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ミハエル・バルトレミー、カワサキの苦難から自信への道のり
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インテリワン編集部
  2008年1月6日

昨シーズンよりチームを自社運営の新体制に切り替え、新生チームとしての1年目を戦ったカワサキ・レーシング・チームは、多くの苦難と戦った激動の2007年シーズンを終えて手にした大きな自信を胸に挑む2008年シーズンを前に、チームの舵を1年間取ってきたコンペティション・マネージャーであるミハエル・バルトレミーのインタビューを紹介している。


■バルトレミーが語るカワサキの苦難から自信への道のり

2007年のカワサキ新体制を軌道に乗せる忙しいシーズン中、オリビエ・ジャックのシーズン中の引退手続きやその後任となったアンソニー・ウエストの抜擢、2008年度のライダー体制準備として早くから当時スズキのジョン・ホプキンスに接触するなど、新生カワサキの直近のチーム戦略や将来の人材確保、ならびにチーム内外と直接的に関わりながらレース現場の実質的なボスを務めてきたのが、カワサキのライダーやエンジニアたちから一目置かれる存在、コンペティション・マネージャーのミハエル・バルトレミーだ。
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今回のインタビューの中でバルトレミーは、2006年末の新体制発足から数カ月間、当時のカワサキ・レーシング・チームにはファクトリー・チームとしての基本的なインフラさえ不足していた事や、2007年シーズンに向けてそれらの整備を進める中での不安な心境から現在に至るまでの1年間を振り返り、高い自信を持って挑む2008年シーズンへの抱負を語っている。


■ミハエル・バルトレミー インタビュー

ここでは以下に、カワサキ・レーシング・チームが年末に公開したバルトレミーへのインタビューの全文を掲載する。
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2007年シーズンは苦難の連続だったと思いますが、ここではその1年を振り返りながら、2008年に向けての抱負などを聞かせて頂きたいと思います。

2006年の11月6日に、川崎重工から来期に向けて新体制の準備を一緒に進めたいと相談された時には、私はいくつか不安を抱きましたし、その目標を達成する自信が完全に持てる状態ではありませんでした。

実現が不可能だからではなく、最大の懸念事項は残された少ない時間でした。道具は何もないし、戦いを開始するための環境すらなかったんです。

ただ、目標が達成できない事を心配するよりも、世界に対して自分たちの力を示していく姿勢の方が自分たちには重要なんだと気がつきました。気持ちで負けてしまっては、常に最初のレースでも負ける事になりますからね。


1年を振り返ってみて、シーズンは計画通りに進んだとお考えですか。
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チームについての全ての予定を整理した2006年の11月にそれを尋ねられていたら、12ヶ月後に計画は完璧に達成されている筈だと恐らく答えたでしょう。

そして実際にあれから1年が経過した訳ですが、2006年の11月に計画した予定の100%のうちの15%がまだ消化できていないのが現実ですね。細かな部分について、まだいくらか最終的な仕上げが必要です。
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ですから、この1月は自分にとっての焦点となる大きな目標の時です。ただ、仮にその目標の達成が2月のIRTAテストに持ち越したとしても満足はできると思いますよ。


チーム体制の整備という大きな目標とは全く別に、フランス人ライダーのオリビエ・ジャックに浮上した問題は克服すべき大きな課題となりましたね。
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出場選手の中で彼が最年少のライダーじゃない事は最初から分かっていました。それに多分、シーズンの開始時期になっても彼をチームで走らせる事についての若干の躊躇が私の中にいくらかあったのは事実です。

ただ、それでも常にチームのライダーからは最大限の力を引き出せるようにしなければいけませんし、それと同時にもし何かがうまくいかなくなった場合には厳しい視点も私のポジションには求められる訳ですが、現実的に見て何かが確実にうまくいっていませんでした。

オリビエは転倒があまりに多く、それにより大きな怪我を負いました。これに解決策を見出す事は容易ではありません。


そして結果的には、ジャック自身がレースからの引退を宣言したと言う事ですか。
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その通りです。

写真無理もありませんが、彼はそれについて口火を切る事に苦しんでいました。彼はレーサーですし元チャンピオンです。自分の人生の一部が終わる事について宣言をする事になるのですから、これには大変な勇気が必要だった筈です。

ただ、わたしたちは彼を失いたくありませんでしたので、彼がレースから受けていた過大なストレスだけを取り除き、チームに残ってバイクの開発とテストを担当してもらう事にしたんです。そしてオリビエはこの任務に見事に順応しました。

個人的な意見ですが、彼はMotoGPにおける最高のテストライダーです。この体制となった事により得られたメリットは非常に大きかったと思いますし、彼には今後何年もわたしたちと一緒に仕事を続けて欲しいですね。


