここでの状態については特に心配していません。前にも似たような経験はありましたし、これからいい方向に進んでいく自信はあります。今は違うサーキットで走ってみて、どうなるかが楽しみですよ」
■ロマノーリ監督「フロントの問題以外は前進している」
ミシュランを履くロレンソ側のフィアット・ヤマハのチーム監督を務めるダニエーレ・ロマノーリは、このセパンではフロントの改善は期待通りに進まなかったが、他の分野のセッティングが洗練される事になったので有益なテストだったと説明している。
「1月のテストの時にはすごくいいペースで走れていたので、今回はさらに改善が進む事を期待していましたが、残念ながら想像通りにはいきませんでした」とロマノーリ監督。
「シャシーやサスペンションのセッティングなど、様々な方面から多くの事を試しましたが、ハードブレーキングが必要な区間ではいまだに問題を抱えたままです」
「ただ、この問題が残ったにしろ、今回は有益なテストだったと思います。電子制御のマッピングをより洗練させる事ができましたし、新しいフェアリングの導入で冷却装置の性能も上がり、ミシュランとのテストでは何本か新しいタイヤを見つける事もできました」
「今週もホルヘは本当によく頑張りました。暑さのせいで彼の作業は困難を極めましたし、ヨーロッパ以外の土地でこれだけの量のテストをこなす事に彼は慣れてはいませんでしたから、本当によくやったと思います」
「これで全員が少し休みを取れますから、ヘレスではさらにいい状態でテストに挑める事を期待しています」
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