その決定と同時に、ジャックの後任として元250ccライダーのアンソニー・ウエストを起用しましたね。
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彼は優れたレーサーですし、非常に正しい人選だったという印象をチームは持っています。もっと磨きをかけていく必要が彼にはありますが、間違いなく彼の成長を近いうちに目にする事になる筈ですよ。そう信じているからこそ来期も彼と契約を交わした訳ですからね。
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その他のライダーの人選について聞かせてください。

ランディー・ド・ピュニエは何回かいい成績を残しましたし、これはアンソニーも同様です。しかしながら、特にジョン・ホプキンスがチームに加わった事もあり、今後はさらに高い成績を獲得していく自信があります。

ホッパー(ジョン・ホプキンス)で行こうと決めたのは昨年の4月頃です。ただ、まだ当時の彼は最高と言える結果を残していませんでしたから、この計画について周りの人間を説得するのは決して簡単な事ではありませんでした。
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しかしながら、バレンシアの最終戦を終えて年間ランキングの一覧を見た時の結果は、1位がドゥカティーに残留するケーシー・ストーナー、2位がホンダに残留するダニ・ペドロサ、3位がヤマハと契約済みのロッシでした。要するに何が言いたいかというと、2008年にチームを変わる可能性のあったライダーの中のランキング最上位はわたしたちが4月に選んだホプキンスであり、彼はカワサキへの移籍を望んでくれたんです。

期待は言うまでもありませんよ。


1年以上前にホプキンスのようなクラスのライダーにカワサキへの移籍を打診していたら、彼らは興味を示してくれたでしょうか。
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それはまず不可能だと当時なら答えたでしょう。でも、わたしたちはやったんです。

実際には、興味を示してくれたのはホプキンスの1名だけではありませんでした。カワサキへの移籍を彼らが真剣な選択肢の1つとして考えるようになったのは恐らくあの時が初めてだったと思っています。

間違いなく2007年シーズンはわたしたちを大きく変えましたし、MotoGPの世界の人たちから見てもわたしたちの変化は大きく映ったようです。今の彼らはわたしたちをまともなワークス・チームとして捉えてくれていますからね。
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2007年マシンの開発状況はいかがでしたか。

2006年の11月末にセパンでテストを行った時には非常に多くの問題を抱えていましたが、次の1月21日にセパンに戻った時には故障などのトラブルは1度も発生しませんでした。
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冬季の1ヶ月間、普段は表に出る事のないカワサキのエンジニア軍団は影で必死に頑張り、信じられないほどの成果を上げる事に成功していたんです。2月のIRTAテストが終わった時には十分に戦える事を実感しましたし、バイクは本当に速くなっていました。

ただ、まだそこで全ての準備が終わった訳ではなく、カワサキのエンジニアたちはZX-RRの改善作業をその後も引き続き行っており、おかげでこの1年間を通して非常に大きな進歩を得る事ができました。実際、最終戦のバレンシアではド・ピュニエとウエストの2名がレースでのトップスピードの1位と2位を記録しています。
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少なくとも、カワサキは1つの分野においては、MotoGPの世界で長年戦ってきたライバルたちに追いついたと言える事だけは確かでしょう。


新生カワサキとしての1年目の成績には満足できていますか。

カワサキの過去のベストランキングは10位でしたから、もし年間ランキングを9位で終える事ができたなら満足だと以前には言いましたが、結果としてその達成は幻と終わりました。ただ、簡単な目標じゃなかった事はよく理解していたつもりです。

こうやってシーズンを終えてから、今の自分たちのバイクやテクニカル・パッケージの組み合わせならランキング9位以上を狙えた筈だというのは簡単ですが、何にせよ最終的には11位を確保しましたし、初年度の成績としては非常に満足しています。
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プレスによる認識など、メディアの報道内容は以前に比べてどう変わりましたか。

当然ながら、昨年はチームの変革に関してメディアから色々な憶測が飛び交いましたが、ジャーナリストの多くの方々はわたしたちの変化に大きな感銘を受けてくれた印象があります。

それに昔の体制の時以上に多くのジャーナリストがチームのホスピタリティーを訪れるようになり、コーヒーを飲んだりしながらわたしたちと会話を交わし、チームがどう変わったのかを実感してくれている様子です。
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わたしたちはよりオープンになったんだと思います。そのおかげで得られるようになったメリットは少なくありません。恐らく以前はもっと閉ざされたものだったんでしょうね。

もちろん常にどのチームだって悪い内容を書き立てられる事はありますが、疑念を抱く人達を納得させていくには、成績を常に上げ続けていく以外に方法はありません。


非常にプレッシャーの多い環境の中でプレッシャーの強い任務を担当してらっしゃいますが、特に気をつけているような事はありますか。

発言は常に直接的であるよう心がけているつもりです。チームのメンバーのほとんどがこの方針に賛成してくれているといいんですけどね!一緒に働くメンバーにも同じようにオープンであって保って欲しいと思っていますし、結果としてそれが物事を簡単にするんです。
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MotoGPの世界で達成したい目標を現実に変えていく唯一の方法はこれしかないと思っていますし、明快である事が一番だと思います。世界チャンピオンを狙っているんですからね。

日本との関係が自分にとって大変に重要なものとなっていますし、懸命に頑張る事でこれを確固たるものにしていきたいと考えています。ヨーロッパの人間として川崎重工とコミュニケーションを行う事はチームの全員にとっての利益に繋がりますし、これは不可欠な事なんです。

ここにきて、カワサキの社長とも友人として会話ができるようになりましたから、より効率的に物事を一緒に進める事ができるようになると思います。これは成長を続けるチームを運営していく上で必要な要素の1つですし、私としても嫌いな事ではありません。


常に前進を続ける以上、物事をうまく進める上での努力や準備作業に休む暇などないと思いますが、非常にすさまじい任務ですね。

確かに、常に仕事をしていますよ。人生の毎日18時間はMotoGPに独占されているような状態です。6時間は睡眠を取りますが、さらにその内の2時間は仕事の夢を見ていますからね!
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恐らく10年以内にはもっとリラックスできるような事を担当できるかもしれませんが、今は後ずさりが許されない立場にあります。携帯の電源を切るかEメールのチェックをやめればいいんですが、今は現実的にそうはできないんです。

サーキットでの長時間勤務は全く苦になりませんが、それでも時々自分のための時間が恋しくなる事もありますね。チームの誰かに最近「そろそろ床屋に行った方がいいんじゃない?」と言われたんですが、そんな時間すら見あたらないんですから!時間を取って銀行に行こうと思っていても・・・そのタイミングがなくなるんです。

何よりも自分の子供たちと過ごす時間がもっと欲しいです。ただ、以前にも言った通りチームも自分もまだ理想の状態に到達していませんので、多くの仕事がどうしても必要なんです。

チームの全員が人生に何らかの犠牲を払っています。ただ、この怒濤の1年間を通して膨大な進展を見返りとして得る事ができていますので、より普通のレベルと言える仕事の進め方に戻る日も近いでしょう。一緒に全てをやり遂げてきたので、おかげで来年に向けては楽観的に構える事もできますしね。


2007年シーズンの中で個人的に最も印象に残ったシーンはどれですか。
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カワサキのライダー3人がトップ10入りを果たしたラグナ・セカと、それに何よりもランディーのもてぎでの表彰台です。あれは非常に特別な瞬間でした。レースはドゥカティーが制したので、会社の全ての重役たちが見守る中、日本メーカーの中ではトップでチェッカーを受ける事ができましたからね。

非常に多くの事がうまく噛み合い、ランディーも素晴らしい走りを見せてくれました。本当にいい1日でした。


では、2008年シーズンに向けての計画を教えてください。

全てを完璧に仕上げてから新シーズンを迎えたいのは当然ですが、2008年の最も重要な事は新しいバイクを改めて用意する必要がない事です。これは非常に明るい動向と言えます。
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マシンは2007年と同じものを続けて使用しますが、より強く戦う上で必要と思われる部分には変更を加えています。バイクの調子が非常に上がってきているのに、全く別のマシンを再び準備する必要はないでしょう。


チームの勢いをさらに高めるために、あなたがスポンサー獲得に動いていたというのは事実ですか。

少なくとも2011年までカワサキがMotoGPに参戦する事への確約は得られていますし、このプロジェクトに必要な出費をカワサキは現実的に捉えています。
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しかしながら、今年のチームの頑張りはオートバイ業界以外の大手スポンサーの興味を引く結果になりました。この動きは費用に関するメリットだけではなく、カワサキのブランドをこの業界以外の市場に広げる事にも役立ちます。

これは要するに、オートバイ雑誌以外の他の一般に良く知られた伝統的な分野にも進出できる事を意味しています。慣れ親しんだ2輪業界に固執する事なく、わたしたちには他の市場を開拓していく必要もあるんです。


それでは最後に、来年の今頃に私達は何を話していると思いますか。
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えーっと、2008年シーズンを高い成績で終えていて、『2009年はついに世界タイトルを狙います』とか言っているんじゃないですかね。でも、そうなると信じていますし、自信も絶対的にありますよ。

わたしたちにはカワサキの非常に優秀な多くの人材がついていますし、MotoGPの中でも最高のチームです。これまでに激しい浮き沈みを経験してきましたが、力を合わせてついに素晴らしいバイクとファクトリー・チームを作り上げる事に成功しました。

彼らの全員を私は非常に誇りに思っています。

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